【LB・GT】
グラ…
火山性地震だ。
今年もそんな時期か・・・
噴火が起こり、またフレンズが増えるようなら、個体ごとに合ったジャパリまんの準備・増産が必要になる。
それがもしセルリアンだったら・・・僕たちにはどうしようもないけれど…
見回りをしていると、草むらの中に「帽子」を見つけた。
・・・メモリーを検索するまでもなく見覚えがある…ような気がする。
近付いて観察してみる・・・
そんなことがあるだろうか?
「ミライの被っていた帽子・・・?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
???
「・・・はパークに遊びに来たお客さんじゃないんですよ!
こんな事態を引き起こしたのは、私たちの責任でもあるんでしょ?
なのにフレンズさんたちのために出来ることもせず、置きざりにして逃げようなんて・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
???
「ラッキー、留守をよろしくね。
きっと、また・・・ あ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
???
「フレンズや私たちにとって、とても大事なものが埋設されていることがわかりました。
その場所は・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いけない、久しぶりに発作トリップを起こしてしまっていた・・・
アライ
「キエァァァァァァァ! ボスがシャベッタァァァァァなのだー!」
フェネック
「ホントだね~ 初めて声聞いたよ~」
マズい! 聞かれてしまった!?
好奇心の強い2人だ。
しつこく問いただされると厄介なことになる。
ドーーン!!
アライ
「噴火なのだ?」
フェネック
「噴火だね~」
サンドスターが降り注ぎ、その1つが帽子に当たる。
「!」
セルリアン化の方か!?
グラグラッ…
アライ
「のだーーーー!」
フェネック
「アライさ~ん、どこに行くんだ~い?」
アライ
「落ちてるだけなのだーーー!」
アライさんはバランスを崩し、崖を転げ落ちていった。
フェネックはそれを追い掛け、ゆっくり降りていく。
ギャグ補正を味方につけているアライさんだ。 放置しておいても大丈夫だろう。
帽子の方に目を向けると、幸いなことにフレンズの形が立ち現れてくる。
その個体を軽く一瞥すると、僕はその場を去った。
(ヒトのフレンズか・・・ 初めてだな)
そんなことを考えながら・・・
僕の名前はラッキービースト。けもの の従僕(LACKEY BEAST)」に甘んじている。
ここ、ジャパリパークのガイド見習いロボットだ・・・った。
過去形なのは試験官だったヒトが居なくなってしまったからだ。
今は他の機体と同じく「
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かつて僕をガイドロボに育て上げようとしたミライさんは、実は自称パークガイドだ。
最初はガイドになるつもりで就職し、研修を受けたらしいが、
本人曰く「フレンズさんたちの余りのかわいらしさ」に衝動が抑えきれず
何かとコミュニケーション(という名の接触)を図るので、上からガイド失格の烙印を押されている。
確かに、展示品に手を出すガイドなんて非常識にもほどがある。
それなのに隊服を着て、バスを乗り回し、問題行動を繰り返していながらクビにならなかったのは、
パーク七不思議の1つに数えられている。(残り6つは募集中だ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんな「ヒトに任せる」ことに懲りたのか、上層部はロボットに白羽の矢を立てた。
ラッキービースト計画・・・僕もその1体だ。
ジャパリまんの配給・施設のメンテが主な業務だが、
牧羊犬のようにフレンズを管理・監視する役目も任されている。
なにしろフレンズは力が強く、知能もそれなりに備わっている。
反乱を起こして、または島から脱走→ヒトに危害を加えるようなことがあってはならない。
表向きこそ「けものの従僕」だが、実質は「けものをヒトに従属させる」ためのコントローラーであり盾だ。
そこに<私情>があってはいけないのだ。
そんな中、ガイドロボのプロトタイプとして開発された僕だったが、
プログラムに不備があることが発覚し計画は頓挫。 僕は処分される寸前だった。
それを「記録媒体として使うから」と言って拾ってくれたのがミライだ。
恐らく「似た者同士」だったからだろう。
自分の「ガイドになる」という夢を僕に託したかったのかもしれない。
(少し性癖を抑えれば良かっただけのような気もしたが…)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつものようにさばんなちほーの巡回と配給を終えた僕は思い出に浸っていた・・・
僕はいつまでこんなことを続けるのだろう?
今度は、何年も考えて答えの出ない問いを頭の中で繰り返す。
明日はどうしよう・・・このまま茂みに隠れてボイコット?
そんな非現実的なことも頭をよぎる。
可能か不可能かで言えば出来ないことではない。
他の機体と違って僕には<心>があるからだ。
そのせいで不良品扱いされスタッフの手で廃棄されるという心配も、今となっては無い。
ふとサーバルのことを思い浮かべた。
僕を含むLBたちがどれだけ機械的(ビジネスライク)に接しても、
やった仕事に対しては必ず笑顔で「ありがとう」を言う良い子だ。
(これに関しては他のフレンズも例外ではないし、<ボス>と呼ばれるのも実は面映ゆい)
おともだちになろうよ、と言われたこともある。
僕だって、その気になれば・・・
「・・・夜行性だから!
きゃぁ~~!!」
そんなことを考えていると、当の本人の声が聞こえてきた。
「サーバルちゃん!あぶないよぉ」
続けてサーバルとは別の声が聞こえた・・・
!?
驚いた。 ミライと声紋が一致したからだ。
思わず草むらから出て、サーバルの呼び掛けも無視して歩み寄る。
ミライだ! そう直観した。
風貌こそ似ても似つかないフレンズだったが、間違いない!
ーというか、そんなことはどうでも良かった。
これはガイドロボット試験の続きなんだ!
僕は<心>を押し殺して話しかけた。
「初めましテ… 僕はラッキービーストだヨ よろしくネ」
こうしてLB と愉快な仲間たちのGT (壮大な旅)が今、始まる・・・
1期をボス視点から見た物語ですね?
ボスも旅を楽しんでいたように見えましたから、何を考えて一緒に行動していたのか意外と語られていないので面白そうです
あくまでプログラムに沿って行動していたようにも、
感情が芽生えたようにも見えるボスが
何を思ってかばんちゃんたちと旅をし、何を得たのか?
その辺を書いてみたいと思います。
ボス視点はとても斬新ですね。拝読させていただきます。
最近見つけた、とある方の考察→当時の考察の1つ
・・・から話を組み立てました。
裏ストーリーみたいになっていれば、と思います。
【LB・GT】
「君の名前を教えて 君は何が見たい?」
かばん
「か、かばんって言います。 図書館が見たいんですけど…」
僕はこの時、かばんを「君」と目上呼びし、お客さん扱い・・・
ーすることを隠れ蓑に実はミライを重ねて見ていた。
今思うと悪いことをしたと思う。
でもこの時の僕は「ガイドロボ試験の続きが受けられる」という考えで頭がいっぱいだったのだ。
「わかった、としょかんまでのルートを検索するヨ
その前にジャパリパークについて話すネ
ジャパリパークは気候を元にして幾つかの地方に分かれているヨ
それぞれに動物 植物が展示されているんダ
まず大きく5つの気候帯に分離、
フレンズと呼ばれる生き物達で彼女らは動物やその遺物と… あ・・・」
いけない。
ミライから
「ラッキーはガイドに夢中になると周りが見えなくなるところがありますね」
とよく注意されてたんだっけ・・・
???
「えー、おほん! テストテスト!」
サーバル
「あれ?」
???
「えーテステス。 聞こえますか? こちらさばんなちほーです」
続けて<発作>まで起こしてしまった。
サーバル
「びっくりしたよー。 ボスが喋れたなんて・・・
初めて聞いたけど、不思議な声してるんだね」
(マズい・・・)
サーバル
「みんなボスとお話したいと思うよ。 なんで今まで喋らなかったの?」
僕はこれ以上変に思われたくなくて押し黙り、呼び掛けられても無視を押し通し、
それでいて本気で怒っていないかと顔色を窺うしかなかった・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明くる日。
ガイド試験の課題は、
『かばん(と付き添いのサーバル)をジャパリとしょかんに連れて行くこと』
に決まった。
もし、かばんが
「ぼくが何のフレンズか分かりますか?」と聞いていたら、その場で終わっていたところだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いざ始まってみると、試験内容は散々なものだった。
最初の方こそちゃんとガイドも出来たと思うし、かばんたちも観光を楽しんでいたが、
じゃんぐるちほーではツタに絡まり、橋が落ちていたことに落ち込み、
バスの充電のために山を登ろうとしたらロープウェイが無くてパニクったり、
さばくでスタックした時は砂嵐が目前に迫っていたこともあり、頭(どころか全身)が真っ白になってしまった。
これ以外にも、バスを目前にした途端、いの一番ではしゃいでしまったり、
ガイドにかこつけてトキにささやかな報復をしたことで、かばんを危険に晒したり・・・
「もうボスにはガイドを頼まない!」と言われても仕方ないような仕事ぶりだった。
実を言えば、バスさえ手に入れれば僕がいなくてもオートで任意の場所に送り届けることは可能だった。
なのに、それを申し出なかったのはもちろん解雇を恐れて、だ。
でも悪いことばかりではなかった。
ミライも言っていた。
「観光はアニメと同じで生き物です。
景色1つとっても初見では気付かなかったこと、2周目以降では新たな発見があったりするんです。
お客さんによっても何に注目するかが違う。
だからガイドは紋切り型で案内するだけではなく、
お客さん1人1人に寄り添いつつ、楽しむ手助けをするべきなんです」
この時は『ちょっと何言ってるか分からない』状態だったが、今なら分かる気がする。
「ほら! 大きい川に出るよ!」
きっとジャガーも渡し船の仕事をツライとは思ったことはないはずだ。
それは、乗るお客さんと『楽しみ』を共有することが出来ていて、
『ツアーコンダクターとしての喜び』をそこに見い出せていたからではないだろうか?
かばんたちも、僕の披露するパークや動物の知識には素直に感心してくれたし、
新たなちほーに入るたび変化する景色に驚いたり・・・
ちょっと気を抜くとガイドという立場を忘れ、一緒に観光を楽しみそうになっている自分がいた・・・
ついに(なんとか、だが)かばんをジャパリとしょかんに送り届けるという任務を果たす瞬間がやってきた。
・・・達成感はもちろんあったが、同時に不安も覚えていた。
自分でも薄々気付いていたが、『ガイド失格』という烙印を押されたら・・・
僕はどうしたらいいのだろう?
しかし試験の合否は伝えられなかった・・・
当然だ。
ガイド試験だと思っていたのは僕だけで、かばんたちにそんな気はさらさら無かったのだから。
・・・落胆と、そして安堵を覚えていた。
僕はどうしたいのだろう?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方で、かばんたちは次の目標を設定し、旅を続けることになった。
僕は「ヒトがどこにいったのか」を質問されなかったことをいいことに、頼まれてもいないガイドを続けた。
追試が受けられる、と思い込むことにして・・・
この時の僕は本当に自分勝手で、かばんやサーバルの気持ちなんてこれっぽっちも考えていなかったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヒトの足跡を辿るというはっきりしない目的
ーに付け込んで、実質はミライとの思い出の地を巡っていた。
ミライ・・・
かばんもいずれはミライのように島を出て行ってしまうのだろう。
その時はサーバルもさばんなに帰ってしまうだろう。
そうなってしまえば、ガイドとしての僕は・・・?
考えたくないことだった。
『それまでの時間』を少しでも伸ばしたかった。
いっそビジネスとしてでなく、この2人と自由に旅が出来たら・・・
みずべちほーでPPPからヒトの情報を得た後、
直接「みなと」に行くことも出来たのに、あえて遠回りしたのは、そんなエゴも働いていたかもしれない・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いや~、セルリアンの調査に来て、温泉が見つかるとは~…」
「こんにちはー 今日はロッジにやってきましたよー」
<発作>の回数も目に見えて増えていた。
ミライがパークを去った後、録音された音源をよく再生して想い出に浸っていた。
初めの頃こそ『いつか戻ってくるに違いない』というモチベーションに繋がっていたが、
『もう戻ってこない』という諦めに変わってからはヤメていた。
ーはずなのだが、ミライの帽子を発見してから意図せず再生するようになってしまった・・・
もしかしたら、かばんにミライだった頃の記憶を取り戻して欲しかったのかもしれない。
<失敗>も相変わらず続けていた。
ゆきやまではスタックを解消して調子に乗っていたらフリーズ(物理)してしまったし、
ろっじでは例の<発作>のせいで、かばんに濡れ衣を着せるところだった。
それでもやっぱり2人は、
ヒトでもフレンズでもない僕をのけものにしたりはしなかった。
時間稼ぎも限界に達し、ついに『みなと』に着いてしまった。
それまでも予感はしていたが、かばんはそこで決定的な言葉を口にした。
「サーバルちゃん…
僕、海の外に人を探しに行ってみたい」と。
正直、失望した。
かばんはやはり島を出るつもりなんだ。
ミライと同じように、僕たちを置いて・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
黒セルリアン、そしてハンターたちと出会ったのち、
僕はヒトにとって都合のいいパークの維持・管理・安全に関する条項を盾に、
サンドスター山に1人で行くことにした。
しかしそれは表向きで、実質は職務(かばんたちのガイド)の放棄だった。
何をするつもりでもなかった。 ただ現実から逃避したかっただけだ。
二度も捨てられるぐらいなら今度は自分の方から、という気持ちもあったかもしれない。
一人になりたかった僕の気持ちと裏腹に、かばんたちは付いてきた。
表面上こそ かばんたちを気遣うようなことを口にしていたが、内心穏やかではなかった。
かばんは周囲をよく観察し、僕の<発作>からも情報も得て、
黒セルリアンと対峙するハンターのサポートをしようとしたり、四神のレリーフを探したりと、
僕なんかよりよほどガイドらしいことをしていた。
そこまで考えが至った僕の感情は、とうとう暴発を起こしてしまった。
「大量のサンドスターローが放出されました。
超大型セルリアンの出現が予想されます。
パークの非常事態につき、お客様は直ちに避難して下さい。
ここからの最短避難経路は『ひので港』になります。
非常事態につき、お客様は直ちに避難して下さい」
かばん
「ラッキーさん、今はそんな場合じゃ…」
まったく、かばんの言う通りだった。、
パークを、そしてフレンズを守ろうとしている、
自分より能力的に優れたかばんに嫉妬し、追い出そうというのだから・・・
でも、この時の僕は完全に我を失っていた。
ボス
「だめです。
お客様の安全を守るのが、パークガイドロボットのボクの努めです。
直ちに避難して下さい」
どの口が言うんだろう?
今更なにを取り繕っているのだろう?
僕の本心は・・・
「どうせかばんは。
ミライと同じように。
そしてお客さんがおうちにおかえりになるように。
僕たちを捨ててパークを出ていくんだ!」
ーのクセに・・・
かばん
「ラッキーさん、ぼくはお客さんじゃないよ・・・
ハッとした。
やっと気付いた。
そうだ。
叶うことのないパークガイドの立場にしがみついていたのは僕だ。
『パークの掟に縛られること』に不満を持ちながら変えようとしなかったのは他ならぬ僕だ。
僕(しもべ)に甘んじていたのは、この僕の方だ。
だけど、
かばんは、
サーバルは、
お客とスタッフではなく、
上も下もなく、
同じ目線で僕と接してくれていたじゃないか!
かばん
「・・・みんなにすごく助けてもらったんです。
パークに何か起きてるなら、みんなの為に出来ることを…したい」
「・・・留守をよろしくね。
そしてラッキー、私はあなたとも出会えて本当に幸運でした。
私はもう、あなたに何もしてあげられないけど・・・
これからは、ガイドとかフレンズとかじゃなく、あなたの思うままに生きて欲しい」
なぜ忘れていたのだろう?
こんな大事なことを・・・
やっと冷静さが戻ってきた。
多分、ミライとの繋がりは『ガイドであること』しかない、
それを捨てたらミライとの別れを認めてしまうことになる、と思い込んでいたからだろう・・・
自分を偽ることで自分を守ろうとして、大事なものを見失っていた。
そし目の前の大事なものを自分から失おうとしていた・・・
僕は、かばんとミライを重ね合わせて見ていたことを今更ながら申し訳なく思った。
ミライはヒトの原作で、かばんはフレンズ。
同じでありながら違う存在なのだ。
そんな簡単なことに気付かなかった自分が情けなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
でもかばんは、サーバルは、そんな僕のそばに居てくれた。
僕の居場所を作ってくれようとしていた。
僕の居場所を守ってくれようとしている。
ここを離れる決意をしたミライと、島を出ることを諦めたかばん。
どちらの選択が正しいかは分からない。
それぞれに出来ることを精一杯しているだけだ。
それなら僕は…?
いや『ボク』にしか出来ないことは・・・?
「分かったよ、かばん。
かばんを暫定パークガイドに設定。 権限を付与・・・」
実を言うと、そんな権限はボクには無い。
でも敢えて、そうウソをついた。
1つはフレンズたちを守ってくれるであろう、かばんに自信を持って行動してもらうため。
だからフレンズより格上に。
もう1つはボクがこれからやろうとすることに異を唱えられては困るから。
だから正ガイドであるボクの下に置いた。
誰に認められなくても、自分でそう決めた。
利用されるのではなく、利用する。
これまでは従僕として盾になる立場を求められていたが、
これからは上の立場としてフレンズたちを守る。
それがパークのガイドのもう1つの意味『導き手』としてのボクの役目!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作戦会議は、かばんに助言するという形で、実質ボクが支配していた。
黒セルリアンは最初からボクが刺し違えるつもりでいた。
しかし黒セルリアンの能力は想定外だった。
サーバルが、そしてかばんが「ああいう行動」に出るのも想定外だった。
緊急通信で他のLBに助けを求めていたところを博士たちに見つかったのも想定外だった。
かばんの救出には成功したとはいえ、そのために多くのフレンズを危険に晒すことになった。
やはりボクはガイド失格なのかもしれない・・・
でも当初の予定通り、黒セルリアンを道連れに炎に包まれた船ごと沈みながら、
フレンズの誰も欠けることなく守り切る、という最低限の役目を果たせたことを誇りに思った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーはずだった。
僕は砂浜に横たわっていた。
ボディこそ失っていたもののメモリーも無事だ。
「3人での旅、楽しかったヨ」遺言 のつもりでもあった。
あの時のセリフは思わずこぼれた本心だ。
そして
恐らく耳の良いサーバルに聞かれたことでフラグが折れてしまったのだろうか。
沈みゆく船では、
「サーバル、かばん、
キミたちに出会えて、とても幸運だったよ。
もうキミたちに何もしてあげられないけど・・・
ボクのことは忘れて思うままに生きて欲しい」
ほとんど聞こえなかっただろうけど、そんな遺言のやり直しまでしたのに・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2人はボク(の残骸にしか見えないもの)を手に泣いている。
『感動の再会』を演出するには良い頃合いだろう。
タイミングを見計らって、あえて日常的なセリフで声を掛けた。
ボス
「おはよう、かばん」
サーバル
「うわぁぁぁぁ! シャベッタァァァァァ」 (ノ・ω・)ノ⌒◇
ぽちゃん…💦
ボス
(ヲイ! サーバル、てめぇ! せっかく生き返ったのに殺す気か!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
かばんたちは予備のボディに換装できないかと知恵を絞ってくれたが、ボクは謹んで辞退した。
むしろこのままの方が、かばんとは離れずに済むからだ。
ついでにボクは、かばん・サーバル・博士・助手に「フレンズと喋ることが出来る」というネタばらしをした。
(そもそもヒトのフレンズである、かばんと喋っていた時点で規約違反だったのだ)
それを聞いて、サーバルは堰を切ったように喋りかけてきたが、
(ほとんどはボクの知っている『この旅』についてのことだった)
そこはネコ科フレンズらしく、一晩話を聞いてやったらまんぞく…した。
面倒だったのは、たまたま『としょかん』に来て、それを聞きつけたツチノコだった。
禁則事項(今となっては有名無実だが)にズバズバ切り込んでくるのはまだしも、
『パークに関するありとあらゆることについて』を尽きることなく聞いてくるのだ。
見かねたかばんが
「ご自分で調べて発見した方が達成感があるんじゃないですか?」
と助け船を出してくれたおかげでやっと落ち着いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこともあって
『限定的であればフレンズと喋れる』
ところを他のフレンズたちの前で見せておいた方がいい、と博士たちが言い出した。
確かにリカオンなんかにバレたら大変なことになるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うーがお たべちゃうぞー」
「たべないでくださーい」
「サーバル、タベチャダメダヨ」
あんなに練習したはずなのに、ちゃばんちゃんたちの演技力ぅは壊滅的だった。
おかげで、つられたボクも機械的な反応になってしまった…
このやりとりは、このあと他の何人ものフレンズに付き合わされたこともあって、
ボクの中では思い出したくもない黒歴史だ・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅ、最後に一回は乗っておかなくちゃね・・・」
サーバルの提案で乗った観覧車でボクは、ミライの声を再生した。
かばんたちには何のことだか分からないだろうけど、ボクにとってはどうしても必要なことだった。
ボクが前に進むために。 ミライとの決別の儀式として・・・
もう、ミライの声を再生することは無い。
<発作>を起こすこともないだろう。
ボクは音声データをメモリー内のフォルダに仕舞い、厳重に鍵をかけた・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうしてLBはミライに Good bye & Thank youを告げたのだった・・・
近日投稿(予定)~エピローグ~に続く・・・
泣いた😭
ラッキーさんには少なからず自我があったようにみえましたから、こんな事を考えてサーバルかばんと一緒に行動をしていたのだと思うと泣けてきます
影の主役ですね
いやぁ・・・
今回はいつものギャグをほとんど封印して心情描写に振ったので、
どんな反応が来るか心配でしたが、伝わって良かったです。
丁寧な心情描写での一期の再解釈、思わず映像が頭の中で構成されるほどに魅力的でした👍
エピローグも待ってます。
そう言って頂けて大変まんぞく…
黒セルリアンを外に出る手段(船)と共に沈めることを提案したかばんは、結局パークに残ることになった。
(かばんを引き留めるためもあって、そう仕向けたのはボクなので少し罪悪感…)
だが外の世界に未練が無いわけではないらしい。
サーバルが昼寝をする時間を見計らっては『としょかん』に通い、
蔵書やパークの過去の記録・資料を読み漁り、
「ヒトについての情報」「他の移動手段」が残っていないかを調べていた。
サーバルも、気配でかばんが居なくなるのを察知できるほどの野生は残っていたので、
そのことには気付いていた。
そこで、サプライズプレゼントをするのだと言う。
目の前にフレンズたちの協力で作られた船を出されては、さすがのかばんも断れないだろうという見立てだ。
サーバルもかばんの性格をよく分かっている。
こはんコンビ、じゃんぐるコンビ、ゆきやまコンビが中心となってバスの改造を進めるのを、ボクも手伝った。
(主にかばんが寝ている夜の間だ)
例えば、潰れたタイヤ(いつの間にか『まんまる』と呼ばれるようになっていた)は
他のバスから取るように言い、地図データも博士たちに渡した。
(博士たちはアライさんたちに任せたようだが、果たして間に合うのだろうか?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
観覧車を降りた後、プレゼント(船)を渡すというイベントは、
かばんも素直に受け取ったことで成功裏に終わったに見えたが、その日の晩のうちに独りで島を出ると言い出した。
恐らく博士たちの『合わないちほーでの暮らしは寿命を縮める』発言が大きいのだろう。
(まったく余計なことを言いやがって、あの長たちは…)
予想できていたとはいえ、このままでは『3人での旅』が終わってしまう。
そこでボクは一計を案じた。
頑固ではあるが、押しには弱い性格であることを把握しているのはボクも同じだ。
そこを突けばいいのだ。
意外だったのはサーバルの反応だった。
一生懸命笑顔を取り繕ってはいたが、かばんの提案をあっさり受け入れた。
(てっきり駄々をこねる→かばんが宥める、というやり取りを一度はすると思っていた)
だが、一方のサーバルも付いて行きたい気持ちを無理して抑えているのは見れば分かる。
そこを突けばいいのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ボクは、まず
「ゴコクエリアにはセルリアンが大量にいるらしい」
などと適当なことを言ってサーバルの不安を煽った。
更に『おともだち』の上位互換に『ふうふ』という関係があるのだが、
一定期間以上離れ離れになってしまうと効力を失ってしまう。
かばんはサーバルにその資格があるかを試そうとしている。
こんな回りくどい方法を取っているのは照れてるだけだ、と吹き込んだ。
サーバルはあっさり信じ、こうざんのガケノヴォリ並みにやる気を漲らせていた。(ちょろい)
そして、としょかんコンビ、ばすてきコンビ、LBたちも動員して客車の改造に当たらせ、
サーバルには、かばんを後から追うよう指示した。
サーバルが付いてきてしまえば、かばんも性格的に追い返したりは出来ないはずだ。(ちょろい)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ついに出発の日がやってきた。
しんみりとした空気が『みなと』を覆っている。
フレンズたちはそれぞれ思い出を語ったり、はなむけの言葉を贈ったりと別れを惜しんでいた。
演技力ぅですかねぇ…
この後の展開を知っている(というか演出した)ボクは、笑いをこらえるのに必死だった。
一方のかばんも、すっかり上達したキノヴォリを披露し、一人でも大丈夫なことをアピールしている。
フレンズたち
「おおーー!」
ダメだ、まだ笑っちゃダメだ・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かばんは、やっと船に乗り込んでくれた。
「バスのときと ほとんど変わらないよ。 じゃあ、行こうか」
操作に戸惑っているかばんに、そう言葉を掛けたが、ぎこちなくなってしまったかもしれない。
ジャガー
「おーい、平気かー!」
ツチノコ
「だいじょぶそうか~!?」
カバン
「あは、あははは」
(なにわろとんねん、こっちは必死で笑いをこらえとんのに)
船
「ビ、ビーー!」
キョウシュウエリアが瞬く間に小さくなっていく。
かばん
「ラッキーさん、島が見えてきたよ。
あの島にも名前ってあるのかな?」
ボス
「ゴコクエリアだね。
管轄が違うから僕も詳しく知らないけども。
キョウシュウと同じように幾つもちほーがあったり・・・
今もフレンズがいる可能性があるね」
(・・・・・・)
サーバルの乗る客車が追い掛けてきたのをGPSで把握した。
そろそろ頃合いか・・・
「デデ…デンチ・・・ バスの電池が…」
ちょっとわざとらしくなってしまったかもしれないが、充電が切れたフリをしてバスを止める。
かばん
「えぇ… ここで!?」
思った通り、かばんはちっとも疑っていない。(ちょろい)
サーバル
「ストップ、ストーップ!」
がしゃ~ん!
(お。 追い付いてきたな)
かばん
「うぇっ!?
あ、サーバルちゃん、みんな~!」
(ん? みんな?)
見るとアライさんとフェネックまで同乗している。
「ちょ…! なんで付いてきてんの!?」
これじゃ『3人での旅~第二章~』計画が台無しじゃないか!
フェネック
「アライさんがどうしても『ふねてき』なものにも乗りたいって聞かなくてね~
まあどうせ、向こうに着くか着かないかって辺りでなんかやらかして
パーティーを離脱することになるからさ~・・・
アライ
「ふぇねっくぅーー!?」
フェネック
「・・・そしたら3人水入らずの旅が出来るよ~」
! 見透かされてる!?
やはりこの女狐だけは侮れない…!
フェネック
「なんか失礼なこと考えてない~?」
(・・・こぇ~)(;゚Д゚)
????
「なになに? どこ行くのー?」
かばん
「あ、あなたは何のフレンズさんですか?」
サーバル
「おともだちになろうよ」
ボス
「ちょっと! まだ話は終わってないよ!
何、勝手にメンツを増やそうとしてるの!?」
かばん
「たうぇ…」
サーバル
「え~ なんで~? いいじゃなーい」
アライ
「ボスがたくさん喋ってるのだ…」
フェネック
「意外と独占欲が強かったんだね~」
フェネックにだけは言われたかないが・・・
そう。 本来のボクはお喋りだ。 ボクの方こそ、ずっとフレンズたちとお話ししたかった。
それに調子乗りなところもあるし、わがままだし、隠し事もする。
実は、まだサプライズがあった。
メモリーからゴコクエリア以降のガイドデータを全消去したのだ。
(何度も「本当に消去しますか?」と聞かれてブチ切れそうになったが、なんとか丁寧に対応した)
一種の賭けだが、この子たちは呆れはしても怒ったりはしないだろう。
え? なんでそんなことしたのか、って?
理由は簡単だ。
帰ってきた頃にはメモリーの容量は、そんな想い出でいっぱいになっていることだろう。
『ボクのフレンド』たちとの・・・
こうしてLB と愉快な仲間たちのGT (壮大な旅)が、また始まる・・・
・ラッキー=LACKEYだった
・ボスは最初から意思を持っていた
・一期の流れを基本なぞる
・・・ぐらいで、そんなに細かい設定を作らずに書き始めましたが、
途中からはボスの掌の上…と言うか、筆者の思惑を超えてボスが物語をグイグイ『導いて』くれました。
ボスは有能なガイドです!
ちょっと腹黒くても本性は「3人で旅をしたい」なボスの物語、ありがとうございました。
自分の願いを貫くのはキレイゴトばかりじゃないけど、
それが純粋な想いからであれば叶うのがジャパリパークなのです。 きっと…
完結お疲れ様でした
3人目の主人公の心境を垣間見るお話、とても楽しく良い話でした👏
こうやって見てみると、ボスがけものフレンズという物語において必要不可欠な存在だったのだなというのがよくわかる物語でしたね
今頃はゴコクエリアを3人ですっちゃかめっちゃかしていることでしょう…
最後まで読んでいただきありがとうございます
この作品で、さばんなトリオの名は伊達じゃないことを証明できたと思います