蹴り返された球体セルリアンを顔面に受け激昂するキマイラはライオン目掛け突進し一気に距離を詰めるとそのままの勢いで爪を振り下ろす。
キマイラ「うおらぁーーーっ!」
凄まじい威力の攻撃がライオンの鼻先を掠めた、だが冷静さを失って力任せのキマイラの攻撃はその軌道を容易く読まれ鋭い爪先は空しく空を切った。次々と繰り出される連擊を最小限の動きでかわすライオンには余裕すらある。
ライオン「ほらほらっ、こっちこっち~鈍いね君~」
キマイラ「この野郎ぉおお!ちょこまかと…!こいつを食らいやがれっ!!」
当たらない攻撃に業を煮やしたキマイラが大きく息を吸い込んだ。
グリフォン「やばい!避けろライオンッ!」
ライオン「へ?」
ゴアァアアッ!!直後、ライオンの視界が炎に包まれる。吐き出された灼熱の火炎による高熱で周囲の空気が歪んで見えた。
辺りには毛の焼ける嫌な匂いが漂った。
グリフォン「ライオンッ?!」
キマイラ「はっはぁーー!どうだぁ!ニャン公め!!…あ?!どこ行った?!」
キマイラ自身の放った火炎により遮られていた視界が開けた次の瞬間だった、素早く身を低くし火炎を掻い潜ったライオンがキマイラの顎に強烈なアッパーカットを見舞った。
キマイラ「ぐががっ?!」
脳天まで突き上げる突然の衝撃に視界が揺らぎ堪らずキマイラは雪の積もった地面に膝をついた。
ライオン「ふ~あっぶないなぁ~も~、あ~あ、自慢のタテガミが台無しだよ…もう」
ライオンの指先がタテガミをくるくると巻き取る、その先端はチリチリと焼けていた、それをライオンはふーっと吹き消した。
ライオン「きみ、力は強そうだけど案外大したこと無いねぇ、まだ必死に抗う獲物の方が歯応えあるよ~、それでもまだやるかい?」
キマイラ「くっそぉーーーおおお!!!」
百獣の王と呼ばれるライオン、その秘められた実力の片鱗をまざまざと見せつけた。
オルトロス「姉さん!そいつただの動物のフレンズだけど、妙に戦い慣れてるよ!NEO体の力を…」
キマイラ「うるせえ!こんなニャン公ごとき、アタシの力だけで十分だ!やっつけてやるぜ!」
ライオン「ふぁ~あ… そうこなくちゃね~。せめてヘラジカくらいは頑張ってくれないと張り合いがないなあ。」
オルトロス(こんな所でモタモタやっている場合では… スフィンクスの奴に聞きたい事が色々…)
キマイラ「て、てめぇ…!!!コケにしやがって!!うおおおおおおおおおーーーーー!!!」
激昂したキマイラは腕を大きく振り回してライオンに飛びかかるが、いとも軽々と身をかわすライオン
ライオン「おっ…と ほい ほいっ… 」
オルトロス(頭に血が上り過ぎている…まずいぞ…姉さん…!こうなったら仕方ない…)
オルトロスは目を閉じると、額のセルリアンの目が開きうっすらと光を放ち、次の瞬間グリフォン達めがけてものすごいスピードで突っ込んできた!
グリフォン「うおっ!!とと!!なんだぁ!?あぶねえ、みんなよけろ!」
ハクトウワシ「危ないっ!ヒポグリフ!」
ヒポグリフ「えっ?キャアーーーー!!」
不意を突かれたグリフォンはギリギリのところでオルトロスをかわすが、体力が戻り切っていないヒポグリフは突進してくるオルトロスを避けられずに髪を掴まれ地面に叩きつけられる
ヒポグリフ「グハァッ!!!」
地面に叩きつけられた衝撃で雪が舞い上がり、視界が悪くなり状況がつかめない…
キマイラ「はぁーっ…はぁーっ…!!く、クソ…!避けるんじゃねえ!アタシの攻撃を食らいやがれ!!」
グリフォン達の方をちらっと見たライオンは眉間にしわを寄せる
ライオン「…あれぇ?たたかいごっこはもう終わりなのかなぁ?」
キマイラ「ああ?そんなワケねぇだろ!こっからが本番… ああ?」
頭に血が上って周りが見えていないキマイラに、グリフォン達のほうを指さして視線を誘導するライオン
キマイラ「…あぁ!?おい、オルトロス!!お前なに勝手な事やって…」
オルトロス「お前達動くんじゃない!妙なマネをしたら、こいつは再起不能になるぞ!」
ヒポグリフの髪を掴み、首元に爪を突き立てるオルトロス。ヒポグリフの首に爪が少し刺さり血が一滴つたう
ヒポグリフ「う…く……お、オルトロス…やめて」
グリフォン「…汚ぇぞ、てめぇ!」
オルトロス「私は姉さんとは違う。例え汚かろうが卑怯だろうが、勝てばいいのさ。」
少しうつむき肩をわなわなと震わせるハクトウワシ
ハクトウワシ「…なんと卑劣なッ……!!!許せん…」
オルトロスの卑劣な戦法に怒りを覚えたハクトウワシは少しだけふわりと舞い上がる
オルトロス「お前、妙なマネはするな!ただの動物のフレンズだからといって私は見くびったりしない!」
ハクトウワシ「・・・ヒポグリフを離しなさい!」
グリフォンも隙を見て背後から飛びかかろうと機をうかがうが、オルトロスに気配を察知される
オルトロス「お前もだ、グリフォン!私に近づくんじゃない!」
グリフォン「チッ・・・!!」
けんきゅうじょの入り口や、地面から沸いて出た様々なセルリアンに包囲されるグリフォンとハクトウワシ
オルトロス「反撃は許さない!お前達にはここでのびていてもらう!」
ヒポグリフ「・・・グリフォン、私の事はいいから戦って!!」
グリフォン「バッカ言うんじゃあーねえ!すぐに何とかしてやるから待ってろ!」
大小様々な球体型のセルリアンがグリフォンに一斉に飛びかかる!
グリフォン「うおおおおーーー!?」
ハクトウワシ「貴女!卑怯なマネはやめて正々堂々と戦いなさい!」
ゲートセルリアンの触手を素早く避けながら必死にオルトロスに訴えかけるハクトウワシ
その時もう一体のゲートセルリアンの触手がライオンの方へ伸びる!だが、その触手を振り払ったのはキマイラだった
ライオン「・・・ほぅ。」
オルトロス「姉さん!?一体何を!?」
キマイラ「それはこっちの台詞だぜ!お前、何を勝手な事してやがるんだ!アタシのいう事が・・・」
オルトロス「こんな所でゆっくり遊んでいる暇ないんだよ、姉さん!スフィンクスのヤツから色々聞かなきゃいけない事があるんだ!」
キマイラ「アタシにはそんなこたぁ、どうでもいいんだよっ!今だ!今が一番重要だ!それが以外はどうでもいい!」
オルトロス「聞き分けてよ、姉さん!もしかしてだけど、もしかしたら私達は何か大きな勘違いを・・・」
キマイラとの口論に熱くなっているオルトロスはふと我に返り、ハクトウワシが視界からいなくなっていることに気づいた
オルトロス「ハッ・・・!!?」
ハクトウワシ「後ろだよ、君たちがそう言うてを使うならこっちも手段は選べないからね…」
オルトロスが油断した隙にヒポグリフをハクトウワシが助けて戻ってきた。
オルトロス「ちっ…」
グリフォン「よし!…だがまだ…」
周りにはまだセルリアンがいる。
キマイラ「ハッハッハ!お前らがどう足掻いたって勝ち目はないんだよ!!」
ライオン「どうする?やるか?」
ハクトウワシ「1人10体倒せば行ける?」
グリフォン「いや無理だろ…」
ヒポグリフ「そうだ…!」
ヒポグリフはターコイズを空に掲げた。
………しかしなにも起こらない。
キマイラ「?なんだかよくわからないけど残念だったな!!!」
オルトロス「姉さん、上……」
上空から何かが迫ってきてるのが見える。
グリフォン「!!!おい!逃げるぞ!」
グリフォン一行はその場から離れる
オルトロス「姉さん!私たちも逃げよう!」
キマイラ「ふんっ!そんなのお断りだ。アイツらをけちょんけちょんにしてない限り……」
オルトロス「呆れたよ姉さん、姉さんなんかもう知らない!」
オルトロスは滑り降りて行った。
キマイラ「あんなの私が逆に吹き飛ばしてや…」
‘‘それ’’はあの窮奇であった。
窮奇「強化スキル技…メガウィンドォォォインパクトォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
その技が地面に到達した途端、普通なら一生体験することがないというほどの強さの暴風が吹き荒れ、雪崩を引き起こし、それにセルリアンが巻き込まれて行った。
キマイラ「うっ……………………ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
キマイラは研究所の地上階と共にふきとばされていった。オルトロスは雪崩が来る前に横穴に逃げた。
一旦逃げたグリフォン一行は直撃は免れたが強風に煽られ雪山から火山の噴火口付近まで行ってしまった。ほかのちほーでも強弱には違いがあるが皆それに気づいた。
窮奇「………………やりすぎちゃったなこれ………」
周りを見て窮奇はそう言った。
グリフォン「うーん… はっ!?ここはどこだ!?」
ライオン「気が付いたみたいだね~」
周りを見回すと、グリフォンは全く見覚えのない場所にいた
グリフォン「どこだここは…?確かけんきゅうじょの前で俺達は…」
そこまで言ったところで、ようやくグリフォンは大事な事に気が付いた
グリフォン「!!ハクトウワシとヒポグリフは…!?二人がいねえ!!おい、どこだ!?」
ライオン「落ち着きなよ~ どうやら窮奇に吹き飛ばされてここまで飛んできちゃったみたいだねぇ ファ~…(あくび)」
グリフォン「そうか…そうだったな。」
ライオン「飛ばされる所までは一緒だったんだから、そう遠くへは行っていないはずだよ。」
グリフォン「すぐ探しに行こう。できるだけバラバラで行動は避けたいぜ。」
ライオンとグリフォンは立ち上がり火山を降りつつ二人を探す
一面雪だらけのゆきやまとは違い、雪はちらほら残っているだけで地面は露出しており、ゆきやまでの異常なまでの寒さが嘘のように過ごしやすい
グリフォン「ここは一体どこなんだ?けんきゅうじょの近くなのか?」
ライオン「結構飛ばされた気がするからね~ なんともいえないな~」
グリフォン「おーい!ハクトウワシー!ヒポグリフー!いないのかー!!」
ライオン「セルリアンのニオイは沢山するけど、フレンズのニオイはしないな~」
更に火山を降りる二人…
山道を進み続ける2人の目前に、さっきまでとは少し違う風景が広がり始める
山道にはおそらく窮奇が起こした風によって吹き飛ばされてきたであろう瓦礫の山が無数に転がっていた
グリフォン「こりゃひでーな。けんきゅうじょの上の方はふっとんじまったんじゃないのか?」
ライオン「手を貸してくれるのはいいんだけどさぁ~、もう少し加減して欲しいよねぇ~」
瓦礫の山の横を歩くライオンとグリフォン
グリフォン「クンクン・・・どうだ?何か匂いはするか?俺にはかび臭くてほこりっぽい瓦礫の匂いしか・・・」
ライオン「うーん・・・犬のフレンズほど匂いを探るのは得意じゃないんだよなぁ~」
そう言いながらも瓦礫のほうの匂いを嗅いでみるライオン
ライオン「・・・くんくん・・・!!」
グリフォン「どうした?」
ライオン「この中からフレンズのニオイが微かにする・・・」
グリフォン「なんだって!?ハクトウワシかヒポグリフか!?」
ライオン「・・・微かだけど、同じあたりからセルリアンみたいなニオイもするなぁ。」
グリフォン「・・・フレンズとセルリアン・・・ヒポグリフか!!?待ってろ、今助けてやるぞ!!」
グリフォンとライオンは瓦礫の山を二人でなんとか匂いのほうへ掘り進める・・・
ライオン「・・・これは・・・違うな」
グリフォン「え?違う?違うって何が・・・」
匂いの元まであと少しという所でそうつぶやくライオン。グリフォンは一瞬その言葉に不安を感じるが、ともかく匂いの元までたどり着くべく最後の瓦礫を持ち上げる
グリフォン「大丈夫か!ヒポグ・・・」
キマイラ「・・・・う・・・」
瓦礫の山から出てきたのはキマイラだった
グリフォン「こ、こいつ・・・!」
ライオン「・・・・」
グリフォン「おい、起きろ単細胞!!」
キマイラ「……う~ん…ん!!?な、なんだぁ!?」
☆ゴチ~~~~~~ン!!☆
グリフォン「痛っっっっ!!」
キマイラ「~~~~~~~っ!!!」
おもいっきり頭をぶつけたキマイラとグリフォン
ライオン「大丈夫~?」
キマイラ「いたた…ここはどこだ!?てめぇら、何をしやがった!!」
ライオン「何もしてないさ。ただキミが埋まってたのを掘り出してあげただけだよ~」
グリフォン「そうだぜ、礼くらい言ったらどうなんだ。」
キマイラ「埋まってた……?…うるせえ!頼んでねぇ、そんな事!」
グリフォン「ったく、助け甲斐のないヤツだな。こんなヤツほっといてさっさと二人を探そう。」
キマイラは腕を組んで目を閉じ、少しずつ思い出す…
キマイラ「…埋まってた?なんで埋まってたんだ?…うーん…」
キマイラ「あーっ!そうだ!あの窮奇とかいうヤツが出てきて、ちょっと油断しちまったスキに…」
さらに深く思い出す…
キマイラ「オルトロスはどうなった?おい、オルトロスは一緒に吹き飛ばさ…」
グリフォン達に訪ねようとしたが2人は既にキマイラを置いて歩き出していた
キマイラ「おい、アタシを無視するんじゃねえ!おい、ニャン公!!さっきの続きだ!アタシと戦いやがれ~!」
二人の後を追うキマイラ…
~その頃、ヒポグリフとハクトウワシは…
ロッジの方まで吹き飛ばされていた。
ヒポグリフ「ここは…どこ?」グッタリ
ハクトウワシ「分からない…」グッタリ
[2人組が駆け寄ってくる]
???「みてー!誰かが倒れてるよ!助けてあげないと!」
????「ちょっとあんまり早く行かないでー」
ヒポグリフ「??あなた達は?」
???「私?私はニホンオオカミだよっ!隣の子は私の群れ仲間のイタリアオオカミちゃん!」
イタリアオオカミ「どうも〜、あなた達、どうしたのですか?」
ハクトウワシ「いやちょっと吹き飛ばされてね…」
ヒポグリフ「私達はゆきやまちほーに行きたいのですがどうすればいいと思います?」
ニホンオオカミ「うーん、でも今はやめた方がいいと思うよ、すごい風が吹いてきたしね」
窮奇「お前達大丈夫かー?」
ハクトウワシ「窮奇、さっきのはやりすぎだぞ…」
窮奇「いやーすまんすまん、のりに乗っちまったよ…」
ニホンオオカミ「なんか雲行きが怪しいし、今日はロッジで休んでくといいよ!、明日また行けばいいしね!」
ヒポグリフ「お言葉には甘えたいけど…ちょっと別れちゃった仲間がいるからね…」
イタリアオオカミ「でもそれでは動くに動けないでしょう?せめて一日は安静にしておいた方が…」
[2人は痛みを我慢していたことに気づいた]
ヒポグリフ「分かりました、今回は甘えさせてもらいます!」
[ヒポグリフ、ハクトウワシ、窮奇は、2人のオオカミに道を教えてもらいロッジに向かっていった]