この状態のブリッツは七刀流が使えないどころか翼パーツを失った影響で飛行の際にも方向転換がスムーズにいかず最初の状態より不利である。
防戦一方とまではいかないが被弾率は更に上がりジリ貧な状況に立たせられる。
「いける…いけるぞ!」
「終わりだ…!」
「結構楽しかったよ、くどい顔のお兄ちゃん♪」
やがてゼロ達はブリッツを追い詰め勝利を確信し始める。
対するブリッツは無様に絶叫する。
「馬鹿な…馬鹿な…この私が負けるなど…嘘だ…嘘だぁーっ!!!」
いよいよ勝負が決すると思われた時だった。
「…フッ、なんてな…」
ブリッツは突如落ち着きを取り戻し不敵に笑う。それと同時に…
キーン…ズバババババババ!!!!!!
「な…!」
「むう…!」
「うわあああ~!!!」
遥か彼方よりブリッツの翼パーツが飛来し、それぞれがゼロ達を斬り付けたのだ。
3人とも咄嗟の反応で急所は外したが十分な深手を負った。
そんな彼等を見据えブリッツは嘲笑を含めて言う。
「アンジュ少年よ、センサーが反応するから君が先程見せた技は対象を異次元や亜空間などではなく
別の場所に飛ばすという事には気付いていたよ。かなり遠くまで飛ばしたから実際危なかったけどね。
尤もこの基地のバリア障壁があれば私の翼はここに入れなかったけど、誰かさんがバリアを破ってしまったからこうして戻って来れたってわけさ」
ちなみにブリッツの翼パーツに対応するセンサーの有効範囲は非常に広い。
「さぁて…随分やってくれたねぇ…ここから反撃開始だよ!」
そして始まるブリッツの逆襲。
「ええい、また…」
アンジュピトールが扉を出現させようとすると…
「させない!」ドッ!「う…!」
ブリッツが瞬時に距離を詰めアンジュピトールの腹部に強烈な肘鉄を喰らわせた。
ブリッツの肘の突起状のパーツは鋭利でありそれがアンジュピトールに更なるダメージを与え、
集中力が切れたアンジュピトールは技を中断されてしまった。
以降ブリッツは翼パーツを時に結合、時に分離させこれまで以上に激しく、かつ慎重にゼロ達を攻撃する。
「こいつ…慢心を捨てたのか完全に本気モードに入ってやがる…!本気には本気で応えるぞ!」
そう言ってゼロはアブソリュートゼロを発動。
「なら私もこの力を解放しよう。理想の先のこの力を…はあああああああああ!!!!!!!!!!」
アイリスは自身のエネルギーを急激に高めると背中から元祖アイリス戦闘形態の翼が生え、
片腕もそれのバスターに換装される。
「ボクはこれを使うよ~!」
アンジュピトールはエックスのガイアアーマーを模したバスター系武器「マッドボイラー」を装備する。
ゼロとアイリスが飛行能力を得た事とアンジュピトールのマッドボイラーからのガイアショットの高速連射により戦闘は一層激化。
そんな状態が暫し続いた時…
「カラミティアーツ!」「ツイストコンボ!」
ガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!
ゼロのカラミティアーツにブリッツは帯電し回転を伴うパンチや蹴りで応戦するがその際翼を破壊され次第に追い詰められていく。
「(こいつ等…性能の向上だけではない…強固な信念がこいつ等を突き動かしているのか…!
これが…何物にも染まっていない本当の心が生み出す力だというのか…!!
今度こそ本当に拙い…拙いぞ…!!)」
今度は本当のピンチに陥ったブリッツ。
直後彼はゼロの攻撃で激しく弾き飛ばされた。
そこにアイリスが止めを刺そうとする。
「止めだ…滅ざ…」
アイリスが滅斬を繰り出そうとした時だった。
パッ!
カーネルがアイリスから分離され、アイリス自身は元の姿に戻った。
「エネルギーを…消費しすぎたか…!」「そう…みたい…」
カーネルとアイリスの言う通り先程の形態で合体状態を保つエネルギーを短時間で使い切ってしまったのだ。
これを目にしたブリッツは…
「(これはチャンス!醜い手段となるが…勝つためにはこれしか無い…この戦には勝たなければならないが…このままでは負けてしまう…!
だから…汚い、卑怯とそしられようが私は敢えて使おう、醜き手段を…!)」
不本意ながらもな卑劣な手段を頭に思い浮かべアイリスに急接近する。
「やめろ!!!」「おおおおお!!!」
ゼロとカーネルがそれを阻止しようとするもブリッツの動きが速くアイリスの至近距離にまで迫る。
そしてブリッツがアイリスに手を伸ばしたその時…
「届いて…」
ブワァッ!!!
アイリスが祈りのポーズをとると彼女を中心にエネルギーの領域が展開されブリッツはそれに巻き込まれる。
「な…何だ…体が…動かない…それに…戦意が…萎えて…」
ブリッツは動きを封じられ闘志まで鈍る。
先程アイリスが放ったのは彼女が新たに獲得した技「渇望する願い」である。
ブリッツが瞳のみを動かすとその視線の先には先程ヤドカリを撃破した時以上の鬼の形相となったゼロとカーネルがいた。
「ダブルアタック!!!」
ズババババババババババババ!!!!!!!!!!
「か…は…!」
ダブルアタックを喰らったブリッツは大ダメージを受ける。
「随分やってくれたよね…これはお返しだよ!はあああああああ!!!!!」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!
そこにアンジュピトールがやはりモチーフ元の能力を受け継いだマッドボイラーからギガアタックを繰り出す。
ブリッツは両腕も失った上半身だけとなり地に倒れ伏す。
「…フッ…見事だ…君達程の実力者に負けたのなら…悔いは…ない…
最期に…醜い…手段を…選んだ時点で…私の…敗北は…決まったのかも…知れない…な…
負けるなら…潔く…散った方が…まだ…良かった…
ただ…私を…我々4コマンダーを…下したところで…君達は我が組織に…勝ては…しないよ…
メタシャングリラの…最高戦力は…4コマンダーでは…ないの…だからね…」
そう言い残しブリッツは事切れた。
「アイリス、無事で…本当に…良かった…」
「私、ゼロを信じていたから…」
ゼロとアイリスは互いの無事を喜び強く抱き合う。
昔なら怒り心頭に達したであろうカーネルは今はそれを暖かく見守りアンジュピトールはニヤニヤしながら眺めている。
「ところでお前達はまた合体できるのか?」
ゼロは気を取り直してカーネルとアイリスに尋ねる。
「時間と共に回復する『デザイアゲージ』が少しでも溜まれば取り敢えずは合体できるようだ。
尤も先程の力を使えばデザイアゲージの消費スピードも速くなるがな」
「足を引っ張らないように使いどころを見極めないとね」
カーネルとアイリスが応える。
「それにしても4コマンダー以上の強敵がいるのか~…ボクワクワクしてきたよ!」
一方アンジュピトールは先程撃破したブリッツを超える敵の存在に心を躍らせる。
しかし彼はまだ知らない。
ここからが本当の地獄であると…
続く