「おやおや、だいぶ手荒く捕縛したみたいだね」
港湾施設の空爆の後、海兵隊とファントム軍の部隊は輸送船や強襲揚陸艦を接岸、部隊を上陸させて周囲を掃討し、残った施設や設営したテントでFOBの構築を行った。そしてその一角、確保したコンクリート製の建物の中に私たちはいた。
未だ沈まぬ陽光が小さな窓から僅かに差し込み、室内の酷い空気の原因である大量の埃を浮かび上がらせる。そのカーテンの向こう側、椅子に体を固定され、両手両足を縛られたジーンズに赤のTシャツを着た青年。彼女はそれを捕虜だと言った。
「まぁ、捕虜とは言えカルテルの構成員相手に法も不文律も存在しないがね。さぁて、手っ取り早く終わらせよう」
ヘックスは靴の音を鳴らしながら、ゆっくりと一歩ずつ近づいていく。彼は動きもしない椅子から必死に逃げ出そうともがくようだが、拘束具が軽く音を上げるのみで何の変化も起きない。彼女は彼の頭に手を置き、恐ろしいほどに優しく語りかける。
「大丈夫だ。何も拷問じみたことはしないさ。少し話を聞くだけだ」
「…は?」
彼は抵抗をやめて気の抜けた声を出し、口を半開きにして困惑する。ヘックスはその様子を見て笑いを堪えながら喋り続ける。
「第一に、そのつもりならその口に猿轡を突っ込んでいたと思うがね。実際やったこともある。まぁ、そんなことはいい。して、君の名前は?」
「…フレディ・カ___」
「おおっと、そこまででいい。フレディだね?どうせこれは文書に残らないし、君もファミリーネームまで言うのは余り気分良いものではないだろう」
彼女は少し後ろに後退りし、帽子を外す。礼儀を重んじるならサングラスも外したほうがいいのではと訝しむが、恐らく何があっても外さないんだろうなと思考を破棄する。
「私の名前はアイリス・アンダーソン。本名ではないが、適当に何とでも呼べば良い。そして後ろにいる綺麗なレディだが、」
唐突に手招きをされて戸惑うが、取り敢えず前に出る。さっきからずっと困惑した表情を浮かべる彼が可哀想になってきた。
「アリシアだ。へッk…彼女とは別の所属だが、訳あって一緒に行動している。よろしく頼む」
すると、ヘックスは踵を返して出口へ行く。
「名前を教えてくれたんだ。お礼に何か食べ物を持ってこよう。うちのレーションは不味くはない…と思うから」
遅れて私も外に出る。ドアを閉める時に見た彼の顔は、やはり戸惑っていた。
こちらのMTFsをいったんそちらに合流させていいですか?
ちょうどよさげなFOBが……
えぇ、もちろん構いません。どの部隊でどの程度の規模ですかね?
α-4、ρ-9、ε-11の計三部隊です。人数は約200名ですね。それと遅れてψ-8が来ます(30名ほど)
なるほど、了解です。茶番の描写は適当にお任せします()
ありがとうございます