ペンザンスは緊張に包まれていた。イベリアの火を境にでしゃばりなナショナル・アクションが行動を起こし、白人至上主義を唄う男たちがデモを行っている。それでも多くの群衆はこの後現れる1人の男の歴史的な就任演説を待ち望んでいた。彼らの中には2度の台湾事変に従軍しその筋肉質な体に痛々しい銃槍を残して戦ってきた英雄やホワイト・パワーという言葉を自らの信条としスキンヘッドにサングラスを掛けを自らが白人に生まれてたことを何よりも誇りに思っている者もいる。しかしそれも1人の男の登場によりコーンウォール議会の静寂は一瞬にして熱狂へと変貌した。男は群衆の拍手を浴びコツコツとリズミカルな音を立てながら壇上に上がる。マイクが男の深い深呼吸の音を拾うと群衆の間で一気に緊張感が増した。
ついに始まる。
「今日、私はアングロ・サクソン人の一人として、この街に住む市民の一人として、これより親愛なる市民の皆様に宣誓をします」
「国民党の発祥地、偉大なるアングロ・サクソンが住むこの土地から、我々は本日自由のドラムを鳴らすのです。歴史を通じて、我々の祖先が代々、幾度となく行ってきたように自治の要求に応えようではありませんか」
彼らは勝利を求めていた、
「愛情あふれる白人の血が私たちには流れています。地方の自治を脅かす連合王国政府の介入に対し答えを送ろうではありませんか」
有色人種に対しての絶対的な勝利を。
「この地を踏んだ偉大なる人々の名において私ははっきりと態度を表明したい。彼らの暴政には紳士らしく決闘を申し込もうではありませんか」
いつか国中を揺るがすだろう。
「かつて先人たちも私と同様に宣言したことでしょう。私はコーンウォール総督として今、ここにこれを宣言します……」
「今こそ人種隔離を、明日も人種隔離を、永遠に人種隔離を!」
・ジョージ・C・ウォリック
国民党分権派の白人至上主義者、徹底的な人種隔離政策を公約に掲げトラスト内戦による反アジア思想の広がりをもとに白人の多かった故郷コーンウォールの総督就任。
モデルはジョージ・ウォレスくん
・スキンヘッド
ネオナチのこと。
・ナショナル・アクション
英国ファシズムの擁護者であるレイフ・ハリソンが党首を務めるファシスト政党。一応実在する。