【殺処分】
かつてかばんがそれに選ばれた
謎の攻撃を受け、かばんは殺されかけた
アライグマ「存在価値ない存在が抹殺されるシステム……それが殺処分なのだ……!」
コノハはその場に立ったまま
何も動かない
ツチノコ「こいつ…攻撃してこないぞ……」
アライグマ「間に合わなかったのだ……博士の狙いはアライさんじゃないのだ……」
ツチノコは口を少し開け、ボケーとしている
何か閃いたのか少しビクッとする
ツチノコ「あ!なるほどな!」
コノハの後ろに何かがいるのが見えた
次の瞬間、何かはコノハに一発、拳を叩き込んだ。
コノハは垂直に飛び上がり、何かの真上
何かの拳には手袋、湯気が立っていた。
ツチノコ「フェネックの方か!」
グキャ…ギギギ……
それはフェネックというには、なんというか…
フェネックは首をコノハの方に向ける。
真上にいるコノハに、首を180度回して
コノハ「相変わらずなのですねぇ…」
フェネック「誰が殺処分だってー……?」
コノハ「お前なのですよぉ!!!!」
コノハは強く杖を振り下げる。
フェネックはそれを片手で掴み、それごと放り投げる。
ガガガガ……ベギ……
首が元に戻る
戻る物じゃないが
商店街のお店にめり込むコノハ
フェネック「天使さーん、神様の命令も守れないなんて情けないねー」
コノハ「ゴホッ……法律も守れないお前に言われたくないのです……」
フェネックはコノハに近寄る
ツチノコ「は?天使?」
アライグマ「そう…博士は天使、神の使いなのだ……」
ツチノコ「じゃあ殺処分って…!……なんのことだ?」」
アライグマ「……天罰のことなのだ……」
煙が立ち込める中、コノハの目にはうっすらと、フェネックの影が映り込む
コノハ「地獄なんてありはしないのです。お前は罪を犯しすぎた。世界の秩序だって破ったのですよ?」
フェネック「さー?法律はあっても秩序は知らないねー」
コノハ「だったら……」
コノハは杖を強く握りしめた。
そして、素早く立ち上がりフェネックに突っ込む。
コノハ「教えてやるのです!!」
杖を横に強く振る。
杖はフェネックの腹の3分の2を抉り取っていった。
普通なら立ってない。
だが、フェネックはあの時のように……
コノハ「死は、必ず遂行しなければならない義務なのです。お前は死んだことがあるのですか?ましてや殺処分で」
フェネックはニヤリと笑みを浮かべる。
えぐられた腹は凍りつき、また、何事もなかったかのように動く。
フェネック「無いねー」
フェネックはコノハを殴りつける。
コノハはまたも吹き飛ばされ、反対側の店にくぼみを作る
コノハ「ゴホッ………死は秩序。殺せどこの様。そろそろ自分が悪人だって自覚を持ってみてはいいのでは?」
フェネック「だったら殺せばいいじゃないかー。自覚を持って?残念、私は悪人だって自覚はたっぷりあるんだよー」
フェネックはコノハに近づき、コノハの胸ぐらを掴み持ち上げる。
コノハ「ははは……この会話は何度もしたのです……何故、悪人でいようとするのですか?」
フェネック「悪人にしか守れない物だって、救えない物だってあるのさー」
コノハ「悪人が守れるのは悪だけなのです。お前の守ろうとしてるのは……救おうとしてるものは所詮、悪でしかないのですよ」
コノハはフェネックの胸を思いっきり蹴る
フェネックは少し押され、コノハを離し、後ろに後ずさる
フェネック「じゃあ……アライさんが悪って言いたいのかなぁー?」
コノハ「言いたいじゃないのです。【言っているのです】」
瓦礫の煙が立ち込む中、フェネックの目が赤く光った気がした。
フェネック「いい加減…学習したらどうかなぁ…?」
コノハ「学習?足りないのはあなたでしょう?」
フェネックはフラフラと、ゆっくりコノハに近づく
フェネック「いいかぁ……?よく聞けぇ…」
フェネックはコノハの目のまで止まる
コノハは動こうともしない
フェネック「私にとって、アライさんを侮辱することはクソを塗りたくられることと同じだぁ…よーーく覚えておけー……」
ジトリとした目はパチリと、ただまっすぐとコノハをフェネックの目は見つめた。
コノハ「はいはい、覚えたのです」
コノハは杖の持ち手っぽい方をすくい上げるようにフェネックに振るう。
フェネックは垂直に飛ばされ中に舞う。
コノハは頭の翼を広げ、空中で高速回転しながらフェネックに何発も杖を当てた。
フェネックは地面に勢いよく打ち付けられ、煙たいその場がさらに煙たくなる。
コノハ「……追い詰めた…やっとなのです……」
コノハは無邪気な狂気に満ちた笑みを浮かべ、そっと、上の先をフェネックに向ける。
アライグマ「やめるのだぁ!!」
ツチノコ「うわ、びっくりした」
コノハは飛びながらアライグマの方向へ振り向く
表情は真顔、先ほどの笑みはなかったかのようだった。
アライグマ「フェネックは……フェネックは罪人じゃないのだ!!」
コノハ「ほほぅ?理由を教えてほしいものですねぇ?」
コノハは空中から降り、足をついた。
「ハッ!!」アライグマは驚いたような声を上げ、コノハの方へ走っていく
コノハ「ん?何をするつもりですか?」
コノハはアライグマの目線を気にする。
コノハは気づいた。
アライグマの視線は、自分に向いてないことに…
そっと、横を見るとフェネックがこちらにものすごいスピードで近づいてきていた。
コノハ「……盲点」
アライグマはコノハの前で手を開き、フェネックを遮る
フェネックは勢い余ってアライグマへ……
・
グブ……
・
鈍い音がフェネックの鼓膜を揺らす。
フェネックは自身の手を見る。
右手はしっかりと、アライグマの腹部に刺さっていた。
血で赤く染まる、フェネックの思考は停止した。
2秒間、その空間は静まり返った。
アライグマは口から血を吐き出し、苦しそうに腰を丸める。
アライグマがゆっくりとフェネックにもたれかかると、フェネックはやっと思考が復活したのか、刺さる右手を抜き、もたれるアライグマを両手でゆっくりと支えた。
そして、また思考は停止した。
コノハ「盲点……しかし、コレは好転!!」
アライグマの背後で杖を構えるコノハに、フェネックの思考は追いつかなかった。
コノハ「今度こそ!!トドメなのです!!」
・
ゴンッ!!
・
「え?」左の頬に強い痛み、大きな手に鷲掴みされてる感覚がコノハを襲う。
コノハはそのまま右へ手とともに飛ばされる。
地面に強く押し付けられ、コノハの動きは完全に停止した。
ツチノコ「ウェイクアップ……あ!やりすぎたか……?」
スマホを片手に、ツチノコは叫んだ。
ツチノコ「もういい、戻ってこいBSS」
BSS、ツチノコの武器である
(詳しくは、アナザーワールド・サンドスターストーリーズ 第3話 4話をお読みください)
黒く、大きなロボットの腕は、ロケットの火花を散らしツチノコの元へ戻ってくる。
ツチノコ「しっかし、遠隔操作機能搭載とは、ジドはやっぱすごいな…」
ガラ……
ツチノコ「あ?…あ!」
地面の盛り上がったコンクリートたちをはけ、コノハはゆっくりと立ち上がった
ツチノコ「まずい!BSS!!行け!」
[了解しました。ターゲット、アライグマのフレンズ]
ツチノコ「そっちじゃねぇ!!」
コノハはゆらりゆらりと、まるで酔っ払ってるかのように近づく
コノハはゆっくり顔を上げた
ツチノコ「ああ……やべ……」
コノハ「あ……アライグマ!!フェネック!!」
ツチノコ「……へ?」
ツチノコは疑問を抱いた。
コノハの先ほどまでの狂気は消え、今にも泣きそうな顔で、おどおどしく、心配そうに
コノハ「ああ……怪我が……早く……」
自分の頭に強く拳をぶつけ、何度も何度もその痛みに耐える仕草をした。
コノハは杖を落とし、直立不動のフェネックと今にも死にかけなアライグマを見つめた。
ツチノコ「な……なんだ……このカオスな絵面……」
[ターゲット、変更しますか?]
ツチノコ「あー……いいや……ジドに電話してくれる?」
[承知。コール、ジド]
わからない
ツチノコには、コノハが誰なのかも、はっきり言って天使ってなんだその設定なのかも、なにもわかっていない
アライグマがやられて焦ってないのは、ヒグマを直した過去があるから
ただし、それがアライグマ自身に通用するかはわからない
そして、フェネックがどのような戦い方をして、どのような実力を持つか、それはよくわかった
そして、博士と呼ばれた彼女
まるで人が変わったかのような変わりようだ
いや、もしかしたら変わってたのかもしれない
ツチノコ「あ、ジド?迎えにきてくれる?」
第26話へ続く……