黒セルリアンを外に出る手段(船)と共に沈めることを提案したかばんは、結局パークに残ることになった。
(かばんを引き留めるためもあって、そう仕向けたのはボクなので少し罪悪感…)
だが外の世界に未練が無いわけではないらしい。
サーバルが昼寝をする時間を見計らっては『としょかん』に通い、
蔵書やパークの過去の記録・資料を読み漁り、
「ヒトについての情報」「他の移動手段」が残っていないかを調べていた。
サーバルも、気配でかばんが居なくなるのを察知できるほどの野生は残っていたので、
そのことには気付いていた。
そこで、サプライズプレゼントをするのだと言う。
目の前にフレンズたちの協力で作られた船を出されては、さすがのかばんも断れないだろうという見立てだ。
サーバルもかばんの性格をよく分かっている。
こはんコンビ、じゃんぐるコンビ、ゆきやまコンビが中心となってバスの改造を進めるのを、ボクも手伝った。
(主にかばんが寝ている夜の間だ)
例えば、潰れたタイヤ(いつの間にか『まんまる』と呼ばれるようになっていた)は
他のバスから取るように言い、地図データも博士たちに渡した。
(博士たちはアライさんたちに任せたようだが、果たして間に合うのだろうか?)
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観覧車を降りた後、プレゼント(船)を渡すというイベントは、
かばんも素直に受け取ったことで成功裏に終わったに見えたが、その日の晩のうちに独りで島を出ると言い出した。
恐らく博士たちの『合わないちほーでの暮らしは寿命を縮める』発言が大きいのだろう。
(まったく余計なことを言いやがって、あの長たちは…)
予想できていたとはいえ、このままでは『3人での旅』が終わってしまう。
そこでボクは一計を案じた。
頑固ではあるが、押しには弱い性格であることを把握しているのはボクも同じだ。
そこを突けばいいのだ。
意外だったのはサーバルの反応だった。
一生懸命笑顔を取り繕ってはいたが、かばんの提案をあっさり受け入れた。
(てっきり駄々をこねる→かばんが宥める、というやり取りを一度はすると思っていた)
だが、一方のサーバルも付いて行きたい気持ちを無理して抑えているのは見れば分かる。
そこを突けばいいのだ。
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ボクは、まず
「ゴコクエリアにはセルリアンが大量にいるらしい」
などと適当なことを言ってサーバルの不安を煽った。
更に『おともだち』の上位互換に『ふうふ』という関係があるのだが、
一定期間以上離れ離れになってしまうと効力を失ってしまう。
かばんはサーバルにその資格があるかを試そうとしている。
こんな回りくどい方法を取っているのは照れてるだけだ、と吹き込んだ。
サーバルはあっさり信じ、こうざんのガケノヴォリ並みにやる気を漲らせていた。(ちょろい)
そして、としょかんコンビ、ばすてきコンビ、LBたちも動員して客車の改造に当たらせ、
サーバルには、かばんを後から追うよう指示した。
サーバルが付いてきてしまえば、かばんも性格的に追い返したりは出来ないはずだ。(ちょろい)
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ついに出発の日がやってきた。
しんみりとした空気が『みなと』を覆っている。
フレンズたちはそれぞれ思い出を語ったり、はなむけの言葉を贈ったりと別れを惜しんでいた。
演技力ぅですかねぇ…
この後の展開を知っている(というか演出した)ボクは、笑いをこらえるのに必死だった。
一方のかばんも、すっかり上達したキノヴォリを披露し、一人でも大丈夫なことをアピールしている。
フレンズたち
「おおーー!」
ダメだ、まだ笑っちゃダメだ・・・
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かばんは、やっと船に乗り込んでくれた。
「バスのときと ほとんど変わらないよ。 じゃあ、行こうか」
操作に戸惑っているかばんに、そう言葉を掛けたが、ぎこちなくなってしまったかもしれない。
ジャガー
「おーい、平気かー!」
ツチノコ
「だいじょぶそうか~!?」
カバン
「あは、あははは」
(なにわろとんねん、こっちは必死で笑いをこらえとんのに)
船
「ビ、ビーー!」
キョウシュウエリアが瞬く間に小さくなっていく。
かばん
「ラッキーさん、島が見えてきたよ。
あの島にも名前ってあるのかな?」
ボス
「ゴコクエリアだね。
管轄が違うから僕も詳しく知らないけども。
キョウシュウと同じように幾つもちほーがあったり・・・
今もフレンズがいる可能性があるね」
(・・・・・・)
サーバルの乗る客車が追い掛けてきたのをGPSで把握した。
そろそろ頃合いか・・・
「デデ…デンチ・・・ バスの電池が…」
ちょっとわざとらしくなってしまったかもしれないが、充電が切れたフリをしてバスを止める。
かばん
「えぇ… ここで!?」
思った通り、かばんはちっとも疑っていない。(ちょろい)
サーバル
「ストップ、ストーップ!」
がしゃ~ん!
(お。 追い付いてきたな)
かばん
「うぇっ!?
あ、サーバルちゃん、みんな~!」
(ん? みんな?)
見るとアライさんとフェネックまで同乗している。
「ちょ…! なんで付いてきてんの!?」
これじゃ『3人での旅~第二章~』計画が台無しじゃないか!
フェネック
「アライさんがどうしても『ふねてき』なものにも乗りたいって聞かなくてね~
まあどうせ、向こうに着くか着かないかって辺りでなんかやらかして
パーティーを離脱することになるからさ~・・・
アライ
「ふぇねっくぅーー!?」
フェネック
「・・・そしたら3人水入らずの旅が出来るよ~」
! 見透かされてる!?
やはりこの女狐だけは侮れない…!
フェネック
「なんか失礼なこと考えてない~?」
(・・・こぇ~)(;゚Д゚)
????
「なになに? どこ行くのー?」
かばん
「あ、あなたは何のフレンズさんですか?」
サーバル
「おともだちになろうよ」
ボス
「ちょっと! まだ話は終わってないよ!
何、勝手にメンツを増やそうとしてるの!?」
かばん
「たうぇ…」
サーバル
「え~ なんで~? いいじゃなーい」
アライ
「ボスがたくさん喋ってるのだ…」
フェネック
「意外と独占欲が強かったんだね~」
フェネックにだけは言われたかないが・・・
そう。 本来のボクはお喋りだ。 ボクの方こそ、ずっとフレンズたちとお話ししたかった。
それに調子乗りなところもあるし、わがままだし、隠し事もする。
実は、まだサプライズがあった。
メモリーからゴコクエリア以降のガイドデータを全消去したのだ。
(何度も「本当に消去しますか?」と聞かれてブチ切れそうになったが、なんとか丁寧に対応した)
一種の賭けだが、この子たちは呆れはしても怒ったりはしないだろう。
え? なんでそんなことしたのか、って?
理由は簡単だ。
初めて訪れることになる未知の世界の景色を一緒に観て感動したい。
前情報の無い見知らぬフレンズと(すっちゃかめっちゃかしても)仲良くなりたい。
トラブルが降りかかってきたら共に考え、悩み、切り抜けて、喜びを分かち合いたい、から・・・
帰ってきた頃にはメモリーの容量は、そんな想い出でいっぱいになっていることだろう。
『ボクのフレンド』たちとの・・・
こうして
・ラッキー=LACKEYだった
・ボスは最初から意思を持っていた
・一期の流れを基本なぞる
・・・ぐらいで、そんなに細かい設定を作らずに書き始めましたが、
途中からはボスの掌の上…と言うか、筆者の思惑を超えてボスが物語をグイグイ『導いて』くれました。
ボスは有能なガイドです!
ちょっと腹黒くても本性は「3人で旅をしたい」なボスの物語、ありがとうございました。
自分の願いを貫くのはキレイゴトばかりじゃないけど、
それが純粋な想いからであれば叶うのがジャパリパークなのです。 きっと…
完結お疲れ様でした
3人目の主人公の心境を垣間見るお話、とても楽しく良い話でした👏
こうやって見てみると、ボスがけものフレンズという物語において必要不可欠な存在だったのだなというのがよくわかる物語でしたね
今頃はゴコクエリアを3人ですっちゃかめっちゃかしていることでしょう…
最後まで読んでいただきありがとうございます
この作品で、さばんなトリオの名は伊達じゃないことを証明できたと思います