グリフォン達の目指す『けんきゅうじょ』はみずべちほーを越えた先のゆきやまちほーにあるとの話だった。
グリフォンとハクトウワシは飛ぶ事の出来ないライオンを二人で抱えながらの飛行を続け丁度みずべちほーの上空にさしかかっていた。
ライオン「いやぁ~、悪いね~二人とも~」
グリフォン「いや、まあそりゃそうだよな…」
ハクトウワシ「すっかり失念していたね…」
ヒポグリフ「二人とも大丈夫?ごめんなさい、私も手伝えたらいいんだけど…」
グリフォン「気にすんなって、それよりお前は体の回復に専念してくれよ」
ハクトウワシ「ああ!こうして重りを持って飛ぶというのも良いトレーニングだからね!」
ライオン「……地味に傷つくこと言うねぇ…」
グリフォン「しかしさすがにちょっと疲れてきたぜ…」
ライオン「この先を少し行くとPPP(ペパプ)のライブ会場があるからそこで少し休憩していこうか~」
ハクトウワシ「私も賛成だ、ヒポグリフ君もまだ無理は禁物だしね」
グリフォン「何?!ライブ会場だと?!」
『ライブ会場』その言葉に性懲りもなく目を輝かせるグリフォン。
その頃『としょかんでは』博士と助手に留守番を頼まれたオカピがいつまで経っても来ないグリフォンを待っていたのだった。
オカピ「…えー誰も来ないぞ…何か忘れられてる気がするぞ…」
グリフォン「…なーんか忘れてるような気がするけど…ま、いいか…その内思い出すだろ」
すっかり忘れられていた。
グリフォン「ところで・・・ヒポグリフ。お前知らないか?あいつがなんでセルリアンを使ってフレンズを襲っているのか」
ヒポグリフ「・・・全てはわからない。わたし、半分以上は彼に操られていたし・・・でもスフィンクスは、フレンズ達を襲ってサンドスターを集めて・・・それを使ってセルリウムって言うものを作ろうとしているみたい・・・」
ハクトウワシ「セルリウム?」
ヒポグリフ「セルリウムが何かはわたしも知らない。でも、スフィンクスはなんだかそのセルリウムの精製にとても焦っているようだったわ。」
グリフォン「セルリウム・・・何だかわからんがろくなもんじゃあなさそうだな」
PPPライブの会場へはまだ少し距離があるものの、歩きやすそうな陸地が見えてきたのでとりあえずそこへ降りて小休止をする4人…
ヒポグリフ「……なんか変な感じ。」
グリフォン「何がだ?」
ヒポグリフ「だって死んだと思っていたあなたと、こんな風に横に座って一緒に一緒に行動して、喋ってるんだもん。」
グリフォン「ま、確かにそうだな…」
ライオン「ジャパリまん貰ってきたよ~ みんなで食べよう」
グリフォン「おお、悪いな。」
ライオン「いいっていいって。二人とも飛んでばっかりで疲れてるだろうし、けが人に行ってもらう訳にもいかないでしょ」
ハクトウワシ「どれ、ありがたく頂こう!」
もぐもぐ…
ヒポグリフ「おいし~い!!何なのコレ!」
ライオン「ジャパリまんだよ~ 食べた事なかったの?」
ヒポグリフ「…研究所では味のないペレットしか食べていなかったから…」
ハクトウワシ「…大変だったのね。」
グリフォン「…… なぁ、ヒポグリフ。俺がいなくなった後、けんきゅうじょはどんな感じだった?」
少しの沈黙のあと、堰をきったように話し始めるヒポグリフ
ヒポグリフ「どんなって…色々あったわ。スフィンクスがおかしくなって、あなたがいなくなって…」
グリフォン「そうか…色々大変だったんだな…結局俺はスフィンクスとの約束を守ることが出来なかった…お前までNEO体にされちまって…すまねぇ…」
ヒポグリフ「もう済んだ事でしょグリフォン、あなたが無事で居てくれただけで十分よ、それにこうして助けてくれたじゃない」
グリフォンはジャパリまんの最後の一口を飲み込んだ。
グリフォン「…なあ、ヒポグリフ、俺が『けんきゅうじょ』を去ったあと永久(トコシエ)博士を一度でも見たか?」
ヒポグリフ「いいえ、見てないわ…グリフォン、あれは本当に私達の知ってるスフィンクスなの…?」
グリフォン「…どうだろうな…、少なくとも俺は今のスフィンクスは永久(トコシエ)の奴が成り代わってると思ってる」
ヒポグリフ「そんな…じゃあ元のスフィンクスはどうなってしまったの…?」
グリフォン「どうやったらそんな事が出来るのかはわからねぇ…只、あの雰囲気と眼鏡をかけ直す癖は間違い無く永久(トコシエ)博士だ。…覚えてるかヒポグリフ、俺達がふざけてスフィンクスの眼鏡を取ろうとしても体の一部みたいになってて取れなかったろ?」
ヒポグリフ「覚えてる!あの時どうやっても取れなかったもの!」
グリフォン「珍しくあいつスゲー怒ったもんな…」
ヒポグリフ「あんなに怒るとは思わなかったわ…」
グリフォン「スフィンクスも言ってただろ、『これは僕の体の一部みたいなものなのさ』ってな」
ヒポグリフ「『けんきゅうじょ』での暮らしは…食事もパサパサで味気無かったけど、グリフォンとスフィンクスの二人さえ居てくれたらわたしはそれで良かったの…ねぇ、グリフォン、またあの頃みたいに戻れるかな…?」
グリフォン「ああ…!心配すんな、お前を助けた時みたいに俺がバッチリやってやるさ!」
勿論グリフォンにはそんな確証など無かった、だが今はヒポグリフを不安にさせたく無かった事もあるが何より自分自身にそう言い聞かせたかった。
グリフォン「しかし何だってわざわざフレンズからサンドスターを集めてるんだ?ここからでも見えるけどあの山のてっぺんにあるのはでっかいサンドスターなんだろ?」
ヒポグリフ「私も少ししか聞いていないけど…確かセルリアンとの接触によって恐怖を与えられたフレンズの体内でサンドスターは少しずつだけどセルリウムに近い物質に変質するって…」
グリフォン「ふーん…よく分からんがスフィンクスはそれを集めてるって訳か…」
ハクトウワシ「ううむ、益々放っては置けないな!」
ライオン「ふあぁ~、じゃあそろそろ出発しようか~」
小休止を終えたグリフォン達はゆきやまちほーに向けて出発した。
けんきゅうじょの場所を知るために、ゆきやまちほーの温泉を目指すグリフォン一行はみずべちほーを抜け、ゆきやまちほーの上空を飛んでいた
グリフォン「ぶぇっくしょーーーーい!!」
ヒポグリフ「だ、大丈夫?」
ライオン「だいぶ冷えてきたねぇ…」
ハクトウワシ「なんだか雲行きもだんだん怪しくなってきたわね」
グリフォン「おんせんって所はまだ遠いのか?」
ハクトウワシ「まだゆきやまちほーに入ったばかりだから、だいぶあるわ」
ヒポグリフ「どこかで休みましょうか?」
グリフォン「いや、天気が崩れないうちにできるだけ距離を…ん?」
ふと、地上に目をやると何者かが走っている姿がちらりと見えた気がした
ヒポグリフ「どうしたの?」
グリフォン「今なんか… 誰かがいたような気が…」
ライオン「どこに?」
グリフォン「あの辺りに…ちらっと見えたと思ったんだがな」
ライオン「ん~?誰もいないけど… うん?」
ハクトウワシ「… 誰かフレンズがいるね。走っているようだが何かあったのだろうか」
その後ろから、球体型のセルリアンが3体ゴロゴロ転がってくるのがみえた
ハクトウワシ「いけない!セルリアンに追われているんだ!助けなくては!」
ハクトウワシはグリフォンにライオン を預けるとセルリアン目掛けて一気に急降下する、フレンズに気を取られていたセルリアンは瞬く間に石を砕かれサンドスターの結晶となって消える。
ハクトウワシはそのまま側で腰を抜かしてへたり込んでいるフレンズに声をかけた。
ハクトウワシ「大丈夫だったかい?君、怪我は無い?」
ヌートリア「あ、ありがとう…はぁ~怖かったぁ~、いや~友達に誘われて温泉に浸かりに来たのに偉い目に会ったよ~」
ハクトウワシ「最近はセルリアンが増えてきてるからね、今まであまりセルリアンを見なかったちほーでも現れるようになったみたいなんだ」
ヌートリア「そうなのか~ちょっと位のセルリアンなら自慢の歯でやっつけちゃうんだけどな~、温泉までまだ少しあるしどうしようかな~」
ハクトウワシ「丁度良かった、私達もそこに向かう途中なんだ、良かったら一緒にどうだい?」
ヌートリア「助かるよ~!」
ハクトウワシ「よし、じゃあしっかり掴まって!」
ハクトウワシはヌートリアを抱き抱えると羽を広げ上昇する。
ヌートリア「うわわわわわーーっ!?たっ、高い!飛んでる!私、今飛んでるよ~すご~い!」
ハクトウワシ「ははは、飛ぶのは初めてかい?どう、素晴らしい眺めだろう!」
目の前に広がる雪で覆われた山々にヌートリアは息を呑んだ、遠くには温泉だろうか白い湯けむりが見えた。
グリフォン「お、ハクトウワシが戻ってきたぞ、ん?一緒に誰かいるぜ、さっきのフレンズか?」
ハクトウワシ「やあ待たせたね、この子、温泉まで行くそうなんだ一緒にいいかな?」
ヌートリア「私はヌートリアさ~よろしくね~」
グリフォン「おう、旅は道連れだ、俺はグリフォンだ、よろしくな!」
ヒポグリフ「あの、私はヒポグリフ、よろしく」
ライオン「やあ、私はライオンさ、飛べない者同士よろしく~」
ヌートリアを加えたグリフォン一行がしばらく飛び続けていると温泉から立ち上る白い湯気が次第にが濃くなってきた、山の中腹辺りに点々と大小様々な温泉が見えたその先に目的の建物が建っていた。
グリフォン「おっ、あれだな!おい…なんだちょっと様子が変だぞ?!」
ハクトウワシ「確かに…この気配は、セルリアンがいるのか!?」
ヌートリア「ええっ!ここにもセルリアン!?」
ヒポグリフ「あっ!あれ見て!誰か建物から走って出てきたわよ!」
ライオン「あれは…ぎんぎつねだねぇ。何だかただ事じゃなさそうだよ。」
グリフォン「みんな降りるぞ!」
ぎんぎつね「きゃっ!!あ、あなた達は… ライオン!と、ハクトウワシ!と…」
そう言ったあと、グリフォンとヒポグリフの姿を見たギンギツネはひどく怯えだす
ぎんぎつね「ど、どういうこと!?ウソ、こっちにもいるの!?追い詰められちゃったわ!」
グリフォン「ああ?おい、あんた大丈夫か?」
ギンギツネ「触らないで!!あなた達、一体何が目的で…!!」
ライオン「ちょっとちょっと、落ち着きなよ!何があったのさ?」
一行がもみ合っているその時、温泉の入り口から先ほど倒した球体セルリアンが数体ゴロゴロ転がり出てくる…
ヒポグリフ「あ、あぶない!みんな避けて!」
グリフォンはとっさにぎんぎつねを抱きかかえるようにセルリアンを回避!
ライオン「よっ…と!」(パッカァーン!)
ヌートリア「わーーー!」
ハクトウワシ「みんな大丈夫!?ケガはない!?」
グリフォン「おい、大丈夫か?何があった?」
ぎんぎつね「助けてくれた…?あなた達は、さっきの奴の仲間じゃないの…?」
グリフォン「さっきの奴?まさかアイツが…!」
温泉の入り口を睨みつけるグリフォン・・・その時、中から一人のフレンズが出てきた
謎のフレンズ「ぐふふ・・・!逃げようったってそうは・・・おう?誰だキサマらは!」
温泉から出てきた謎のフレンズはどことなく、グリフォンやヒポグリフに雰囲気の似た風体をしている
グリフォン「スフィンクス・・・じゃねえ!?誰だこいつ!?」
ヒポグリフ「あなたは・・・!!」
ぎんぎつね「こいつらが、急にセルリアンと一緒に現れて建物の中であばれだしたのよ!」
ライオン「キミは誰~?」
謎のフレンズ「ぐふふ・・・」
ライオン「・・・名乗るくらい、したらどうかな~。」
睨みあうライオンと謎のフレンズ・・・その後ろから、もう一人声が聞こえる
謎のフレンズ2「何やってるんだい、キマイラ姉さん。あんまりモタモタしてると・・・ん?」
グリフォン「また出てきたぞ!お前ら、スフィンクスの知り合いか?」
キマイラ「おう、オルトロス。そう急くなよ。なんだか骨のありそうなヤツがでてきたぜ。」
オルトロス「スフィンクスを知ってるって事は、おそらくアナタはグリフォンですね?で、そっちのが、ヒポグリフ。」
ヒポグリフ「キマイラとオルトロスですって・・・!!?」
温泉には猛吹雪が近づいていた・・・