第一幕 さばんな藩
さーばる「ここは蛇派璃(じゃぱり)の国じゃ! 某は藪猫(さーばる)、この辺りは某の所領にて候!」
かばん「さーばる…殿。それでは、そのお耳と尻尾は…?」
さーばる「如何した?何か珍しゅうござるか?お主こそ、尻尾と耳のないふれんず?珍しいのう!」
かばん「ふれんず…?」
さーばる「どこから参られた?所領は?」
かばん「あ…わかりませぬ…覚えておらぬのです…気づいたらここにおって…」
さーばる「もしや!昨日のさんどすたーにて新生した御仁でござらぬかな?」
かばん「さんどすたー?」
さーばる「左様、昨日あの山から吹き出したのでござる!まだ一帯が煌いておろう!
そして、何のふれんずか調べるにはー!鳥の御仁ならここに羽!…む、有らぬ!
被り物があれば蛇の御仁!…でもござらぬ、むむむ?あなや、これは?」
かばん「なっ?鞄、でござろうか?」
さーばる「鞄…鞄…鞄!鞄!」
かばん「手がかりになりまするか?」
さーばる「分からぬでござる!これは奉行所に行かねば分からぬやも…」
かばん「奉行所?」
さーばる「左様、分からぬ時は、奉行所にて調べてもらうのじゃ!」
かばん「そこで、某が、何の動物か…かたじけのうござる、さーばる殿。奉行所には、どっちに向かえば良うございますか?」
さーばる「途中まで案内致そう!参ろうか!」
かばん「あ、申し訳ござらん…よろしくお願い致しまする!」
さーばる「む、ではそれまでなんと呼べばいいでござろうか?華伴(かばん)殿で!どうじゃ?」
かばん「ええ、ありがとうございまする!」
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かば「何者じゃ~?」
かばん「うわぁぁ~~!う、うちとらなっ!」
かば「失礼、水浴びをしておったのじゃ~」
さーばる「おお、河馬殿!」
かば「珍しいのう藪猫殿、この辺りにまで漫遊に来られるとは」
さーばる「今日は関所まで行くのでござる!水を飲んでいこうと思いまして! 今日はふれんずが少のうござるな?」
かば「今日はせるりあんが多い故、皆あまり出歩かぬのじゃ。
関所にも、少しばかり大きいのがおるそうじゃ?気をつけるのじゃぞ?」
さーばる「では、某が討ち取ってご覧に入れよう!」
かば「藪猫殿がでござるか?心配じゃのう!」
さーばる「ご安心召されよ!先ほども討ち取りましてござる!」
かば「どうせ小物でござろうのう」
さーばる「なっ!何故分かったのでございまするか!?」
かば「ところで、そこの御仁は何者じゃ?」
さーばる「華伴殿と申しまする!」
かば「華伴…?聞いたことのない動物じゃのう?」
さーばる「名前は先ほど付け申した!何の動物か分からないのでござる!それで、奉行所に行けばよいのではないかと思いまして!
この御仁が何の動物かわかりまするでしょうか?」
かば「んーー…お主、泳げるか?」
かばん「いえ…」
かば「空は飛べるのでござるか?」
かばん「いえ…」
かば「では、足が韋駄天であるとか?」
かばん「いえ…」
かば「お主、何にもできぬのであるな~?」
かばん「うぅ~…」
さーばる「そ、そのような事はござらぬよ!」
かば「ふっ…まあ藪猫殿のように、足も韋駄天であるし鼻も耳も良う利くのに、おっちょこちょいで全てが
台無しになっておる御仁もおる故!気にすることは無いでござるよ」
さーばる「ひどいですぞー…」
かば「某も泳げぬしなー」
さーばる「なんとっ、左様でござったかー!」
かば「ただし!蛇派璃の国の掟は、御自らの力で生き抜く事。御身は、ご自身で守るのでござる。
藪猫殿任せではいけませぬぞ?」
かばん「承知致した!」
さーばる「それでは、某達はもう参りまする!」
かば「あ、せるりあんと会うたら、まずは逃げるでござるぞ?どうしても戦わねばならぬ時は、ちゃんと石を狙うのだぞ?」
さーばる「承知!」
かば「あと、暑さに気をつけるのだぞ!特に藪猫殿!お主、ほとんど汗をかかぬのだから、今のうちに水も沢山飲んで行かれよ」
さーばる「御意!」
かば「それから、上り坂下り坂は脚をくじかぬよう十分に気をつけて…」
さーばる「大丈夫でござるよー!」
大殿(ボス)との出会い
さーばる「大殿!」
かばん「え?」
さーばる「ご心配召されるな、知り合いじゃ!大殿、この御仁、何の動物かわからないのでござる!住んでる場所まで、一緒にご案内…」
らっきーびーすと「お初にお目にかかる 拙者は、幸運之獣(らっきーびーすと)でござる。よしなに」
かばん「あ、どうも、お初でございます…華伴と申します…如何なされた、藪猫殿?」
さーばる「なんと~~、喋り申したーー!!」