前回>> 658
今から軽く4年前
私の住んでいる家はドタバタの真っ最中だった。
ライオン「ああ!!家賃高すぎる!!これじゃ足りない!!」
ヘラジカ「おい!誰だ!エヤコン付けっ放しにしたやつ!」
節約に取り憑かれた獣たちは、今日も元気に吠えまくる。
初夏の日差し、だんだん暑くなり、体が馴染めてない。
ライオンもヘラジカも、その他のメンバーも必死に働いた。
だが、それでも足りなかった。
脳筋とは本当だったのだ。
私はハシビロコウ。
ずっと真実を貫いた私が、今日初めて
家族に嘘をついた。
ライオン「え!?ハシビロコウが就職!?」
ハシビロコウ「う……うん…それでね、しばらくここには戻ってこれないかもしれなくて……」
ヘラジカ「はっはっは!ハシビロコウが就職かぁ!どんな仕事なんだ?」
ハシビロコウ「それは……その……住み込みの…仕事で……」
ヘラジカ「ほほぅ、住み込みか…まぁ頑張れ!辛くても前に進め!はっはっは!」
もちろん、そんなわけない。
初めて足を踏み込む。
その時、何か悪いことをしてるように思えた。
裏町に一歩でも踏み入れば、もう、どこにも友はいなくなる。
隠せばいい、バレてもいい
ヘラジカ様やライオン様、そしてみんなのためになればそれで……
住み込みの仕事?そんなバカな
私がやろうとしてるのは殺しだ。
最初は小さいことの積み重ねだった。
銃を買うため、必死になって頑張った。
私は可愛くない。
だからこそ、商売や売り子
小さい立ち位置から始めた。
今でも覚えてる。
あの銃の重さ
「やっと、これから本番」
圧倒的安値で行う殺しは、お金のない住民たちに人気だった。
私はジッと見つめるのが得意
だからこそ、的を得る事が簡単だったんだ。
「やっと、これから本番」
値段はさらに高くなり、それとともに自分の知名度もどんどん高くなっていった。
次第に高度な依頼が増え、しかし、それでも私は完璧に成功させた。
そんなある日
私の無敗記録はボロボロにされてしまう。
ハシビロコウ「暴力団の殲滅……」
依頼人「なっ!?なぁ!?頼むよぉ…金ならいくらでも積むからさぁ!!」
ハシビロコウ「これくらいなら、ざっと7000万で引き受ける……それでもいい?」
依頼人「ああ!もちろんさ!感謝するよ!!」
何気なく引き受けたその依頼は、私にとってとんでもない地雷だった。
盲目だった
遠いビルから、爆発しそうなものにスコープの十字を重ねる。
私は気づかなかった。
背後から迫る影に…
手下A「どうですか!?轟々さん!こいつ噂の殺し屋じゃないですかね!?」
轟々「ほほぅ、こいつが俺たちを狙ってたってか?」
手下B「そうです!」
冷たいコンクリートの床、装飾のない壁
私は腕を縛られ、拘束されていた。
顔面は何発も殴られ、腹も何発も
爪は3枚剥がされ、血が滴る。
手下が二人、ボスらしき存在が一人
掠れた視界に映り込む
轟々「けっ!フレンズのくせしてこんなに可愛くねぇのは初めてだぜ。せいぜいストレス発散の道具だな!おら!」
ハシビロコウ「グブッ……!」
腹部を強く蹴られた。
こんな失態初めてだ。
裏町に入ったのが間違いだったのかな……
酷く自分を後悔した。
手下C「兄貴…お客さんが来ましたぜ…」
お客……?
ここで少し休憩か…
逃げる道を考えないと……
いや待って………手下C!!??
轟々「あ!?兄貴だとてめぇ!!誰に口聞いてると思ってんだ!!」
轟々が勢いよく振り返ると、黒い人差し指が轟々の鼻に当たる。
ツチノコ「お客の名前は【ツチノコ】、あんたに口聞いてる俺だ」
は…花柄のステテコ……
なんだこれ…ダサい……
轟々「貴様ぁ…この轟々を怒らせたなぁ!!」
轟々はツチノコの手を下げ、殴りにかかった。
ツチノコ「轟々だぁ?なにそれ、ボウケンジャー?」
違う、それは轟轟
軽くツッコミを心の中で入れた瞬間、轟々は横の壁に強くめり込んだ。
本当に一瞬だった
ハシビロコウ「あ…あなたは……?」
ツチノコ「さっき言ったと思うんだがなぁ…」
ハシビロコウ「違う……名前じゃなくて……」
ツチノコはポケットに手を突っ込み、黒い何かを取り出した。
ツチノコはそれを前にかざし
ツチノコ「警察だ」
警察手帳…
本当に警察だ…
ハシビロコウ「そんな……警察が裏町に来るはずが……」
ツチノコ「そうだぞ」
ツチノコは近づき、しゃがみ、私と目線を合わせる。
ツチノコ「お前、殺し屋かなんかか?」
まずい
警察にバレたら面倒くさい
何よりさっきの火力
相手にするのは馬鹿のやることだ
ハシビロコウ「い……いや……」
拘束されてる私は、いつからでも攻撃を受けられるほど無防備
ここで正体を明かすのは非常にまずい
しかし、言い訳も、嘘も思いつかない
完全に言葉が詰まった
ツチノコ「もういい、帰れ」
え?
ハシビロコウ「な……殴ったり……しないの……?」
ツチノコは深くため息をついた。
「あのなぁ……」呆れ顔でツチノコは言う。
ツチノコ「警察だからってそんな事しねぇよ」
ハシビロコウ「で……でも、さっき……」
ツチノコ「正当防衛だ。そりゃあ殴られそうになったらそれを防ごうとしないと」
ハシビロコウ「で……でも私は……」
はっ!!
口が滑った…
ツチノコ「私はなんだって?殺し屋だろ?殺し屋だからって拘束されてるやつを殴ったりしたら、あいつらとやってる事おんなじだろ?」
ツチノコは縛られた私の腕を解こうとする。
ツチノコ「それに、例え助けてもお前は俺を撃たない」
腕が解けて、自由に動かせる
どうしようか悩んだ。
いくら助けてくれたと言っても、私の正体を知ってる。
ツチノコ「俺はな、守りたいものがあるんだよ。お前もそうだろう?家族とか、仲間とか」
ツチノコは立ち上がる
ツチノコ「別に、お前らを懲らしめるために警察になったんじゃない。守りたいものを守るためになったんだ。だから、お前みたいな奴を殺したり懲らしめたりする気は無い」
ハシビロコウ「私みたいな……?」
ツチノコ「お前の金は汚くなかった。俺の目にはいろんなものが映る。例えば赤外線とかな。女の愛液が染み込んだ万札や汗と努力が染み付いた千円札も見える。お前の万札には家族の重みが見えた。努力と、【なんとかしたい】そんな思いがな。お前みたいな奴ってのはそんな奴のことさ」
ツチノコは振り返り、帰ろうとした。
私は何もできなかった。
逆光を浴びるツチノコは神々しく、見惚れる何かがあった。
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ナーチャ「ホーン……そんなお話がねぇ」
かばん「ツチノコさん…なんかかっこいいですね」
ハシビロコウ「まぁ…あの人がいなかったら殺しをこのまま続けて、影の奥の奥まで行ってたと思う」
二人+妖精一匹は鍋を囲む
時間は夕食時
ハシビロコウ「誰かのために、守りたいもののために尽くす。その方法を私はあの人から学んだんだ」
ハシビロコウは皿に盛られた白菜を箸で掴み
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ハシビロコウ「だから、ツチノコは……」
そして、一口
ハシビロコウ「私のヒーロー。なんだ」
第27話へ続く……
プリンセス「次回の、アナサーは?」
とまと「轟轟の方は見たことありません。すみません」
ジェーン「よく使えましたね」
イワビー「名前がたまたま轟々になっただけだかららしいぜ」
プリンセス「ファンに怒られるわよ」
とまと「おもちゃは知ってるんだ。かちゃかちゃするやつ」
フルル「おもちゃって大体そんなもんだよー」
コウテイ「怒られに行ってるだろ」
プリンセス「こんなファンを怒らすようなトマトは放っておきましょう」
イワビー「だな、さっさと次回予告終わらせて帰ろうぜ」
ジェーン「次回、〈定の鎖〉お楽しみにー」
コウテイ「次回はこんな感じじゃないといいが…」
フルル「本当にねー」
拝読しました
ツチノコが名言製造機かってくらいクールでした
ハシビロちゃんはいずれジャパ警のハシさんのようになっていくのかな…
ありがとうございます!🙇♂️
クールだぜツチノコ・・・
読んでるますく~👍
ありがとうございます!🙇♂️