「神はいる」 ぼくは、よく先輩の家に入り浸っていた。本を読んだり、めいそうをしたり。 やたら物知りな先輩は話が尽きない。ぼくもなにか面白い話を持っていくと、楽しそうに乗ってくれた。 先輩といっても、同じ職場や学校に居たわけじゃない。本当に年上かもわからない。ただ、なんとなくそう呼んでいるだけだ。 その先輩が何度も言うのが、「神はいる」だ。 「神と言っても、神話の神だけじゃないよ。要するに、不思議な力だ」 ぼくは、正直よくわからなった。 「ほら、敷居を踏むなとか囲炉裏(いろり)には神様がいるとか、はたまた豊作や雨を願ったりとかそういう神だよ」 「……いるんですか?」 そして、ある日言うのである。 「神を見せてあげよう」 と。
指摘ありがとナス!
Yも美術は苦手だからあんまり変なこと言えないけど 足がドラえもんなのだけは直したほうがいいと せっかく手は描けてんだから
問題点おしえてナス!(無能)
その前に下半身をどうにか、しよう!
そうでもない
なんか胸あたりもニズゼルファっぽい…ぽくない?
なんか見たことある足だと思ったら ドラクエのキラーマシンだったわ
百合☆
ダークマターだす
エグゼイチュ
おまけ
尚蚊要素ゼロ 羽描き忘れたゾ…
ドイツでか
つよそう
かっくいい
え、マジ上手
ユキメノコかわいい
「ねーナユタ」 リカが肩をつつく。 「あの踊り、不思議だったよね」 「今思うと……ちょっと怖い」 あのときには全く感じなかった。なにも感じず、ただひかれていた。 リカもその怖さがわかるようで、ちょっと肩をすくめる。 「次行ったら、最後まで踊ろうね」 行く気満々なのにあきれるが、不思議と笑いが込み上げてきた。 「そのときは着いて行く」 「あったりまえじゃんかー」 そして、一緒に笑った。 ふと、お面のことを思い出した。あのお面はどこに落としてきたんだろう。三人とも別で、青とピンクと黄色だったのは覚えている。でも、あの死のにおいがする踊りを思い出しそうで、なくて正解だったかも……なんて思ったり。 シンオウ怖い話/異教
この話に続きはない。何もわからなくて、終わり。サヤはこれからまた調べるかもしれないけど、たいしたことはないだろう。 そういえば、あのとき商店で道を教えてくれた二人組……。彼らはどうしたんだろう。数日後、家に帰ってからそう考えていると、サヤがパソコンの画面を見せてきた。 「これ、あの人たちですかね」 どこかの情報交換ページらしい。「祭りに行ってきたけど、あの三人大丈夫だったかなあ」と書いてある。 「もしかしたら、この人のほうが詳しかったりして」 そう言うと、サヤはじっと画面を見つめて、うなずいた。 「いつか、話をきいてみましょう」 長旅はもうつかれた、ただ、面白いならぜひ着いて行こう。
リカだった、隣にサヤもいた。 わたしはうなずく。 「行こう」 リカが言うと、三人で人混みの中を去った。 ムクホークに乗る。地面が遠くなる。 「なんだか、懐かしいような、不思議な感じがしたな。もっと……踊っていたかった」 「何があったんです?」 「わからない。人を探していたようだったけど」 考えてみたら、ただ人に呼ばれただけなのに逃げてきてしまった。何が起きたのかも気になったが、これではわからない。 「結局、なんのお祭りなのかわかりませんでしたね」 「でも踊れて楽しかったよ!」 リカがさっきの踊りのまねをしようとする。ムクちゃんがバランスの変化を感じたのか、戒めるように鳴いた。 わたしは日の沈んだ山脈の赤い空を眺める。 「少し、わかった気がする」 「どうしました?」 「さっき、死者と踊るって言ってたよな」 「ええ」 「本当にそうなのかもしれない」 あの薄暗がりのなかで、昼と夜の間で、ふと、門の影を思い出す。 「あの門は、どこを向いていたんだろう」
見よう見まねで踊っていると、輪の外が騒がしいことに気が付いた。何人か面を手に持った人が誰かを探すように走っている。視界の隅で話し合っている二人組が見えた……お面越しに目があった。 一人が近づいてきて、輪からわたしを軽く引っ張る。 「こっちに来なさい」 「……」 わたしは輪を振り返る。無言でいると、もう一度、来なさいと言ってきた。 「あの……えっと」 すると、もう片方の腕をつかまれた。
その時、大きな太鼓の音が響いた。 「お! 始まった始まった??」 リカがテンションを上げて立ち上がる。 夕闇の残滓の中、お面を着けた人々が祠に集まり始める。火のあかりに祠の門が黒い影を落としている。 歌はない。祝詞もなかった。時折掛け声があるのみで、ただ太鼓と金物、聞いたことのない音程の笛が響いている。いつの間にか始まっている踊りに、サヤがくれたお面を掛け、誘われるように輪に入っていた。
しばらくリカと世間話をしたりゲームをしたりして時間をつぶしていると、少しずつ人が集まってきた。気が付くと空は夕焼けに染まっている。 「もうそろそろかな」 「うーん、サヤ遅いね~」 なんて言っていると、集まる人に混ざってサヤがやってきた。 「すみません、なかなか聞き出せなくて……神様の名前くらいわかるかと思っていたんですが」 どうも、祭りのことを老人にきいても、由縁や祠の縁起にまつわる話を知っている人は居なかったようだ。 「宮司の家も見つかりませんでした。お手上げです。話してくれるのは踊りのことばかりです」 「そうそう、どんな踊りなんだ。踊るからには多少知っておきたいんだけど」 「詳しい振りはわからなかったんですが、踊りについてはいろいろ聞きましたね。死んだもんと踊るだの不思議なことが起こるだの」 そっちには興味がないらしいが、さらっとすごいことを言ってる気がする。 「え、それってどういう……」
「これがその祠?」 「そのはずですが……」 集落の外れの広場の中央。そこにあったのは祠……というより、小さな門のような構造物だ。 「他に社殿があるのかも」 と、祭り前の人のいない敷地を探すも他に建物はない。いくつか住民の物なのか小屋があったけれども、当然社殿などではなく、祭神の手掛かりはない。念のために藪(やぶ)の中もポケモンの手を借りて探るが無駄足だった。 「はぁ、姿くらいは拝めるかと思っていたのですが」 と、最初の祠を見上げながらため息をつくサヤ。 「神様の像くらい彫ってくれればいいのに」 リカがつまらなそうに門の各所をのぞいている。 「まあ、しかたないです。これから聞き込みをしてくるので、ここで待っていてくださいね」
地図だった。 詳細だ。わたしたちが歩いてきた道、この商店がすぐわかる。いくつかの家には現在の当主だろうか、名前が書いてある。いったいどこが作ったのだろう。もちろん、タウンマップの延長といった規模ではない。少なくとも個人名らしきものが書かれている以上は、もっと念入りな調査に基づくものだろう。 「祭りをするのはこの集落の端の祠だ。ここ」 地図の一か所を指でさす。 「今いるのはこの商店。以上だ」 彼は紙をしまい、今度こそ立ち去った。なにやらもう一人と言い合っているようだが、聞き取れずよくわからない。 「紙ごとくれればいいのに」 とリカが文句を言う。 「渡せない事情があるんでしょう。ただ、だいたいわかりました」 サヤはそういうと、小腹を満たすため商店に入っていく。店頭のお婆さんになにやらきいていたようだが、顔を見る限り収穫はあまりなさそうだった。 「場所はわかってますし、大丈夫です……でも」 「どうしたの?」 「いや、どんな祭りなのかとたずねたんですが、『もどりまつり』だと言ってたんです」 「もどり? 神様が戻ってくるからお祭りするってことかな」 「そうかもしれませんね。普段は違う場所にいる神様を迎え入れるお祭りなのかも」 話しながら件の祠のあるという村の東端へと歩く。入ってきた方向と反対側の端。 「もう行くんだ」 「人が少ないうちに調べたいじゃないですか」
その小さな商店に近づくと、中から二人組が出てきた。 サヤがさっそく話しかける。 「あの、こちらのかたですか?」 すると、一人が答える。 「いや、外からきた。君たちも?」 「はい」 サヤが言うと、その人はふーんとうなずきながらサヤにきいた。 「お祭りを見に来たの?」 驚いた。どうしてわかったのか。有名なお祭りなんだろうか。 「気を付けたほうがいいよ」 彼がそう言って、二人組は去っていこうとする。 「どこでやるんですか?」 サヤが引き留めた。 「うーん」 さっきの彼が悩むように唸(うな)ると、一枚の紙をポケットから出した。近づいてそれを見る。
いつものように空を飛び、何度かポケモンセンターに泊まり、どうろをたどってリッシこのほとりをこえ、214ばんどうろに降り立つ。 そのどうろの途中で右に見つけた狭い道。そこから先の森の中にその集落はあった。 来るまでに何度か行き来する車とすれ違った。歩いていると、ミミロルと散歩する人とすれ違った。田舎ではあったが、ひとけはあるようだ。大きな街から離れていることもあり、人の少ない寂れた村落を想像していたので驚いた。ところどころ真新しい家も建っている。 「祠っていうのはどこにあるんだ?」 「詳しい地図があるわけじゃないのでよくわからないのです。探しましょう」 集落の幹線となっていると思しき道をみつけてそれに沿って歩くと、商店などが並ぶ道幅の広がった場所に出る。ここの中心地に近いのだろう。
「そうです。神話に語られ、カンナギタウンの壁画などにあらわれる二柱の神です」 サヤは右手の指を二本立てる。 「時間も空間もない虚無の混沌の中、最初に生まれた神が自らの分身を生み、時間と空間が動き出した。このときの分身がその二神です。でも……」 サヤは三本目の指を立てた。 「もう一柱、分身が生まれたという神話もあるんです」 「初めて聞いた」 「前に姿を変えるポケモンの話を少ししましたよね。そのポケモンこそ三柱目の分身ですよ」 なるほど、わたしはサヤの言いたいことがわかってきた。 「つまり……」 「ええ、シンオウにはいろんな言い伝えや神話があります。わたしたちとは違う神を祀っているところだってあります。先ほどのお祭りもその一つです」 それがサヤの目的だった。踊りの中心に祀られる三柱目の神、その姿を見たいのだ。わたしは、その姿を変えるポケモンの話をしたときにリカが言った「骨が肉をつけて帰ってくる」話を思い出して背筋がぞくりとした。いったい、それはただの踊りなのだろうか。
「祠? 踊り?」 リカが目を輝かせてる。 「確かに、こっちだとあまりそういうお祭りとかないからなあ」 ここソノオでは、花を届けてくれたポケモンたちへの感謝祭はあれど、ハクタイやカンナギであったりなかったりするような神に対するお祭りはない。せいぜい神棚にお詣りする程度だ。同じシンオウの中でも文化にはばらつきがある。 ……と考えてるうちにいくつか疑問が浮かんできた。 「それで、どう面白い祭りなんだ?」 まさか、サヤが面白い祭りと誘っておいて、それだけではないだろう。 ええ、とサヤは話を続けた。 「この家には神棚がありますよね。あれはどういう神様か知ってますか?」 サヤは部屋の隅の神棚を見た。左右に対をなす木彫りの神が立っている。 「時空の神様だろ。『はじまりのはなし』だ」
ある夏の日だった。 「旅行しましょう」 サヤがわたしたち二人にそう言うと、三日ほど泊まるから準備してと言うのだ。 「どこに行くの?」 唐突なサヤに驚いたリカが、あぐらをかきながらきく。 「この時期に面白いお祭りをするところがあるんだそうです。場所はずっと東です。リッシこって知ってます?」 「リッシこって……ノモセより東じゃないか」 驚いた。また遠出か。 「そこからさらに東に洞窟があります。そのあたりの集落です」 ため息が出た。こいつも筋金入りだな。 「でもお祭りかー。楽しそうだなあ」 「いったいなにをするんだ?」 「祠の周りで踊ったりするらしいです。見て帰るだけというのも失礼な気がするので、一緒に踊りましょう」
あー、もう
もうひとつ
かわうい
やべえめっちゃかわいい。やばい……
いつ見ても草生える
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「神はいる」囲炉裏 には神様がいるとか、はたまた豊作や雨を願ったりとかそういう神だよ」
ぼくは、よく先輩の家に入り浸っていた。本を読んだり、めいそうをしたり。
やたら物知りな先輩は話が尽きない。ぼくもなにか面白い話を持っていくと、楽しそうに乗ってくれた。
先輩といっても、同じ職場や学校に居たわけじゃない。本当に年上かもわからない。ただ、なんとなくそう呼んでいるだけだ。
その先輩が何度も言うのが、「神はいる」だ。
「神と言っても、神話の神だけじゃないよ。要するに、不思議な力だ」
ぼくは、正直よくわからなった。
「ほら、敷居を踏むなとか
「……いるんですか?」
そして、ある日言うのである。
「神を見せてあげよう」
と。
指摘ありがとナス!
Yも美術は苦手だからあんまり変なこと言えないけど
足がドラえもんなのだけは直したほうがいいと
せっかく手は描けてんだから
問題点おしえてナス!(無能)
その前に下半身をどうにか、しよう!
そうでもない
なんか胸あたりもニズゼルファっぽい…ぽくない?
なんか見たことある足だと思ったら
ドラクエのキラーマシンだったわ
百合☆
ダークマターだす
エグゼイチュ
おまけ
尚蚊要素ゼロ
羽描き忘れたゾ…
ドイツでか
つよそう
かっくいい
え、マジ上手
ユキメノコかわいい
「ねーナユタ」
リカが肩をつつく。
「あの踊り、不思議だったよね」
「今思うと……ちょっと怖い」
あのときには全く感じなかった。なにも感じず、ただひかれていた。
リカもその怖さがわかるようで、ちょっと肩をすくめる。
「次行ったら、最後まで踊ろうね」
行く気満々なのにあきれるが、不思議と笑いが込み上げてきた。
「そのときは着いて行く」
「あったりまえじゃんかー」
そして、一緒に笑った。
ふと、お面のことを思い出した。あのお面はどこに落としてきたんだろう。三人とも別で、青とピンクと黄色だったのは覚えている。でも、あの死のにおいがする踊りを思い出しそうで、なくて正解だったかも……なんて思ったり。
シンオウ怖い話/異教
この話に続きはない。何もわからなくて、終わり。サヤはこれからまた調べるかもしれないけど、たいしたことはないだろう。
そういえば、あのとき商店で道を教えてくれた二人組……。彼らはどうしたんだろう。数日後、家に帰ってからそう考えていると、サヤがパソコンの画面を見せてきた。
「これ、あの人たちですかね」
どこかの情報交換ページらしい。「祭りに行ってきたけど、あの三人大丈夫だったかなあ」と書いてある。
「もしかしたら、この人のほうが詳しかったりして」
そう言うと、サヤはじっと画面を見つめて、うなずいた。
「いつか、話をきいてみましょう」
長旅はもうつかれた、ただ、面白いならぜひ着いて行こう。
リカだった、隣にサヤもいた。
わたしはうなずく。
「行こう」
リカが言うと、三人で人混みの中を去った。
ムクホークに乗る。地面が遠くなる。
「なんだか、懐かしいような、不思議な感じがしたな。もっと……踊っていたかった」
「何があったんです?」
「わからない。人を探していたようだったけど」
考えてみたら、ただ人に呼ばれただけなのに逃げてきてしまった。何が起きたのかも気になったが、これではわからない。
「結局、なんのお祭りなのかわかりませんでしたね」
「でも踊れて楽しかったよ!」
リカがさっきの踊りのまねをしようとする。ムクちゃんがバランスの変化を感じたのか、戒めるように鳴いた。
わたしは日の沈んだ山脈の赤い空を眺める。
「少し、わかった気がする」
「どうしました?」
「さっき、死者と踊るって言ってたよな」
「ええ」
「本当にそうなのかもしれない」
あの薄暗がりのなかで、昼と夜の間で、ふと、門の影を思い出す。
「あの門は、どこを向いていたんだろう」
見よう見まねで踊っていると、輪の外が騒がしいことに気が付いた。何人か面を手に持った人が誰かを探すように走っている。視界の隅で話し合っている二人組が見えた……お面越しに目があった。
一人が近づいてきて、輪からわたしを軽く引っ張る。
「こっちに来なさい」
「……」
わたしは輪を振り返る。無言でいると、もう一度、来なさいと言ってきた。
「あの……えっと」
すると、もう片方の腕をつかまれた。
その時、大きな太鼓の音が響いた。
「お! 始まった始まった??」
リカがテンションを上げて立ち上がる。
夕闇の残滓の中、お面を着けた人々が祠に集まり始める。火のあかりに祠の門が黒い影を落としている。
歌はない。祝詞もなかった。時折掛け声があるのみで、ただ太鼓と金物、聞いたことのない音程の笛が響いている。いつの間にか始まっている踊りに、サヤがくれたお面を掛け、誘われるように輪に入っていた。
しばらくリカと世間話をしたりゲームをしたりして時間をつぶしていると、少しずつ人が集まってきた。気が付くと空は夕焼けに染まっている。
「もうそろそろかな」
「うーん、サヤ遅いね~」
なんて言っていると、集まる人に混ざってサヤがやってきた。
「すみません、なかなか聞き出せなくて……神様の名前くらいわかるかと思っていたんですが」
どうも、祭りのことを老人にきいても、由縁や祠の縁起にまつわる話を知っている人は居なかったようだ。
「宮司の家も見つかりませんでした。お手上げです。話してくれるのは踊りのことばかりです」
「そうそう、どんな踊りなんだ。踊るからには多少知っておきたいんだけど」
「詳しい振りはわからなかったんですが、踊りについてはいろいろ聞きましたね。死んだもんと踊るだの不思議なことが起こるだの」
そっちには興味がないらしいが、さらっとすごいことを言ってる気がする。
「え、それってどういう……」
「これがその祠?」藪 の中もポケモンの手を借りて探るが無駄足だった。
「そのはずですが……」
集落の外れの広場の中央。そこにあったのは祠……というより、小さな門のような構造物だ。
「他に社殿があるのかも」
と、祭り前の人のいない敷地を探すも他に建物はない。いくつか住民の物なのか小屋があったけれども、当然社殿などではなく、祭神の手掛かりはない。念のために
「はぁ、姿くらいは拝めるかと思っていたのですが」
と、最初の祠を見上げながらため息をつくサヤ。
「神様の像くらい彫ってくれればいいのに」
リカがつまらなそうに門の各所をのぞいている。
「まあ、しかたないです。これから聞き込みをしてくるので、ここで待っていてくださいね」
地図だった。
詳細だ。わたしたちが歩いてきた道、この商店がすぐわかる。いくつかの家には現在の当主だろうか、名前が書いてある。いったいどこが作ったのだろう。もちろん、タウンマップの延長といった規模ではない。少なくとも個人名らしきものが書かれている以上は、もっと念入りな調査に基づくものだろう。
「祭りをするのはこの集落の端の祠だ。ここ」
地図の一か所を指でさす。
「今いるのはこの商店。以上だ」
彼は紙をしまい、今度こそ立ち去った。なにやらもう一人と言い合っているようだが、聞き取れずよくわからない。
「紙ごとくれればいいのに」
とリカが文句を言う。
「渡せない事情があるんでしょう。ただ、だいたいわかりました」
サヤはそういうと、小腹を満たすため商店に入っていく。店頭のお婆さんになにやらきいていたようだが、顔を見る限り収穫はあまりなさそうだった。
「場所はわかってますし、大丈夫です……でも」
「どうしたの?」
「いや、どんな祭りなのかとたずねたんですが、『もどりまつり』だと言ってたんです」
「もどり? 神様が戻ってくるからお祭りするってことかな」
「そうかもしれませんね。普段は違う場所にいる神様を迎え入れるお祭りなのかも」
話しながら件の祠のあるという村の東端へと歩く。入ってきた方向と反対側の端。
「もう行くんだ」
「人が少ないうちに調べたいじゃないですか」
その小さな商店に近づくと、中から二人組が出てきた。唸 ると、一枚の紙をポケットから出した。近づいてそれを見る。
サヤがさっそく話しかける。
「あの、こちらのかたですか?」
すると、一人が答える。
「いや、外からきた。君たちも?」
「はい」
サヤが言うと、その人はふーんとうなずきながらサヤにきいた。
「お祭りを見に来たの?」
驚いた。どうしてわかったのか。有名なお祭りなんだろうか。
「気を付けたほうがいいよ」
彼がそう言って、二人組は去っていこうとする。
「どこでやるんですか?」
サヤが引き留めた。
「うーん」
さっきの彼が悩むように
いつものように空を飛び、何度かポケモンセンターに泊まり、どうろをたどってリッシこのほとりをこえ、214ばんどうろに降り立つ。
そのどうろの途中で右に見つけた狭い道。そこから先の森の中にその集落はあった。
来るまでに何度か行き来する車とすれ違った。歩いていると、ミミロルと散歩する人とすれ違った。田舎ではあったが、ひとけはあるようだ。大きな街から離れていることもあり、人の少ない寂れた村落を想像していたので驚いた。ところどころ真新しい家も建っている。
「祠っていうのはどこにあるんだ?」
「詳しい地図があるわけじゃないのでよくわからないのです。探しましょう」
集落の幹線となっていると思しき道をみつけてそれに沿って歩くと、商店などが並ぶ道幅の広がった場所に出る。ここの中心地に近いのだろう。
「そうです。神話に語られ、カンナギタウンの壁画などにあらわれる二柱の神です」
サヤは右手の指を二本立てる。
「時間も空間もない虚無の混沌の中、最初に生まれた神が自らの分身を生み、時間と空間が動き出した。このときの分身がその二神です。でも……」
サヤは三本目の指を立てた。
「もう一柱、分身が生まれたという神話もあるんです」
「初めて聞いた」
「前に姿を変えるポケモンの話を少ししましたよね。そのポケモンこそ三柱目の分身ですよ」
なるほど、わたしはサヤの言いたいことがわかってきた。
「つまり……」
「ええ、シンオウにはいろんな言い伝えや神話があります。わたしたちとは違う神を祀っているところだってあります。先ほどのお祭りもその一つです」
それがサヤの目的だった。踊りの中心に祀られる三柱目の神、その姿を見たいのだ。わたしは、その姿を変えるポケモンの話をしたときにリカが言った「骨が肉をつけて帰ってくる」話を思い出して背筋がぞくりとした。いったい、それはただの踊りなのだろうか。
「祠? 踊り?」
リカが目を輝かせてる。
「確かに、こっちだとあまりそういうお祭りとかないからなあ」
ここソノオでは、花を届けてくれたポケモンたちへの感謝祭はあれど、ハクタイやカンナギであったりなかったりするような神に対するお祭りはない。せいぜい神棚にお詣りする程度だ。同じシンオウの中でも文化にはばらつきがある。
……と考えてるうちにいくつか疑問が浮かんできた。
「それで、どう面白い祭りなんだ?」
まさか、サヤが面白い祭りと誘っておいて、それだけではないだろう。
ええ、とサヤは話を続けた。
「この家には神棚がありますよね。あれはどういう神様か知ってますか?」
サヤは部屋の隅の神棚を見た。左右に対をなす木彫りの神が立っている。
「時空の神様だろ。『はじまりのはなし』だ」
ある夏の日だった。
「旅行しましょう」
サヤがわたしたち二人にそう言うと、三日ほど泊まるから準備してと言うのだ。
「どこに行くの?」
唐突なサヤに驚いたリカが、あぐらをかきながらきく。
「この時期に面白いお祭りをするところがあるんだそうです。場所はずっと東です。リッシこって知ってます?」
「リッシこって……ノモセより東じゃないか」
驚いた。また遠出か。
「そこからさらに東に洞窟があります。そのあたりの集落です」
ため息が出た。こいつも筋金入りだな。
「でもお祭りかー。楽しそうだなあ」
「いったいなにをするんだ?」
「祠の周りで踊ったりするらしいです。見て帰るだけというのも失礼な気がするので、一緒に踊りましょう」
あー、もう
もうひとつ
かわうい
やべえめっちゃかわいい。やばい……
いつ見ても草生える