2時間後、刘梓萱は最前線の野戦指揮基地に回されていた。
もっとも、基地と言っても連日の空爆で
ほんの少しのテントと通信アンテナぐらいしかなかったが。
雲った空を、チェコ軍の攻撃機が我が物顔で堂々と飛行していく。
「畜生、銃弾さえあれば…」
刘梓萱は、ライフルを持ちながら空を見上げていた。
少なくとも、敵機に対する攻撃はうまくいった…
たったの2回だけ。敵機は今までで5回来たが、
3機目に銃弾を叩きこんでそこで弾薬が切れた。
今は仕方がなく狙撃銃を捨て、代わりに死んだ味方から借りた
チェコ製のマークスマン・ライフルを持っている。
味方も対空機銃すら無く、そのせいで昼夜ぶっ続けで爆撃を食らっている有様だ。
そして現在進行形で、彼女の頭上にはありとあらゆる爆弾が降り注いでくる。
しかも、狐を巣穴から追い出すように包囲網の奥から手前に向かってゆっくりと。
「畜生、畜生、畜生…」
イラついているところに、再びチェコ軍の航空機が飛んでくる。
「…死にやがれ、この野郎が!」
そう叫びながら、空に向かって銃を乱射する。
何発かの銃弾は敵機へと向かっていったが、1発も届かなかった。
遠くから爆発音が聞こえてくる。
上空を呑気に飛んでいるパイロットは、
いったいどんな馬鹿らしいことを考えながら任務をしているんだろうか?
この音を聞いて、刘梓萱はそう思った。
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