プロローグ
旅というのは、目的地にたどり着くことが重要だと思っていたわ
でも、目的地と言うのはそんなに重要なことでは無かったの
本当に大切だったのは、その経過。その旅で何をしたか。何を見たか───
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その夜、カラカルは突然が覚めた。体を起こしてバスの車内を見渡す。日中、あれほど賑やかだった車内が今は皆が立てる微かな寝息だけが聞こえる。
カラカルは軽くため息を吐いて立ち上がり、夜風に当たろうとドアを開けて外へ出た。
ドアを開けた瞬間、涼しい夜風が髪をゆらす。外には何処までも続く広大な草原の地平線と、吸い込まれそうな星空が広がっていた。
バスを降り、先客の隣に座った。
カラカル「あんたも眠れないの?サーバル」
バスの車体にもたれ掛かった彼女はカラカルの方を向いて微笑した。
サーバル「まぁ、もともと夜行性だからね。カラカルもでしょ?」
カラカル「まあね」
暫しの沈黙の後、サーバルが
サーバル「ねぇ、カラカル。この旅が終わったらどうするの?」
といった。
カラカル「どうしたの突然?」
サーバル「いや、別に深い意味は無いよ。ちょっと気になっただけ」
カラカルは少し怪訝そうにサーバルを見つめた。
カラカル「ふーん。まぁいいわ。そうね......実は私、この旅が終わってサバンナに帰ったら、女優を目指そうかと思ってるの」
サーバル「え!?そうなの」
サーバルが想像以上に食いついてきたので、カラカルは夜空の解放感にまかてせて余計なことを口走ったと後悔した。
カラカル「あ、う~ん.....ほら、一度マーゲイと一緒に映画を撮ったじゃない?あの時思ったの。お芝居って楽しいな~。って..」
サーバル「あ!私もあれは楽しかったよ!でも戦いのシーンではカラカルが本気でかかってきて、大変だったけど」
カラカル「甘いわねサーバル。例え演技でも手を抜くなんて事はあり得ないわ」
そう言ってカラカルはニヤリと笑った。
カラカル「そういえば、そう言うあんたはこの旅が終わったらどうするのよ?」
サーバル「え?わたし?わたしは.....」
サーバルは少し考えてから、か細い声で言った。
サーバル「ぜったい笑わない....?」
カラカル「笑わないわよ」
サーバル「ぜったい?」
カラカル「絶・対」
サーバル「約束する?」
カラカル「約束するわ」
サーバル「分かった。じゃあ耳を貸して.....」
サーバルはカラカルの耳に手を当て、何かを囁いた。カラカルはその言葉に目を見開いた。そして.....
カラカル「ぷっ....!」
サーバル「あー!やっぱり笑ったぁぁ!!」
サーバルはカラカルの反応を見て心底落胆した様な顔をした。サーバル自身カラカルの性格を考えて、こうなることはある程度予想は出来ていたが。
カラカル「ごめんごめん!だって.....何よそれ?一体どういうつもり?」
サーバル「いいでしょー?別にー?」
サーバルが不服そうに口を尖らせる。そしてふと空を見上げた時、それを見つけた。
サーバル「あ、流れ星!!」
カラカル「え!?嘘!?」
カラカルが慌てて空を見上げると無数の流れ星が弧を描き、流れていた。
サーバル「すごーい....」
カラカル「そうだ!お願いしましょう。この旅の無事と私たちのこれからの目標の事を.....」
サーバル「うん!」
二人は目を瞑り、手を組んで星空に祈った。
祈りが本当に届いたかは分からない。ただ、きらびやかに空を舞う流れ星と、果てしなく広がる空で力強く光る無数の星たちに祈っていると、どんな願いでも叶えられる様な気がした。
けものフレンズ~おやすみパークセントラル~