「なあ」
考えている途中で、また話しかけられた。
思考をいったん止めて、再び会話に戻る。
「…? 何ですか?」
「もうディナータイムだ、早く食堂に言った方がいい。
ただでさえ冷えてるんだ、冷めた料理なんて食ったら凍っちまうよ」
「あ、はい、少将! 今行きます!」
「おいおい、だからといってそんなに急がなくてもいいぞ。
転んだりして、美人の顔に傷がついたりしたら大変だろ?」
そう言うと、少将はドアを開けて食堂への道を歩いていった。
…さて。 さっき少将は確かに「美人の顔に傷がついたりしたら大変だろ」と言っていた。
ここで重要なのは少将が私の心配をしてくれている事ではなく、
明確に「美人」と言ってくれたことだ。
もしかしたら、ただの紳士的な言動かもしれないし
ただからかっただけかもしれない。
…でも、もし私への好意で言っていたら?
子供っぽい妄想だけど、それでもなんとなく信じずにはいられなかった。
幸いなことに、今夜はクリスマスもとい南極到着を祝うパーティーで
船員のほぼ全員が食堂に集まっているので
まだ少将と二人きりになれるチャンスはある。
考えながらふと上を見てみると、あることに気づいた。
結局のところ… 周りがどれだけ暗闇に包まれていても、
この場所では至る所で光が点っている。
艦橋に、マストの上に、遠くの別の船に。
このタイミングで気づいたのもあるのかもしれないが、
まるで私を応援してくれているみたいだ。
もしも、この明かりがずーっと点いていてくれたら。
あの人を引き付ける雰囲気を持った、
だらしないのか小綺麗なのかよくわからない男に…
「あの、えーと… 付き合ってくれない?」
とでも、言ってみようかな?
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