私がリビングに入ると、ともえさんがアムトラさんに膝枕をしていました。
ともえ
「助けて…」
イエイヌ
「え…?」
ともえ
「足が痺れた・・・」
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ともえさんの体を引き抜き、代わりにクッションを差し込みました。
アムトラさんは相変わらず寝入っています。
ともえ
「寝かしといてあげよう」
足首を曲げたり伸ばしたりして痺れを取ると、
私の持ってきた毛布を掛けてあげながら、ともえさんは言いました。
何があったのか訊きたい気持ちもありましたが、なんだか訊きづらくて、
イエイヌ「そうだ、ちょっと見てもらいたいものが」
無理に空気を変えることにしました。
イエイヌ
「 #どうでしょう?
アルパカさんにもらったんですが…」
ともえ
「うひょ~ いいね、いいねぇ~!」
見るからに有頂天になった ともえさんは、どこからともなくスケブを取り出すと、前後左右はもちろん、
ミッションインポッシブルのように天井からぶら下がって(どうやって体を支えてるのでしょう?)までして、
私のメイド姿を描き始めました。
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イエイヌ
「あの・・・」
しばらく経って、
今は車の修理工のように床に仰向けに寝そべって描いている ともえさんに声を掛けました。
イエイヌ
「お願いがあるんですが・・・」
ともえ
「なになに?」
イエイヌ
「ともえさんのこと『ご主人様』って呼んでもいいですか?」
途端に空気が凍り付きました。
ともえさんはスケブを閉じると、私の広げた足の下から出てきました。
ともえ
「それってマジのやつだよね? 『ごっこ』じゃなく」
珍しく真顔で訊いてきました。
その真剣な様子に押され、声が小さくなってしまいます。
イエイヌ
「はい…」
短い間でしたが、一緒に暮らしてみて、
「このヒトの命令なら聞いていける」
そう思って提案してみたのですが・・・
ともえ
「・・・ それは勘弁して欲しいかな?
あたしはイエイヌちゃんと主従関係を結びたいわけじゃないんだよ」
イエイヌ
「・・・」 (´·ω·`)
ともえ
「あ… ごめんね」
そう言うと、いそいそと外へ出て行ってしまいました。
捨てられた犬のように突っ伏しているとアムトラさんが起きてきました。
アムトラ
「どうした」
イエイヌ
「ともえさんを怒らせてしまいました。
もう帰ってこないかもしれません。
ごめんなさい…」
アムトラ
「何があったか知らんが・・・
アイツなら戻ってくる」
私なんかより よほど信頼関係を築いている自信があるから言えるセリフ、でしょうか?
イエイヌ
「どうしてそんなことが言えるんですか?」
アムトラ
「スケブが置きっぱなしだからな」
イエイヌ
「あ・・・」
思った以上に冷静な状況判断によるものでした。
それに引き換え私は・・・
アムトラ
「それに、謝るなら相手が違う」
アムトラさんは、もし ともえさんと別れることになってもツラくないのでしょうか?
アムトラ
「アイツはお前も大事に思っている」
イエイヌ
「そう、でしょうか…?」
アムトラ
「そんなに言うなら連れてってやる。 アイツの所へ」