虫喰いでないフレンズ
六話>> 371
アフリカゾウ「ドブネズミちゃん?起きてる?おーきーてーるー?」
マイ「アフリカゾウ、おはよう。ドブネズミはどうしたのかな?」
アフリカゾウ「おはようマイ。あのさ、ドブネズミちゃんが起きてこないの。ずっと待ってるのに」
マイ「何時から?」
アフリカゾウ「6時くらいからだったかな」
マイ「相変わらず早起きさんだ。ドブネズミはいつ寝たんだか知らないが、爆睡しているかもしれないなあ」
アフリカゾウ「マイ、知ってるの?」
マイ「ああ。ネズミはな、ヒトより燃費が悪い生き物だ。だから起きている時間をなるべく減らそうとするために睡眠時間が長いと考えられている」
ののののののののののののののののののの
ののののののののののののののののののの
アフリカゾウ「へぇぇぇ、そうなんだ。私はあまり寝ないから、つまり…」
マイ「そうさ。逆に大きな生き物は寝る時間が少なくて済む。さて、ドブネズミ君に鍵のかけ方を教えなきゃ良かったか」
ドブネズミ「なんだと」
アフリカゾウ「うゎぁぁぁあ」
ドブネズミ「全部聞いてた。わたしはアラームの使い方を教わっといて良かったと思うよ」
マイ「冗談だ、でも良くなかったな。済まない」
ドブネズミ「…気にすんな。今日の予定はなんだ?」
マイ「ああ、朝食と旅立ちだ」
ドブネズミ「はいはいって、朝食?」
アフリカゾウ「朝ごはんもあるんだね。ここの朝ごはんは確かみんな一緒のものだったような…」
ドブネズミ「みんな一緒!?ウッ、流石のわたしでも夕飯のと同じのを食える気がしねえ。そんなに多くは無さそうだが食えそうなものは食っとかなきゃな」
マイ「そういうことじゃあない。朝食のメニューは朝食のためのものがある。場所は昨日と同じ所だが顔も洗っていないだろう。わたしはドブネズミ君と一緒に行くからアフリカゾウは先に行ってきていい」
アフリカゾウ「やった〜!ふっつうのごはんもたっのしっみたっのしっみ〜」
アフリカゾウはスキップしながら食堂に向かうが一人でハッとして途中で静かに歩いていった。
マイ「アフリカゾウを待たすのも悪い。洗面所に行こう」
洗面所ではマイが目の前で顔を洗ってみせた。
ドブネズミはいともたやすく正確に真似して顔を洗う。
ドブネズミ「…」
マイ「しっかり洗えているな。顔を洗ったことがあるのかい?」
ドブネズミ「ない。初めてだが」
マイ「そうなのか。飲み込みが早くてこちらも助かるよ」
ドブネズミ「…」
二人が食堂に移動するとアフリカゾウが何も取らず入口に佇んでいた。
アフリカゾウ「やっと来た〜。待ちくたびれちゃいそうだったところだよぉ」
ドブネズミ「ああ、すまん」
マイ「アフリカゾウ、待っててくれたのか。済まない」
アフリカゾウ「あっ、全然いいのにそんな」
ドブネズミ「待っていてくれてありがとう。行こうか」
朝食は夕食とは打って変わってプレート、器、箸やスプーン、料理の入ったトレーや鍋という順番の道になっていた。
「今日は白米が食いてえなァ」
「俺はパンにするゥゥゥっと」
ドブネズミ「やつらは?」
マイ「LBの製作部門の人だ。昨日のアイツらはみんなあそこで造られてる。外にいるのの定期メンテナンスと、他の部署の依頼を請けて新型を製作するのが彼らの主な業務だ」
朝食の準備は専用のLB(ラッキービースト)に任せている。
外でまんじゅうを配る、放送で警戒情報を伝える、LB仲間の安否確認といった仕事をこなしてはいるもののそれ以上精密さが要求される作業は外にいるタイプには難しかった。
そこでLB技術の向上の一環として新型が開発され、ゆくゆくは簡易的な仕事をする旧型を纏める存在として確立するために試験的に研究所内で運用している。
その新型がするこの時間帯の主な仕事は食器と調理場から出てくる朝食を並べることと掃除である。
ちなみに食器を下げるのは一人ひとりでやるものだし食べ残しを片付けるのは既に食器の片付けのシステムに組み込んでしまってあるという理由でLBには無関係となっている。
ドブネズミ「あんたはセルリアン対策とわたし達のようなフレンズの管理研究をやってるんだろ?なんで自分と関係ないところのやってる事までわかるんだ?」
マイ「関係ないなんてことはない。わたしの仕事の関係で、わたしはほとんどの部門のことを把握していなければならないからな。LBのことは現地のフレンズに聞けばわかるがね」
ドブネズミ「ふぅん…」
マイ「それより今は朝食のことを考えるとしよう」
アフリカゾウ「久しぶりにここのパンが食べられると思うと…」
ドブネズミ「あ、ヨダレが」
アフリカゾウ「へへへ」
マイ「マフラーじゃなくてこのハンカチで拭こうか…」
朝は米派とパン派の二手に分かれるように料理が並んでいる。
…のにも関わらず、三人とも自然とパンの列へと流れた。
途中ドブネズミはバターを取るやいなや、すぐ近くのジャムを素通りし料理を皿に乗せていった。
やがて取り終えたドブネズミはアフリカゾウがマフラーを振って呼んでいるところまで行き席に着いた。
ドブネズミ「アフリカゾウは卵食べないのか?」
アフリカゾウ「私はいいの。ジャムとかマーマレードのが好きだし」
マイ「アフリカゾウはその体でも植物性のものが好きみたいだ」
一同は手を合わせ「いただきます」を済ませ、それぞれの朝食に手を付けた。
のののののののののののののののののの
ドブネズミのチョイス:ミルク、ミニオムレツ、ほうれん草のソテー、焼きベーコン、プロセスチーズ、フランスパントースト、バター、マヨネーズ
アフリカゾウのチョイス:コーンスープ、フランスパン、イチゴジャム、ブルーベリージャム、マーマレード
マイのチョイス:コーヒー、食パントースト、バター、ピーナツバター
のののののののののののののののののの
ドブネズミ「アフリカゾウ、これをこうするとうまいぞ」
アフリカゾウ「えー、何それ!」
マイ「ほう。タンパク質、野菜、炭水化物が一つにまとまっているな。食パンにのせて挟むと具を落としにくくなるぞ」
ドブネズミ「いや、わたしは弾力の強い方が好きなんだ。具は少ないがこれがベストだ」
アフリカゾウ「けっこう油が多いみたいだね…」
ドブネズミ「アフリカゾウには油がダメなのか?」
アフリカゾウは以前ジャパリまんのマヨネーズ味の油分があわず食べきれなかったことがあったためかバターにも警戒心がある。
動物性の食材を食べないというわけではないが元の食性に近く野菜ばかりの食生活なのは、フレンズ化後の経験が影響しているからである。
過去にマヨネーズ味のジャパリまんじゅうが、マヨネーズが具の空間の100%を占めているほどのマニア向けだったのを聞く前に口にしてしまったのが切っ掛けだ。
ドブネズミ「マヨネーズも苦手だから野菜スティックに何もつけずボリボリ食べてたんだな」
アフリカゾウ「でもさ、油をとらないわけにもいかないらしくてさ。この体に油が少なからずあったほうがいいって言われちゃって、炒めた野菜くらいは食べられるようにはしてるんだよ」
ドブネズミ「まぁわたしは体が欲するからいろいろ食べるさ。だからさ、嫌なのに無理して食べるのは良くないんじゃあないか?体が欲するものだけでも種類は豊富にある」
アフリカゾウ「…そうかな」
マイ「お、どうした?なにか困り事か?」
アフリカゾウ「なんでも、ない」
ドブネズミ「ああ。問題はない。気にすんな」
アフリカゾウの悩みを聞いて親しくなれた気がした。
まだ特別重大な問題ではないようなのでマイには隠して後で聞くのもいいかと思っていた。
ミルクを飲み干し全部食べ終わると一息吐いてマイに旅立ちの準備について聞く。
ドブネズミ「おいマイ」
マイ「何だい?」
ドブネズミ「まさかこのまま何も持たせずに出ていけとは言わないよな?」
マイ「うん、そんなことはない。目的を遂行するためには君のスタンド以外にも必要な物があるからな。アフリカゾウも食べ終わっているようだしそろそろいくか」
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした!」
「ご…ちそうさまでした…」
その後食堂を離れた三人は、マイの個室で地図を広げていた。
マイ「旅は何日でもかけられるわけじゃあない。ここを周って戻ってきてもらわなければ困るんだ。だから、これを見て進むべき距離を大まかに把握してもらいたい」
ドブネズミ「なるほど。でも、この研究所の敷地は結構広いように見えたのにこんなにちっぽけだったとはな」
アフリカゾウ「私なら歩き回ってたからわかるけどね!…前にマイにも誰にも言わずにここを出ていっちゃったから、あまり自慢できないんだけどね」
ドブネズミ「…なんだって?」
マイ「アフリカゾウは実は元々ここに住み込んで私と一緒に暮らしてたんだよ。居なくなって一週間くらいしてLBの映像で居場所が判明したが、捜索に時間を割けないくらい忙しくてね。再会できたときは嬉しかったけど初対面のドブネズミ君がいて二人だけで喜び合うのは良くないと思って控え目にしといたんだ」
ドブネズミ「初めてこの部屋に来たあのとき、わたしからは何も言わずにいたからあんな突拍子もないことを言ってきたのか?」
マイ「ちょっと驚かそうとしたことは認める。すまなかった。アフリカゾウから事情は既に聞いてあるから君は知りたければ旅の道中にでも聞けばいいだろう」
ドブネズミ「あ!?そんなことは全然聞いてねえんだが!?いつそんな話をッ!?」
アフリカゾウ「昨日の夕食のとき…。あんなに夢中になって食べてるんだもん」
マイ「邪魔してはごちそうを味わえないからね」
ドブネズミ「まあいい。後でも聞けるんならそうする。で、わたし達はどこを一日どれくらい進めばいいんだ?」
マイ「そうだった、話がずれていたな。進捗状況が見てわかるように、表をつくった。持ち歩いて、進行度を書き込んでくれ。そうすると目標に追いついているかどうかが『わたしにも』わかる」
マイがメモ帳とペンを取り出し答える。
メモ帳は手帳として標準的なサイズより大きめで、ペンは先が丸いだけの棒のようだ。
ドブネズミ「『わたしにも』だと?ボスがいるからか?」
マイ「そうではないんだ。ここになにかしら書き込んで見るとわかる」
そのメモ帳とペンをとり『此島』と書いてみせる。
するとその字がパソコンのディスプレイに映し出された。
ドブネズミ「バランスも線の揺れも全く同じだ……いや、今書いているところが時間差なく表示されている」
マイ「メモ帳がパソコンから離れると時間差はかかってくるけど、書かれていることがいずれはここに表示される」
アフリカゾウ「こんなものは私が居たときは無かったような…」
マイ「あったけど使いどころが無かったんだ。まあこれで晴れて役目を果たせるから大切にしてくれ。持っていくものはこれだけじゃあないがな」
そう言うと今度は取っ手付きで十字の印がついた箱と、赤と青の2つのウェアラブル端末を出してくる。
端末は腕時計くらいのサイズでデジタル時計、極小マイク、スピーカー、ボタン4つというデザインだ。
マイ「これは直接通信ができる時計だ。声を通信して送ることができる。上のボタンを押すと通信が始まる。こっちの箱は怪我したり具合が悪いときに使う」
ドブネズミ「また新しいやつか」
マイ「すぐ使い方は教えるが、まず注意してほしいことがある。これでの通信先はわたしの部屋ではない。通信を受け取るのはオペレーター、わたしとは別の人間だ」
アフリカゾウ「え?」
ドブネズミ「あ?」
マイ「本当はセルリアンを発見したとき連絡してもらうためなんだが、ほかに何か相談したいときはそう言えば相談に乗ってくれるだろう」
アフリカゾウ「その…マイと話したいときは、どうすればいいの?」
マイ「済まない、直接話せる手段が無いわけではないんだ。私と話したければその人にそう言ってくれ。出られれば話しに行く。でも話せないときもあるかもしれないから、わかっていてほしい」
ドブネズミ「そうか。いきなりだが、みんな持ってたその板は何だ?」
アフリカゾウ「スマホのこと?」
マイ「これか?…なるほど!これはスマートフォンという通信機器だが、充電器具を使えばこちらの方が使いやすいかもしれない。ちょっと待ってくれ」
しばらく引き出しを漁り、見せてきたのは片手サイズの箱だった。
箱の凹みに指をかけるとハンドルが展開した。
マイ「スマートフォンの使い方はアフリカゾウが知ってると思うから省く。こっちは映像も声と一緒に送れるんだ。バッテリが切れるとすぐ使えなくなるし、水に浸ると二度と使えなくなるのが欠点だが。充電をこの手回しハンドルを回してやることで電源問題が解決するとは、思い出せなかったよ。ドブネズミ君のおかげだ!」
ドブネズミ「なんか、困るな」
マイ「これらは君たちの助けにもなるだろう。スマートフォンも持たせるけど、水に触れないようにこの袋に入れておいてくれ」
マイはこのファスナー付き袋に入れたままじゃあ使えないから使うときだけ出そう、と付け加えつつ袋に入れた。
マイ「さあ、これを誰が持つかを決めようか」
アフリカゾウ「こっちは私が使うよ。使い方知ってるし」
ドブネズミ「そうか、じゃあわたしはこっちの小さいのか。ボタンとかの使い方は全部はわからんから今教えてくれるか?」
マイ「ああ」
︙
レクチャーを終えたドブネズミは腕に巻いた通信機を誇らしげに撫でていた。
マイ「持っていってもらうのはあと2つ。セルリアンを討伐したとき、破片をできれば回収して持ち帰ってきてもらいたい。そこでこの袋だ」
スマートフォン用のファスナー付袋とは別の袋の束をドンと置いてきた。
マイ「ほんの少しだけ取って入れればいい。むしろ袋が破けてしまうと袋として使えなくなる」
ドブネズミ「そんな少しで足りるのか?」
マイ「袋をいくつも用意したのは量を確保するためと破けたときの予備だよ。アフリカゾウが張り切りすぎて破ってしまうかもしれないからね」
アフリカゾウ「大丈夫だよ!そんなことないって」
マイ「はははっ、済まないね。でも誰しもが生きてる限りは何かを壊すことになる。心配することはないよ」
ドブネズミ(『生きてる限りは何かを壊す』、か…壊すものを選んでいるだけなのかもしれないな)
マイ「話がずれたけどこれが最後だ。水筒という物だが、水を入れて持っていられる。二人とも水が無いと困るだろうから渡しておくよ」
ドブネズミ「おぉ。水が飲めるのはいいとして、どういうことだ?水に困る程の辺鄙なところも通ることになるというのか?」
マイ「そうだ、通ることになるだろうな。砂漠といってな、砂や石だけの土地があると言えば分かるかな」
アフリカゾウ「砂漠っていうと、サバンナも水場はあるけど少ないし、暑いし木がちょっとあるくらいだね」
ドブネズミ「想像もつかん…」
マイ「そして、荷物はまとめてこのナップサックに仕舞っておけば持ち運びも楽になる。実質はこれ一つで持ち歩くから、両手で抱えて行くことにはならない」
ドブネズミ「これェ?」
マイ「それに、ジャパリまんじゅうも仕舞っておけるだろう。でもそのときは、その上に何か載せたり座ったりしないようにな」
ドブネズミ「色々まとめて言われても多分忘れると思うが、あの丸いのは潰れると中身がでてくるだろうということくらいはわかるだろう」
マイ「それもそうだな。じゃあそれらを持って玄関まで…そうそう、応急箱は開くと使い方を箱が教えてくれる。私なんかより分かりやすいから今はとりあえず持っていけばいい」
持ち物の道具の説明を終えると、三人で部屋を出て玄関へ歩く。
研究所の建物は外側に各部屋の窓が付いているため、廊下の窓の外は屋外とはいえ建物に囲まれている庭の様になっていて外と同じ空が狭苦しく囲まれている。
その空間は研究所の開設当初から喫煙する者が続出し、禁煙の貼り紙でなく灰皿が設置されたことで現在はすっかり喫煙家たちの憩いの場と化していた。
そんな歴史は露知らず玄関へ行くドブネズミはちらと見えたその穴の底のような空間に全く興味をもたず、淡々と歩を進めていった。
玄関に着くとマイは大声を張って確認を促す。
マイ「よし、調査行程の最終確認をするぞ」
ドブネズミ「はい。まずは研究所を出てすぐ左を向いて、山を右手に見ながら進む。海岸が近くに見えてきたら、山に向かう。高い木がなくなってきたら、岩石地帯まで登って手頃な石を拾う」
マイ「そうだ。岩石地帯の露出した石はサンドスターを含んでいるかもしれない」
アフリカゾウ「それで、また山を左に見て進んで、となりの砂漠のエリアにいく。砂漠に入る前に水場を探しておく。砂漠では砂を取ってくる。隣のサバンナ・水辺・高山・平原と進んで、それぞれセルリアンを倒せたら石をひろって戻ってくる」
ドブネズミ「各地でフレンズと知り合っていくのは新しいフレンズであるわたしのやることだな。アフリカゾウがみんなを知ってるとは助かるよ」
アフリカゾウ「ありがと。みんなの顔を見に行くのは私も楽しみにしてるし、ドブネズミちゃんをみんなに紹介できるなんて夢にも思わなかったから早く行きたいね」
マイ「それは良かった。でも早く行きたいなら確認をすませようか」
アフリカゾウ「うん、そうだったね。あ、一つ気づいたんだけど」
マイ「うん?」
アフリカゾウ「石をひろうって言われたけど、石なんて倒すとき砕け散っちゃうんだよね…。石が残らなくて取ってこれなくてもいいの?」
マイ「そうなのか。弾けたあとの欠片くらいは残っているんじゃあないかとは思ったが、サンドスターに変換されて完全に消えてしまうのか。セルリアンを捕獲して直接実験出来れば良いんだが、機械の攻撃が通じないという性質上、フレンズでなくては手に負えない奴らを調べるためにフレンズに依頼するしかない。おっと、長くなって悪い。要するに、何かセルリアンの手がかりさえあればいいということだ」
アフリカゾウ「りょうか〜い」
ドブネズミ「なあ、一通り物は有るみたいだし、やることも分かってるからもう行かねえか?」
アフリカゾウ「そうだね、じゃあもう行こう!行ってきまーす!」
マイ「気をつけてなー。セルリアンと無理に戦おうとしなくていいんだぞー。見たことを後で言ってくれればいいんだからー」
ドブネズミ「わーってるよ、わたしでもそんくらいわかるって」
後を見て手とマフラーを振るアフリカゾウを見て、危なっかしいと思いながらも自分も手を振りたくなっていた。
門を出て指示どおり左に行くと丘になっていて、上から研究所見渡せるようになっていた。
ドブネズミは振り返り見回してみると、青空の下に広がる研究所の敷地が前の自分の縄張りと比べて少し広いんじゃあないかと思い、ここを丸ごと自らの縄張りとするには骨が折れるだろうな、などと考えた。
一方アフリカゾウはこれからの旅路で再会するであろう各地のフレンズとの思い出に浸りつつドブネズミを安全に導こうという決意にみちていた。
アフリカゾウ「どうしたの、ドブネズミちゃん?」
ドブネズミ「研究所をこうやって見渡したことはなかったなと思って、やってみたんだ。居たのは短い間だったけど、なんだか懐かしくなってきた」
アフリカゾウ「なるほどぉ〜、わかるよその気持ち。こうやって上から見てみたのって、初めてかも。いいニオイもしてきたし、ちょっと惜しくなってきちゃうね」
ドブネズミ「…でも何か考えてずっとここに立ってるより先に進んだ方がましだな!行くぞアフリカゾウ!」
アフリカゾウ「え?ちょっとっ、それはそうかもだけどっ、そんなに急がなくていいってぇーーーっ」
二人が丘を駆け下り、平地に出てからラッキービーストを発見して立ち止まったのはそれから十数秒後のことだった。
←to be continued…/\┃