【未来のぼうし】
[2話] ~Aパート1~
初めて電車に乗る子供のようにはしゃぐサバちゃんを横目に見ながら、私は物思いにふけっていた・・・
前にいた職場は、あるトラブルにより上の判断で放棄することになり、私も退去をせざるを得なくなった。
その後 戻る目処も立たず、かと言って何をする気も起こらず、
なんの気もなく訪れた展望台で偶然、八木さんに出会った。
彼女は占い師で、初見にも関わらず声を掛けてきて、プロファイリングし、私が何者かを教えてくれた。
プリンセス・ヤギ「あなた、何かを溜め込んでるわね!」
思い込みの激しい人だった。
ヤギ
「いい? ヒトは何かを表に出さずに生きていけないわ!
それは声でも、涙でも、絵でも、文章でもいいの!」
そこまで聞いて、
書き溜めた日記があったことを思い出したので、そのことを伝えると・・・
ヤギ「あなた、作家になりなさい!」
未来「ムチャクチャだよ!」
でもヤギさんは本気だった。
出版社を紹介すれば可能、とか私が担当になれば可能と、とにかくポジティブで
私もいつの間にか「その気」にさせられていた。
そして本当に出版社を紹介してくれ、占い師の
編集長(ボスと呼ぶように言われた)は忙しいらしく、挨拶したのは書き始めてから1ヶ月後、電話越しだった。
電話の向こうで しきりと女の子に言い寄られている風だったが、執筆活動には支障が無いので気にならなかった。
未だに会えていないが、全く仕事をしていない私を急かすでもなく、契約を切らないボスには頭が上がらない。
ヤギさんは「かばんとぼうし」がアニメ化された頃、本業の占い師が忙しくなり、担当を外れた。
今では、芸能人や政治家の人生相談から台風の進路予想まで、幅広く活躍している・・・
サバ「ミライさん! もうすぐ乗換えだよ?」 ⊂( ̄^ ̄)⊃
サバちゃんは腰に手を当て「ふっふーん!」とフン反り返っている。
確かに私がさっきまでボーッと考え事をしていたとは言え、
さっきまでシートに膝立ちしながら景色を見ながらキャッキャとはしゃいでいた子に、エラそうに言われたくはない。
ほどなく「なんば」に着いた。
みさき公園には、ここで南海電鉄に乗り換える。
ドアが開く。
他の乗客に続いて降りようをした瞬間、あの不穏な音が周囲で鳴り響いた。
緊急地震速報だった。
ーと、ほぼ同時に足元が揺れた。
サバ「きゃあ!」
未来「大丈夫? サバちゃん」 (イケボ)
私の胸にしがみ付くサバちゃん。
優しく抱き寄せ、余裕のある微笑を見せる私。
そして・・・
サバ「・・・イさん… mライさん!」
未来「ぐへへ… 」(じゅるり)
サバ「ミライ先生!」
未来「誰が先生やねん!」
手の自由が利かない。
サバちゃんが私の体をしっかり抑えていたからだ。
未来「結構、力が強いんですね」
サバ「鍛えてるから!」💪
意外だった。
見た感じ、上背がある訳じゃないし、筋肉質にも見えない。
しなやかそうではあるけど。
休みの日も猫みたいに ぐうたらしてると思ってた。
とりあえず電車は しばらく動きそうにない。
未来「みさき公園に行くのは諦めて、そこらをブラブラして時間を潰しましょうか…」
サバ「はいよ~」
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