この一週間、僕は耐えてきた。
幻覚、幻聴。
何より恐怖に
僕は見てしまった。
サーバルが化け物になる瞬間を
親友であっても、怖いものは怖い。
ハンターのように、絶対的安心がないのが痛い点かもしれない。
何度も、何度も自分の命が危なくなった。
「死ね」
「殺す」
平然と、脳という名の鼓膜に鳴り響く言葉は、サーバルと共に再生された。
部屋にこもり、隅で一人で
少し言い過ぎかもしれないが、僕は貧弱な人間だ。
何軒ものビルが崩れる様を目の前で見てしまってから、もう辛くて……
その主犯が……
サーバル「かばんちゃん……?」
かばん「うわぁぁぁぁぁ!!!!ヒィ!殺さないでぇ!!!」
サーバル「殺さないよ!!」
かばん「ご…ごめん……サーバルちゃん……」
サーバル「ううん……私も怖がらせちゃったね……」
本日11月20日、午後7時
月が綺麗であった。
サーバル「ご飯……食べれそう……?」
かばん「うん……僕は後で食べるから…先食べといてね…」
サーバル「……うん……」
サーバルがドアを閉め、出て行った。
寮を出て、サンドさんは部屋にこもりっきり。
僕がまともに動けなくなっていたことを聞いたジドとツチノコは、心配してこっちにきてくれていた。
料理はジドが作ってる。
誰かがゆっくりとドアを開ける。
ツチノコ「……大丈夫か……?」
かばん「……いえ……」
ツチノコ「そうか……」
ツチノコは近づき、僕の横に来た。
ツチノコ「お前、自分になにが足りないかわかるか?」
かばん「自分に……?」
ツチノコ「ああ、ここまで来てしまった。そんな自分に足りないものだ」
僕は考えた。
答えは腐るほど見つかった。
ただ、それを声に出せない。
ツチノコ「【残虐さ】お前にはそれが足りない」
かばん「残虐さ…」
ツチノコ「例えば、俺がとある家族を惨殺したとしよう。俺がここでお前に銃を渡した時、お前は俺を撃てるか?」
かばん「……わからない……です…」
ツチノコ「撃て。殺せ。何故そうしない?相手は罪を犯した悪人だ」
かばん「だって……もしかしたら……理由があるかも……」
ツチノコはため息を吐いた。
ツチノコ「じゃあ例えを変えよう。俺がサーバルを殺したら?」
僕は息を飲む。
銃で殺せるかは置いておいて、サーバルは僕の親友だ。
僕は答えられないでいた。
ツチノコ「……俺もそんなんだった」
かばん「そんなん…?」
ツチノコ「シャイで、話しかけられると上がっちゃってさ。見られることを嫌って、影でこそこそしていた。今みたいな質問されたら、お前みたいな対応するだろうな」
かばん「今とは……真逆ですね…」
ツチノコ「ああ、こう見えて、俺にも親友がいた。そいつがつきまとってきたから今があるのかも」
ツチノコはフッと笑い、僕に手を差し出す。
ツチノコ「お前は強くなれ、俺の数少ない友人にとんでもないヒットマンがいる。サーバルを超えてやれ」
かばん「え……?」
ツチノコ「あー…じれったいな!」
ツチノコが僕の手を強く掴むと、僕を引っ張り立たせる。
ツチノコは強い眼差しでこっちを見つめる。
ツチノコ「このまま足引っ張ってどうする?俺がやることはお前の手を引っ張ることじゃない。銃、持ったことあるんだろ?」
足を引っ張る……
そうだ…僕は……
かばん「だけど…僕にみんなみたいな才能も何もない……」
ツチノコ「いいか?かばん、才能ってのは努力って木からできた果実だ。俺らは水を注いでやってる。それを養分に変えるか否かはお前の努力次第だ」
そんなこと言われても…
努力するだけで実ったら人生楽なものですよ。
努力すらできないんだし……
ツチノコ「お前の…守りたいものはなんだ?」
かばん「守りたいもの……」
僕自身?この街?
かばん「守りたいもの……」
世界?地球?
かばん「守りたいもの……」
僕は思い出した。
【サーバル「かばんちゃん!今日疲れてそうだし私がお風呂掃除しておいたよ!」
かばん「もう!サーバルちゃん!食器洗剤でお風呂洗ってるよ!」】
何気ない、あの日々を
【サーバル「かばんちゃん!今日は休みだよね!?一緒に映画見に行こうよ!」
かばん「ご……ごめんねサーバルちゃん……今日はちょっと休みたくて…」】
そして、長き年月。
僕とサーバルは二人三脚で、ただ日々を送っていった。
戦争もなく、平和の毎日。
かばん「僕が……守りたいものは……」
・
・
【アルパカ「そう…気を落とさないでにぇ…」
黒く染まった服を見にまとい、僕たちは雨降る中、傘をさし石の前。
アルパカ「死んでじゃったことは……戻らないけど……」
僕の目は、アルパカを見つめず。
水に溺れるアリを見つめていた。
アルパカ「これから……」】
いや……
見つけた。
僕の守りたいもの。
かばん「銃を取っても、僕はあなたを殺しません」
ツチノコ「はぇ?」
かばん「なぜなら……」
・
《《「かばんちゃん………かばんちゃんは…!私が守る!!!!!!!」》》
・
かばん「僕が!サーバルちゃんを守るから!」
ツチノコは唖然とする。
僕は大きく怒鳴った。
かばん「殺させない…僕が弱いなら……強くなる…努力じゃない!使命だ!」
ツチノコ「って……ことは……?」
かばん「僕は、喜んで殺人鬼にだってなりましょう!ヒットマンがいるんでしょ?教えてください!お願いします!!」
僕は深く頭を下げた。
ツチノコ「答えはYESか……来い、話はつけてある」
かばん「今からですか…?」
ツチノコ「ああ、連れてくつもりでここに来たからな」
ツチノコはニヤつきながら言った。
ツチノコ「嫌か?」
僕は少し動揺した。
だけど、答えは心の中ですでに決まっていた。
かばん「はい!喜んで!」
ツチノコは微笑を浮かべ、外に出る。
そして、スマホを確認した後、歩き出した。
僕もそれについていった。
ヒットマンと聞いたので、場所は大体予想ができた。
だけど、それを信じたくない自分もいる。
だが、信じたくないものほど、本当になるものはない。
・
〜数分後〜
・
かばん「こ……ここって……」
二人が立ち止まるその先は細い路地。
ツチノコ「まぁ、お察しの通りだ」
僕は知っている。
法律が効かない地域
夕食を食べてたら殺される町
ハンバーガーにたまーに人肉が混じってるハンバーガーショップがある町
かばん「裏町……」
殺人の都、裏町
ヒットマンとは、そこでの殺し屋…
かばん「す……すごく……暗いで……」
物陰からフードを被った何者かが現れ、僕の額に銃を当てる。
ひんやりとした鉄の温度。
僕の肝を冷や汗とともに冷やしてくれる
かばん「あ……ああ……!」
ツチノコにフッと笑う。
ツチノコ「手厚い歓迎じゃないか?ハシビロコウ!!」
鋭い視線が、フードから見える。
第19話へ続く……
とまと「次回の…アナサーは……?」
プリンセス「暗いわね…」
ジェーン「雰囲気作りのためらしいですよ」
コウテイ「自称暗い雰囲気だけどな」
イワビー「自称かよ!」
フルル「自称かー」
とまと「本当、ここは腑に落ちないな……」
プリンセス「あ!とまとが呆れてるわ!」
コウテイ「出番がなくなる!真面目にやらないと!」
フルル「次回ー〈光の当たらぬ場所〉だよー」
イワビー「だからって締めろって意味じゃねぇよ!」
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