2.
サバンナ地方の草原の中にたたずむ田舎町。そこがカラカル達が住む町だ。
この町は女王事件後の都市開発で作られた。
広い車道にレンガ造りの雑居ビルが立ち並ぶ町並みを歩くと、アメリカの田舎町を歩いている様な気分を味わえる。のどかな落ち着いた町。
だが、カラカルはこの町から早く出たい。いつもそう思っていた。
もちろんこの町は嫌いではない。いきつけのカフェ、お気に入りの散歩道。お洒落な雑貨屋だってある。
しかし、女優を目指すにはこの町はチャンスが少なすぎた。
チャンスといえば不定期に開かれるドラマや映画のオーディションぐらいのものだった。
この町には演技の教室も映画の撮影も何も無かった。
そしてカラカル自身、友人や落ち着ける場所を捨てて旅立つ覚悟は無かった。
そうしてこの町が出来てから5年の月日が流れた──────
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車掌「まもなく、三番通りです」
カラカルは手元のボタンを押した。しばらくするとバスが止まった。
運賃を払い、車掌と運転手にお礼を言ってバスをでた。
一度家に帰り、楽な服に着替えた。
今日のコーディネートは紺色のワンピースに白いベルト。黒のハンドバック。白いパンプスだ。
洋服には特段気を使っている訳ではないが、自分で買える範囲でそこそこの物を選んでいる。
今までのオーディションを振り返りながらジャパリカフェへと向かう。
ここは娯楽施設の中にある町。平日でもそれなりの交通量がある。
交差点にさしかかり、横断歩道を渡る。
カラカル(なにがダメだったの...?なにか...なにかあるはず...)
けたたましいクラクションの音でカラカルは現実に引き戻された。
赤いビュイック・エレクトラがクラクションをこちらに向かって鳴らしていた。
ふと前に目をやると信号にはっきりと"Don't work"と表示されていた。
カラカル「いけない!すみません!」
カラカルは急いで横断歩道を渡り、再び思考を巡らせ始めた。