「出る必要があるか、確かめてきて。
あなたが」
「え?おい、流石にそれは無っ、、、、!?」
「!??」
ドブネズミが反論を諦めたように見えたが、自らの身体の異変を感じ取ると、その訳を理解した。
二人の全身から吹き出す光が部屋を照らす。
面倒くさがりのセイウチでも、こればかりは焦らずにはいられない。
「なんだ!?アイツの攻撃か!?いや、ありえん………」
「なに………これ…………」
「何なんだ、これは!ああ、このままだとマズいぞ。確証はないがマズい!」
「どうなるの?私たち………」
「何するにも、まずここから逃げ出すしかない!もう何と言われようとお前を連れ出す!来い!」
船外に脱出するべく、部屋を出て廊下を走り抜ける。
だが、ドブネズミが感じた通りに、不安は現実となる。
力が抜け、勢いのまま転倒した。
連れてきたセイウチに弾き飛ばされ
「ギャアス!」
被ダメージボイスを出す。
セイウチの安全を確認するべく立ち上がろうとするも、やはり抗う術もないまま、床に伏した。
「どこだ、セイウチ!、脚(うで)にも力が入らん………」
身体を捩り周囲を見ようと振り返ると、頭上からセイウチでない誰かが声を掛けてきていることに気がついた。
「たすけ………て………せっかく……アフリカゾウを手に入れたのに……こんなの………」
「待て…っっ!お前にはみんなの安全を守る義務がある………」
「ハヤブサ!」
「おまえは……よくも!、いややめだ。オランウータン、外に助けを求めるんだ!空飛んでるフレンズいるかどうか探すとかしろ!」
「それができたらこんなことなってないよう!うぅっ…」
壁に身体を預けどうにか立っていたオランウータンも、ついに臥した。
意識の狭間に沈みゆく中で、壁そのものが溶けるように崩れる。
船そのものを支配するオランウータンの意識が消えつつあるからだ。
何も予兆なく訪れた危機のなか、オランウータンは寝言のようなことを口走った。
「遠……すぎた………
捕ま…りたくな…いから………
島………離れると………ダメなんて…知らなくて……」
「……!?」
<アニマルガールの身体は島から離れれば離れるほど不安定になり、最後には元の動物に戻る>
研究所の廊下に研究内容を説明した掲示物があった。
学術的なことに疎い自覚がある者なら目を背けそうな堅い内容のそれに、その一文が含まれていた。
ドブネズミは、そんな青天の霹靂に打たれた。
わたしにはそんなこと言わなかったぞ。
アフリカゾウは知ってるのか?
知ってたらこんな所来ないんじゃあないか?
知ってるとしたら、こうなることを覚悟してオランウータンを追いかけて……
それならアフリカゾウを助けなくては!
耐えてくれ、この身体!
こんなところで終わってなるものか!
死体であったはずのネズミの執念が燃え上がる。
そうして、姿を保とうとする意志に応えるかのように、救世主は現れた。
「お前達が消えると俺が困るからな。俺のためだ」
消えゆく意識の幕切れに、捨て台詞を残しながら半透明の物体を纏いつつある虫喰いの姿が残された。
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「おまえに借りができたな」
「俺はお前と貸し借りをしたつもりはない」
「おまえは、本当はそうやってフレンズ助けしてきたんじゃあないのか」
「誰に聞いても答えは同じだ
俺が乱入して勝手に手出しただけのこと」
「ね、ねえ!虫喰い………さん。
ありがとうね。セルリアンを使ってフレンズを襲ったりしてないのは私達が体験した事実だから。私からもイエネコちゃんに言っておくね」
「…………」
ドブネズミたちはセルリアンに包まれながら地中に潜る虫喰いを、帰省先から実家へ帰る親戚を見送るように名残惜しそうに見守り続けた。
「しかし、どうやって虫喰いがわたしたちを助けたのか、見てたか?だれか知らないか?」
「しらない………みてない」
「どうやってあんな所から5人も同時に………」
「ま、アイツ以外考えられないけど」
「こっちの『寝そべり』はいいの?」
「むにゃ………ぐふふふふ………おねーさん?おれとあそばなーい?」
「「「………」」」
「こんなの連れてったらどんなメに遭うか知ったことじゃあないな。セイウチはそこで寝転んでるし、ズラかろう。イエネコ拾わねーとだしな」
「ー!なーにしてたのよー!あんたたちはー!」
「噂をすればなんとやら、だね」
「あれー?アフリカゾウまでそんなタイドなんて、私はやっぱり邪魔者なのね」
「わ、悪かった。そんなつもりは!な、アフリカゾウ!」
「そそ、その通りだよ!」
「ふん、せーぜー私のご機嫌とりに精を出すことね」
やがて一団が浜辺を発ち、セイウチも安眠場所を求めて去る。
最後に寝そべり昆布を被った酔っ払い擬きが残された。
そこに、一人の人影が舞い戻り、見下ろしながら独り
「俺自身が一番大事なんだ。セルリウムを制御する、俺だけが使える、あの守護けものにすら許されない力がな」
to be continued………
決定稿更新おつかれさまでしたのだ🫡