[ベルセルクフレンズ]10
一話[プロローグ]>> 1
「おたから発見なのだー!」
「やったねぇアライさ~ん」
アライグマが、じめじめしたじゃんぐるちほーに、イキイキとした声を響かせた。
左手は腰にあて、右手は蒼い宝石のような“おたから”を握って嬉しそうに高々と上げていた。
「それにしても何だろうねー?」
フェネックがアライグマが見つけたおたからを見ながら疑問を口にした。
その疑問に対してアライグマは
「ふはははは!これはだな―」
と大きな声で笑ながら胸を張って
「…わからないのだ!」
自信満々に答えた。
「それじゃあ答えになってないよーアライさん。」
フェネックがアライグマにツッコむ。
「なんにしろ、おたからに変わりはないのだ。これはアライさんとフェネックの物なのだ!」
とその場でポーズを決めた。
だが、上手くポーズを決めれず、右手に握るおたからをぶん投げながら転んでしまった。
「あいたっ!」
「アライさん、またやってしまったね~。」
「痛いのだぁ…。―って、おたからはどこにいったのだ!?」
シュバっと起き上がったアライグマは、慌てておたからを探すために走り出した。
「アライさん、おたからが飛んでったのはそっちじゃないよ~。」
「ふええ!?ど、どっちなのだ!?」
驚き顔でアライグマは振り替える。
「あっちだよ~。」
フェネックが指を指した方向に、おたからが落ちているのが見えた。
「見つけたのだーっ!」
間違った方向から走って戻ってきたアライグマは、そのおたからめがけて飛び付いた。
だが、手が届く直前に誰かがおたからを拾い上げ、そのおたからを掴めなかったアライグマはそのまま進行方向にある木に目掛けて頭からつっこんだ。
《ごつん!》
鈍い音が聞こえた。
「ううう…。痛いのだぁ…痛いのだぁ…。」
「もっと周りを見なきゃねーアライさん。」
頭を押さえてうずくまるアライグマの背中をさすりながなフェネックが注意をした。
「面目無いのだ…。」
恥ずかしそうにフェネックに返した。
「はっ!?おたからは!?」
アライグマが素早く体を起こした。
「おたからならあの人が拾ってくれたよー」
「あの人…なのだ?」
アライグマが後ろを見る。
するとそこには一人のフレンズが、アライグマのおたからを右手に持って立っていた。
そのフレンズは白い白衣を着て、頭には輪郭の赤い黒い丸が描かれた白い帽子をかぶり、先に牙のある青色の尻尾が生え、マフラーから4本、帽子から2本の触手が伸びている
(見たことの無いフレンズなのだ…)
(きっと新しくフレンズ化したんじゃないかなー)
(おたからドロボーなのだ!)
(いやそれは違うと思うよアライさん。)
(とにかく、あのおたからを返してもらうのだ!)
「えーごほん!なのだ。」
アライグマがそのフレンズの前に立って咳払いをした。
「そのおたからはアライさんの物なのだ。返してほしいのだ。」
アライグマが右手を広げて突き出した
だが、そんな言葉には耳を向けず、そのフレンズはただ“おたから”を見つめている。
「ごめんねおねーさん。それ、アライさんのおたかららしいから返してくれなーい?」
フェネックもそのフレンズに話しかける。
それでも、そのフレンズは“おたから”を見つめたまま動かない。
「な、何か言えなのだ!黙ってたらわからないのだ!」
アライグマが再度話しかける。
それでも反応は無い。
そして、
「あっ!待てなのだ!おたから返してなのだー!」
そのフレンズは、黙ったままぐいんと上昇すると、どこかへ飛んでいってしまった。
(触手が生えて空の飛べるフレンズなんて見たことも聞いたことないけどなー)
そうフェネックが考えていると
「追いかけるのだフェネック!」
アライグマがそのフレンズの後を追おうと駆け出す。
「待ってよーアライさ~ん。」
フェネックが後に続いて駆け出した。