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ロックマンツルギ異聞第3話「色欲」

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閲覧注意:この回は「ツルギ異聞」全編を通して2番目に汚い回でこれまでの僕の小説の中でも上位の汚さです。
耐性に自身のある方のみお進みください。

「ミーンミーンミーン!」
蝉もけたたましく鳴く7月の後半は海開きのシーズンであり、多くの人々が海水浴で賑わう。
そんな中、とある海水浴場に様々な勢力がこれから巻き起こる事件に向けて動き出していた。

7月22日、シェリーの基地の会議室内にて…
「そう言えば今って海水浴の季節ね。私は何年も行ってないわね…」
テレビからの音声に対しシェリーは呟く。

「まさか…100年後は海の汚染がそこまで深刻になってるんですか?」
思わず心配そうに尋ねる劾。
「いや、それは関係ないわ。私がたまたま行かなかっただけよ。子供の頃何回か行った時も
泳がないで日光浴をしただけね」
シェリーは苦笑しつつ否定する。

「じゃあ丁度いい機会だから一緒にお台場に行かない?お台場海浜公園は遊泳禁止だけど日光浴だけでも十分海の雰囲気を味わえるし」
この場にいた玲が提案する。

「…嬉しい誘いだけど、行けないわ。『新型ロックスーツ』と『特殊武器』の開発とジュラファイグの解析もあるし、
…それに水着姿を見られるのが恥ずかしいからね」
残念そうに断るシェリー。
「「(いやいやそんな立派な物持ってて何が恥ずかしい!?)」」
垓と玲は年齢を感じさせないナイスバディの持ち主のシェリーに対し心の中で突っ込むが
本人の感性に配慮し言及はしなかった。
「誘ってくれたのは感謝してるわ。お友達と行ってきたらどうかしら」
「お友達…ルミとソノコが暇そうだったからその二人を誘ってみるね」
玲は別のクラスの友人の「傘原留美(かさはらるみ)」と「河田園子(かわたそのこ)」を誘う事にした。

「海水浴か…神崎も一緒にどう?」
玲の水着姿を見たいという本音を隠し垓は剣と一緒なら誘って貰えるだろうという魂胆で剣に声を掛ける。
「お台場は遊泳禁止だろ。俺は泳げる所に行きたいな」
剣が応える中、玲は目が笑っていない表情で劾に詰め寄る。

「ところで桜井君…アンタ、私の水着に興味があるの?」
「(どきっ)」
図星を突かれた劾は一瞬固まる。
「い、いや!そんな別に沖藍になんて全然…ははは…
(ああビビりの哀しさよ、好きを好きと言えないこのもどかしさ)」
ぎこちない口調で苦笑いを浮かべ否定する劾だったが…

「それはそれで頭にくるんだけど!…じゃなくてアンタはまたこれまでみたいに
課題をギリギリまで進めなくて後で泣きつく気!?
そんなんじゃまた怒られる事になっちゃうし自分の為にならないよ!」
「…仰る通りです…」
痛い所を突かれ玲に説教される劾の体はこの時実際のサイズよりも縮んでみえたという…
「よし、それなら俺が手伝ってやろう」
「有難う、神崎…」
剣は劾の課題の手伝いを買って出た。
そして玲は留美と園子に翌23日にお台場海浜公園に誘った後転送で会議室を後にした。

その後残った劾、剣、シェリーの3人は基地内のスペースの1つ、「研究室」に向かい、
台の上に寝かせられたジュラファイグのボディを見遣る。
ジュラファイグの状態は各部の装甲が取り外され頭部や胸部がいくつものコードで繋がれているといったものだった。
シェリーは台の近くの小さな机に向かいその上の画面を凝視する。
画面にはジュラファイグの3DCGモデル並びに常人には到底理解できない文字の羅列が表示されている。
「やっぱり…デルタが…」
シェリーはどこか悲し気に呟く。
「博士?」
そんな彼女の表情を察し劾が問いかける。
「ジュラファイグのボディはデルタと基礎構造が共通しているの。
これはデルタが自分をベースにデルタナンバーズを開発したという事で間違いないわ。
本当にデルタが…彼が造ったレプリロイドが…人間を…襲うなんて…」
「博士、何としてでもデルタを説得しましょう!」
悲し気なシェリーに劾は激励する。

「それにしてもデルタやこのジュラファイグの行動は良く分からないな。
デルタはわざわざタイムマシンで向かった日時を教えたし、
ジュラファイグは自らアンテムポールを設置したり氷藤一人を陥れる為に
嘘ニュースの範囲拡大をほっぽりだして元来た道に戻ったり…」
そんな中剣が口を開いた。
「そうだよね、アンテムポールは建物の上に直接転送させるとか、
専用の非戦闘用ロボットにやらせるとかあっただろうに…」
「ソクホーテムに関しても分り難い場所に設置した方が確実に『任務』を遂行出来たかもしれないわね」
劾とシェリーは頷く。
「ジュラファイグに聞き出せたらなぁ…自分で壊して言うのも何だけど…」
「………」
剣のこの言葉にシェリーは何かを思案し始める。

「ところで『新型ロックスーツ』の開発はどうなってますか?」
劾が問うとシェリーはパソコンを操作し画面を変える。
「用途用途に合わせて色んなスーツを開発中よ。今ロックスーツはこの『攻撃型』だけだけど…」
画面に剣が使用したロックスーツの3DCGモデルが表示される。
「装甲重視でチャージ可能の遠距離攻撃を放つ『防御型』」
シェリーの言葉に合わせ蒼がメインカラーで重厚感のあるスーツの3DCGモデルが表示される。
「スピード重視で銃に変形するナイフを扱う『高機動型』」
続いて赤がメインカラーで軽量化のあるスーツが表示される。
「最後にスパイ活動用で姿を消したり変身したり出来てライフルを扱う『工作型』よ」
最後には黒を基調とした禍々しい形状のスーツが表示された。
「どれも強そうだが、使うタイミングを見極めるのが重要だな…よし、そろそろ課題に手を付けるか」
各スーツの頼もしさを感じた後、剣は劾に課題の事を持ちかける。

劾と剣も基地を後にした後、劾は剣が課題を手伝いに来る事をメッセージアプリで母親に連絡し、
剣を伴い帰宅した。

「今年は神崎くんが課題を手伝ってくれるのかい、すまないねぇ」
「いや、構いませんよ」
桜井家に着いた後、彼等を出迎えたのは劾の母、桜井孝美(たかみ)だった。
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彼女は背が劾ほどもあるだけでなく、稲船高校の20年前の番長故の風格もあり剣は若干気圧される。「いいか、ここはこの公式を当てはめて…」
「そうか、そうやって解けばいいんだ!」
自室で劾は剣と共に課題を進めていく。
その際息抜きが長引いたり窓の外で蟻を捕食するカマキリに気を取られたり睡魔に襲われたりするも
二人は確実に課題を進行させていくのであった…

同じく7月22日。
東京都のどこかの地下深くにあるデルタの乗ってきたタイムマシン内では…
このタイムマシンにも複数のスペースがあり、シェリーの基地の会議室のようなスペースがあった。
部屋の中央にはテーブルがあり、それを様々な生物を模したレプリロイド達が囲む。

「ジュラファイグガヤラレタヨウダナ」
細長い体型で背中から6本のアームを生やした虫のようなレプリロイドが呟く。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!畜生オオオオオオオオオオオオ!!!!!
絶!対!許さんぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
甲虫型レプリロイドが凄まじい怒号を響かせる。
「彼は私達の中でも最弱…とは言い切れませんので注意が必要ですわ」
大きな羽根を生やした虫型レプリロイドが続く。
「オレがジュラファイグの仇を撃ってやるッス!」
小柄な哺乳類型レプリロイドが吠える。
「何熱くなってんの~」
魚型レプリロイドがやる気無さそうに言う。
「てやんでい、任務の邪魔するどころかジュラファイグをやりやがった『ロックマン』とやらを倒すのは当然じゃねぇか!」
貝型レプリロイドが怒鳴る。
「ロォックマンだかなぁんだか知らないがァ、ワシのパワーでェ、くぅだいてやァるぞォオ!!」
この場で最も大柄な哺乳類型レプリロイドが意気込む。
「静かに、デルタから通信だぞ」
翼竜型レプリロイドがこの場の全員に部屋のスクリーンを見るように促す。

ヴゥゥゥン…

スクリーンには黄色く三角ばった図形の中に灰色で長方形の上2つの角を切り取ったような六角形がありさらにその中に「DBN―001 DELTA」と記されたマークが現れる。

「わー、何か雰囲気出てるねぇー」
魚型レプリロイドが思わず一言漏らす中、画面からデルタの声が流れ始める。
「君達も知っての通り先日任務遂行中のジュラファイグが
ロックマンなる存在によって交戦の末撃破された。
今現在ロックマンについて分かっている事はブレード型の武器を使いこなす事、
移動する際に急加速出来る事、垂直な壁を蹴って登れる事、そしてその背後にはシェリー博士がいるといった事ぐらいだ。
今から奴の映像を送るので戦う前に参考にして欲しい」
そう言ってデルタは部屋にいる「デルタナンバーズ」達にジュラファイグに氷藤の投稿に関するデータを送った時の要領で
自身が記録した映像並びにネット上のロックマンの動画を送った。
「「「「!!!!!!!!」」」」
デルタナンバーズ達はこれらを見た瞬間息を呑むがこれで怖気付く者はいなかった。

「なるほど、かなりの実力者ですな。して我々は今後どのようにすればいいのですかな?」
翼竜型レプリロイドが尋ね、それにデルタが応える。
「新宿の時も、檜町公園の時も、奴はこちらが行動を起こすと現れた。
故に君達の任務はこれまで通りの予定で執り行って貰う。
任務遂行中に奴が現れたら迎え撃てばいい。
勿論無策で臨むつもりはないさ。君達へのサポート並びに奴への対策はボクと『グレッゲージ』が担う」
「ええええええいまどろっこしいぞおおおおおおお!!!!!!!!!
オレ達全員で!束になってかかればァ!!一発だろうがああああああああああああああああああ!!!!」
甲虫型レプリロイドは激昂しながら異議を唱え、デルタナンバーズ総攻撃を提案する。

「奴にはまだ未知の部分が多い。未知とはその分脅威という事だよ。
仮に君達全員が奴にかかった結果返り討ちに遭ったら元も子もないではないか」

デルタの返答に今度は大きな羽根の虫型レプリロイドと最も大柄な哺乳類型レプリロイドが反論。

「それは相手の力を高く見積もり過ぎ、かつ我々の力を低く見積もり過ぎでありますこと?」
「そォうだぞォ、しィん重過ぎるにもォ、程があァるぞォ」

その時6本のアームを生やしたレプリロイドが無感情に告げる。

「我々デルタナンバーズノ役割ハデルタカラノ任務ヲ遂行スル事。勝手ハ許サレナイ」

彼の抑揚のない口調は独自の威圧感がありその場は暫し沈黙に包まれるが…

「まぁ『メカニロイド』ならいざ知らずオレ達が寄ってたかってロックマン一人を叩きのめすってのも野暮ってもんッスよね」
「その通りでェ、漢(おとこ)じゃあねぇ」
最も小柄な哺乳類レプリロイドと貝型レプリロイドがその沈黙を破った。
彼等が言った事は単なる強がりでも負け惜しみでもない。

「さて次の任務だが…『レディバイド』、君は人間のどんな所が許せないのかな?」
デルタが甲虫型レプリロイドことレディバイドに問い、彼は応える。

「そおおおれはああああああああああ!!!!!!!!奴等のスケベさだあああああああああ!!!!!!
男は常に女をエロい目で見てやがるしいいい!!!ひでぇ時は力尽くで女を襲いやがるううう!!!!!
女も女で淫らな格好で男を誘惑し貪りやがるううううう!!!!!
どっちも相手の見た目しか見ねぇでやる事しか頭にねぇえええええええ!!!!!!!
無駄に頭がいいからあああああ!!!奴等は!ケダモノよりもタチが悪いいいいいいい!!!!
そんなケダモノ以下のケダモノがのさばるなんざああ!!!お天道様が許さねええええええ!!!!!」

「分かったよ、ではレディバイド…明日の23日、お台場海浜公園に向かいたまえ。
そこには君の嫌いな野卑な人間が大勢いるよ」
「わぁぁぁかったぞおおおおおお!!!!!!スケベ人間もおおお!!!!ロックマンもおおおお!!!!
このサンシャイン・レディバイドが叩きのめしてやるぞおおおおおおおお!!!!!!!」
デルタはレディバイドにお台場海浜公園に出撃するよう指令を出し、レディバイドは気合十分でそれを承諾した…

時は遡り7月1日、新宿の赤灯会の事務所。
その一室で二人の男がテーブル越しに向かい合って椅子に座って対談している。
ドアの側には数名の一般構成員が立っておりその様子を見届けている。
1人は髪にかからない程度のパーマのかかった長髪で体格は常人並、服装は上下ともに骨で出来た十字架と炎をあしらった黒い服を着ている。
彼は顔色が悪く目は充血し、体は発汗し、肩で息をしているといった有様である。
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男の名は火纏狂也(ひまといきょうや)。
赤灯会幹部であり依頼者が外道から与えられた恨みを晴らす復讐業をシノギ(商売)にしている人呼んで「復讐極道」である。
そして病を患っている訳でもなく違法な薬物を服用している訳でもないのに様々な理由で常に苦しんでいる狂人中の狂人である。
例えば男所帯の赤灯会では「むさ苦しさ」に、熱血漢を前にした時は「暑苦しさ」に、赤ちゃん、子犬、子猫などといった可愛いものを前にした時は「愛くるしさ」に、シリアスな場では「重苦しさ」に苦しんでいる。
かつて逮捕され刑務所に服役していた時は施設の「狭苦しさ」と規則の「堅苦しさ」に苦しみ続けたという。

「ハァ…ハァ…苦しい…苦しい…」
「あの…大丈夫ですか?」

いつものように苦しんでいる火纏に彼と対談するもう一人の男が心配そうに声を掛けた。
彼は初老の男性で全身の至る所を怪我しており顔も体も手当の痕がある。
顔の腫れは酷くこれを見た者は引いてしまうほどであり、脚はギプスで固められ、部屋の壁には彼が使っている松葉杖が立てかけられている。
そう、彼は火纏の依頼者なのである。

「気にしねぇで下さい、この方はそう言う人なんです」「?」
部屋の一般構成員が依頼者に言うも依頼者は困惑気味である。

「遠慮…なさらず…要件を…どうぞ…!」「え、ええ…」
声を絞り出す火纏の気迫に押され、依頼者は語り出した。

「娘を弄び尊厳を穢したあの野獣を…始末して欲しいのです…」
そして語られる依頼者の悲しき過去。

依頼者には大切な大切な一人娘がいる。
妻を早くに亡くした彼は一人残された娘を男手一つで懸命に育てた。
それが伝わり娘は親思いの良い娘に育ったという。
やがて成長した娘は恋人を紹介してきた。
その人物は身長が2mほどあり顔は強面で左目には眼帯を付け体型は筋肉質、ライオンの鬣(たてがみ)を思わせる髪と顎髭を生やしているというワイルドな風貌だったという。
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一見彼の凶悪そうな風貌を警戒した依頼者だったが付き合う度に彼の見た目に反した人当たりの良さに心を許すようになっていった。
娘曰く料理や裁縫が得意という見た目にそぐわぬ女子力の高さに惹かれたという。
そして依頼者は娘を彼に託し、娘の幸せを願いながら涙ながらに送り出した。
それが悪夢の始まりとも知らずに。
家を出てから暫く経ったあと、依頼者のスマホに娘から連絡が入ったのだがそれは信じ難い内容だった。

「お父さん助けて!争太(そうた)さんは…争太さんは…イヤアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
ブツッ!!
「争太くんがどうした!!おい!!返事をしろ!!!!」
ツー…ツー…ツー…

しばらくして娘は帰ってきたがその表情は茫然自失、体には暴行の痕があった。
「そんな…」
愕然とする依頼者に娘は事の経緯をたどたどしく話はじめた。
恋人の争太の本性は見た目通りの野獣そのもので、今までのは迫真の演技だったのだ。
同棲生活が始まると思いきゃ家には彼の手下の半グレ達が待機しており
争太は手下と共に依頼者の娘をいたぶり始めた。
さらに警察に言うと撮った映像をネットに流すと脅されされるがままにされる娘。
やがてボロボロになって争太達にとって魅力がなくなったと判断されるやゴミのように捨てられたのだ。

「許さん!!許さんぞ!!」
思わず警察に駆け込んだ依頼者に警察は応対し、これで事件は解決する
…かに思われたがしばらくして捕まったのはそれっぽい変装が見られるもののどう考えても別人だった。
争太は替え玉を使っていた…
そう主張する依頼者に対し警察は「でも本人が自供してるんだし」と真剣に取り合ってくれない。
警察が信用できなくなった依頼者は大金を使い、ありとあらゆる手を尽くし争太の元に辿り着いた。

「私はお前を信用して娘を託したんだぞ!!それを…それを…ぐちゃぐちゃに踏みにじりやがってえええええ!!!」
依頼者の怒号に争太は悪びれることなく言い放つ。
「お前の娘が魅力的だから悪いんだよ!俺をエロい気分にさせた娘の魅力がなああ!!」

「己ぇぇえええ!!!」
依頼者は殺意全開で争太に挑みかかるも戦闘の素人で初老の依頼者が若く巨体で戦闘慣れもしている争太に適うはずもなく
あっさり返り討ちに遭った。

依頼者は怪我によって入院を余儀なくされ、退院する頃には争太は消息を絶ち元の木阿弥となった。
「警察も…自分も…頼れないなら…もう…あれしか…」
そして依頼者は調査の過程で耳にした火纏の噂を頼りに事務所を訪れたのだ。

全てを話し終えた依頼者は席を立ち土下座した。
「火纏さん!!!貴方は凄い人だと聞きました!!!」
次の瞬間依頼者の顔はキョウホーテム(ソクホーテムの赤い顔。因みに青はヒホーテム、黄はロウホーテム)のようになり、ありったけの恨みを吐き出す。

「娘は親思いのいい娘だった!!それがあんな野獣共に玩具にされて精神を壊され引きこもりになっている!!
なのに奴等は法の裁きも受けずのうのうと生きてやがる!!!ふざけるなああああああ!!!!!
あの人間の屑に、野獣に、然るべき報いを与えてくれえええええええ!!!!!!」

「ハァ…ハァ…旦那の心情を思うと…心苦しい…その依頼…是非とも…承りましょう…」
火纏は差し出された依頼者の両手を取り、依頼者は改めて懇願する。
「お願いします…お願いします…」

依頼者が事務所を去った後、火纏は数名の舎弟を召集する。
「今回の標的は…獅子雄(ししお)争太…下北沢で活動する自衛隊崩れの半グレで…
厳しい上官と…揉めて辞職…今では半グレチーム『雷音禁愚』(ライオンキング)のボスだ…
女性に乱暴するばかりか…悪どい商売にも…手を出しているらしい…
奴はアジトをころころ変え…手下の前にも滅多に…顔を出さない…
奴の居所を突き止めるには…雷音禁愚に潜入する必要がある…」
そう言って火纏は演技力のある若手構成員達に雷音禁愚への潜入を命じた。
獅子雄が確実に現れる日時と場所を探る為に。
数日後潜入捜査の結果、獅子雄が現れる場所を突き止めた構成員達が帰ってきて成果を報告する。

「獅子雄が現れるのは…今月23日のお台場海浜公園です!」

そして7月22日、赤灯会事務所。
火纏はお台場海浜公園に直接出向く構成員達を召集し決起集会を開く。
「いよいよ明日は…獅子雄争太を始末する日だ…海水浴場には…刺青もなく…ヤクザらしい見た目をしていないお前達に行って貰う…」
海水浴場では刺青があったり見るからに危険な外見の構成員は間違いなく目立ってしまう。
そこで目立たない構成員達を向かわせ隙を見て獅子雄を捕縛する算段である。
彼等の中には正規構成員ではない剣が遭遇したあの十字傷の少年もいた。

その彼に火纏は顔を思い切り近付けて言う。
「鷹山(たかやま)ぁ~…」
「へ、ヘイ、何でしょう!!」
火纏の吐息を間近で顔に感じ戦々恐々とした様子で十字傷の少年こと鷹山が問う。

「お前は…いつも先走りするからなぁ…実力を見誤って…獅子雄に挑みかかったり…
捜査の段階で…関係ねぇチンピラと喧嘩して捕まったりとか…するんじゃねぇぞ…
お前に何かあったらと思うと…俺は…胸が…苦しい…!」
「わ、わわ分かりやした!俺を信じて下せえ!!」
ガチガチになって必死に応える鷹山。

「火纏の兄貴は心配し過ぎかもしれねぇが、俺からも言っておく。決して無茶すんなよ、翔(しょう)」
「もちろんでさあ、兄貴!!」
他の構成員にも諭され、鷹山翔は緊張しながらも了承する。

7月22日、下北沢のどこか。
「嬉しいぜぇ、1年ぶりの海水浴場だ!!」
獅子雄は翌日のお台場海浜公園に行く事に意気揚々としている。

玲と友人達。デルタナンバーズ。赤灯会。雷音禁愚。
彼等が同じ日にお台場海浜公園に集結するのは偶然か、それとも必然か…

そして運命の7月23日…新橋駅では…
「レイ~、待ったぁ~?」
髪を襟足でお団子にまとめピンクのTシャツに黒いデニムパンツ姿の少女が玲の前に現れた。
傘原留美である。
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「そんなに待ってないよ、ルミ。後はソノコだけど…」
玲がそう言っているとしばらくしてやや色黒で髪が長く、紫色のワンピースを着た長身でグラマラスな少女が現れた。
河田園子である。
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「ごめんごめん、ちょっとトラブルに巻き込まれちゃって…」
「トラブル?」
遅れて来た理由を説明する園子に玲は怪訝な顔で尋ねる。
「それが行く途中危ない人に絡まれちゃって…」
「「!!」」
玲と留美の顔が一瞬強張る。ただ危ない目に遭ったにも関わらず園子の表情には恐怖や絶望は見られず、むしろ安堵のように見える。
「悪そうな男の人達が私の前に立ちふさがってしつこく声をかけてきたんだけどね、
助けてくれたのが中学生ぐらいの男の子だったの!
その子は絡んできた人達よりずっと小さかったけど気迫だけで追い払っちゃったのよ。
私はお礼を言いたかったけど、その子は何も言わずに行っちゃった…」
因みにその男の子とは翔の事である。
「大変だったね、でもその男の子みたいな人もいるから『これだから男は』って思っちゃ駄目だよ」
「彼氏持ちさんが言うと説得力があるね、それじゃ行こう」
留美の言葉に玲が続き、3人は出発する。
「ゆりかもめ」に乗って外の景色も楽しんだ3人はやがてお台場海浜公園に到着した。
そして3人はお台場海浜公園に隣接する施設「アクアハウス」で持参した水着に着替える。
玲はブラ部分が赤、パンツ部分が白のホルスターネックタイプのビキニで留美はピンクのフリル水着、
園子はブラウンのワンピース水着だった。
3人は浅瀬にてビーチバレーを楽しむ。
その一幕。
「それーっ!」「キャッ!」
留美の激しいアタックに玲は尻もちをつく。
「うわあ、強烈なの貰っちゃったねぇ…」
それを見た園子が口に手を当ててほほ笑む。
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「もーう、ルミったら!」「うるさーい、そんな大きい物持っててビキニ来てる奴なんかこうだー!」
軽く抗議する玲の胸を留美がペチペチと叩く。
楽しそうではあるが嫉妬交じりでもあった。
「いや、そんなこと言ったらソノコの方が…」
「ソノコはワンピース水着だけどあんたはビキニだからねー、このこのーっ!」
二人の様子はまるで口では喧嘩をしているが両者とも笑顔である。
そんな時玲達に迫る怪しい影が。

「俺達も仲間に入れてくれよぉ~!」
「!?」
男の大声が聞こえてきて玲がそれに振り返るとそこには獅子雄とその手下である雷音禁愚のメンバー達数名がニヤついた表情で佇んでいた。
「何ですか、いきなり…」
玲の言葉を余所に獅子雄は下卑た表情で続けて言う。
「まずこの後さあ、俺達が場所取っといてあげたんだけど…焼いてかない?アイスティーも奢るからさぁ…」

見た目で人を判断するのは愚の骨頂。
それでも尚様々な人間を見て来た玲は目の前の男達が禄でもない人間である事を見抜く。
「結構です!」
玲はきっぱりと断る。
「彼氏いるから無理でーす」
「タイプじゃないから無理です…」
留美と園子もそれに続く。

「いいからいいから…ホラホラホラホラホラホラ…!」
「ちょっと、やめて…!大声出すよ…!」

獅子雄達はしつこく玲達に絡みだすが、その時…

「沖藍!沖藍じゃないか!」「氷藤!?」
そこの氷藤が現れた。
「沖…藍…!?」
獅子雄を始めとする雷音禁愚のメンバーはそれにピクッと反応する。

「さっきからこいつ等が…」
言いかける玲を氷藤が制す。
「ああ、こいつ等…雷音禁愚とボスの獅子雄の事は知っているし状況も大体わかる…」
そして氷藤は獅子雄達に向き直って言い放つ。
「おいおっさん!!ここに居られる方はなあ!汰威超組のカシラの姪にしてあの沖藍竜太の娘なんだぞ!!」
これを聞いた獅子雄は玲をまじまじと見て考え込む。
「(って事はこの小娘はあのクソ上官の姪でもあるって事かぁ!?)」
実は獅子雄の自衛隊時代の上官は玲の母、沖藍優子(ゆうこ)の兄である。
彼は獅子雄にとって嫌悪と同時に恐怖の対象でもあったのだ。
そして…
「まぁ本人達が嫌がってるんだからね、しょうがないね…(沖藍家とあのクソ上官の血縁に関わるのはリスクでしかない…ヤバいヤバい…)」
獅子雄は態度をコロっと変え手下を連れてそそくさと退散した。
ちなみに獅子雄は住んでいる場所も違い裏社会の住人でもない氷藤の事は知る筈もなく、彼の言葉を信じたのである。
「流石に沖藍の名前はバリューがあるな…」
呟く氷藤。
「さっきは有難う、氷藤」
「なに、借りを返しただけさ、まだ全然返し切れてないけどな」
玲の礼に応じる氷藤だったが、その時新たな異変が発生する。

「ミーンミーンミーン!!!」
「今年の夏はセミが元気だとしても、いくらなんでも元気過ぎない!?」
突如として周囲にセミの鳴き声が大音量で聞こえ始め、玲は違和感を覚える。
「今年の夏は暑いけど、いくらなんでも暑すぎじゃない!?いや、熱いのは気温じゃなくて海の水みたい…!」
同時に海水の温度が急上昇し、留美がそれに気づく。
「ムウウウウウン!!!!!!ムウウウウウン!!!!!!」
「何か沖の方から声がするんだけど…」
遠洋から聞こえる不気味な唸り声に怖気づく園子。
「セミがこっち来たぞ…デカ過ぎるだろ…っていうか、ロボットじゃねーか!!!」
姿を現したセミがロボットである事に気付いた氷藤がかつてのトラウマを思い出して絶叫する。

「あぢぃ~!!!!」
「うるせぇぇぇぇえええええええ!!!!」
「怖ぇ~!!!!」
海水浴場は大パニックとなった。

「(これは…デルタの仕業に違いない!)」
玲は場がパニックムードに包まれる中ロックコマンダーを腕に巻き付けパーカーでそれを隠しながら
基地にいるシェリーに通信を入れる。

「博士、デルタが仕掛けて来ました!!」
「ええ、分かってるわ、こっちもお台場への転送反応を多数確認。今からツルギ君を送るわね」

桜井家。
「何!すぐ向かうぞ!」
シェリーからの通信を聞いた剣はロックスーツを起動し転送でお台場海浜公園に向かった。
「僕も黙ってられない!」
劾は現場の様子を確認する為、そして現時点ではデルタのロボットに対抗する手段が無い為転送で基地へ移動した。

光と共に現れる剣。
見るとセミ型ロボット…正確にはメカニロイド(デルタ配下のロボットの内、自我のないもの)の「シケイダー」達は
人々に直接襲い掛かる訳でもなくただ騒音を撒き散らしながら纏わりつくように飛んでいるだけである。
これを見た剣は…
「皆さん!じっとしていて下さい!!
そう言って次々とシケイダーを素手で叩き落していく。
ロックブレードを使いこなす為ロックスーツ起動時には剣の腕力も上がっているのだ。
すると…

「「「「ミーンミーンミーン!!!!」」」」

全てのシケイダーが剣に狙いを定め、一斉に襲い掛かる。
しかも一般人に対する挙動とは違い体当たりも繰り出してくるのだ。

「皆さーん!!!ロボットがロックマンに気を取られている間に逃げてくださーい!!!」
その時玲が力の限り叫んだ。
「あれがロックマンか!本当にいたんだ!!」
「生ロックマンだ!」
「俺見た事あるぞ!」
この場に現れたロックマンに注目する人々だったがシケイダーが自分達の傍を離れた事で
玲の声も届くようになり一斉に避難を始める。

「よし!」
ズババババババババババババババ!!!!!!!
これを見届けた剣はロックブレードを振り回し一気にシケイダーを殲滅した。
「後は海を熱くしている奴だな…博士、ロックスーツの防水性能はどうなっている!?」
剣からの通信にシェリーは応える。
「防水性能は完璧よ。勿論特殊武器チップもね。それから水中では地上と同じ感覚で歩く事が出来る他に
浮力の影響でジャンプ力がアップするわ」
「そうか…行くぞ!」
海に入っていく剣。
お台場海浜公園の海水浴場は遊泳禁止だが今はそんな事言ってられない。
地上と変わらぬ速度でダッシュで駆けていく剣はやがて海中に佇む一体の大型メカニロイドを目にする。
メカニロイドはクラゲ型で大きさはギガプライアー程、頭にはアンテナがあり、ゴーグルのような目とタコのような口、
ソーラーパネルの付いた8本の触手を持ち全身をゼリー状の物質で覆われている。
http://ssdrexzzx.starfree.jp/ds3.png
名前はアクアムーン。

「ムウウウウン!!」
アクアムーンから放たれるのは先程から聞こえた遠洋からの唸り声と同じ声。
即ちアクアムーンこそが声の主だったのだ。

「ムウウウウウン!ムウウウウウン!」
唸り声を上げながら剣の周りを周回するアクアムーン。
「…そこだ!」
ズバッ!

タイミングを見計らい剣はアクアムーンにチャージブレードの斬撃を見舞う。
「ムウウウウウ!!!!!」
アクアムーンが声を上げると同時に何らかの変化が生じた。
「熱っ!?」
追撃を加えようとした剣は思わず距離を取る。
見るとアクアムーンは自身の周囲を半径数mの光で覆っている。
実は先程もアクアムーンは自身の周囲に光を纏っていたのだがその範囲は先程より比べ物にならないぐらい広い代わりに
威力は比べ物にならないほど弱く人間にダメージを与える事は出来てもロックスーツを起動した剣には全くダメージを与えられないでいたのだ。

「(近づくなら一瞬だな…)」
この状態を見た剣はアクアムーンとの長時間の接近戦は危険と見なす。

一方海水浴場では避難が進む中、玲は遥か彼方の海面から濛々と湧き上がる白い湯気を見据えて剣の身を案じる。
「神崎…」

その時だった。

「「「た、たたた助けてくれぇ~!」」」
玲が声の方に向くと全身真っ黒でアフロヘア―、そして全裸の男数名が必死の形相で別方向から逃げて来たのだ。
「こ、今度は何!?というかアンタ達さっきのチンピラじゃない!!」
絶句する玲。そう、姿こそ変わってしまったが顔や背格好からして彼等は雷音禁愚のメンバーだった。
この中に獅子雄はいなかった。
そして彼等は恐怖と共にいきさつを話し出す。

シケイダーが現れ、海水の温度がアクアムーンの影響を受け始める少し前。
雷音禁愚は玲の姿が見えなくなる位置まで来た後、懲りずに別の女性をナンパしていた。
「ねえねえそこの姉ちゃん、俺達と遊んでく?遊んでかない?」
「一緒に焼いてかない?」
「や、やめて下さい…!」
獅子雄を筆頭に彼等は嫌がる女性を余所にしつこく絡んでいる。

それを影から見ている一人の人物。翔である。

「(見つけたぞ獅子雄争太!今から兄貴達に連絡を…
だけどそれまでの間にあの人が危ない!どうする…!?)」
お台場海浜公園にて赤灯会の構成員は散開して行動していた。
故に他の構成員達に連絡している間、そして彼等が到着するまでの間は
雷音禁愚が目の前の女性に手を掛ける時間に比べればあまりに長すぎる。
そして翔は本能で気付いていた。
自分では獅子雄に到底敵わないと。

「(本来の目的を思い出せ!俺一人で何が出来る!!でも目の前の堅気を見殺しにするのが人の道か!?
勝てないからって諦めるのが本当に正しい行動か!?
どこかで聞いた事があるが、相手の強さによって出したり引っ込めたりするのは本当の勇気ではない、と…!)」
逡巡する翔。
しかし考えに考え抜いた末、目の前の凶行を止めようと決意する。
身をかがめていた翔は立ち上がり、雷音禁愚の元に向かう。

「やめろおおおおおおおおおお!!!!!!!!嫌がっているだろうがあああああああ!!!!!」
声のした方に振り向く雷音禁愚。

「ファッ!?」
そこに居たのはサンシャイン・レディバイドだった。
「テ、テメエは鉄(くろがね)弟ぉ!!何だそのテントウムシみてぇなプロテクターは、イメチェンか!?」
レディバイドは獅子雄の言うようにテントウムシを模した外見をしている。
ただ、テントウムシが二足歩行したような外見でなく人型をベースにしたボディの各部に
テントウムシ型のパーツが付いているといった外観である。
http://ssdrexzzx.starfree.jp/dn2.png
獅子雄の言う鉄弟とは、汰威超組幹部、鉄花太(かぶと)の事である。
彼は実兄の鉄斬(ざん)と共に汰威超組に在籍している為、人は鉄兄弟を区別する時は
鉄兄・鉄弟、と呼ぶか下の名前で呼んでいる。
そして鉄弟はかつて獅子雄と死闘を演じた挙句左目の視力を奪った男であり
獅子雄にとって忌まわしき相手だったがすぐに眼前に佇む存在が鉄弟ではない事を見抜く。
「(いや、体の造りがよく見たら人間じゃねぇし声も違う…)
…鉄弟じゃねぇな、それにその姿…新宿と檜町公園に現れたロボットの仲間かぁ!?」
「その通りいいいいい!!!!オレはサンシャイン・レディバイド!!!!
嫌がる女性を力でねじ伏せるような悪行は、お天道様が許さねえええええええええ!!!!!!」
大声で名乗るレディバイドに対し、獅子雄とその手下は耳を塞ぐ。ちなみにこの時女性は隙を突いて逃げた。
「(こいつ、新宿と檜町公園に現れたロボットより大分小せえし、もしかしたら行けるんじゃ!?)うるせぇぇぇぇえええええええ!!!!!俺の邪魔する奴は誰だろうと許さねえ!!」
ガッ!!
獅子雄はレディバイドのボディの内、防御力が低そうな腹部に渾身の正拳突きを喰らわせる。

しかしレディバイドは微動だにしなかった。
「痛ぇええええええ!!!!!この空手部出身の俺の正拳突きが通じねぇなんてええええ!!!」
逆に獅子雄の拳がダメージを受ける程である。

「外道の拳が通じるかああああああ!!!!今度はこっちから行くぞおおおおおおお!!!!
サンブラスター!!!!!」
次の瞬間レディバイドのテントウムシの斑点に当たるレンズが発光する。
「…危ねぇ!!」
グイッ!
「えっ!?」
獅子雄は近くにいた手下を掴んでレディバイドの前に差し出した。
その直後レディバイドのレンズから黄色い熱線が放たれ獅子雄の手下を襲う。
「ギャアアアアアアアア!!!!!!」
たちまち彼の前身は真っ黒こげになり髪はアフロヘア―になり、着ていた物は全焼し地面を転げ回る。
「ギャアアアアアアア逃げろおおおおおおお!!!!!!!」
雷音禁愚のメンバーは散り散りになって逃げ回る。
皆が皆仲間を犠牲にしても自分だけは助かろうと必死である。
ヤクザと異なり半グレの絆は実に脆いのだ。
「(これは…マズい事になったぞ!!標的に先に死なれるのはマズい!!)」
一部始終を見ていた翔は当初の目的を思い出し、またも逡巡する。
というのも火纏は依頼を受けた以上標的は自分達の手で狩るのを信条にしており
標的が第三者の手で殺されるのは拙いのである。
これまでも火纏は標的が第三者に襲われる場面があれば様々な手段で交渉して標的の身柄を預かってきた。
「獅子雄に勝てねぇ俺があのロボットに勝てる訳がねぇ!!ここは兄貴達に連絡した後、
最悪刺し違えても獅子雄が殺されるのを食い止めるか!?
いや、俺じゃ時間稼ぎにもならねぇし、俺が死ぬのは兄貴達も許さねぇだろう、
考えろ!考えるんだ!!)」
翔が思考を張り巡らせる中、逃げ惑う雷音禁愚のメンバーの一部が玲達の元に辿り着き現在に至る。

「博士、別の所にもロボットが!…もしかしなくてもデルタナンバーズかも!!」
玲はシェリーに通信を入れる。

「恐らく…こっちが本命ね!何てこと…」
ショックを隠せないシェリー。

モニターで一連の状況を見ていた劾も胸が詰まる想いである。
彼は複数のモニターの内、剣と交戦するアクアムーンの映像を見て同機がただならぬ相手である事を理解する。
「(ロックマンが二人いれば…)」
このように考える劾に1つの考えが閃く。
「博士!新型のロックスーツは出来てますか!?」
「防御型は完成しているけど、もしかしてガイ君が…!?」
「そうです、僕のスマホをロックスーツが起動できるように改造して下さい!」
勇気を振り絞った劾は思い切って自身が出撃する事を提案。
戸惑うシェリーに防御型ロックスーツの防御力を聞いていた劾はその
防御力を頼りにする事を説明する。
やがてシェリーは折れて劾の提案を承諾した。
「改造ならアプリをダウンロードするだけだから一瞬よ。
武器は光学系武器の『ロックバスター』。
バスターにはチャージ機能もある他、敵の攻撃を防ぐ『シールドショット』を出せるわ。
最後に、防御型ロックスーツの防御力はかなりのものだけど、決して無茶しないでね…」
「分かりました!」
そして劾はアプリをダウンロードし、防御型ロックスーツを起動し始める。
今回アプリはアップロードが成されており、起動画面は従来9つの点が表示されていたが
今回からはスマホを横画面にした状態で縦3列、横5列の15個の点に変わっていた。
ただ追加された右端の列と左端の点は元々の点とは異なる色で表示されている。
劾はそれらの点の内、もとから存在していた点を上段左、中段真ん中、下段右、続いて
上段右、中段真ん中、下段左の順で指でなぞり「X」の文字を描く。
次の瞬間「パラァン!」という効果音が鳴りそれと共に劾の全身がワイヤーフレームのような光に包まれ
激しく発光した後その光は劾の体の前方から消えていき防御型ロックスーツを纏った劾が姿を現した。
防御型ロックスーツは青を基調とした色調で所々に赤いクリアパーツがある。
http://ssdrexzzx.starfree.jp/rmg.png
「沖藍、レディバイドとかいうレプリロイドの所には僕が向かうよ!
さっきロックスーツを起動できるようになったんだ!!」
「桜井、声震えてるけど大丈夫!?」
劾は玲に通信を入れるも玲は劾の口調を踏まえ、心配そうに尋ねる。
「(大いなる力には大いなる責任が伴う…その責任から逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…!)
大丈夫だ、問題ない!!」
覚悟を決め、出撃する劾。
この瞬間の劾の声を聞いた玲は取り敢えず一安心する。

その頃翔は…
「(ええい、ここで考えていても何も始まらねぇ!動け!動くんだ!)」
意を決して力強く足を踏み出す翔。

「そこまでだ!!」
「何だああああああ!!?」
声がする方にレディバイドが振り向いた。
「テメエは…ロックマン!!いや、姿もガタイも顔も声も違うなああ!!誰だテメエ!!?」
「僕も、ロックマンだ…!今までのロックマンとは別人だけどね!」
「アイツじゃねぇって事かよおおお!!!!だけどなああ!!オレ達の邪魔をするならテメエも同罪よおおおおお!!!!!」

レディバイドと劾のやり取りを余所に翔は火纏に連絡する。
それに火纏は応じる。
「ロックマンの…仲間か…じゃあ…ロボットの方は…彼に任せろ…お前は…お前の務めを…果たせ…」
「へい、分かりやした!」

そして劾はこの場の人々に向けて叫ぶ。
「皆さん、ここは僕が何とかしますから、その間に逃げて下さい!!」
「武運を祈ってますぜ、もう1人のロックマンの兄貴…!逃げろ~っ!!」
翔は劾を信じて逃げる振りをして獅子雄を追い始める…

「…それでお前の任務は、目的は何なんだ!?」
周囲に人がいなくなった後、劾はレディバイドに問いかける。
「人間は下品!!!下劣!!!淫乱!!!不浄!!!!!
こんな汚い生き物が地球を支配していい訳がねぇだろうがああああああ!!!!!!
先程も嫌がる女に無理矢理迫る男がいやがったからああああ!!!!!
お望み通り焼いてやったぜええええええええええええ!!!!!!!!!!」
レディバイドの声を聞いた劾は心底心外に感じた。
自身にもスケベ心がある事は否定しないが自分がスケベな事しか考えていないか、
そして嫌がる女性に好き勝手したいかと聞かれたら声を大にして否定するだろう。
それどころか大抵の人間は法や道徳を遵守しそれが出来ず性欲を露わにし
他人に迷惑をかける輩は外道と見なされている。
「もしかして人間みんなそうだと考えているのか!?だとしたらとんだ誤解だ!
デルタから何を吹き込まれたか知らないけど人間はお前が言うほど下品で下らない存在じゃないぞ!」
「黙れえええ!!!デルタの命令は絶対なんだああああああああ!!!!!!
邪魔するってんなら力尽くで止めてみやがれえええええええええ!!!!!!!!!!」
戦意をマックスにして劾に臨むレディバイド。
「(ダメだ、話が通じない…)」
説得を諦めた劾は臨戦態勢に入る。

その頃海中では…
「喰らえ!」ズバシュ!!
「ムウウウン!!!!」
アクアムーンに何度か攻撃を当てる剣だったが、アクアムーンの本体を覆う物質が攻撃を阻み決定打にならない。
そしてアクアムーンはダメージを受ける度にスピードを増し、同時に自身を覆う光を
攻撃範囲を犠牲にする事で強めていく。
更に距離を取った時は剣目がけて光弾を放ってくるのだ。
「(こうなったら…アレの出番だな…)」
放たれる光弾をブレードで弾き返しつつ剣はある事を思いつく。
ロックスーツの新たな機能、「特殊武器」である。
これは倒したレプリロイドの武器データをチップに記録したもので
ロックスーツの腰の部分にあるスロットに挿入する事でそのレプリロイドの能力を使用することが出来るのだ。
剣はスロットにジュラファイグの特殊武器チップ「スパークスマッシュ」を差し込み攻撃を放つ。

すると斬撃は雷を帯びてここが水中である事も相まってより大きなダメージをアクアムーンに与えたのだ。
「ムウウウウウン!!!!!!」
アクアムーンは更に攻撃範囲を狭め、その分威力を増大させた。
最早自身が巨大な光球と化している。
その状態で超高速で周回するアクアムーン。
「(あれを喰らったら拙いな…だけど…こっちにはこれがある!!)
「来い…そこだ!チャージ・スパークスマッシュ!!!」
ズバァァァン!!!

「ムウウウウウウウウウウウゥゥゥン!!!!!!」

実にギリギリのタイミングで剣の技が炸裂した結果、アクアムーンのボディは両断され、海底へと沈んでいく。
「さて、戻るか…」
アクアムーンを撃破した剣は陸地へ戻り始める。

時は若干遡り劾とレディバイドは…

「サンブラスター!」
レディバイドのボディのレンズから放たれるのは黄色い熱線である。
熱線の射程は短くある程度の距離まで放たれた状態を維持しながらレディバイドはロックマンに迫る。
これを喰らった劾は距離を取りつつもロックコマンダーを操作して
専用武器「ロックバスター」を呼び出す。
すると劾の右腕にロックバスターが現れて右腕を挟み込む。
バスターの引き金を引くと上の銃口から小さな光弾が放たれる。
だがレディバイドの熱線で阻まれ中々ダメージを与えられない。
そしてそのままレディバイドは劾との距離を潰しにかかる。

「だったら、これだ!」
劾はバスター側部の黄色いダイヤル錠のパーツを時計回りに90度回して再度バスターの引き金を引く。
ヴゥン…
するとバスターの下の銃口から四角いエネルギーのバリア障壁が出現する。
バスターのショット攻撃と異なるもう1つの機能、シールドショットである。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
シールドショットを展開した劾はレディバイドに突っ込み、体と体、エネルギーとエネルギーのぶつかり合いにもつれ込む。
「うわっ!!」「だああああああああ!!!!!!」
バチッ!!
凄まじい衝撃と共に両者は反対方向に吹っ飛ぶ。

「やるじゃねぇかあああああああああああ!!!!!!!!!」
「次は…チャージショットだ!!」
立ち上がって咆哮するレディバイドに対し劾はバスターのダイヤルを元の位置に戻し、
今度は引き金を長押しする。
するとバスターのエネルギーが急速に上昇していく。
エネルギーが溜まり切ると劾は引き金の指を離した。

バシュッ!!

「ぬおっ!?」

バスターの銃口から巨大な光弾が放たれサンブラスターを展開して突っ込んでくるレディバイドを吹っ飛ばす。
「行ける、行けるぞ!!」
勝利を確信し始める劾。

「甘いな、さっきから見てるとテメエは動きが鈍い!!!
こっちにも遠距離攻撃があるからそれで確実に息の根止めてやるぜええええ!!!
サンショット!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
そう言ってレディバイドはレンズから光弾の高速連射を放ち始める。
「負けるか!!」
劾はバスターショットの高速連射で応戦。
暫し両者の間に無数の光弾の応酬が展開されるが、徐々にレディバイドに苛立ちが見られ始める。
「チックショオオオオオオ!!!!!!全っ然!!!効きやしねええええええ!!!!!!」
サンショットは射程と連射に優れるが、威力では劣り今の劾には禄にダメージを与えられないのだ。
「えええい、フルパワー・サンブラスター!!!」
実はレディバイドにもチャージ攻撃があり、今それを放ったのだ。
それはこれまでの直径を上回る白い熱線でチャージショットもかき消すのだ。

「く、奴にもチャージ攻撃があったなんて…」
劾はシールドショットで応戦するもジリジリと追いやられ始める。
だがその時。
シューン…
レディバイドから放たれる熱線が途切れた。
「とんだ燃費の悪さだな、観念しろ、レディバイド!!」
「いいや!!問題ねぇえええええ!!!!」
反撃に転じようとした劾に対しレディバイドは声こそ五月蝿いものの平静を装う。
次の瞬間…
ウイイイイイン…
レディバイドのレンズの部分から機械の作動音がすると同時にボディとレンズの間にソーラーパネルが現れる。
一定時間経過後ソーラーパネルは再度逆方向にスライドしレンズが再び姿を現す。
「太陽がある限りなああああああ!!!!!オレのエネルギーが尽きる事はねぇんだよおおおおおおおおおおお!!!!!!」
充電を完了したレディバイド。
その充電時間はロックバスターのチャージの時間よりも短かった。
「(これじゃ埒が明かない…)」
劾は今の天候を呪った。一瞬本気で雨乞いのダンスを踊ろうかと思った。
しかし踊る事で雨を降らせる技なんて今の劾には無いしあったとしても隙を晒すだろう。
そう考えた劾はすぐに正気に戻った。

その時だった。
「今行くぞ、桜井!!」
アクアムーンを撃破した剣が駆けつけて来たのだ。

「ロォォォォォォックマアアアアアアアアアン!!!!オレは!!テメエに!!
用があったんだあああああああああ!!!!!!」
怨敵を目にしたレディバイドは怒り狂い剣を標的に定める。

それに応じる剣だったがある事に気付く。
「まずい、沖藍がまだ残っている…!!」
浜辺には劾と剣、レディバイドの他に一般人を避難させ終え観光客最後の一人となった玲が残っていたのだ。

そして劾とレディバイドは戦いの途中で両者とも移動したり互いを吹っ飛ばしたりした為
知らず知らずのうちに玲のいる場所に近付いていったのだ。

「フルパワー・サンブラスター!!!!」
再度フルパワーサンブラスターを展開し剣に突っ込むレディバイド。
その背後には玲が。

「これは…避ける訳には行かないな…正面から迎え撃つ!!」
フルパワーサンブラスターの威力は先程のアクアムーンの攻撃力のマックスを超える。
それに対し接近戦は危険極まりない。
防御力で劣る攻撃型ロックスーツでは尚更の事である。
「はぁっ!!」
ズバシュ!!
攻撃に耐えつつ剣はチャージブレードを叩き込む。
「何つう威力だ!!!だがなあ!!何時まで耐えられるかなああああああああああ!!??」
チャージブレードの威力に怯みつつ尚も剣を焼き尽くそうとするレディバイドだったが…
「もう一発!!!」
「ぐあっ!!」
何と剣は踏ん張りながら再度チャージブレードを見舞ったのだ。
「そんなあああ!!!有り得ねぇ!!有り得ねぇだろおおおおおおおお!!!!!!!」
信じ難い事態に対し絶叫するレディバイドだったが丁度その時サンブラスターのエネルギーが切れた。
「「今だ!チャージ(ショット)(ブレード)!!」」
「だあああああああああああ!!!!!!!!!!!
ズドォン!!!!
劾と剣のチャージ攻撃が同時に炸裂し、結果これまでのダメージも相まってレディバイドは訳も分からないまま機能停止した。

「最後はやけに呆気なかったな…」
思いの外呆気ない決着に剣が呟く。
「それを言うなら最初から変だったよ。戦っていて分かったんだけどレディバイドの攻撃は
アスファルトに壁に何でも壊す威力があったのに人に当たった時はその人は火傷こそしたけど
ピンピンしていたんだよ」
「奴の性格からして手加減したとは考えにくいしなぁ…」
違和感を感じつつも劾と剣はレディバイドの撃破をシェリーに報告。
「有難う、ガイ君、ツルギ君…」
シェリーは悲し気な様子ながらも劾と剣に感謝の気持ちを表す。

一方で玲は…
「玲!良かった…良かった…心配したんだからね!!」
安堵した留美は泣き顔で玲に抱き着く。
「そうだぜ!赤の他人より自分の心配しろよな!」
氷藤も最後まで現場に残った玲に対し心配故の叱責をする。
「玲…あんたもしかして…」
園子は玲をじっと見て問い詰めようとする。
(ドキッ!)
核心を突かれそうになって緊張が走った玲だったが…

「ロックマンの大ファン?」
それに続いた言葉は当たらずとも遠からず…だった。
「そ、そうなの!私ロックマンが初めて現れた時現場にいたしねー!!アハハハハ…」
安堵しつつぎこちなく返答する玲であった…

後に劾と剣はレディバイドのボディを伴って転送で基地に帰還した。
台の上でジュラファイグと同様の状態で寝かせられているレディバイドを見据え剣はシェリーに報告する。
「劾から聞いた話じゃ、レディバイドはデルタとジュラファイグ同様人間に激しい偏見を持っていたみたいだったぞ…」
「『木を見て森を見ず』状態になっているのね…私考えたの。デルタナンバーズを修理してみようって。
安心して、ボディは従来のものじゃなくて非戦闘用のものにするから…」
「博士!それは尋問の為ですか!?」
思わず尋ねる劾。
「勿論それもあるけど…『森』を見せてあげたいのもあるからね…」
微笑んで言うシェリー。
「確かに、互いに互いを知る事は大切だからな」
「彼等を敵のまま、終わらせたくないよ」
剣と劾は快く賛同する。

かくして後に「真夏の海の悪夢」と呼ばれるこの事件は収束した。

流星のD-REX=ZZX(管理人)
作成: 2024/08/31 (土) 23:51:25
履歴通報 ...
1
流星のD-REX=ZZX(管理人) 2024/08/31 (土) 23:54:54

この続きはマジのマジで汚いです。本当に閲覧注意です!

一方で獅子雄を追う翔達だったが…
獅子雄が路地裏に入り込んだ時だった。

「出て来いよ、さっきから尾行(つけ)てんの気付いてねぇとでも思ってんのか!?ああ!?」
路地裏に入った獅子雄が突然一見誰もいない空間に向けて言い放つ。
「バレちゃしょうがねぇか…」
「お前に恨みを持つ人間がいてねぇ…悪いが身柄を拘束させて貰うわ」
物陰から既に翔と合流していた赤灯会の構成員達がゾロゾロと現れた。

「テメェ等…赤灯会だな!!上等じゃねぇか、かかって来い!」
「オラアアアアア!!!」
ドドドドドドドドド!!!
一斉に獅子雄に襲い掛かる赤灯会構成員達だったが…
「カスが効かねぇんだよ!!」「ボゲェッ!!」「ブベッ!!」
ドガッ!!バキッ!!
次々と赤灯会を空手技で返り討ちにする獅子雄。
「ウオオオオ兄貴達!!!!よくも!!よくも!!!!!
女を弄び、それどころか兄貴達ボボボリヤダッデ…!!!
デベーボゴガンビバゴンバボンイバベェ…!!!!
ヒドアジバビビギョベービデヤブウウウウウウウ!!!!!!!!!!」
怒り狂った翔は滑舌が悪くなり殺気全開で獅子雄に挑む翔だったが…

「これもう何言ってるか分かんねぇなぁ…必死な所悪いがテメーじゃ俺は倒せねぇよ!!」
バギャッ!!
「ギャッ!!」
翔の猛攻を軽くいなし逆に殴り飛ばす獅子雄。
その実力差は文字通り大人と子供だった…

「チクショオ…チクショオ…」
地に倒れ伏し他の構成員達共々獅子雄に足蹴にされる翔。

その時だった。

「ハァ…ハァ…お前達…よくここまで踏ん張ってくれた…」
数台の車がこの場に到着し、その中の1台から火纏が降りて来た。
「「「「火纏の兄貴!!!!」」」」
火纏の登場に歓喜する翔と一般構成員達。

「お前等…怪我人の搬送を…頼む…余計な…被害は…出したく…ねぇからな…!」
「「「「ヘイ!!」」」」
火纏が乗っていない車から次々と赤灯会構成員達が降りてきて翔含む負傷した構成員を搬送し始める。
それだけでなく火纏が乗ってきた車の運転手もこの場を離れ結果獅子雄と火纏だけが残された。

「ハァ…ハァ…依頼者の…心の傷と…可愛い舎弟の…体の傷の事を考えると…心苦しい…
お前を八つ裂きにすれば苦しくなくなる…そうだ…そうに違いない…!」

「復讐極道のお出ましか…面白ぇ!!
だけどよ、噂に聞く通り苦しそうだなぁ…月並みな台詞だが…今楽にしてやるぜ!!」

挑みかかる火纏を迎え撃とうとする獅子雄だったが…

「ゲェッ!!なんだこの速さは…!!?」

「ハァ…!ハァ…!」
火纏は息を乱しながらも、足元はふらつきながらも、その動きは実に速かった。
獅子雄が空手技を喰らわせようとするも火纏は攻撃が来る方向に合わせて
回避する為まるで手応えが無い。

常に火纏が至近距離にいながら攻撃を全く当てられない獅子雄は焦燥感に包まれていく。
しばらくして…
「ほら…お前の…大好きな…アイスティーの香りだぞ…!」
ググーッ!!
火纏は獅子雄の背後に回り込み強烈な睡眠薬を嗅がせ昏睡状態にした。
「捕縛…完了…」
獅子雄を気絶させた火纏は舎弟にそれを報告し、やってきた車に四肢を拘束した獅子雄を放り込み
その後車は目的の場所へと向かっていった。

その場所は自分達の縄張りの新宿区の内、一部の好き者が集まるエリア、二丁目だった…
そこに位置するクラブの地下室の前に辿り着くと火纏は獅子雄を蹴りで叩き起こす。
「起きろ…」
「ゲェッ!!」

「いつまで…寝ている…?」
「テメエエ!!何しやがるんだ!これは犯罪だぞ!!」
気が付いた獅子雄はわめき散らす。

「暴れるな…手足が無くなるぞ…」「!!」
絶句する獅子雄。獅子雄を拘束しているのは鋼線だったのだ。

「さて…お前は…何人もの…罪なき女性を…食い物にしてきたが…被害者に…申し訳ないと思わないのか…!?」
火纏の信条の一つとして捕らえた外道には罪の意識を確認するというものがある。
これに対する獅子雄の返答は唾棄すべきものだった。

「ハ!!何言ってやがる!!俺は嘘偽りないありのままの自分を貫き通しただけさ!!
俺の餌食になった女共も本当は気持ち良さそうにしていたぜ!!
これの何が申し訳ないだよ、ああ!?」

「そうか…入りますぜ、熊害(くまがい)の旦那…」
火纏は一言言うと地下室の扉に向けて言い放つ。
「入って、どうぞ」
中から部屋の主の野太い声が響き渡る。

ガチャン!ゴン!
勢いの良い扉の開閉音がする中獅子雄の前には部屋の主が立ちはだかる。
部屋の主は五里石程の巨体で顔は強面で右目には傷があり口髭と顎髭を生やし、体は固太りで毛むくじゃらで
やたら露出が多くピッチリとした服を着ている。
http://ssdrexzzx.starfree.jp/kumagai.png
彼の名は熊害熊吉(くまがいくまきち)。
表向きは運送会社「シシマル運送」の社長であり裏の顔は外道専門の人身売買を請け負っている。
今回の火纏の取引相手である。
獅子雄を見た熊害は笑みを浮かべて喜々として言う。
「これ程の上物がたったの114514円だなんて火纏の旦那も粋スギィ!!」
「そう…褒められると…恥ずかしくて…胸が…苦しい…」
談笑する熊害と火纏を余所に獅子雄は思わず問いかける。

「何、俺たったの114514円で売られちまうのか!?」
「まぁもっと高くてもいいと思ってたんだけどな…あとお前の手下は1人1919円で買ったぜ」

獅子雄の全身を舐めるように眺める熊害。
彼にもそっちの趣味があったのだ。

「自らが犯した罪が…どういうものか…身を以って思い知るがいい…」
冷酷に言い放つ火纏だったが…

「そうだいい事思いついた、獅子雄が俺に勝てたら自由にしてやるってのはどうだ?」
熊害が予想外の提案をする。
「…好きにして…下せえ…」
暫し考えた後火纏は笑みを浮かべ承諾した。

「お前の話は聞いてるからよ、どれだけ強いのか確かめたくってなぁコレ(鋼線)外していいか?」
「…どうぞ…」
更には熊害が獅子雄を拘束する鋼線を外す事を許可する火纏。

「バカな奴だぜ、自分からわざわざチャンスを与えるなんてなあ!!
火纏って奴には勝てねぇからまた逃げて行方を眩ませてやらあ!!」
ダッ!!
熊害に挑みかかる獅子雄だったが。
「ほらよっ!!」
バリッ!!!!
「ウギャアアアアアアアア!!!!!」
熊害の剛腕から繰り出される引っ掻き攻撃を受け、肉が深く抉れる獅子雄。
間髪入れず熊害は獅子雄にベアハッグを繰り出す。
ミシミシミシ…
「ガ…ハ…」
獅子雄の骨が悲鳴を上げる。
そんな中熊害は獅子雄に顔を近づけ耳元で囁く。
「ちょっとした自慢話だが、俺は昔沖藍竜太とまあまあの善戦をした事があってな…
この右目の傷もその時付けられたものでなあ、汰威超組組長と同じ言わば『直筆のサイン』って奴よ…」
「(沖藍竜太と戦って生き残ったとかこいつ人類か!?そんなの俺が勝てる訳ないだろ!!)」
獅子雄は絶望しながら気絶した。
「…堕ちたな…」
暫くすると今度は熊害が獅子雄を叩き起こす。
そして顔を近づけてニヤつきながら言う。
「約束は約束だ、お前はもう俺のものだ…」
「!!!!!!!!」
この瞬間、獅子雄は自分よりも大きくて強い存在から蹂躙される事への絶望を思い知ったが時既に遅し。

それ以降熊害は火纏と共に一般人ではまず思いつかない、そしてとても文に出来ないくらい酷さの
ありとあらゆる責め苦を獅子雄に与え続けた。

「こんな事して興奮するなんて…テメー等変態だぜ!!」
苦しみながらも最後の反抗心を火纏達にぶつける獅子雄だったが
それを熊害は笑い飛ばす。

「変態だあ?とんでもねぇ!仮に変態だとしてもよ、俺は変態という名の紳士だぜ!」

更に責め苦が続くと獅子雄の心も折れついに目に涙を浮かべ懇願する。

「もう…勘弁して…くらはい…いっそ…殺してくらはい…」

これに対し火纏と熊害は無慈悲に言い放つ。
「やれやれ…外道の…泣き言は…見苦しい…」
「お前が魅力的だからいけないんだよ!俺をエロい気分にさせたお前の魅力が…な!」
「ぬわああああああん!!!!!!」
そして獅子雄は…二度と女性を襲う事はなくなった…

火纏が依頼の完了を報告すると彼は心からの感謝を述べた。
今回の事で娘の精神状態も快方に向かいつつあると言う。

「復讐は無意味と…言う人も…いるだろう…だけど…
復讐でしか前に進めない人間がいるのも…また事実…」
一人呟く火纏。
丁度その時舎弟の一人が彼に一声。
「火纏の兄貴…次の依頼者様です…」

そして事務所の中へと案内された見るからに身も心もボロボロといった状態の依頼者が火纏の前に現れた。
火纏はいつものように苦しそうに依頼者に問いかける。

「それでは…要件を…どうぞ…」

続く

2
流星のD-REX=ZZX(管理人) 2024/09/01 (日) 01:04:10

更新が遅れに遅れて遅れまくりました。
取り敢えず後書きはともかく本編8月中に間に合いました。
まず「工作型ロックスーツ」は黒いロックマンの事です。
このスーツ起動時のみ、右端と左端に新たに追加される点をなぞる必要があるのですが
追加された点の中で指でなぞるのに必要なのは下段右端と下段左端のみです。

劾の母親は今作の劾同様原作キャラの2Pカラーのようになってしまいましたが、モチーフはマーティです。
火纏はモチーフはハイエナードですが裏モチーフはバグ大の「伊集院茂夫」です。
ただ復讐業を営むという事と腕っぷしが強いだけが彼の伊集院要素であり、外見とキャラクター性はハイエナードを意識しました。
下の場前はバグ大のヴィラン「我妻京也」から取っており漢字を変えてます。
獅子雄はモチーフは言わずもがなビストレオです。
苗字の由来はバグ大のヤクザ「獅子王組」であり、「ししおう」から一文字縮めてます。
これが原因で某時代劇漫画のライバルキャラと同じ読みになってしまいました。
下の名前はバグ大とある程度視聴者層が被っているYouTubeの漫画動画「女子力高めな獅子原くん」の主人公、
「獅子原颯太」から取っておりビストレオの立場や性格を踏まえてそれに見合った漢字にしました。
女子力が高い設定もこれが元ネタです。
…即ち、彼の裏モチーフの影響で色んな方面に風評被害を撒き散らしてるって事ですね…

今回名前が判明した翔の苗字は言わずもがなアクセル役の高山みなみさんで原作キャラ同様漢字を変えてます。
シケイダーに最初は素手で挑んだ剣ですがこれは原作でロックスーツを起動した状態の剣がレディバイドを殴り飛ばしたシーンがあったり、
ロックブレードを扱うのに腕力が必要という説明が原作にあったからです。
アクアムーンですがモチーフがクラゲなのはレディバイドが太陽もモチーフにしている為
クラゲの漢字表記「海月」に因んでいるからです。
当初の名前は「シームーン」でしたがジョジョのスタンドと名前被りが発覚した為マイナーな漢字表記の「水月」に因んだ名前にしました。
タコのような顔が付いているのはアクアムーンの正確なモチーフが「タコクラゲ」だからです。
このクラゲは触手の先端に付着した藻類と共生する事で光合成をするのですがそれに因んで
アクアムーンは触手のソーラーパネルで太陽エネルギーを利用します。
また青を基調としたカラーリングは太陽モチーフのレディバイドのカラーリングが赤主体だった為
「赤い太陽」と「青い月」という事でエグゼ4ネタです。
レディバイドですが偶然にも前回のジュラファイグ同様他の何かに間違われました。
彼の熱線で人間が黒焦げ程度で済んでいたり最後の決着がやけにあっさりとしていたのは「何者か」が都合の悪い場面でレディバイドの技の威力を下げていたからです。
決してギャグ補正でもレディバイドが手加減していた訳でもありません。
台詞の中で登場する鉄花太は次回のゲストキャラの1人であり下の名前はバグ大のヤクザの中で最も代表的なキャラ「小峠華太(ことうげかぶと)」から取っており漢字は変えてます。
苗字は兄と共にモチーフとなったボスの2つ名に両方とも含まれている漢字から取りました。
熊害ですが彼は前回翔にぶちのめされた半グレ2人とは異なり完全にそっち系です。
ザンギエフを連想した方も、ミンチメーカーを連想した方も、「別の何か」を連想した方もいると思われますがそっち系の方には何故かこういう容姿の男が好まれるようです。
今回の「女性を弄んだ男が因果応報でそっち系の男に弄ばれる」という展開は
これを書く前に図らずも「借金ストーリーランド」(以下シャキスト)のとある回でまんま同じ展開が出てしまい当初バグ大ネタのつもりだったのですが結果的にシャキストネタにもなってしまいました。

今回は色々と汚いネタがてんこ盛りですが最初に言った通り飽くまで「2番目に」汚い回です。
最も汚い回はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図ですのでその回でも冒頭で予告します。
次回はシルキーガ回です。