アライ
「コレをどうやって未来に持って帰ればいいのだ?」
フェネック
「う~ん、困ったね~」
『まんまる』は物置きであっさり見つかったものの、大きさが一抱えほどある。
そして、未来に帰る方法に至っては見当も付かなかった。
ボス
「❗ ちょっと除草を中断してもいいかな」
かばん
「はい?」
フェネック
「せめて、どうやってタイムスリップしてしまったか、だけでも分かればね~」
ボス
「キミたちはここで何をしているのかナ?」
アライ
「ウワァァァ… シャベッグググー」
フェネック
「し~」
フェネックが口を塞ぐ。
フェネック
「でも驚くのは分かる~」
アライ
「ボスがフレンズに喋りかけるなんて初めて見たのだ」
ボス
「生態系と時空の維持のためには、
キミたちのような未来のフレンズがいるとマズいんだヨ」
アライ
「おお、タイムキーパー:ボスと同じセリフなのだ」
フェネック
「・・・
未来に戻りたいのは やまやまなんだけどさ~」
アライ
「帰り方が分からないのだ」
ボス
「検索中、検索中… !
『ワープポイント』が見つかったヨ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ロープウェーのカフェ駅から下の方を見ると、ふもと駅付近で空間が歪んでいた。
ボス
「アレダヨ、アレダヨ」
アライ
「アライさんは目が良くないので、よく分からないのだ」 (=_=)
フェネック
「そう言われれば確かに『もや~』ってしてるかな~」
アライ
「よし! それなら出発なのだ。
これでアライさんも『りふとてき』なものに乗…」
ボス
「いや… いつ消えるか分からないから、急いだ方がいいと思うヨ」
アライ
「えぇ…? じゃあ、どうするのだぁ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『まんまる』はフェネックが背負い、かばんとトキが命綱に使っていたロープで縛った。
フェネック
「このロープ使っちゃって、かばんさん後で困らないかな~」
ボス
「かばんは まだ沢山持ってるから大丈夫だヨ」
フェネック
「それなら歴史は変わらないね~」
アライ
「フェネックぅ、まだなのか~?」
アライさんが地団駄を踏んで急かす。
フェネック
「ちょっと待ってね~
ボス~ ベルトが緩んでるから締め直してあげるよ~」
ボス
「助かるヨ」
ボスが背中を向ける。
フェネック
「はい、これでいいよ~」
アライ
「・・・?」
ボス
「アリガトウ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
フェネックがアライさんを肩車し、アライさんが足を曲げて固定する。
アライ
「なんだか『まっするどっきんぐ』みたいなのだ」
フェネック
「なにそれ~?」
アライ
「ステキなコンビだけに許された由緒正しき『型』なのだ」
ボス
「ゆうじょうぱわーだネ」
フェネック
「・・・」
アライ
「どうして物足りなさそうな顔なのだ?
ゆうじょうぱわーは1×1=1の力を発揮できるのだ!」
ボス
「それはただの算数理論だネ」
フェネック
「・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アライさんは先ほどのロープの余りをロープウェイの架線に引っ掛けると、
ワイヤーの両端を両手で掴み、ぶら下がる。
アライ
「準備完了なのだ」
フェネック
「じゃあ行くよ~ ボス~ 元気でね~」
宙に足を踏み出す。
アライ
「ボスぅ、ありがとうなのだぁぁぁぁ…
うわぁぁぁぁぁぁぁ 怖いのだぁぁぁ!」
ボス
「グッドラック」b
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2人はターザンロープスライダーのように滑り降りていた。
足を掛ける場所は無いが・・・
アライ
「慣れると『あくてぃびてぃー』みたいで『たーのしー』のだ。
コツメの気持ちがちょっとだけ分かったのだ」
フェネック
「私には ちょっとスリリング過ぎるかな~」
アライ
「ところでフェネック?
さっきは なんでボスにウソをついたのだ?」
フェネック
「ちょっとしたお礼さ~
・・・歴史修正されちゃうかもしれないけどね~」
アライ
「そうなのか…
ん? あれが『ポイント』なのか?
アライさんにも見えてきたのだ」
フェネック
「・・・
これはマズいね~」
アライ
「どうしたのだ?」
フェネック
「さっきから大きさが変わってないんだよ~」
アライ
「どういうことなのだ?」
フェネック
「遠近法だよ~
普通なら近付くにつれて大きく見えるはずだよね~」
アライ
「ーということは、つまり・・・」
フェネック
「さっきより小さくなってきてるね~
ボスが『消えるから急げ』って言ってたのは、このことか~」
アライ
「どうしてタイムトラベルものは『いつも時間ギリギリ』なのだー!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ワープポイントはみるみる小さくなっていく。
すでにフレンズ1人が通れるかどうかぐらいの大きさにまで縮んでいた。
フェネック
「これはちょっと間に合いそうにもないね~
・・・ 次、ポイントが出現するとしたらどこだろ~?」
アライ
「・・・」
フェネック
「アライさ~ん、疲れちゃった~?
足のフックが緩んできてるよ~ 大丈…
・・・!?」
アライ
「フェネック…
このチャンスを逃すと二度と未来には戻れないかもしれないのだ…」
そう言うと、アライさんはブランコを漕ぐように体を前後に揺らし始める。
フェネック
「アr…」
下半身が前に振れたタイミングで、アライさんは曲げていた足を伸ばす。
フェネックの反応が一瞬だけ遅れた。
フェネック
「アライさ~ん!?」
アライ
「フェネックぅ! まんまるは頼んだのだぁ!」
アライさんの足へと伸ばした手は空を掴む。
フェネックの体は宙に投げ出され、落ちていった。
それを待ち構えていたかのようにフェネックを吸い込んだワープポイントは、
役目は終わったとばかりに かき消えた。
アライ
「のだーーー!」
べしゃ!
残されたアライさんは、勢いのままに ふもと駅の壁に叩きつけられた。