アナザーワールド・サンドスターストーリーズ
第22話〈鉛のわがまま〉
バァン!!
的にめり込む銃弾。
中心を大きくずらしていた。
本日11月21日
昼を過ぎた頃、僕は銃を握っている。
かばん「修行って…なんか違うの想像してましたよ…!」
ハシビロコウ「だって、これくらいしか思いつかないから…」
かばん「いきなり銃握らされても……あー!手が疲れましたー!!」
ハシビロコウ「ちょっと休むといいよ。はい、お茶」
僕は銃を下ろし、そっとハシビロコウ見つめる。
ここはとある家の庭
かばん「お茶はいいです……そういや、ここに、ハシビロコウさんは住んでいるんですか?」
ハシビロコウ「私…?ここは別荘……ていうか、仕事の時に使っている家だね…」
かばん「別の家があるんですか?」
ハシビロコウ「うん、シェアハウスっていうか……家族で暮らしているって感じだね」
かばん「家族?」
ハシビロコウ「血が繋がってるわけじゃないけど、本当、家族みたいな暖かさがあるんだ」
かばん「へぇ……ってことは、最初から一緒にいたとか?」
ハシビロコウ「ううん、最初は二つの勢力だった」
かばん「勢力……ですか…」
ハシビロコウ「喧嘩ばかりして、仲が良くなかったんだ。私の勢力は脳筋が多くて…」
かばん「結構バッサリ言いますね…」
ハシビロコウ「ある日、とある人の提案で、作戦をちゃんとねって喧嘩をしたんだ」
かばん「その人って…?」
ハシビロコウ「なんだったっけ……確か…コウジって言ってた気がする……」
かばん「知らない人ですね……話の続きを」
ハシビロコウ「うん、そしたら、結構いい戦いになってね。そして大将同志の最終決戦になったんだ」
かばん「もしかして肉弾戦?」
ハシビロコウ「最終決戦はじゃんけんだった。そのほかの戦いもゲームばかりだった」
かばん「最終決戦はどうなったんですか?」
ハシビロコウ「あいこばかりで……一向に決着がつかなくて……そうしたら、みんなバカバカしくなって、仲が良くなったの」
かばん「なにそれ……」
ハシビロコウ「だけど、私はそれでいいと思ってる。だって……私みんなの役に立ててるから…」
ハシビロコウは立ち上がり、かばんの持っていた銃を取る。
ハシビロコウ「お手本を見せてあげる」
そう言った瞬間、ハシビロコウは素早く銃を突き出し
バァン!!!
放たれた鉛は、的の中心に命中した。
ハシビロコウ「あなたは中心に打とうと意識しすぎてる」
かばん「だ……だけど、それを意識しないと…目標が、中心なわけだし……」
ハシビロコウはフッと笑う、そして振り向き
ハシビロコウ「的に中心があるだけで、目標はそれとは限ってないよ。私が最もやりたいのは弾のコントロール」
かばん「コントロール……」
ハシビロコウ「そのコントロールをつけるのに最も手っ取り早いのは、鉛のわがままをどれくらい聞くことができるか……」
かばん「鉛のわがまま?一体どういう意味で?」
ハシビロコウは銃弾を二つ、銃から取り出す。
ハシビロコウ「銃弾はみんな同じに見えて、実は違う。難しい話じゃないよ」
かばん「意思が宿ってるとか?そういう話でしょうか?」
ハシビロコウ「いいや、例えばこの弾は…【的の外側を撃ちたい!】って、言ってるとしたなら」
ハシビロコウは片方の弾を銃に装填し、素早く的へ銃口を向ける。
バァン!!
銃弾は見事的の一番外側に当たった。
ハシビロコウ「そして、もう一つの弾が…【的の中心を撃ちたい!】って言ってるなら……」
バァン!!
弾は、的の中心に当たった。
ハシビロコウ「銃弾に意思が宿ってる?ちがうよ。銃弾は元から生き物。ストレスを与えず、その鉛が言うがままに聞けば、弾は必ず当たる」
僕は黙ったまま、疑いの目でハシビロコウを見ている。
ハシビロコウ「疑ってるね」
かばん「だって、ハシビロコウさんくらいの腕前だったら、どんな弾だって自由自在でしょ…」
ハシビロコウ「…そう言うなら、そう思ってくといいよ。ただ、これを知ってると結構役に立つからね」
ハシビロコウは銃をかばんに渡す。
そして、少しニヤつき
ハシビロコウ「撃ってみてよ」
かばんはそれにつられ、銃を強く構え、的の中心めがけて撃った
バァン!!
完璧な中心とは言えなかったが、限りなく中心に近かった。
かばん「こ……これって……」
ハシビロコウは立ち上がり
ハシビロコウ「わがままが聴けたら、次はコントロールだね。ちょっと電話するから休憩してて」
ハシビロコウは家の中へ入っていく
僕はハシビロコウの座っていた庭の椅子に座った
・
・
ハシビロコウ「もしもし?ライオンさん…?」
ライオン「んー?今家にいない?」
ハシビロコウ「え…あ、うん…」
ライオン「仕事?」
ハシビロコウ「仕事…」
ライオン「そっかー…お仕事頑張ってね。近いうちに帰ってくるんだよ」
ハシビロコウ「あ……もうすこしかかりそうで…」
ライオン「ううん、大丈夫だよ。そっちにも用事があるんだし、私たちが何か言うことじゃないしねー」
ハシビロコウ「……ごめんなさい……」
ライオン「謝ることじゃ……あ!そうだ!ナーチャは知らない!?」
ハシビロコウ「え?…知らない……けど……」
ライオン「そっかぁ……いやぁ、めんごめんご、仕事中に長電話しちゃって」
ハシビロコウ「ううん、私は大丈夫…そっちも気をつけてね」
ライオン「うん、幸い警戒地区の外だから、安心して。それじゃあ、切るねー」
切れた電話
ハシビロコウは庭に戻る。
かばん「うわぁぁぁ!!!!」
僕の叫び声がハシビロコウの鼓膜を揺るがす
ハシビロコウは走り出した
庭を見てみると
ハシビロコウ「な……!なんでここにいるの……!!」
かばん「ハシビロコウさん!!」
ハシビロコウの鋭い目つきがさらに鋭くなり
ハシビロコウ「ナーチャ!!」
第23話へ続く……