ひとしろ
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2019/10/12 (土) 22:43:01
酒場の扉が開き、きょろきょろと周りを見回しながら、男がひとり入ってくる。
右手には今しがた脱いだ帽子。左手には細身の杖。気さくそうな笑みを浮かべ、裏通りの先客たちに会釈した。
「やあやあこんにちは。……おっと怪しい者ではありません。はい? 神官? ガサ入れ? とんでもない! 嫌ですねえ、そんな怖い顔しないでくださいよ。丸腰ですよ? 私はただの旅人でしてね。着いたばかりなものですから、まずはこの国の酒でも味わおうかと。」
やれどっこらしょと、適当な椅子に腰を下ろす。
「なにかお勧めあります? ははあ、乳の発酵酒。それいただきましょうか。」
酒が出された。酒坏をちびちび舐めながら、頬杖をつき、のんびりと過ごしている。
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古い扉が開き、また一人足を踏み入れる。
ジロリとした目つきは元からか…特に臆するでなく男は慣れた風にカウンターへと足を運ぶと注文をする。
「魔術酒か…変わった名前だな…、いや気に入った。それを一つ、それと適当につまみをくれ」
品を受け取ると適当な席へ…と向かいがてら赤毛の男をちらりと見た。
物腰が柔らかそうで風体も悪くない、こんな店には不似合いとも思えるが…
「あんた、こんなところで呑気に食事とはね。店、間違えてんじゃあないか?」
無愛想に投げかけながらも近くの壁際の席を陣取った。