虫喰いでないフレンズ
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承………………
はっ!
ウッ!!
「なんだ?あいつは…たしかさっきからしてた2つのニンゲンの声の片方…」
《これは…》
「わたしの食い物を狙ってるのか?」
《あのときの…》
「それともずっと目を合わせてくるってことは、わたし自身を狙っているというのか?」
《このときのことは………》
「そろそろあいつのところに戻ろう…なッ」
《見たくないのにッ………》
やったッ!
「ギャースッ!」
《やったッ!じゃあねーぞ!チクショー》
いや…当たったのは左肩だ…
致命傷じゃあねえ…
「敵だったのかてめーはッ!生きて帰れると思うなよおッ!」
《のんきに生きて帰れると思っていたのはわたしの方だった》
「あの玉を当ててくるのなら!それを撃ち尽くさせてから安全にてめーを仕留める!おまえをあいつのところには行かさねーッ!」
《現実はそう甘くないと言われたばかりなのにな》
させるか━━ッ
「くそッ!?なんてパワーだ!すぐにそこに隠れててめーを撃ってやるッ!攻撃の瞬間は二人とも動けんだろうが、次にここから動くのはひとり!わたしだけだ!ヒトなら脳天に食らわせれば一発で済むッ!」
《ここは今思えば何が何でも逃げてあいつ、虫喰いと合流するべきだったんだ》
やばい!
何か飛ばすスタンドだッ!
「そのスタンドも何か飛ばしてきたじゃあねーかッ!だがわたしのは防御できねえんだよッ!」
《でも後悔なんてのはいくらでも吐き出せるが腹には収められないからやめろとも言われた》
カ━z_ン
「な」
《だから忘れることで吹っ切れるとおもったんだけど…》
………
「あ………あたったか………別のものに………わたしはもう………」
《ここまで鮮明に繰り返し見せられると、忘れない方が正しいのか迷うな》
野郎ォ!!
「お前の姿を最後に見せろ………なるほど。何もわたしの攻撃はあいつのためになっていないのか………」
《そうだ。だから虫喰いもおそらくはあの黒いヒトに敗れた。そんなわたしの記憶は何を訴えている?》
やったッ!
命中してたッ!
「だがなるべくてめーが早めにこちらに来るのを願うよ………あいつの勝利をな………」
《あいつ、虫喰いの勝利は願うだけでは訪れない。生きてわたしが近くに行くことでしか叶わないこと。もしも、初めからわかっていたら、なんて考えるだけ無駄だというのに…》
《ん?そもそも、あいつが勝ったらどうなっていたんだ?》
のののののののののののののののののの
目が覚めると聞き慣れない耳障りな音が響いていた。
頭痛に堪えながらアフリカゾウとイエネコの居場所を探してみると、すぐ近くから二人のニオイがする。
ドブネズミ
「くぁぁぁぁぁ〜〜〜」
〘夢か…
『夢みるプリンセス』のようにかなりはっきりと、その場にいて見てたかのような臨場感があったが…
まさかまだあいつは生きてるのか?〙
アフリカゾウ
「あ、おはよう!」
イエネコ
「おおあくびね。声だけでウツされそうなくらい。おはよう」
ドブネズミ
「わるいな、伝染すつもりはなかった。おはよう」
アフリカゾウ
「あ…あああああああ」
イエネコ
「ふ…くっ……ぁぁ」
ドブネズミ
「二人とも伝染ったか…寝たらないなら寝たらどうだ?」
アフリカゾウ
「確かにちょっと寝不足かもしれないけど、これは寝てなんかいられないよ!ドブネズミちゃんもこっち来てみてみればわかるから!」
ドブネズミ
「ああ?そうだ。よっこいしょ。そもそもここはどこだ?スゲーうるさくて目が覚めたんだ」
イエネコ
「たんさせん?の中だって。けっこう大きな乗り物みたいね。このラッキーってのが勝手に呼んでたらしいわ。ちなみに今はこれをそーじゅーしてるから手を出すなとか言ってる」
ドブネズミ
「乗り物だって?ふふん、歩かなくてすむのは助かるな。ラッキー、気が利くな」
昨晩、ラッキーが寝ていたアフリカゾウのもとに戻ってきて起こした。
突然起こされたアフリカゾウは、眠い目をこすりながら今三人が乗っている探査船を呼んだことを告げられて、しかたなく二人を運んだ。
体力には自信があったが、それ以外の理由で起こされたとは考えていなかったので終わったらすぐ寝直す気でいたという。
だが、運び終わって休めるかと安心していると操縦マニュアルを渡され、渋々読み出すと止まらなくなりそのまま朝を迎えたというところまでがアフリカゾウからの愚痴で判明した。
アフリカゾウ
「もう、『そうじゅうまにゅある』なんて読んでたら寝てられないよ〜ああああああ。これを動かすのは楽しいけどさ」
ドブネズミ
「え?ラッキーが動かしてるのにアフリカゾウも操縦するのか?」
アフリカゾウ
「いや〜最初から別のラッキーが乗ってたのにさ、これを呼んだ方も一緒に運転してるんだよね。一人でできたんなら二人もいらないんじゃない?って聞いたんだけど何も言ってくれなかったよ…」
ドブネズミ
「もういいだろ。実際に役に立ってくれてるし、任せときゃいい。虫喰いとの戦いで役立つとは思えんし、これくらいやってくれないとな」
アフリカゾウ
「虫喰い…そうだ私……」
ドブネズミ
「なんだ?どうした?」
アフリカゾウ
「私……虫喰いが言ってきたことに対してカッとなっちゃって言いだせなかったことがあるんだ……」
ドブネズミ
「おいおい、なんでまたそんなことを…」
アフリカゾウ
「あたりまえでしょ、挨拶なんて」
ドブネズミ
「ぁ…挨拶?たしかに、あいつも言葉を喋ってるんなら、わたし達と同じフレンズになったんだろうな。いや、挨拶してないってのはァ…つまりはどういうことなんだ?」
アフリカゾウ
「あんなことする子なんて見たことも聞いたこともないんだよ……
私はこの島のフレンズみんなと会ってるはずなんだ……
一人で島中をまわっていろんなフレンズと会ったことがあるのに……
虫喰いとは初めて会ってるのに……
色々聞きたいことがあったのに…」
ドブネズミ
「???
初対面のはずだから虫喰いにも挨拶するはずだったけどできなかった、と?」
アフリカゾウ
「うん……
でも、あっちがなぜかこっちを知ってるみたいでさ。
セルリアンまで出てきちゃったから戦いのスイッチが入ったというか、落ち着いて話せるような状態にしてくれなかったというか……」
ドブネズミ
「なるほどな。そういうやつなんだ、あいつは。だから気にしなくていい」
アフリカゾウ
「え?」
ドブネズミ
「あいつは、自分のペースで事を進めるのに長けている。何らかのルートでお前の情報を仕入れてて、それを利用してお前をゆっくり話せる状況から引き離すようにしてたんだ。お前から冷静さを奪うなんて容易いって思われただろうな」
アフリカゾウ
「ドブネズミちゃんは……なんでそんなに虫喰いのことを悪く言えるの……?」
ドブネズミ
「悪く言うだって?そう聞こえた?」
アフリカゾウ
「信じてみようって感じがしないんだよ………
敵の攻撃方法を説明するみたいな、悪者から遠ざけようとしてるみたいで………
今は私も虫喰いのこと良く言ってないけどさ、最初から怖がってちゃんとお話ができないなんて面白くないじゃん!」
ドブネズミ
「なるほど、そういう考えはなかったな。たしかに虫喰いとお前とはまだまともに出会ってないんだった。セルリアンで攻撃するなんて得体の知れない能力身に着けてやがったからわたしも混乱させられてたみたいだな。次会うときはしっかり言葉を交わして、何があってそんなことしてるか聞き出そう」
アフリカゾウ
「………わかってくれてありがとう。虫喰い『ちゃん』は島の反対側にいるって言ってた。反対ってのが何の反対かわからないけど、ドブネズミちゃんはどこだと思う?」
ドブネズミ
「あぁ…その虫喰い『ちゃん』が言ってるのは、地図でこの辺りのことだろうな。円い形のこの島では、反対側といえば円を半分に折ったとき重なる場所のことと言えるだろう。ちょうど隣のエリアみたいだ。」
アフリカゾウ
「へぇぇぇ。ココが…」
ドブネズミ
「ん?なんだ?このエリアだけやたら目立つな。アフリカゾウはどんなところか知ってるか?」
アフリカゾウ
「うん………一応、ね。ほとんど入ってないけど………ちょっと通っただけ」
ドブネズミ
「なんでだ?」
アフリカゾウ
「セルリアンだらけなんだよ…そこは」
ドブネズミ
「なんだと?」
アフリカゾウ
「そこは飛んですぐ出られればなんともないの。鳥のフレンズに頼めば通れるけど、地上を通ろうとするなんてことは考えられないくらい危険なんだ」
ドブネズミ
「じゃあ、なぜ虫喰いはそんなところに居ると言ったんだ………?」
ドブネズミの問にアフリカゾウは答えなかった。
セルリアンという敵(今まではほとんど大して苦戦していないつもりだが)の巣窟にいて無事などころかそれらを差し向けてきているなどとは、想像はできても理解ができなかったためだ。
一方で純粋に疑問に思っていただけのドブネズミは、それまでずっと寝転んでいたが姿勢に耐えられなくなってきたので起き上がった。
布団もなく硬い床で雑魚寝していたので、痛みを覚える。
イエネコを見ると、ずっと遠くを見ていた。
そんなに見続けられるものなのか、と気になり同じように外の景色を観るがなにかあるようには見えなかった。
砂漠エリアに入っていたからだ。
事実、空と砂だけの景色はドブネズミにとっては目新しいものである。
巨大な岩もサボテンも初めは驚き興味を持っていた。
しかし、より派手で目を引くようなものを期待していたためなのかすぐ視線を外して、他のものを探しにいってしまった。
思ったより何もなくて損したなど落胆していると、隣でイエネコが大あくびを発して愚痴をこぼした。
イエネコ
「ファああああ〜〜〜〜ッ
初めて見るけどやることなんにもないしなんかあるけどすぐ飽きるんじゃ、ついてこないほうが良かったのかしらァァ」
ドブネズミ
「たしかにつまらん景色だ………でもなんにもないのが一番だろ?ノン気にアクビしてられるんだ。でも、例えばだ。そこに指差し込まれたらどうなる?」
イエネコ
「えぇ?どこに?うふぁぁぁぁぁぁ」
ドブネズミ
「ここだ」
イエネコ
「!?アグアグアグっ」
ドブネズミ
「ふーん。こーなるのか」
イエネコ
「なにをするのッ!?ふ、ふざけるのもたいがいにしてよねっ」
ドブネズミ
「う〜む………ここんとこ戦いと苦労の連続でとてもふざけてられなかったから、許してくれない?」
イエネコ
「なによ、そんな理由で許されると思ってるの!?」
ドブネズミ
「ご、ごめん………」
イエネコ
「冗談よ、そんなに怒ってないわ」
ドブネズミ
「なんだ、意外に冗談とかわかるのか。んじゃあ、ダジャレ言っても構ってくれる?」
イエネコ
「ダジャレ?言いたきゃ言っててもいいけど構ってあげたりはしないわよ。スベっても自己責任で始末してよね」
ドブネズミ
「では、おほん…『猫がNeck on lonely!!』」
アフリカゾウ
「???」
イエネコ
「………」
ドブネズミ
「ほ、ホントに無視すんのか…」
アフリカゾウ
「ドブネズミちゃん、今の何?誰に言ってたの?」
ドブネズミ
「あ…あああ、誰にも言ってないから気にしなくていいってやつだ」
(自分で言っといてなんだけど誰にも理解されないのは辛い…)
アフリカゾウ
「え?私は聞いてたよ?隠すことないって」
ドブネズミ
「分かってくれるのか!で、面白かったかッ!?」
アフリカゾウ
「ねこがねっころんりー?なんだか分からないのが面白いね」
ドブネズミ
「面白いか!いょッしぁ!」
イエネコ
「たしかにワケがわからないわね…」
ドブネズミ
「おう!もっといくぞ!えーっと…」
このままではスベり続けることが目に見えていたイエネコはここで別の事に注意を向ける。
イエネコ
「でもそれくらいにしときなさい。そろそろ喉が乾いてきてない?ノドを潰したくはないでしょう?」
ドブネズミ
「お…たしかにノドが乾くな。暑くはないのに」
イエネコ
「はい。水はそこで汲めるわ。カップは自分のがわかるように置いてね。何個も置いてあるわけじゃあないみたいだから」
ドブネズミ
「ああ、ありがとう」
アフリカゾウ
「こっちには私の、あれがイエネコちゃんので、ここがドブネズミちゃんのところね。イエネコはこうしないとイヤみたいだから」
ドブネズミ
「そうなのか」
イエネコ
「ええ、ドブネズミも置くところには気をつけてよね。でないとお…ぎゃあああああ!?」
ドブネズミ
「ん?なんだ、そんなに叫んで何があったんだ?」
イエネコ
「もうだめ………おしまいよ……しかも自分でやってしまうなんて………」
アフリカゾウ
「あ………水をくんだ新しいカップを持ったまま自分が飲んでたのをドブネズミちゃんに渡しちゃったんだね……」
ドブネズミ
「つまりは…どう言うこと?」
イエネコ
「私のカップをあなたが……」
ドブネズミ
「そんなことでそんなに落ち込むのか?」
イエネコ
「もういいわ……グビッ」
新しく汲んだカップの水を舐めて見せつけたイエネコは、ドブネズミににじり寄っていく。
口を三日月状に開き、犬歯を覗かせ、猫背で顔だけ上げて真っ直ぐドブネズミを見つめていた。
ドブネズミ
「おい、それを持って何をする気だ?飲みたいならそれで飲めばいいだろ」
イエネコ
「あなたがこれで飲みなさい!こうすれば『対等』よ!」
ドブネズミ
「グボッ!?」
アフリカゾウ
「あぁっ、やめてえ!」
イエネコ
「はぁ…はぁ…フフフ」
ドブネズミ
「ゲホゲホ…なんだかわからんけどこれで収まるならいいか…」
イエネコ
「これであなたと私は『対等』…うふふふ……アフリカゾウ!せっかくだからあなたもやりなさい!」
アフリカゾウ
「え?まさか…うわぁぁぁぁ!?」
ドブネズミ
「やっぱ良くなかったかな……やめてくれぇぇぇぇぇ」
その頃、探査船の通信用カメラから一方的に中の様子を見る者がひとりごちていた。
マイクで拾った声が一連のドタバタを演じている。
ここで、観察者はその中のある一人に注目していた。
マイ
「……このイエネコ……この性格…これは何を意味するというのか……まさかな………」
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