1話[プロローグ]>> 1
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[ベルセルクフレンズ]5話
見つかりませんように見つかりませんように…
サバンナちほーのど真ん中で、草の中に身を潜めているフレンズがいた。
ねずみ色のワイシャツを着て、黒白の縞々ミニスカートとタイツを履いている。
髪型は白黒模様をした、膝まで届く長さの髪の毛で、アホ毛がちょこんと起き上がっている。
そのフレンズの名はサバンナシマウマ。
黒くてモヤモヤした物体に見つからないように、今こうして隠れているのだ。
冷や汗が滝のようににじみ出る。
顔は埋《うず》めているので回りを見ることはできないが、その黒いモヤモヤの放つ気配で、こちらに近づいて来てるのが分かる。
助けを呼びたいが、もし助けを呼ぶために大きな声を出したら見つかってしまう。
さっきよりも気配を感じる。
確実に近づいてきている。
(見つかりませんように見つかりませんように…)
セルリアンの気配の強さがピークに達した。
まるで一秒が一分みたいに感じる。
そして気配が遠ざかっていくのを感じた。
(やりすごしたみたい…?)
そっと顔を上げると、自分から離れていく黒いモヤモヤの姿が見えた。
これで一安心。
身体中の力が抜け
「ふぅ…」
と声が漏れる。
油断大敵。
まさに、今のサバンナシマウマに当てはまる言葉だ。
「え…」
黒いモヤモヤは、サバンナシマウマに向かって突っ込んできた。
避ける暇もなかった。
サバンナシマウマは、次に来るだろう強い衝撃に耐えるため、身体中に力を入れた。
…衝撃は全くなかった。
黒いモヤモヤはサバンナシマウマの体に、まるで幽霊が憑依するかのように、すり抜けるように入り込んだ。
「うえっ!?」
サバンナシマウマの意識は、そこで途切れてしまった
―――――――――――
「大丈夫ー!?」
サーバルが、先ほど悲鳴が聞こえた場所付近まで来た。
周りにその黒いモヤモヤやセルリアンがいないか警戒しながら進む。
すると、草の向こうに地面に倒れているフレンズがいることに気付いた。
「あの子は―
サバンナシマウマ!?」
サーバルは急いでサバンナシマウマのもとへ駆け寄った。
サバンナシマウマはぐったりと倒れていた。
目立った外傷はない。どうやら気絶しているようだ。
サーバルはあたりを見渡した。
今さっきまでここにいた、黒いモヤモヤがいないか探るために。
だが、周りにあるのは草木だけで、黒いモヤモヤはどこにも見当たらない。
「おっかしいなあ…。 どこにもいないや。
今さっきまでここにいたのに…」
サーバルが首を傾げる。
とりあえず周りの安全確認はできたので、サーバルは足下で気絶しているサバンナシマウマに声をかける。
「大丈夫?シマウマ」
サーバルがサバンナシマウマの体を揺する。
だが応答はない。
「シマウマ!大丈夫!?」
さっきよりも大きな声で呼び掛け、強く揺する。
すると、サバンナシマウマはゆっくりと身を起こした。
「あ、シマウマ!気付いた?」
サーバルがサバンナシマウマの顔を除き込む
そのサバンナシマウマの顔は、サーバルを睨んでいた。
その目は、野生解放によって鮮やかに光ってはいるが、同時に魂の感じられない黒っぽい色をしていた。
「…えっ―」
瞬間。
サーバルの顎を強烈な蹴りが襲った。
憑依型のセルリアン!?
そしてビースト化…?