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【SS】リハビリ用短編「おやすみパークセントラル」【連載中】

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失踪率60%でお馴染みのikapanが贈るリハビリ用短編SS!!

~ジャパリパークの田舎町で女優を目指す少女、カラカルとその親友サーバルの"輝き"を追う旅~

ikapan
作成: 2018/10/19 (金) 19:30:23
最終更新: 2018/10/28 (日) 20:20:34
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1
ikapan 2018/10/19 (金) 20:03:28

予告

白い壁に白いタイル。純白の無機質な空間でカラカルは怒鳴った。

「貴方はいつもそうなのよ!!いつもいつも勝手に決めつけて!!」
「もう結構」

長机に腕組みをした面接官は一言、冷淡に呟いた。

「そんな......まだ半分も.....」
「もう結構です。お帰りください」
「っ.......」

カラカルはうつ向き、台本を握りしめた。潰れてしまうほど

───────────────────────

アイスコーヒーをストローでぐるぐるとかき混ぜながら、カラカルは向かいに座るサーバルに呟く。

「めずらしいわね?あんたの方から呼び出すなんて」
「そう?そうかもね。それより、今日はすっごく大事な話があるの」

神妙な顔つきでサーバルはそう言った。

「なによ?」
「カラカルは"セントラル"に行きたいと思ったことはない?」
「セントラル?そりゃあもちろん行きたいわよ?それがどうかしたの?」
「実はね.....」
「......?」
「わたし、セントラルに行こうと思うの」

沈黙の中、アイスコーヒーの氷がカラン。と音を立てた

【けものフレンズ~おやすみパークセントラル~】

2
巨峰・アーリア 2018/10/19 (金) 23:43:28

「期待・支援」の刑だッ!
この瞬間(とき)を長年待ったぜッ!!
(お帰りなさい!)

4

ありがとう!ただいま!!
このSSはJPP再開に向けてのリハビリ用のSSなので、直ぐに完結すると思うので良ければお付き合いください~
(このSSにはJPPの様なおっさんキャラ登場や銃撃戦etc...はありません笑)

3
ikapan 2018/10/20 (土) 20:36:07 修正

プロローグ

旅というのは、目的地にたどり着くことが重要だと思っていたわ
でも、目的地と言うのはそんなに重要なことでは無かったの
本当に大切だったのは、その経過。その旅で何をしたか。何を見たか───

────

その夜、カラカルは突然が覚めた。体を起こしてバスの車内を見渡す。日中、あれほど賑やかだった車内が今は皆が立てる微かな寝息だけが聞こえる。
カラカルは軽くため息を吐いて立ち上がり、夜風に当たろうとドアを開けて外へ出た。
ドアを開けた瞬間、涼しい夜風が髪をゆらす。外には何処までも続く広大な草原の地平線と、吸い込まれそうな星空が広がっていた。
バスを降り、先客の隣に座った。

カラカル「あんたも眠れないの?サーバル」

バスの車体にもたれ掛かった彼女はカラカルの方を向いて微笑した。

サーバル「まぁ、もともと夜行性だからね。カラカルもでしょ?」
カラカル「まあね」

暫しの沈黙の後、サーバルが

サーバル「ねぇ、カラカル。この旅が終わったらどうするの?」

といった。

カラカル「どうしたの突然?」
サーバル「いや、別に深い意味は無いよ。ちょっと気になっただけ」

カラカルは少し怪訝そうにサーバルを見つめた。

カラカル「ふーん。まぁいいわ。そうね......実は私、この旅が終わってサバンナに帰ったら、女優を目指そうかと思ってるの」
サーバル「え!?そうなの」

サーバルが想像以上に食いついてきたので、カラカルは夜空の解放感にまかてせて余計なことを口走ったと後悔した。

カラカル「あ、う~ん.....ほら、一度マーゲイと一緒に映画を撮ったじゃない?あの時思ったの。お芝居って楽しいな~。って..」
サーバル「あ!私もあれは楽しかったよ!でも戦いのシーンではカラカルが本気でかかってきて、大変だったけど」
カラカル「甘いわねサーバル。例え演技でも手を抜くなんて事はあり得ないわ」

そう言ってカラカルはニヤリと笑った。

カラカル「そういえば、そう言うあんたはこの旅が終わったらどうするのよ?」
サーバル「え?わたし?わたしは.....」

サーバルは少し考えてから、か細い声で言った。

サーバル「ぜったい笑わない....?」
カラカル「笑わないわよ」
サーバル「ぜったい?」
カラカル「絶・対」
サーバル「約束する?」
カラカル「約束するわ」
サーバル「分かった。じゃあ耳を貸して.....」

サーバルはカラカルの耳に手を当て、何かを囁いた。カラカルはその言葉に目を見開いた。そして.....

カラカル「ぷっ....!」
サーバル「あー!やっぱり笑ったぁぁ!!」

サーバルはカラカルの反応を見て心底落胆した様な顔をした。サーバル自身カラカルの性格を考えて、こうなることはある程度予想は出来ていたが。

カラカル「ごめんごめん!だって.....何よそれ?一体どういうつもり?」
サーバル「いいでしょー?別にー?」

サーバルが不服そうに口を尖らせる。そしてふと空を見上げた時、それを見つけた。

サーバル「あ、流れ星!!」
カラカル「え!?嘘!?」

カラカルが慌てて空を見上げると無数の流れ星が弧を描き、流れていた。

サーバル「すごーい....」
カラカル「そうだ!お願いしましょう。この旅の無事と私たちのこれからの目標の事を.....」
サーバル「うん!」

二人は目を瞑り、手を組んで星空に祈った。
祈りが本当に届いたかは分からない。ただ、きらびやかに空を舞う流れ星と、果てしなく広がる空で力強く光る無数の星たちに祈っていると、どんな願いでも叶えられる様な気がした。

けものフレンズ~おやすみパークセントラル~

5
ikapan 2018/10/28 (日) 20:04:03

1.

白い壁に白いタイル。純白の無機質な空間でカラカルは怒鳴った。

カラカル「貴方はいつもそうなのよ!!いつもいつも勝手に決めつけて!!」
面接官「もう結構」

長机に腕組みをした無精ひげの面接官は一言、冷淡に呟いた。

カラカル「そんな......まだ半分も.....」
面接官「もう結構です。お帰りください」

カラカル「っ.......ありがとうございました.....」

カラカルはひきつった笑みを浮かべながら深々と頭を下げた。

面接官「えぇ、気をつけてお帰りください」

カラカルは扉を開け、他の参加者達がいる廊下を足早に歩いた。情けない顔を見られたくは無かった。
エレベーターの隣の非常階段の扉を開き、中に入って扉をしめる。
カラカルはうつ向き、台本を握りしめた。潰れてしまうほど。

───────

サーバル「あ!やっと出てきたー!」

サーバルは雑居ビルから出てきたカラカルを呼び止めた。

カラカル「サーバル...!あんたずっとそこの花壇で待ってたの?」
サーバル「まあね......ここの花壇、ちょうど座りやすい高さだから。それより、お芝居のオーディションどうだった?」
カラカル「......見ればわかるでしょ?」

そう言ってカラカルは首をふり、手を広げてみせた。その動作を見てサーバルは顔を曇らせた。

サーバル「残念だったね....でも気を落とさないで、今回は面接官との相性が悪かっただけ!カラカルの良さを分かってくれる人はきっといるから!」
カラカル「そのセリフも、12回目じゃなければもう少し頼もしかったんだけれど......」

サーバルは口をへの字にまげた。

サーバル「なによ1ダースぐらい!じゃぱまん1ダースなんて些細なものでしょ!それと同じだよ!」

必死に自分を励まそうとするサーバルを見て、カラカルは少し微笑んだ。

カラカル「そうね....いちいちこんな事で落ち込んでちゃだめね....!ありがとうサーバル!」
サーバル「そのいきだよ!そうだ!気分転換にお茶に行こうよ!場所は....」
カラカル「三番通りのジャパリカフェね」
サーバル「ビンゴ!私は少し用事があるから、一時間後にね!ばいば~い!」

そう言うと、サーバルは何処かへ走っていってしまった。彼女が曲がった先でクラクションが鳴った気がした。
カラカルは肩をくすめた。

カラカル「自分で誘っておいて一時間も待たせるのね.....とりあえず一度家に帰るかな....」

カラカルは苦笑してバス停に向かって歩きだした。

6
ikapan 2018/10/28 (日) 20:15:20

2.

サバンナ地方の草原の中にたたずむ田舎町。そこがカラカル達が住む町だ。
この町は女王事件後の都市開発で作られた。
広い車道にレンガ造りの雑居ビルが立ち並ぶ町並みを歩くと、アメリカの田舎町を歩いている様な気分を味わえる。のどかな落ち着いた町。

画像1

だが、カラカルはこの町から早く出たい。いつもそう思っていた。
もちろんこの町は嫌いではない。いきつけのカフェ、お気に入りの散歩道。お洒落な雑貨屋だってある。
しかし、女優を目指すにはこの町はチャンスが少なすぎた。
チャンスといえば不定期に開かれるドラマや映画のオーディションぐらいのものだった。
この町には演技の教室も映画の撮影も何も無かった。
そしてカラカル自身、友人や落ち着ける場所を捨てて旅立つ覚悟は無かった。
そうしてこの町が出来てから5年の月日が流れた──────

────────

車掌「まもなく、三番通りです」

カラカルは手元のボタンを押した。しばらくするとバスが止まった。
運賃を払い、車掌と運転手にお礼を言ってバスをでた。
一度家に帰り、楽な服に着替えた。
今日のコーディネートは紺色のワンピースに白いベルト。黒のハンドバック。白いパンプスだ。
洋服には特段気を使っている訳ではないが、自分で買える範囲でそこそこの物を選んでいる。
今までのオーディションを振り返りながらジャパリカフェへと向かう。
ここは娯楽施設の中にある町。平日でもそれなりの交通量がある。
交差点にさしかかり、横断歩道を渡る。

カラカル(なにがダメだったの...?なにか...なにかあるはず...)

けたたましいクラクションの音でカラカルは現実に引き戻された。
赤いビュイック・エレクトラがクラクションをこちらに向かって鳴らしていた。
ふと前に目をやると信号にはっきりと"Don't work"と表示されていた。

カラカル「いけない!すみません!」

カラカルは急いで横断歩道を渡り、再び思考を巡らせ始めた。