虫喰いでないフレンズ
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これまでの虫喰いでないフレンズ
あらゆるものを溶解する針を射出するスタンド・『ラット』を持つドブネズミは、アフリカゾウと共にフレンズが暮らす島の数々のエリアに渡りセルリアンの調査探検の旅をしていた
途中スタンド使いのセルリアンと出くわしつつも、戦いの末撃破してゆく
道中で出会ったイエネコが加わり三人となる
同じく途中加入したガイドロボット・ラッキーが呼んだ探査船なる乗り物で、一行は次なる砂漠エリアへと入っていった
●○●○●○●○●○●○●○●○●○
「おい!おまえ!何者だ!」
「そうじゃなくて!ねえ!君は名前はなんていうの!教えてくれると嬉しいな!」
「まずセルリアンにコミュニケーション求めるのが違うと思うわ!こいつ何言っても聞きそうにないもの!すぐ倒さないと!」
「ああ、だからそうしようとしてる!しかし全く…何なんだあいつは…」
「
今より時を少し遡り、三人のフレンズと一体のセルリアンの出会いがあった。
三人が探査船でじゃぱりまんランチタイムをとっていたとき、それは平穏を脅かそうとするように現れた。
ドウンという音が天井に響いた時から戦いが始まっていた。
「なッ!なんだぁ!?」
「わっ!?なんなの〜〜〜ッ!?」
「ちょッ!アフリカゾウ、走り回らないで!?てゆーかよくこの狭さで走り回れるわね!?」
「ハッ!上の何かをどうにかしなきゃ!」
「落ち着いたか。ん……なんか砂が降ってきて…」
「なっなんで天井があるのに…!?て、天井を見て!」
「ハッ!この天井は寝てたときの感じと明らかに違う!なにかされてるぞ!」
「こ…怖くなってきた…やっぱり無理ィィィイ」
「落ち着いて!ここでじっとしてれば何事もなくやり過ごせるかも知れないから!」
「くそ…この状態では『ラット』を撃ち込むこともできない…
しかし外に出たら何をしてくるかわからん…
やむをえないッ」
「だから!じっとしてなきゃって言ってるよにもうっ」
「ちゃんと考えはある!わたしにまかせろ!」
「わぁぁぁぁやぁぁぁぁ」
「アフリカゾウは混乱してるし…大丈夫なんだね、ドブネズミ!?」
「ああ!まず外に出る!」
「
「ウッ!?」
「ドッ、ドブネズミ!?」
「ハッ」
ドブネズミが外に出ようとするとその真上の天井が崩れ落ち、迷惑者が姿を現した。
人型ではあるものの胴体は格闘家のイメージに合うように筋骨隆々で、手はボクシンググローブのように肥大化し、足は先に三本の鉤爪が生えている。
頭には黄色い飾り羽が、顔には赤く円い目が左右に3つずつ横に周りながら付いていて、口だけはヒトのものと同じ見た目をしている。
そんな敵が警告音が鳴り響く中、堂々とした立ち姿を見せつけているところで話は冒頭に戻る。
「
「こいつ喋れるのか?唸るばかりなようだが?」
「しょうがない…ここでなんとかするよ!パオパオする準備は良いかなっ!パオオオッ」
「おっとこいつと戦う前に言っとかなきゃいけないことがある。
せっかく名前を聞かれたんだから素直に答えるのが礼儀というものだろう」
「またこの声!虫喰いッ!」
「虫喰い…またおまえか?こいつもお前が操ってるのか?」
「質問を!返す前に継ぎ足さないでくれるかなァ?何もこちらに言わせないというのはどーかと思うよォ」
「それは悪かったね。じゃあ最初のだけでいいから答えて。この子はなんて言うの?虫喰い『ちゃん』…」
「ブッ!?な、なんてことを言うんだァ!?だがまあいい、コイツは『ロッキン・ホッピン・ジャンピン』と名付けた。以上だ」
「そう…いやちょっと長くない?短くしたいな〜なんて思ったんだけど」
「なるほど、一理あるな。」
「いちいちそんな長ったらしいのを呼んでられないわね。ロッキーで良い?」
「センスあるな、イエネコ!決定!」
「………」
「そーだね!ロッキー!一緒に頑張ろうね!」(あれ、私なにかすごく大事なことを忘れてるような…ロッキーになにかあるの?)
「お前らなにか忘れてるな。お前たちはそいつに始末されるのだぞ」
「いや、そんなことはわからないよ!ね、ロッキー!」
「そのロッキーは沈黙してるわ…あんたの調子に乗れず、あいつの命令も聞けずに困惑してるんじゃないかしら?」
「あぁ〜〜〜っじゃあ行くぞ!『ラット』ッ!」
「
ドブネズミ
「なにッ!?」
ドブネズミが『ラット』を出したとき、ロッキーはそれに反応して遥か高く跳び上がった。
暫く音が途切れかけるが再び大音量で咆哮が耳をつんざく。
そして同じ天井の穴から入ってくると床をも貫通し穴を開けると冷たい衝撃が三人を押し流した。
「ぎゃァァァァァッ!?」
「うひゃあぁあい!水が吹き出してくるゥゥゥゥゥ」
「飲料水は床下に貯められていたのかッ!マズいッ」
外へ押し流され砂と水でグショグショの三人はそれぞれ脅威に対処すべく体制を立て直す。
「彼奴はまだ探査船の床下に潜んでるわ!匂いならアフリカゾウの方がはっきりわかってるはずだものね!」
「うん。匂いの元はまだ探査船に残ってる………でも気をつけて。流れる水からの匂いが薄くなってるみたい。もしかしたら既に別のところにいて隠れてるかも…いや、足元?地面の下から何かが掘り進むような音が…」
(この地面を掘り進む音はどこかで聞いたような…なんだっけ?下から出てきて…)
「下か!なら動かないでいた方がいいな!」
「…静かにして」
「あ?」
「アフリカゾウが音を聞いて敵の居場所を探ってくれてるんだから静かにしたほうがいいってことよ」
「わかった………」
それからロッキーこと『ロッキン・ホッピン・ジャンピン』の襲撃に備えてひたすら待つこと30分、砂漠の真昼間の暑さに段々と参ってきた。
水分を攻撃と同時にほぼ敵に台無しにされたことの重大さをそれによりドブネズミは理解したが、頭痛がして立っているのが辛くなってくる。
続いてイエネコが静かに膝を砂に付け、立ち膝の姿勢で踏ん張りながらさらに待とうとする。
アフリカゾウは他の2人に比べて何事もなさそうだが、大粒の汗を垂らして地中の音に耳を澄まし続けることに限界を感じ始めていた。
「おい、これは虫喰いの作戦だ!襲撃がいつ来るかわからない状況で待ち続けさせるのと砂漠という過酷な環境はわたし達を衰弱させるための罠だ!わたしはもう少しで頭がどうにかなりそうだ…水をもっと飲んでいてもきっと相手のやることは何も変わらないだろうな…」
「そんな…どうすればいいのよ…」
「そうだったの…気付けなくてごめんね…」
(いけない…ロッキーのことで頭がいっぱいになってた…)
「いいんだ…わたしがあいつを誘き出す策を練ればいいだけのことが…ハァッ…ハァッ…」
しゃがんでいたドブネズミが遂に倒れ伏し、呼吸が激しくなる。
起き上がろうとするが手脚に力が入らないことから、事の重みを身をもって思い知る。
「ドブネズミちゃん!?大丈夫っ!?」
「ドブネズミ!」
「ドブネズミの体温を下げなきゃいけないね。涼しいところに移さないとまずいよ」
「ラッキー……お…おまえいつから…そこに……」
「とにかく、涼しいところが必要なんだね。じゃあここを掘るよ。ちょっと待っててね」
「掘るって…砂を掘って涼しくなるの?」
「サバクキンモグラちゃんの豆知識だから!フェネックも言ってたし、そうなんだと思うよ!パオオオオオオオ」
(今はとにかくみんなを涼しくしないとね…)
砂が巻き上がり、平坦な砂地が徐々に深く掘り下げられていく。
やがて少しだけ傾いた日からの日陰は作れないがアフリカゾウ一人が隠れるほどの小さな窪地ができた。
「よ〜し、運ぶよ!」
「すまない…一人だけ涼むのは気が進まない…」
「あんたに再起不能になられちゃ困るのよ、こっちが!」
「………」
ブオオオオオオオアアアアアアアア……
「きっ聞こえる!ロッキーの声だよ!」
(砂を吹き出す、嫌な音…あれ…この音は…)
「わ…わたしにも『ラット』を操る力は残っている…
確実に仕留めたい…やつをおびき寄せて機動力を殺いでやれば…可能性はある…」
「落ち着いて!あんたはじっとしてればいいの!」
「なんでだ…あいつを早く倒して早く体力を回復したいだけなのに…」
「あんたには私がついてるのよ!?いいからアフリカゾウに任せときなさい!大丈夫だから!」
「へっ、そうかい。ならそうするとするかァ…」
「ドブネズミちゃんのためにも頑張らないとね!来るよ!なッ…足元にィ!?イエネコちゃん!ドブネズミちゃんと一緒に逃げて!」
「りょーかい!ふんにゅぅうッ」
「うくっ!?おい、もうちょっといい持ち方はないのか!?苦しい!アフリカゾウがしてたみたいに抱えて持ってくれよぉ」
「我慢しなさい!これしかうまくできないのよ!」
「オエエエ…」
「
「危ない…もう少しで吹き飛ばされるところだったわ…」
「君の相手は私だよっ!こっちにおいでェッ!」
(そう。私ができなかったことの決着のために、私が相手しなきゃいけないんだ。今の私にはやるべきことがある)
イエネコの足下だったところから『ロッキン・ホッピン・ジャンピン』が飛び出したが、一瞬早く駆け抜けたので無事だった。
しかし依然標的はイエネコとドブネズミであり、走って追いかける。
アフリカゾウは2人の危機に気づくと注意を逸らすため追いかけた。
「速いねっ!ロッキー!これはどうかなっ?」
そう言うとアフリカゾウは踏み切って大きく跳んだ。
数日前ドブネズミにセルリアンの背後に回って見せたときのように軽やかに宙を舞い、『ロッキン・ホッピン・ジャンピン』の前に立ちふさがる。
さらに両手を広げて『通せんぼ』してイエネコからの距離を取ろうとした。
「こっちは来ないほうがいいよ〜!」
「
だが突進をやめない『ロッキン・ホッピン・ジャンピン』は巨大な拳で殴りかかってきた。
「そう来るんだったら……こうだよ!」
アフリカゾウはマフラーを振りかざす。
これにより攻撃を受け止めて追跡を止められるだろうと思われた。
だがそこにドブネズミの叫び声が入り、対処の間違いを認識することになった。
「やめろ、アフリカゾウ!そいつには触られるな!そいつは触れた部分を岩に変えるぞッ!」
「えっ」
「
「うおおおあああっ」
(ドブネズミちゃん、いつの間にそんなことを…ほんとにすごい観察力……そう、あの子も……)
アフリカゾウはロッキーの攻撃を仰け反って回避した。
しかし完全には避けきれておらず、マフラーの一部が岩石化し重くなって垂れ下がる。
ロッキーは攻撃を避けられたため、自分自分を守るべく地上で臨戦態勢を維持して立ち留まっている。
「そいつは天井の上に現れたとき、天井がまるで岩に変えられたみたいになっていた…
落ちてきたときは砂混じりの岩の破片が散らばってたんだ…
その破片は天井についてたものの形をしてるものがあった…
だからそいつが天井の壁を岩に変えて砕いたんだと思う………
早く言うべきだったな………」
「なるほどね!地面に潜っても素早く動けるみたいだしどうすればいいかわかんないや!」
「だからわたしの『ラット』が決めるのが手っ取り早いんだ………」
「いや、ラットの世話にはならないよ!わたしがやるんだ!」
「アフリカゾウ………おまえ、何言ってるんだ……」
「私にだってできるよ!たくさんセルリアンを倒してきたんだし、ロッキーも大丈夫だよ!」
「そう言ってもだな…攻撃を当てさえすれば『ラット』は確実に相手を溶かすんだ…それに協力してくれればいいんだ…」
「『ラット』はいいから!仕舞ってて!」
「そんな意固地になってもなにも…とにかくあいつはヤバいんだ…確実に仕留められるのはわ」
「ドブネズミちゃん、あのね。確かに私はね、いこじなのかもしれないけどね。でもね、『確実にやる』って言ってるけど、これは私がやらなきゃいけないことなんだ。今やるべきなのは、私、アフリカゾウなんだ。今ドブネズミちゃんにはやることがなにもないって言うわけじゃないんだけど、今やるべきはそれじゃないんだ。それはやらない方がいいんだ。」
「アフリカゾウ………」
「え、どうしたっていうの?アフリカゾウ、あんた何があって急にそんなことを…」
「思い出したんだ。こいつは『マルミミちゃん』の命を奪ったんだって」
「なに…?」
「!!それってつまりは、このロッキーはアフリカゾウが倒したいって言ってた敵なの!?」
「そう、だね。だから私一人でなるべく倒したい」
「アフリカゾウおまえ、そんなことを言ってたのか。命を奪った、か。」
「ドブネズミちゃんは…どうしたいと思う?私のようなことになったら何をする?」
「アフリカゾウ、いいか?奇妙なことだが、わたしは命を誰かに奪われたからこそ、ここにいる。結果論でしかないがな。だが、そのような自分が恨んでるような相手に自分が何を思うかということ一つでやることを決めるとお前は大切にしてるものを自分から失っていくぞ。確かに自分のやるべきことだと思うことを自分で成し遂げるのはすごいことだ。そこは尊敬できる。それでも、だ。一時の衝動だけで動くのが危険なのは無計画だからじゃない。おまえにはフレンズの心がある。わたしと同じように考えて動くことができている。お前だけにとっての深刻な問題なんてないのだから、今回はわたしやイエネコを巻き込んだっていいだろう。だからわたしは、ここにいる三人であいつ、ロッキーを倒す!」
「なんか聞き入っちゃったわ。勝手に巻き込んでくれてるけど、私はドブネズミに賛成よ。みんなでやった方が効率いいしぃ?でも、あんた自身は今大丈夫なの?それを聞いといたほうがいい気がするわ」
「大丈夫、大丈夫だ。あとからいくらでも休んでやる………ゥゥゥ」
「それがだめって言ってるのに……しょうがない、いくよ!」
(付いてくるっていうんだね、どうしても…ドブネズミちゃんが納得できないならしょうがないか…)
「ああ」
「ええ」
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「フム?コイツハ中中面白クナッテ来たジャアナイか
一部始終ヲ見守ルニ価スルカハ既ニ決マッタな
アイツガココニ居ルトは、アフリカゾウガソレニ出会ウトハ、ソシテ、アノ時ノ真実ヲ知ラヌママコノ時ヲ迎エルトは…」
←to be continued //│┃
前回のレスにリンクを追加しました。
レス更新はこっそりできないので投稿とまとめるしかないのが辛い…