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名無しのフレンズ
2018/08/12 (日) 22:38:56
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長立ジャパリ大学 ねおキャンパス
それは誰もが知るパークの最高学府である
今日は夏休みのミニ講義が開かれていた
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授業科目名: 双極性障害を知る
開講期: みみ歴33年 夏季休暇
曜時限: 今日だけ
講義室: ねおキャンパス学スレ室
単位数: 0.5じゃぱまん
担当教員: キンシコウ
授業概要: 病気について学びましょう
みなさんこんにちは。キンシコウです。
私のことは保健室の先生として知っているかもしれませんね。
まずは初めに出席をとるので、呼ばれたら返事してください。
えー コツメカワウソさん。
はーい
明るい返事で良いですね。
次は、ヒグマさん。
はい。
しっかりしたお返事です。
あとそちらにいるプリンセスさんはお話をしてもらうために来てもらいました。
皆さん、プリンセスさんにも挨拶をしましょう。
よろしくお願いします。
それでは授業について説明しましょうか。
今日は双極性障害という障害のお話をするのですが、もっとも有名な精神疾患の一つの紹介から始めます。
それは、いわゆるうつ病のことです。
うつ病と聞いてどういうことを思い浮かべるか聞いてみましょう。
それではヒグマさん、簡単で構いませんので意見をお願いします。
ああ、そうだな…
すぐに思い浮かぶのは、とてもやる気が無くなっている状態だ。
何か悲しいことがあったりして、元気がすっかり失われているという感じかな。
私もだいたいおんなじだよ。
あんまりにも元気が無くなって、好きだったことも楽しくなくなっちゃうって聞いたことあるな。
二人ともありがとうございます。
今言ったことはうつ病の典型的な症状ですね。
しかし診断にあたって気をつけるべきことがあります。
それは、抑うつ症状が出ているからといってうつ病とは限らないということです。
うつ病の症状なのにうつ病とは限らないのはどういうことだ?
気分が落ち込むなどの状態を抑うつ状態と呼びます。
ここで"うつ"という言葉が使われているので勘違いしやすいのですが、抑うつ状態は他の病気にも見られるのです。
うつ病だけの症状ではないということですね。
そうだったのか。
うつ病以外にどういう病気でその症状が見られるんだ?
"うつ"と聞くとうつ病の印象が強くてな。
結論を先に言うと、今のところはその質問にはっきりと答えることはできません。
抑うつ状態という言葉は広い意味を持ち、健常者が悲しみに暮れる状態も含んでいます。
うつ病の方はその程度がとても重いのです。
多くの精神疾患、あるいは精神疾患でない病気の場合でも抑うつ状態はたくさん報告されています。
医学的にまだ解明されていないところが多いので、落ち込みが激しいからといってうつ病だと診断を下すのは本当は難しいことなのです。
そうなんだ〜。
じゃあ、どうやって「この人はうつ病だ」って見分けるの?
落ち込んでいる人がお医者さんにきても、なんの病気かわかんなさそーに聞こえるよ。
うつ病に限りませんが、世界的な診断のガイドラインがあります。
こういう症状がいくつあったらこの病気です、というふうに。
ただ、正確な診断は簡単ではありません。
そもそも精神疾患は発症の流れや原因が完全に解明されていないので、何が正しいのか誰もわからない状況もあるかもしれないのです。
さて、今日の本題に移っていきましょう。
うつ病ととても間違えられやすい病気、双極性障害です。
名前を聞いたことありますか?
そんな難しそうな名前聞いたことないよ。
なんだかとても怖そう。
この名前は馴染みがないかもしれませんね。
少し前までは躁うつ病と呼ばれていました。
これなら聞いたことがあるのでは。
それなら少し知っているぞ。
確か、外では明るく振舞っている奴が家に帰ると意外と静かだとかなんとか…
ちょっと違いますが、大きく外れてもいませんよ。
躁とうつを繰り返す病気のことです。
躁状態のときは、やる気が満ち溢れています。
うつ状態はうつ病の方と同じです。
数ヶ月から数年ごとに二つの状態が切り替わって、それが続くのが症状です。
へ〜
元気な時期があるなら、ずーっと落ち込んでいるよりかは良いのかな。
元気というと良く聞こえますが、躁病という名前がつくほどですからね。
患者さんによって躁状態の程度は違いますが、軽躁の方だと買い物が増えたり社交的になったりします。
軽くない躁状態の方は、ろくに眠らずバリバリはたらいたり、後先考えず浪費したり、とても気分が良さげだったのに急に激昂したりします。
さすがにそこまでだと困るな…
とても元気からとても憂鬱を繰り返すとは、本人も周りも大変だろう。
しかし、そんな様子があるならうつ病と間違えることもなさそうだが。
ええ、その人を何年も観察していたら気づくのですが…
患者さんは躁の時に病院に来てくれないのですよ。
明るい気分になっているから自分が病気だなんて考えないのです。
軽躁だと周りの方は気づきませんし、重い躁だと周りが気づいても本人は「自分は正常だ」と言って怒り狂うことも。
なんて獰猛さだ。
自分が正しいと信じている人間はいつも恐ろしいものだな。
とはいえそういう人も時間が経てばうつ状態になるのだろう?
一体どういう風の吹き回しなんだ?
そうですね、これは実際に体験してみないとわからない気がします。
普通の人は何か理由があって気分が上下するものですから。
授業の初めに紹介したとおり、ここからはプリンセスさんにお話してもらいましょうか。
もうお気づきかもしれませんが、プリンセスさんはかつて双極性障害と診断されました。
そして今も病気と付き合っておられます。
患者さんの声を聞いて、理解を深めてもらえたらと思います。
プリンセスさん、教壇まで来てもらえますか。
ええ。
大勢の前に立つのは慣れているけど、こうして自分の体験を話すとなると緊張するわね。
それじゃあ何から話そうかしら。
そうね、振り返ってみると昔からそんな傾向があった気がするの。
思い当たるのは5年ぐらい前からになるかしら-––
毎年冬になるとだんだんと憂鬱な気分になることに気づいたのよ。
寒い時期はずっと暗い気分で、暖かくなってくると元気になるの。
でもそれってそんなに変なことじゃないでしょ?
私は当たり前のことなんだと思って過ごしていたわ。
大きな問題もなく時間が過ぎたのだけれど、ある時を境に気分が変になってしまった。
あれは夏の、とても元気な時期だった頃。
PPPを再結成しようと張り切っていた時期よ。
ある日私は…
…
大丈夫ですか?
無理に思い出さなくていいんですよ。
え、ええ。 大丈夫よ。
とにかく、とても嫌なことがあった。
しばらく憂鬱な日々を送った。
いつもの私なら何日か過ぎれば元気になるはずなのに、その時は違ったわ。
やる気が言葉通りゼロになったの。
ただ何もせずぼーっとして1日が過ぎて、寝たきりの生活。
そっかー、そんなことがあったんだ。
落ち込んでいるときでもお外に出た方が気分転換になりそうだけど。
私がプリンセスの側にいたら、いっしょに遊んであげたのにな。
ふふ、ありがとう。
でももしそうしてくれても私は反応しなかったでしょうね。
その時の私の心は「消えてしまいたい」以外何もなかった。
外に出るどころか手を動かす力も入らない程よ。信じられるかしら。
友を失い悲しむ人々を今まで見てきたが、時が経つにつれて皆受け入れていった。
悲しみも時間が解決してくれるものだと思っていたが、そこまで落ち込んでしまうとはなあ。
気持ちなど勝手にそうなってしまうものなのだから、どうしようもできんな。
その後は結局、友達がやってきて私を病院につれていったみたい。
あんまり覚えていないけど。
それから薬を飲まされるようになったわ。
不思議なことに小さな粒を飲むだけで少し気持ちが上向くの。
自分の心が薬で変わるなんて今でも怖いわよ。
でも、時が過ぎて少しずついつもの自分に戻っていって、その時は安心したわね。
うつ病に対する薬はいくつかあって、患者さんとの相性もあります。
なかなか薬の効果が出ない場合もあるので難しいところです。
私はその時の薬と相性が良かったのだろうけど、それは運が良かったのか悪かったのか。
何ヶ月か経って、そう、だいぶん元の調子に戻った頃ね。
突如私の心に何かが舞い込んできた。
雷に撃たれたみたいに本当に突然、気力が湧き上がってきたわ。
神様がやる気スイッチでも押したのかな?
自分で押せたら便利ね。
もうそこからはバリバリ動けたわ。
周りも驚いていたし、私もなにが起こったのかよくわからないけれど、とにかくこれで治ったのだと信じてた。
薬なんて要らなくなったし、病院にも行かなくなった。
思い返せばこれが良くなかったのでしょうね。
抗うつ薬は気分を上げるものですから、躁状態がある双極性障害の方に使ってはいけないのです。
躁を助長させてしまうのですね。
それにうつ病と双極性障害は違うメカニズムで発症すると言われていますので、同じ薬というわけにはいきません。
後からわかることだけれど、私に抗うつ薬はだめだったみたい。
あちこち動き回って、この時は特に大きな問題は起きなかった。
しばらく月日が流れて、また不思議なことがあった。
今度はやる気スイッチがオフよ。
なんて目まぐるしい。
突然気持ちが切り替わるなんて信じられんな。
落ち込んでいたと思えば急に力がみなぎるだなんて、ちょっと怖いぞ。
私に言われても困るわよ。
そんな感じで、でも最初の時よりは落ち着いた暗い生活が再開した。
病院に行こうかちらりと悩んで、でもきっとすぐ治ると信じて結局行かなかった。
本当に馬鹿ね。
やっぱり行く元気がなかったの?
うーん。それもあるかもしれないけど。
自分が病気だなんて信じられなかったかしら。
ちょっと気持ちが沈んでいるだけって思ってしまうの。
ろくに動けないほど気分が沈むなんて普通じゃないのにね。
まあこの後も似たような感じかな。
もう目まぐるしく元気と憂鬱を繰り返し。
1日のうちに繰り返した日はとてもよく覚えてる。
私いったいどうしちゃったのってね。
ようやく自分でもおかしいと認めたわ。
数ヶ月から数年単位で繰り返す人が多いのですが、プリンセスさんのように短期間の周期の方もおられるようです。
ラピッドサイクラーと呼ばれています。
なんとなく想像できると思いますが、そのままだと心が擦り切れてしまいます。
心を削りながら楽しいのって楽しいのかな。
薬物で異常に楽しくなってるのが楽しいかどうかみたいなものか?
楽しいって誰が決めるんだろうな。
そして病院に行って、そこで双極性障害という診断を受けた。
なんでこんなことに?と聞いたのだけど原因はわからないようね。
新しくもらった薬は、前の気分を盛り上げるのと違って、平常心に近づけるものになったわ。
双極性障害は遺伝子の影響が比較的強いと言われています。
プリンセスさんは以前から気分の波があったようで、それがストレスをきっかけに爆発したのかもしれません。
その先は大きな問題もなく今に至る と。
症状がひどい人は無理やり入院させられて治療するみたいよ。
私はそこまで大きな迷惑をかけることなく済んでまだ良かったわ。
最近は落ち着いているけれど、やっぱり波は避けられない。
とはいえ大きな問題もなくなったから個性として受け入れている。
お酒に依存気味なのはなんとかしないといけないけど…
私の話はこれぐらいかしら。
ありがとうございました。
とても有意義なお話が聴けたことを感謝します。
ありがとう。
ありがとー。
お話の中に今の医療の問題点が一つ出てきました。
それは医療ミスがあることです。
ガイドラインがあるとはいえ、精神疾患を正確に判断するためにはまだまだ進歩が必要でしょう。
もちろん研究は進んでおり、客観的なデータを基に診断できる技術も進んできています。
今回に関係ある例を1つ、うつ病と双極性障害の患者群の違いをMRIを用いて識別する技術があります。
ただ、一般的な病気の違いを見分けることができるようになっても、臨床への応用はもう少し先になりそうです。
やっぱり大変なものなんだな。
我々は体のこともよくしらない、自分の心さえわからないものだ。
この姿になってから人の大変さを思い知るよ。
病気を治せるようになるのも大切だけど、
病気にならないようにするのも大事だよね。
私はこの体になって笑えるようになって、とっても元気なんだ♪
そうね、何事も考え過ぎない方が良いわよ。
でもどうしても悩んでしまう人もいるから、そういう人を責めないでちょうだい。
つらい時に必要なのは厳しさじゃなくて優しさよ。
心の病と呼ばれることもあるので誤解されがちですが、うつ病等は根性では解決しない脳の異常です。
皆さんも何かおかしいと思うことがあれば、気軽にお医者さんに行きましょうね。
風邪をひいたら病院に行くのと一緒です。
まだ心の"風邪"で済んでいるうちに行かないと大変なことになりますよ。
このあたりで授業は終わりましょうか。
皆さん、安全で楽しい夏休みをすごしましょう。
それではごきげんよう。
おわり