ゼロとアイリスが突入したのは轟雷殿だった。
現在アイリスはデザイアソウルの力でカーネルと1つになっており、
その風貌も立ち振る舞いも従来とは打って変わって凛としている。
それを目にした轟雷軍団兵士達は若干困惑し、思わず問う
「ゼロと…一緒にいるのはアイリスか…!?いや、アイリスがこんな渾然たる姿な訳がない…
何者だ、女!」
轟雷軍団兵士の問いにアイリスは毅然として応える。
「私はアイリスだ、今は我が兄カーネルと1つになってこの姿になっている。
今の私をこれまで通りの非戦闘員と侮っていると火傷するぞ」
アイリスの返答に轟雷軍団兵士は異を唱えると共に憤り始める。
「ふざけるな!どう考えてもカーネルだろうが!
カーネルと言えばウイルスに因らずイレギュラー化したレプリロイドの面汚し…
それが我々の作戦を妨害し続け…あまつさえこの轟雷殿にのこのこ入ってくるとは許すまじ!
然るべき裁きを受けるがいいわ!!!!」
カーネル並びにレプリフォースがレプリフォース大戦の引き金を引いた事は
レプリロイドにあるまじき分不相応な行為という事でメタシャングリラには激しく忌避されているのである。
憤る轟雷軍団兵士達は未来の強者を模したセイバー系武器「クレセントマグナ」を構えてゼロとアイリスに挑みかかる。
「今更兄の過去の過ちに対して弁明はしない。その事と貴様等が平和に仇成す存在であることは別問題なのだからな…
世界の平和にかけて…貴様等を倒す!」
「(本来ならアイリスを現場に出撃させるのは心許ないはずだが、流石というかまるでカーネルがそこにいるかのような安心感だぜ…)背中は任せたぞ、アイリス!」「うむ!」
ゼロとアイリスは背中合わせになり四方八方から襲い来る轟雷軍団兵士達を薙ぎ払う。
「こうなったら…これならどうだ!!」
轟雷軍団兵士達は一旦2人から距離を取った。
そしてゼロと対峙した者はクレセントマグナから磁場を発生させスクラップの塊を前方に出現させこれをクレセントマグナで砕き破片を飛ばしてきた。
一方アイリスと対峙した者は磁力で四肢を切り離しそれらを縦横無尽にコントロールし始めた。
「未来の力か…こいつらも使うんだな」
「だが所詮は雑兵の付け焼刃…そんな事でこの私を倒せるか!」
対するゼロとアイリスは至って冷静でゼロは躯装破で飛び散る破片をセイバーに集中させスクラップの大剣を轟雷軍団兵士達に叩きつけ、
アイリスは最小限の動きで自身を襲う手足を躱しつつ正確に轟雷軍団兵士達の頭上に雷を落とした。
結果瞬く間にこの場の轟雷軍団兵士達はある者はペシャンコになり、ある者は頭脳がショートして全滅した。
その直後パレットから通信が入ったがその内容はやはりエイリアがエックス達に入れたそれと同様のものだった。
丁度この時ゼロが床に放った技の影響で床には下の階に続く巨大な裂け目が出来ていた。
「俺はこの下を当たる。お前はこのまま真っ直ぐ進んでくれ」
「ああ、武運を祈る!」
ゼロは裂け目の下に、アイリスは正面の扉の先に進んでいった。
ゼロが進んだ先は上の階と同じく天井と床がかなり離れていた。
彼を待ち受けていたのは軍事用メカニロイドの軍団でノートルバンジャー、ヘリット、ヘッドガンナーカスタマー等ドップラー事件の際に登場したものが多く見受けられる。
「チッ、相変わらずいい趣味してやがるぜ…!」
吐き捨てつつ彼等を撃破し続けるゼロだったがある時前方を飛行する巨大な影を目にする。
デスログマー…第1次イレギュラー大戦の際に現れた空中戦艦である。
ゼロが開けた場所に到達すると共にデスログマーは下部の昇降口からプロペラで飛行するタイプのメカニロイドを放ち始めた。
キャリーアーム…ドップラー事件の際に現れた運搬用メカニロイドで事件当時と同じくコンテナを運んでおりそれを次々と地面に落としていく。
コンテナは爆発するタイプのものや中に轟雷軍団兵士が潜んでいるものもあったがゼロにとっては苦でもなんでもなかった。
「運ぶそばから壊してやる!龍炎刃!雷神昇!氷龍昇!」
ゼロは対空技でキャリーアームをコンテナごと撃破し続けた。
やがてキャリーアームが全滅するとデスログマーは壁の突き当たりの上部にある専用の航路へと消えていった。
ゼロはその後を追う。
一方でアイリスも軍事用メカニロイドの軍団を相手取っていたがこちらは兵器工場でも出現したテラデス(ギガデスの強化版)やウォークシューター、メタルホーク、プラズマキャノン、ビームキャノン等
レプリフォース大戦で見られたものが多い。
「…兄さんの記憶にもあったが…こうして見るとやはり気分のいいものではないな…
過去の亡霊共よ、一匹残らず蹴散らしてくれるわ!!」
メカニロイド達を撃破しつつ道中を進むアイリス。
彼女が進んだ先の部屋には無数のビームキャノンとそれらに守られる壁に埋め込まれたコアが待ち構えていた。
「レプリフォース空軍のジェネレイドコアか…」
眼前にそびえ立つジェネレイドコアを見据えアイリスは呟く。
そしてジェネレイドコアを守るビームキャノンの大群はアイリス目がけてレーザーを一斉に発射する。
加えてジェネレイドコア自体もビームキャノン以上に強力なレーザーを放ってくる。
アイリスはレーザーの射程圏内に自身がいるビームキャノンを的確に破壊しつつジェネレイドコアに迫っていく。
「連中の我々に対する皮肉か知らんが過去の亡霊たるこいつ等に負ける事など、己自身に敗北することと同義!
世界の為、己自身の為、そしてゼロの為…己自身に…負けるものかぁーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
ビシャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
雄叫び(?)を上げると共にアイリスは雷を放ち部屋にいたジェネレイドコアとビームキャノンを一掃した。
「これしきの事、私には責め苦にはならん!!」
豪語するアイリスはジェネレイドコアが破壊された事で現れた道を進む。
エラトネール三姉弟がファートを救出したのはこの頃だった。
3人は当初の目的であるファート救出を成し遂げた後は解散し、烈火殿以外の棟に散り散りになった。
ドロワクレールが選んだのは氷結殿だったが、アンジュピトールが選んだのはここ轟雷殿である。
チッ…チッ…チッ…チッ…チッ…
アンジュピトールは轟雷殿に入った直後爆発までの時を刻む丸い紫色の時限爆弾を目にした。
これはユーラシア事件の際ペガシオンが使用していたものである。
「えいっ!」ボン!
事件当時に倣いアンジュピトールはバスターからの光弾「ソワレフレア」で爆弾を爆発前に破壊した。
その後もアンジュピトールは各所各所に爆弾が仕掛けられたルートを飛行しながら、爆弾を壊しながら進んでいく。
ソワレフレアの壁をすり抜ける性能もさることながら僅かな音や匂いで爆弾の位置を察知しては破壊する
アンジュピトールの爆弾処理能力は卓越していた。
「つまんないつまんないぃ~っ!!」
簡単すぎて物足りないのかアンジュピトールはわめき散らしながら爆弾を破壊していく。
これに応えたのか道中の奥深くに行くほど爆弾の配置はいやらしくなっていき、
敵のメカニロイドも強くなっていき、更には設定時間を短く設定された爆弾も現れる。
ドカァァァァーン!!!!!!!!!
遂にあらゆる不利な条件が重なり爆弾の破壊に間に合わなかったアンジュピトールは爆発に巻き込まれてしまった。
地面に大の字になって倒れたアンジュピトールだったが…
「今のはちょっと面白かったよ♪」
全身黒焦げになり髪もアフロヘア―になったもののすぐにアンジュピトールはムクリと起き上がり満面の笑みを浮かべた。
そうして進んでいくと彼の前方にフライトQが出現した。
フライトQは道中で出現したものと同じ爆弾を投下してくる。
ちなみにフライトQ自体は爆発の影響の受けない高度にいる。
アンジュピトールは爆弾を破壊すると即座に飛び上がりフライトQと同じ高度に到達。
「ソワレフレア~!」
ドドドドドドドド!!!!!!
アンジュピトールがソワレフレアを繰り出すとフライトQはミサイルで迎撃しつつ必死に高度を合わせまいと上下移動をする。
「アハハッ、遅い遅い~!」
ドドドドドドド…ドカーン!!!!!!
アンジュピトールはその都度高度を合わせては攻撃を繰り返し程なくしてフライトQを撃破。
「イェーイ♪」
アフロになったアンジュピトールは右手の人差し指を立て、右腕を高く掲げ、左肘を若干曲げて左拳を真下に向け、足を開きその際右脚を曲げて左脚を斜めにするポーズを決めてからこの場を後にした。
ゼロが向かった先では彼目がけてメタルウィング、ツバメール・S、アイスウィング、グルーブジェット等鳥型の飛行タイプのメカニロイドが次から次へと襲い掛かってきた。
「おいおい、俺はバードウォッチングに来たんじゃないぞ…」
ゼロは皮肉を呟きながら獄門剣でそれらのメカニロイドを撃破して進んでいく。
キーン…
そんな中一際大型の機体が彼に迫る。
それはレッドアラート事件の際に現れたカモメ型の戦闘機であった。
名前らしき名前はない。「戦闘機」が名前のようなものである。
事件当時「戦闘機」はレールの上を進む台座の上に乗って移動していたが、今回は自力で飛行している。
それ故行動範囲も広がり小回りも効くようになっている。
ドドドドドドドド!!!!!!
マシンガンを掃射する「戦闘機」にゼロは冷静に対処。
「レールに敷かれた人生は嫌ってか?分からんでもないけど…な!」
タイミングを見極めゼロは「戦闘機」に飛び乗った。そして…
「コマンドアーツ!!!」
ズババババババババババババババ!!!!!!!!!
一瞬で凄まじい連撃を決め、「戦闘機」を細切れにしてしまった。
爆発四散する「戦闘機」に振り返る事なくゼロは進んでいく。
その頃アイリスの前方に現れたのは…
「これは…本気で私を怒らせたいようだな…!」
自身を出迎えた軍勢を見て怒りを露わにするアイリス。
彼等はイーグル、ラビット、ホークといった空中戦用のライドアーマーに乗った轟雷軍団兵士の軍団だったが
アイリスが特に怒りを感じたのは従来のアイリスの戦闘形態、即ち単眼の頭部が付いており翼を生やしたライドアーマーのような形態を模したライドアーマーに搭乗する轟雷軍団兵士である。
するとその轟雷軍団兵士が口を開いた。
「憤りの念を感じているのは我々とて同じ事、組織の崇高な理想の妨げとなる賊軍よ、天に代わって断罪してくれよう!!…かかれ!!!」
彼の号令と共にライドアーマーを駆ってアイリスに襲い来る轟雷軍団兵士達。
「これぞ自分自身との戦いだな…いいだろう…はぁあああああああ…!」
アイリスはセイバーを大きく構えた。そして…
「滅斬!!!!!!!!」
ズパァァン!!!!!!!!!!!
セイバーの強烈な一振りで敵軍が一気に両断された。
「ほう、今のを躱した奴もいるのか…」
アイリスの先程の一閃が放たれる際、咄嗟にライドアーマーから降りて生き延びた兵士が数名いた。
彼等の中には元祖アイリスの戦闘形態の姿をしたライドアーマーに乗っていた者も含まれる。
「己、ならば…ハイボルティアだ!!」
轟雷軍団兵士達は腕を未来の強者を模したバスター系武器「ハイボルティア」に換装した。
そしてバスターからの光弾以外に元となった強者の能力であるビット展開や高速ダッシュ、更にはバスターの銃口から放たれるビームをセイバー状に留めてからの斬り付けなどでアイリスに挑むも…
「生ぬるい!!迅雷豪閃!!」「え…!?」
アイリスは瞬時に攻撃を仕掛ける轟雷軍団兵士の死角に回り込み貫通力とリーチのある技、迅雷豪閃を放ち撃破した。
そのままアイリスは1体、また1体と轟雷軍団兵士を撃破していく。
その動きは流れるような美しさで尚且つ技には力強さがある。
轟雷軍団兵士達は思わず見とれてしまうが気が付いたらアイリスの剣技の餌食になっていく。
アイリスはこの場の敵を瞬く間に全滅させた後、更に奥へと進んでいった。
本殿では…
メタシャングリラ構成員達のエルフ細胞接種が終わるとヘルシャフトが彼等に次の指示を出す。
「ではこれよりこの基地の放棄を想定したシェルターへの避難を行う」
ヘルシャフトの発言にこの場は騒然となる。
暫くするとヘルシャフトは続けて言う。
「いいか?メタシャングリラを構成するのはこの要塞か?この島か?それとも兵力となるレプリロイドやメカニロイドか?
否、我々人だろうが。
エルフ細胞を手にした今、この基地を失ったとしても後から組織の基盤を立て直す方法などいくらでもあるだろう。
今はまだ本隊が敵を食い止めているから貴重品があれば今の内に持ち出すがいい」
「ワテは商売道具や高額商品やな」
「私は神具や真幸教グッズですねぇ」
「私は重要な情報の証拠品や極秘データの入ったディスクだな」
「私は最新の研究サンプルだろう」
プーパー、フィースィー、タード、Dr.V達幹部がそれぞれの貴重品に何を選ぶか考えているところ…
「俺の貴重品は…こいつだ」
ヘルシャフトはとある物を提示した。
「総帥殿、いくら何でも早過ぎます!!」
研究員がそれを見た時思わず止めようとする。
これに対しヘルシャフトは研究員を説得するように言う。
「現時点でアレの操縦が上手くいく保証も無ければ上手くいったとしても確実に勝てる保証もない。
故にこれは最悪の中の最悪に備えた保険だ。
これを使う機会はあってはならぬが…使えば新たな活路を見出せるだろう」
すると…
「総帥殿、我々は総帥殿と一蓮托生です。私も持っていきます」
「私も持っていきます」
「どこまでもお供します」
メタシャングリラの構成員達は次々とヘルシャフトと同じ危険極まりない「それ」を持っていく事を決意。
これが後のメタシャングリラの命運を決定づける事となる、
暫くすると…
「よし、貴重品は持ったか!?忘れ物は無いな!?では押さない、駆けない、喋らないを遵守してシェルターに向かうぞ!」
ザッザッザッザッザッ…
ヘルシャフトの指示に従いメタシャングリラ構成員達はヘルシャフト専用機の巨大ロボットの眠るシェルターへと向かう…
轟雷殿では…
「ゼロ!」
「アイリス!」
基地内のかなり奥まで進んでいたゼロとアイリスは上下の階の区別の無い巨大な部屋で再開を果たしていた。
「信じていたぞ、流石『理想のレプリロイド』なだけあるな」
「フフ、それまでの私はオペレーターとしての全うする事こそが私なりの戦いと考えておったが…
今お前と同じ目線、同じ戦場で戦える事を誇らしく思っているぞ」
ズシン…
互いに向き合い見つめ合うゼロとアイリス。その背後から部屋が震撼すると共に巨大な足音が響く。
「普段の可憐なお前もいいが今の勇ましいお前も悪くないな。俺はどんなアイリスでも受け入れるぜ」
「兄さんのようになってしまった今の私を受け入れてくれて嬉しいぞ」
ズシン…ズシン…
更に両者に忍び寄る巨大な影。
「この先に今まで以上に強力な反応がある。間違いなく4コマンダーだな…だが俺達なら大丈夫だろう」
「ああ、平和を勝ち取るまでもう一息だ!」
ズシン…ズシン…ズシン…
「アイリス…」
「ゼロ…」
徐々に距離を詰めるゼロとアイリス。
スゥー…
2人に迫ってきた「何か」はその巨大な腕を振り下ろそうとする。
その正体はレッドアラート事件の当時デボニオンが従えていたヤドカリ型の巨大メカニロイドである。
名前はヤドカリ。過去に現れたヤドカルゴや未来に現れるヤドカロイドと異なり何の捻りもなくヤドカリ、なのである。
ブォンッッ!!!
そして今、その「ヤドカリ」の剛腕がゼロとアイリス目がけて振り下ろされた…
「「邪魔を…するなぁーっ!!!!!!!!!!」」
ズババババババババババババババ!!!!!!!!!!!
ゼロとアイリスはゆっくり振り向き、怒りの形相でダブルアタックを発動。
空気を読めない「ヤドカリ」はゼロとアイリスの愛と怒りの力の前に砕け散ったのであった。
「気を取り直して…行くぞ!」「ああ!」
邪魔が入ったものの改めて扉の先へと向かうゼロとアイリスだった…
その一方でアンジュピトールは特殊なスイッチでロックされている数々の扉が行く手を阻むルートを進んでいた。
このスイッチはクラーケンの研究所で使われたものと同じタイプで何度も攻撃する事で扉のロックを解除することが出来、スイッチの色は同じ色の扉に対応している。
ちなみにこの時アンジュピトールの髪型は既に元に戻っており体の汚れもはたき落していた。
このルートも進めば進むほどスイッチの配置もいやらしくなり敵の攻撃も激しくなっていく。
しかしそれでもアンジュピトールにとっては全く苦にならない。
「さっきからこの扉しょっちゅう来るけどそれだけこの先に入ってほしくないって事かなぁ~?
そんな事されると余計気になっちゃうんだよねぇ~!」
余裕しゃくしゃくで扉を解除して進んでいくアンジュピトール。
そんな彼をアディオンに乗った轟雷軍団兵士が襲い掛かってくる。
「その通りだ、この先には行かせんぞ!!!」
しかしやはりアンジュピトールの敵ではない。
「キミ達じゃボクの遊び相手にはならないよ~だ!!」
彼等を蹴散らし突き進むアンジュピトールはやがて一際大きな部屋に辿り着く。
「へぇ~、ここの扉は3重なのか…」
見回してみると扉のロックを解除するためのスイッチが従来の黄色と紫の他に緑の3色があるのだ。
「それじゃあまずは緑を攻撃して、と…」
ズドドドドドドドドドド…
アンジュピトールが緑色のスイッチを攻撃していると…
シャーッ!!
上から何かが襲い掛かってきた。
正体はレッドアラート事件の際に現れた一見鳥型に見えるが頭部はカメラアイのみで顔は胴体についている奇怪なレプリロイド、バーディのデッドコピーである。
「で、次は黄色、と…」
アンジュピトールは何事も無かったかのようにバーディの襲撃をヒョイと躱し黄色のスイッチを攻撃し始める。
バサッバサッ…シャーッ!!
再度上昇し、アンジュピトール目がけて急降下するバーディ。
「次は紫ね…」
しかしまたしても何事もなかったかのように回避され、アンジュピトールは紫のスイッチを攻撃し始める。
バサッバサッバサッ…シャーッ!!!
バーディはまた上昇し、さらに勢いを付けて急降下する。
「…さっきから鬱陶しいなぁもう~」
アンジュピトールはそれを迎え撃つべく急上昇。
ガキィィィン!!!!!!!
空中でバーディの上からの突撃とアンジュピトールの下からの突撃が激突した。
結果アンジュピトールの突撃の威力が上回り、バーディは砕け散った。
「ハイ、ロック解除、と。それじゃ行くぞぉ~!」
アンジュピトールはそのまま全ての扉のロックを解除してその先に進む。
一方ゼロとアイリスが向かった先は先程よりさらに広大な空間になっており部屋に入ってすぐの位置にライドチェイサー、シリウスが置いてあった。
それと同時にデスログマーも発見。
ゼロとアイリスはそれに乗り込み追跡を開始する。
部屋の中央は巨大な円柱が何本も聳え立っておりデスログマーはそれらを囲む環状のコースを周回している。
ダイナスティを彷彿とさせる展開だが円柱はビルではなく第1次イレギュラー大戦の際に現れたリフトキャノンの巨大版である。
ゼロとアイリスはこれらに対処しつつも徐々にデスログマーとの距離を詰めていく。
するとデスログマーはシリウスに乗った轟雷軍団兵士を放ってきた。
ズドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!
ゼロとアイリス、そして轟雷軍団兵士達は高速で飛行しつつも激しい光弾の連射の応酬を展開する。
シリウスの飛行速度は基本的にデスログマーに劣るがブーストによる急加速をかけると瞬間的にデスログマーを超える。
しかしこれにはかなりのエネルギーを要するので連続使用は出来ない。
ゼロとアイリスは轟雷軍団兵士やリフトキャノンを撃破しつつ、彼等が落とした武器エネルギーを取得しつつ確実にデスログマーとの距離を詰めていった。
轟雷軍団兵士並びにリフトキャノンの全滅とほぼ同じタイミングでゼロとアイリスはデスログマーに追いつき、その甲板に降りる。
するとデスログマーの砲台からの砲撃が始まる。
この砲台は従来のものではなくカラスティングの空中戦艦のものと同じビッグレイだったが2人はあっさりそれを撃破。
その時だった。
モクモクモクモクモク…
2人の前方に黒い雲が現れた。
そして次の瞬間…
ビュオッ!!!!!
黒い雲が内部に生じた竜巻で吹き飛ばされ、中から鳥のようなアーマーを纏った4コマンダーの1人で轟雷軍団団長、ブリッツが姿を現した。
「私の軍団の猛攻を掻い潜り、ここまでやって来るとは流石だね…
ゼロと…隣にいるレディはアイリスかい?資料と随分雰囲気が違うようだが…」
ブリッツが尋ねアイリスは応じる。
「如何にも、我が名はアイリス。今は兄カーネルと1つになってこの姿になっている」
これにブリッツは返して言う。
「おや、カーネルが強く出てしまっているようだね…それとも本当はカーネルなのかい?
ともあれカーネルはウイルスに因らず自らの意思でイレギュラー化したイレギュラーの代表、
そしてゼロ、君はあのシグマをイレギュラー化させた元凶の赤いイレギュラーだろう?
どちらにしろ世界の為に排除しなくてはならない存在じゃないか」
「今更そんな話で俺が退くか。それに『赤いイレギュラー』はもう俺の中にはいない。正真正銘の別人だ」
ゼロは冷静に応える。
それにアイリスが続く。
「貴様等のやり方は知っているぞ。人間によるレプリロイドの完全支配…それだけでも胸糞悪いが
貴様等はその更に下を行く…私利私欲によるレプリロイドのみならず他の人間に対する蹂躙だろう」
「フッ、総帥殿や幹部を始めとするメタシャングリラの人間は世界を正しく導ける素晴らしき方々さ。
あの方々には相応の権利があって当然…そしてあの方々に逆らい悲惨な未来を招こうとする者など排除されて然るべき…
私はあの方々に仕えその剣となれることを心から光栄に思っているよ」
ブリッツのこの言葉に当然の如くアイリスとゼロは猛反発。
「強者が弱者を踏みにじるだけの世の中など例え争いが無くなろうが平和とは言わん!人はそれを…地獄と呼ぶのだ!」
「それに心からだと?その心はサイバーエルフの洗脳による偽物だろうが!」
「今の私の心が偽物か本物かなんてナーンセンス!美しき造花とその辺の雑草でどちらの方が価値ある物か考えるまでもないだろう?」
2人の言葉をブリッツは軽くあしらう。
「その造花は回収して廃棄すべきとんだ不良品だろうが!」
「プロジェクトエルピスなどでは…ましてやそれを実行するのが貴様等の組織では平和は勝ち取れはしない!
平和の為に、貴様等を討つ!」
より怒りを込めるゼロとアイリス。
それをブリッツは不敵に構える。
「いいだろう、この私自らの手にかけられる事、そして未来のデータより生まれしこの聖剣
『ハーピーテンペスト』のビューティフルでエレガントな技で裁かれる事を光栄に思うがいい!!」
そしてブリッツは鍔の部分が鳥の翼に見えるセイバー系武器「ハーピーテンペスト」を手に臨戦態勢に入る。
大災害の前触れのように空気が震え、身構えるゼロとアイリス。
最初にブリッツはゼロに急接近した。
「速い…!」
そのあまりの速度に目を見開くゼロにブリッツは剣を持つ腕のみを動かすフェンシングのような連続突きを繰り出す。
「ハーピーペック!!」
「フェンシングか、それなら俺にも出来るぜ…葉断突!」
ドドドドドドドドド!!!!!!!
激しく突き合う両者。
「(こいつ…速さと技だけじゃなく…何て力だ…!!)」
ブリッツの突きの威力と勢いに歯噛みするゼロ。
この時点でゼロの技の威力はオメガセイバーの性能やガーディアンカード「シンドローム」によって上乗せされている。
「(う~ん、木属性か…このまま闘り合うのは拙いねぇ…)」
このような事を考えながらもブリッツは余裕の態度を崩さない。
「私もいるのをお忘れか?迅雷豪閃!」
アイリスが横から迅雷豪閃を放つが…
「サンダーワイパー!」
ブリッツはアイリスに足を向けると足裏から先端が球状になっている電流を放ちこれを食い止めた。
電流はさながらブリッツの足の延長のようでありアイリスの技と押し合う。
この状態が暫し続いた後…
バサッ!
ブリッツは技を中断し真上に飛翔した。
「エアアサルト!」
キー――――――――――――ン!!!!!!
ブリッツは全身に帯電した状態で超高速の体当たりを繰り出し始めた。
メーア同様単なる一直線の動きではなくこちらの動きに対応してくるので始末が悪く、
躱したと思ったらその直後別方向から飛んでくるのだ。
それに加えてブリッツが飛んだ後は黒い飛行機雲が発生し視界が悪くなる。
そうした効果を伴った体当たりをブリッツは上から、横から、下から、斜めから繰り出してくる。
ブリッツは反射神経も良く、攻撃のタイミングは極めてシビアである。
ゼロは獄門剣で、アイリスは不滅之構でこれを迎え撃とうとするが反撃に成功する場合もあれば失敗する場合もある。
シリウスもブリッツがこの技を発動して早々に破壊されてしまった。
そんなある時、ブリッツがゼロの真正面から突っ込んで来ようとした。
「来い…!」
それを迎え撃とうとするゼロ。
その時だった。
「ドーン!!!!」「な…!」
ドガッ!!!!!
追いついたアンジュピトールが横からマチネトロワを繰り出しブリッツと激突したのだ。
ブリッツは吹っ飛びこそしなかったものの攻撃は中断され、アンジュピトールは激突の衝撃で多少後方に吹っ飛んだ。
「イテテテ…やっぱさっきの奴みたいに行かないかぁ~」
アンジュピトールは若干痛そうにぶつかった箇所をさする。
「君は何者だい、少年?ここは子供の来る所じゃない…と言いたいが只者ではないようだが…」
ブリッツは怪訝な顔で彼に問う。
「ボクはアンジュピトール。アンジュでいいよ。
偉い人に言われてさー、ある任務とそのついでに君達をぶっ潰しに来たんだよ♪
まぁその任務は終わっちゃったから後は君達を潰すだけだよ♪」
そしてアンジュピトールはゼロとアイリスに向き直り笑顔で言う。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんはゼロと、アイリス…なのかなぁ…?
お兄ちゃん達とも遊びたいけどそれをやったら怒られちゃうからまた今度でいいよ」
「(Dr.バイルの言っていた『その道のプロ』ってこんなガキだったのか…
いや、見た目に反して強いレプリロイドは俺は何度も見て来たし、奴もそうなのか…)ああ、助かる」
「(事実あの子から感じられる圧は並大抵のものではない…本当に只者ではないようだな…!)協力なら感謝するぞ」
事前に存在は知っていた事とブリッツを自分達の手に余る強敵と見なしたによりでゼロとアイリスはアンジュピトールの増援を快諾した。
事実アンジュピトールは能力と技術の両面において優れており彼の加勢の結果こちらの被弾率は下がり相手の被弾率は上がった。
ブリッツは量産型ではない高性能戦闘用レプリロイド数千体、数万体の軍勢でも1人で瞬時に殲滅できる実力の持ち主だが
ゼロとアイリスのたった2人を瞬殺する事は適わずそれどころかこちらもダメージを受けている。
更にこれにアンジュピトールが加わった事でより一層こちらの不利な戦況に追いやられたのだ。
この事実を踏まえ、ブリッツもまた彼等を強敵と見なした。
「フッ、いいだろう…」
ブリッツは高く飛翔し3人から距離を取って空中に佇む。次の瞬間…
「セパレーション…」
バババババッ!!!
ブリッツの翼を構成する6枚の翼のパーツが切り離された。
「私の翼は切り離し磁力でコントロールする事で剣となるのさ。ハーピーテンペストと合わせた我が『七刀流』、とくと味わうがいい!」
そう言い放つやブリッツは己自身の剣技と宙を舞う6枚の翼パーツが織りなす変幻自在の技でゼロ達を翻弄し始める。
「ハーピーコーラス!!」
ブンブンブンブンブンッ!
ブリッツと翼パーツが一斉に斬撃弾を放つ。
ゼロとアイリスも斬撃を飛ばしこれを迎え撃ち斬撃弾同士の空中の鍔迫り合いが発生するが威力と手数でやがて押し負ける。
「タイフーンダンサーズ!!」
ビュオオオオオ…
次に繰り出されるのは翼パーツが回転し竜巻を発生し、さらに帯電しながら動き回る技である。
これは体重の軽いアンジュピトールが最も影響を受けた。
「ハーピーフォーメーション!!」
キーン!
ブリッツと翼パーツが編隊を組んで飛び回る。
これはカーネルの戦術を受け継いだアイリスの的確な指示でダメージを最小限に留めいくらか反撃も出来たが苦境には変わりない。
「ハァ…ハァ…あれを何とかする必要があるな…」
「もっと…上手く…引き付け…本体を狙わねば…」
高速かつ変則的な動きをするブリッツの刃に歯噛みし、思考を張り巡らせるゼロとアイリス。
そんな彼等に考える暇をブリッツが与えてくれるはずもなく尚も容赦ない猛攻は続く。
「ライトニングセプテット!!」
次にブリッツは6枚の翼パーツを帯電させた状態で相手1人につき2枚づつ配置し、
それらに相手を斬り付けさせつつ自らは指揮棒を振るようにハーピーテンペストを振りそこから斬撃弾を飛ばし始めた。
この技も躱しづらさ、威力、手数のいずれにおいても脅威的である。
しかしある時…
「こんな物…こうしてやるーっ!」
アンジュピトールが刃が自らに当たる直前に空中に扉を出現させ、その刃が扉の中に消えると扉は閉じた。
「ああっ、セプテット(七重奏)がこれではセクステット(六重奏)…!」
これを目にしたブリッツは驚愕を露わにする。
そうしている間にアンジュピトールは2枚目の翼パーツを扉の中に消した。
「クインテット(五重奏)…!」
ブリッツは更に焦りこれに勢い付いたアンジュピトールは他の翼パーツも次々と扉の中に消していく。
「カルテット(四重奏)…トリオ(三重奏)…デュエット(二重奏)…!」
次第にブリッツの口調に焦りの色が出てくる。
やがてアンジュピトールは全ての翼パーツを扉の中に消した。
「…ソロ(独奏)…」
愕然とした様子で声を漏らすブリッツ。
この状態のブリッツは七刀流が使えないどころか翼パーツを失った影響で飛行の際にも方向転換がスムーズにいかず最初の状態より不利である。
防戦一方とまではいかないが被弾率は更に上がりジリ貧な状況に立たせられる。
「いける…いけるぞ!」
「終わりだ…!」
「結構楽しかったよ、くどい顔のお兄ちゃん♪」
やがてゼロ達はブリッツを追い詰め勝利を確信し始める。
対するブリッツは無様に絶叫する。
「馬鹿な…馬鹿な…この私が負けるなど…嘘だ…嘘だぁーっ!!!」
いよいよ勝負が決すると思われた時だった。
「…フッ、なんてな…」
ブリッツは突如落ち着きを取り戻し不敵に笑う。それと同時に…
キーン…ズバババババババ!!!!!!
「な…!」
「むう…!」
「うわあああ~!!!」
遥か彼方よりブリッツの翼パーツが飛来し、それぞれがゼロ達を斬り付けたのだ。
3人とも咄嗟の反応で急所は外したが十分な深手を負った。
そんな彼等を見据えブリッツは嘲笑を含めて言う。
「アンジュ少年よ、センサーが反応するから君が先程見せた技は対象を異次元や亜空間などではなく
別の場所に飛ばすという事には気付いていたよ。かなり遠くまで飛ばしたから実際危なかったけどね。
尤もこの基地のバリア障壁があれば私の翼はここに入れなかったけど、誰かさんがバリアを破ってしまったからこうして戻って来れたってわけさ」
ちなみにブリッツの翼パーツに対応するセンサーの有効範囲は非常に広い。
「さぁて…随分やってくれたねぇ…ここから反撃開始だよ!」
そして始まるブリッツの逆襲。
「ええい、また…」
アンジュピトールが扉を出現させようとすると…
「させない!」ドッ!「う…!」
ブリッツが瞬時に距離を詰めアンジュピトールの腹部に強烈な肘鉄を喰らわせた。
ブリッツの肘の突起状のパーツは鋭利でありそれがアンジュピトールに更なるダメージを与え、
集中力が切れたアンジュピトールは技を中断されてしまった。
以降ブリッツは翼パーツを時に結合、時に分離させこれまで以上に激しく、かつ慎重にゼロ達を攻撃する。
「こいつ…慢心を捨てたのか完全に本気モードに入ってやがる…!本気には本気で応えるぞ!」
そう言ってゼロはアブソリュートゼロを発動。
「なら私もこの力を解放しよう。理想の先のこの力を…はあああああああああ!!!!!!!!!!」
アイリスは自身のエネルギーを急激に高めると背中から元祖アイリス戦闘形態の翼が生え、
片腕もそれのバスターに換装される。
「ボクはこれを使うよ~!」
アンジュピトールはエックスのガイアアーマーを模したバスター系武器「マッドボイラー」を装備する。
ゼロとアイリスが飛行能力を得た事とアンジュピトールのマッドボイラーからのガイアショットの高速連射により戦闘は一層激化。
そんな状態が暫し続いた時…
「カラミティアーツ!」「ツイストコンボ!」
ガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!
ゼロのカラミティアーツにブリッツは帯電し回転を伴うパンチや蹴りで応戦するがその際翼を破壊され次第に追い詰められていく。
「(こいつ等…性能の向上だけではない…強固な信念がこいつ等を突き動かしているのか…!
これが…何物にも染まっていない本当の心が生み出す力だというのか…!!
今度こそ本当に拙い…拙いぞ…!!)」
今度は本当のピンチに陥ったブリッツ。
直後彼はゼロの攻撃で激しく弾き飛ばされた。
そこにアイリスが止めを刺そうとする。
「止めだ…滅ざ…」
アイリスが滅斬を繰り出そうとした時だった。
パッ!
カーネルがアイリスから分離され、アイリス自身は元の姿に戻った。
「エネルギーを…消費しすぎたか…!」「そう…みたい…」
カーネルとアイリスの言う通り先程の形態で合体状態を保つエネルギーを短時間で使い切ってしまったのだ。
これを目にしたブリッツは…
「(これはチャンス!醜い手段となるが…勝つためにはこれしか無い…この戦には勝たなければならないが…このままでは負けてしまう…!
だから…汚い、卑怯とそしられようが私は敢えて使おう、醜き手段を…!)」
不本意ながらもな卑劣な手段を頭に思い浮かべアイリスに急接近する。
「やめろ!!!」「おおおおお!!!」
ゼロとカーネルがそれを阻止しようとするもブリッツの動きが速くアイリスの至近距離にまで迫る。
そしてブリッツがアイリスに手を伸ばしたその時…
「届いて…」
ブワァッ!!!
アイリスが祈りのポーズをとると彼女を中心にエネルギーの領域が展開されブリッツはそれに巻き込まれる。
「な…何だ…体が…動かない…それに…戦意が…萎えて…」
ブリッツは動きを封じられ闘志まで鈍る。
先程アイリスが放ったのは彼女が新たに獲得した技「渇望する願い」である。
ブリッツが瞳のみを動かすとその視線の先には先程ヤドカリを撃破した時以上の鬼の形相となったゼロとカーネルがいた。
「ダブルアタック!!!」
ズババババババババババババ!!!!!!!!!!
「か…は…!」
ダブルアタックを喰らったブリッツは大ダメージを受ける。
「随分やってくれたよね…これはお返しだよ!はあああああああ!!!!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!
そこにアンジュピトールがやはりモチーフ元の能力を受け継いだマッドボイラーからギガアタックを繰り出す。
ブリッツは両腕も失った上半身だけとなり地に倒れ伏す。
「…フッ…見事だ…君達程の実力者に負けたのなら…悔いは…ない…
最期に…醜い…手段を…選んだ時点で…私の…敗北は…決まったのかも…知れない…な…
負けるなら…潔く…散った方が…まだ…良かった…
ただ…私を…我々4コマンダーを…下したところで…君達は我が組織に…勝ては…しないよ…
メタシャングリラの…最高戦力は…4コマンダーでは…ないの…だからね…」
そう言い残しブリッツは事切れた。
「アイリス、無事で…本当に…良かった…」
「私、ゼロを信じていたから…」
ゼロとアイリスは互いの無事を喜び強く抱き合う。
昔なら怒り心頭に達したであろうカーネルは今はそれを暖かく見守りアンジュピトールはニヤニヤしながら眺めている。
「ところでお前達はまた合体できるのか?」
ゼロは気を取り直してカーネルとアイリスに尋ねる。
「時間と共に回復する『デザイアゲージ』が少しでも溜まれば取り敢えずは合体できるようだ。
尤も先程の力を使えばデザイアゲージの消費スピードも速くなるがな」
「足を引っ張らないように使いどころを見極めないとね」
カーネルとアイリスが応える。
「それにしても4コマンダー以上の強敵がいるのか~…ボクワクワクしてきたよ!」
一方アンジュピトールは先程撃破したブリッツを超える敵の存在に心を躍らせる。
しかし彼はまだ知らない。
ここからが本当の地獄であると…
続く
第17話後書きです。
小説の更新に全振りするとか言いつつも中々更新できず新小説掲示板の設置日に到達してしまった為今回は新小説掲示板に投稿しました。
小説の投稿が合計9レスに及んでいるのは字数制限に引っかかったからですがこの制限をある程度緩和出来る事に後から気付きましたので
これ以降の投稿は今回ほどレス数は多くならないと思います。
さて今回も前回、前々回同様メタシャングリラ式の嫌がらせが至る所で炸裂しております。
これまで同様道中に過去の中ボスどころかスぺボスまで登場しておりますがこれはメタシャングリラの層の厚さを演出する描写で次回にも当てはまります。
今回出てきた過去スぺボスは元祖アイリス戦闘形態ですが元ネタとは異なり外見だけ似せた只のライドアーマーで
操縦者は降りようと思えば降りる事が出来、女性型ですらありません。
頭の部分はメットというか蓋というかそんな感じで乗り降りする際はボディの部分から開きます。
とは言えアイリスにとって決着を付けなければならない相手には変わりないでしょう。
メタシャングリラが持ち出した貴重品が何なのかは、言うまでもありませんね。
余りにも危険な物なのですが、いざという時は使わなければならずそういう状況に置かれるのはトラストやフラジールと共通していると言えるでしょう。
ブリッツのハーピーテンペストですが剣の形を意識する事でデザインした為使用者に適したサイズにはなりましたが
ブリッツ自身が翼を生やしておりますので挿絵のサイズが大きくなりました。
ブリッツは卑怯者ではないものの「戦争は勝たなければ意味がない」という理論から追い詰められた後は卑劣な手段に走りそれが却ってゼロとカーネルの逆鱗に触れる事となりました。
アイリスの渇望する願いに体どころか心まで麻痺させるのはアンジュピトールがど○でもドアを出してくるのと同様オリジナル要素で彼女の性質を鑑みてのものです。
今回もロックマン内外から様々なネタを入れ、ゼロアイ要素も入れました。
次回は2回目となるシャッテン回で新たなシャッテンの挿絵もございます。
そして最終回まであと4話です。
執筆お疲れ様です。
今回のステージも懐かしの敵やトラップのオンパレードでしたね。
渾然たるアイリスはゼロと肩を並べるほどの腕前で戦闘のコンビネーションもバッチリでしたね。
アンジュピトールは、全身黒焦げになり髪もアフロヘア―になっても、
めげずに突き進んでいっているのがスゴイです。
ブリッツ戦では3人の連携も見事でした。
渾然たるアイリスの変身形態もあり、元祖アイリス戦闘形態を模しているのがよいですね。
渾然たるアイリスのエネルギーが切れると分離するのはエグゼ映画のフォルテクロスロックマンのシーンを
思い出しました。
アイリスやアンジュピトールのオリジナル技も活躍していて、キャラに合っており、しっくりきました。
それでは。
レス遅れました。
感想有難うございます!
今回のステージの敵やトラップは「風」、「雷」、「飛行」に基づき過去作を振り返りながら設定しました。
渾然たるアイリスは予告の通りかなりの戦力を発揮しました。
アンジュピトールですが本編でも激しい戦闘を遊びと見なしている面がありますのでこの回でもそれを現しました。
この小説オリジナルの渾然たるアイリスの戦闘形態ですがこれを考えたのはは主に空中戦を書きたかったからです。
体に危険を伴うトラストのハイパーモード、心に危険を伴うフラジールのハイパーモードと同様
この形態は維持していられる時間が限られていおり時間切れになると合体も解除されるというリスクがあります。
元ネタはドラゴンボールでしたがエグゼ映画でもありましたね。
アイリスやアンジュピトールのオリジナル技やオリジナルの効果ですがこれらはキャラの特性を考慮したもので
他のキャラでもそうした技を試行錯誤しながら考案しています。
感想がだいぶ遅れました。
16話と17話の感想をまとめて投下させて頂きます。
〈16話感想〉
【フラジールVS氷結軍団兵士】
>>氷結軍団兵士達は(中略)移動手段にも使ってくる
本文中ではヘチマールに例えられていますが、個人的にはゼロ2のチェーンロッドを想起させられます。
あれは結構楽しい武器でした。
>>ヌンチャクの要領で鎖を氷結軍団兵士2体ごと振り回し
四方八方から殺到するアンカー、これは捌きようが無い… と兵士たちは思ったでしょうが、一番早く届いたアンカーを逆に利用され、まとめて返り討ちにされる。兵士達からすれば、意外かつ何が何だか分からない凄いやられ方だと思います。
絵面的にもかなり迫力がありそうですね。
【ダイナモVSアイザード】
ジャンケンの型という、どこかユーモアのある攻撃を繰り出してくるアイザード。
考えてみるとグー・チョキ・パーというのは、形態変化として見ると形の降り幅が大きいし、打撃・切断・圧迫と、キャラ付けというか攻撃方法としてもバランスが良いですね。
【エルフ細胞接種】
未だ続く新型コロナの猛威、そして対抗すべく進められるワクチン接種。
歴史の一ページどころか一つの章になりそうなアレに絡めた、時事ネタですね。
少年達に対し決意表明をした上で、自ら率先して接種に臨み、その身体と頭脳を強化し最高にハイとなるヘルシャフト。このあたりは敵ながらちょっとカッコよく思えました。
「寿命を削って大技を使う」といった類いのアレに通ずるものがあり、
やはり彼はある種の主人公属性を備えています。(目的とやってることは一旦置いておいて)
ヘルシャフトロボ(仮)は試運転の時でさえ恐ろしい破壊力を見せつけていましたが、今のヘルシャフトが乗り込んだなら……
向上した予測力による先読みとフルに引き出される機体性能により、輪をかけて強力な鬼畜ボスと化しそうです。
>>副反応
私は今のところ3回目までワクチンを打っていますが、いやはや……
1回目は良かったものの、2・3回目は中々キツいものでした(涙)
こうなると4回目がちょっと億劫です。
【ライドチェイサーに乗った氷結軍団兵士】
ライドチェイサーというより黒塗りの車が似合いそうな、何かを彷彿とさせる口調の兵士達ですが、屠られ方はその「何か」と比べるとだいぶ楽なものだと言えますね。
【メーア】
レヴィアタンを思わせる外観ながらも、どこかスプラッシュウーマンっぽくもある外観。
レヴィアタン同様の氷属性、クールな態度、相手の攻撃のクセをすぐに掴んで対応してくるクレバーぶり、かと思えば水圧を利用してフラジールを圧殺しようとするえげつなさ、突如降ってきた戦艦にも即座に対処し有効活用してみせる等々、色々な意味で「冷」の字が似合うキャラだと思います。
〈17話感想〉
【轟雷殿】
>>「何者だ、女!」
こんなセリフを聞くとつい「貴様らに名乗る名は無い!」などと返したくなります。そういえばあっちの作品にも水谷ボイスの妹キャラがいました。
そしてアイリスが対処した訳ではありませんが、この轟雷殿にはペガシオンステージの爆弾もあるというのが……
ペガシオンの戦闘前台詞を思い出してしまいます。
【アイリスVSライドアーマー】
単眼ライドアーマーとの戦いは、いわば2種のアイリス戦闘形態による夢の対決。
単眼ライドアーマー自体は瞬殺と相成りましたが、こんな機体があるなら、アイリスの支援機として活躍する光景もありえたかも……?と思えますね。
【ヘルシャフトの貴重品】
ヘルシャフトロボ(仮)絡みの機材かな?と最初は思ったのですが、どうやらロボとは別口の何かであるようですね。
ストレートに考えれば、ロボがやられた後の次なる戦闘形態となるためのアイテム……とも取れますが、ヘルシャフトの発言からして、エルフ細胞すら上回る危険な代物でもありそうな……
一体、どんな事態を引き起こしてくれるのでしょうか(震え声)
「押さない、駆けない、喋らない」は読んでいてちょっと和みました。
【上下の階の区別の無い巨大な部屋】
メカニロイド軍団をくぐり抜けて再合流するゼロとアイリスですが、この時の様子がデートの待ち合わせのようで微笑ましいです。
イチャつきながらもヤドカリの奇襲を許さないあたりは流石といったところでしょうか。
【ブリッツ】
自分の心が塗り替えられたものだと自覚しつつも、それを「美しき造花」と称して堂々と掲げており、ある意味で気持ちの良い人柄と言えますね。
ソニックブレードを彷彿とさせる6枚の翼パーツは、一目見た瞬間に「あっこれ攻撃に使ってくる奴だ」と察することが出来、そして四方八方から襲い来ることを想像させてくれます。
ゲームで彼と対峙したら、きっと身構えずにはいられないでしょう。
【VSブリッツ】
あらゆる方向から襲い来るエフェクトつきの突進攻撃は、イーグリードやペガシオンの同様の技を彷彿とさせます。
あれらには強烈なノックバックに苦しめられたものです。
そして警戒していた通りと言うべきか期待通りというべきか、翼パーツとハーピーテンペストにより繰り出される七刀流。
単に斬りかかってくるだけでなく斬撃飛ばしや竜巻攻撃まで繰り出してくる凶悪さで、もしゲームであればシューティングゲームの弾幕避けのごとき、せわしなくかつ注意深い操作を要求されそうです。
アンジュピトールが翼パーツを封じてくれて一安心……と思いきやすぐさま元の木阿弥。これは中々、心にきますね。
ギリギリのHPで、もう一撃入れれば勝利!と思えたところでこんな攻撃を食らったら呆然としそうです。
アイリスの合体解除に乗じて彼女を葬ろうとするも、それが叶わず逆に地雷を踏む格好となり敗北に至るブリッツ。
不本意な手を打った上で負けてしまうというところに悲哀を感じますが、コレで勝ったら勝ったで「醜い手段」をとった事が心のしこりになっていた可能性もあり……
負けてまだ良かったのかもしれないとも思わされます。
こちらでは初めまして。そして16話の感想まで有難うございます!
>>16話感想
>フラジールVS氷結軍団兵士
チェーンロッドは完全に地形の一部だと思っていたブロックを引っ張れたのが印象的でした。
先端にアンカーの付いたワイヤーを放つ→アンカーが壁に刺さる→その状態でワイヤーを引っ込めて移動、といったアクションをするキャラはロックマン内外でよく見かけますね。
フラジールに返り討ちにされた氷結軍団兵士達ですが振り回された方は視界が二転三転し、それ以外は高速で振り回されるその兵士に激突して散っていく…と確かに意外かつ訳の分からない最期ですね。
振り回す際の絵面のインパクトは後半のホタリーカー&クラゲールの方が上回るかもしれません。
>ダイナモVSアイザード
アイザードがジャンケンの形になるのは出月先生版のオリジナルの敵ですが一部のバトル漫画でもジャンケンがバトルに応用されている展開がありそれらも元ネタに含まれます。
>エルフ細胞接種
ヘルシャフトですが夢を追って努力する、人を引っ張る力がある、ここぞという時に覚悟を決める…という点においては主人公属性があるとも言えますね。
古今東西の主人公キャラの中には反社会的な立場のキャラも傲慢で粗暴なキャラも数多くいますし。
その反面彼は差別意識や選民意識が強く、主人公キャラがやっちゃいけないような数々の非道を働いてはいますが…
ヘルシャフトロボ(仮)はあまりに強い設定の為どう攻略するか今も試行錯誤を重ねています。
ワクチンの副反応ですが旧掲示板でも書きましたが僕の場合は1回目と3回目は大したことなかったのですが
2回目だけは凄まじくもう二度と経験したくありません。
>ライドチェイサーに乗った氷結軍団兵士
確かに「元ネタ」と比べたらまだマシな最期と言えるでしょう。
アレのネタはこれまでの氷ボス回に入れたという事もあり空気を読んで(?)ここでも入れました。
今作では氷ボス回に集中して入れる形になりましたが前作ではてんこ盛りです。
>メーア
彼の外観は他にもネプチューンやウオフライも多少参考にしております。
氷結軍団を束ねる者という事で彼は物理的・精神的の両方の意味で冷たいキャラです。
>>17話感想
>轟雷殿
「何者だ、女!」という台詞は実はパロディではなく偶然の産物ですが渾然たるアイリスなら確かにその言葉を返してきそうですね。
もしアイリスがペガシオンステージの爆弾を目にしていたとしたらそれに対しても何かと思うところがあるでしょう。
>アイリスVSライドアーマー
この新旧アイリス戦闘形態の対決はメタシャングリラの層の厚さや彼等なりの嫌がらせ、という以外に過去を超えていく描写として入れました。
VAVAやガンガルンが専用のライドアーマーを持っているようにアイリスがこのライドアーマーを所持しているというのも有りですね。
>ヘルシャフトの貴重品
この読みは非常に鋭いですね。
これは何度も本文に名前が出ているこのストーリーのキーアイテムでヘルシャフト以外のメタシャングリラ構成員がも持ち出しているというのがミソです。
予め言っておきますがこれを使用したメタシャングリラ構成員の大半はガチのマジで酷い目に遭います…
メタシャングリラ構成員達がヘルシャフトの指示で避難していく下りはヘルシャフトのリーダーシップを強調する為小中学校の避難訓練みたいにしてみました。
>上下の階の区別の無い巨大な部屋
一時は分かれて行動し、再び合流し安堵と共に決意を改めつつイチャつくゼロとアイリス。
戦いの間の束の間の一時でありそれを邪魔された彼等の怒りは凄まじいの一言に尽きます。
またここでヤドカリにやられるようではここまで生き残って来れなかったでしょう。
>ブリッツ
「美しき造花」は紛い物なれど価値ある物という例えです。
しかし商品的価値と個人個人にとっての価値が異なるようにゼロ達や世間にとってサイバーエルフによる洗脳は無価値、というより有害な訳です。
そして翼の形状から「七刀流」を使う事は予測できたようですね。
>VSブリッツ
あらゆる方向からの体当たりは完全にイーグリードやペガシオンが元ネタで足場がデスログマーである事もそれを現しています。
ブリッツの場合は通過した後に視界を遮る飛行機雲が発生するのが厄介です。
七刀流ですが数は勿論攻撃のバリエーションも豊富でこれはブリッツが広範囲に注意を向ける事が出来る事で成せる業です。
回避するには彼に匹敵する注意力が要求されますね。
アンジュピトールが翼を封じて暫く経った後翼が戻ってくる展開のように追い詰めた敵の思わぬ逆襲は面食らうものがありますね。
同時に敵をギリギリまで追い詰めるというのはその敵が反撃したり奥の手を出してくるフラグのような気もします。
ブリッツの最期ですが彼は高慢でナルシストな面がありますのでこんな勝ち方で勝ったとしてもその勝利を組織の為ならともかく個人としては恥じると思いますね。
彼が作中でも言ったように彼にとっては「醜い手段」を使うより負けた方がまだマシだったのです。