ヒグマ「逃げてなるもの……かぁ……」
ドクター「ん?」
ヒグマ「こんな場所で……こんな死に方で……この【今】から……逃げてなるものかぁ……」
私は両手を広げる。
可能な限り、ビシッと
強く、大きく。
クマデ「ヒグマ…………お前……」
痛い
痛い。
触手が深く刺さってくる。
血が止まらない。
ヒグマ「ほら……まだ死んでないぞ……やれよ……もっとやれよぉ!!………足らねぇぞ?」
ドクター「やってる途中なんだけどなぁ……仕方ない、特大なのをくれてやる」
視界がぼんやりとした中でも、その大きな触手はくっきりと見える。
私は目を閉じニヤリと笑った。
まだ終わりじゃない……と、強く願い。
パッカァァァァァーーーン!!!!
何が……起きた……?
私はゆっくり目を開ける。
ハァァ!!お前……
ヒグマ「クマデ……?」
勝手に動いて、勝手に倒している。
ありえない光景。
驚きしかなかった。
クマデ「なんだよ…ヒグマ、お前めちゃくちゃかっこいいじゃねぇか……」
ヒグマ「え……?」
クマデ「俺を手に取れ、お前の首を締めてた灰を全部壊してやるから」
ヒグマ「でも……お前……」
私は怒ると思ってた。
手に取れって言ったのに一向に取らない自分を。
だが、違った。
クマデ「いま、お前がミカの手を取るために必要な手はあまりにも貧弱すぎる。だから、俺がお前の手になる。お前がお前の力で俺の手を使ってくれ、そして、アイツという恐怖を笑いに変えてしまえ。契約したろ?」
こんな……都合のいい時だけ契約とかいうのは悪い癖だ。
だが、悪くない。
私は両手で目の前のクマデを掴んだ。
クマデ「行くぞ……ヒグマ!!」
ヒグマ「……ああ……クマデ!!」
ドクター「なんだと……?」
私の周りを黒いオーラが包む
いつしかそれはうっすらと服のような形になっていった。
ヒグマ「魔装!!!!」
クマデ「邪熊ノ手(じゃくまのて)!!!!」
最終話へ続く……