ここはジャパリパーク。
世界の何処かにある超巨大総合動物園。
ジャパリパークには色々な動物が暮らせるように様々な地形や気候を再現した地方がある。
再現された気候の幅は広く、熱帯雨林や砂漠、果ては南極の気候まで存在するのだ。
更にそんなジャパリパークではある日を境に時折空からサンドスターが降り注ぐようになり、サンドスターに当たった動物は人にそっくりな姿をしたアニマルガールへ変身した。
やがて、アニマルガールはフレンズと呼ばれるようになり、ジャパリパークは人とフレンズが仲良く暮らす夢のような島となる。
事件や異変なんて全く無縁。
そんな、不思議がいっぱいで平和なジャパリパークのとある一幕。
とあるフレンズに焦点を当てよう。
「わぁ……今日もお星さまが綺麗」
彼女の名はヤマバク。
夜空の星を見上げるのが大好きなフレンズだ。
彼女は元々標高の高いところにある草原や森に住んでいたフレンズだったが、今はパークセントラル付近の居住区で暮らしている。
「もっと、高いところに行ったらもっと綺麗に見えますよね!」
思ったことを口に出しながら、ヤマバクは慣れない木登りを行い少しでも高いところへ登っていく。
わざわざ木に登ったところで星の見え方はそう変わらないのだが、今はそれを注意する人はいない。
「へ?」
メキメキメキと嫌な音を立てながらヤマバクが乗っている枝が傾いていく。
ヤマバクの頭の中で次に起こるであろう光景がありありと浮かぶ。
しかし、次の展開を予測できることと回避できることは別問題である。
「キャッ!むぎゅ!」
情けない声を出しながらヤマバクはお尻から地面に落下した。
「うわぁ……やっちゃいました……」
このジャパリパークにおいて木の枝が折れたくらいで何か言う人は居ないだろう。
ただし、それが誰かの庭の木でなければの話だ。
怒られるのは嫌です。
焦ったヤマバクは証拠隠滅を図ろうとして折れた枝を持って走り出した。
ヤマバクと同じように夜行性のフレンズは枝を持って走っていくヤマバクの奇行を見ながらも、特に気にするでもなく夜の散歩を続ける。
このジャパリパークには多種多様な習性や性格を持つ様々なフレンズが居るので、誰かが奇行をしていたとしても特に気にしないのだ。
得てして自分と違う習性を持つフレンズの行動は奇異な行動に見える故に……
ヤマバクは結局折れた枝を持ち帰り処分に困り果ててベッドの下に隠してしまった。
もう少し賢い方法があったのではないかと思うが、少しだけパニクっているヤマバクの頭ではこれ以上の案は思い浮かばなかった。
「うぅ……どうしよう……」
ヤマバクは明日への不安を抱えたまま頭から布団を被り、悩んでいる内に何時しか夢の中へと旅立って行った。