【よかれはひとのためあらず】
6話
アライさん
「お前は・・・!
なぜこんなところにお前がいるのだ?」
待ち構えていたのは吹雪を纏うように佇む、
本来ここには居るはずのないオジロスナギツネの姿だった。
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オジロスナギツネ(?)
「ねよすまりなくなが要必るすに気とろいろいうも、ばせ倒えさんさクッネェフ」
そう言ってファイティングポーズをとる。
アライさん
「な!
・・・なんて言ったのだ?」
フェネック
「・・・逆から読めばいいんじゃないかな~?」
アライさん
「えーと・・・ フ… ェ、ネ・・・」
ヨカレ「フェネックさんさえ倒せば、もういろいろと気にする必要がなくなりますよね、ですよ」
アライさん
「通訳ありがとうなのだ。
えっと…オジロスナギツネはそんなこと、たぶん言わないのだ!
つまりお前はニセモノのはず?なのだ!」👉
ヨカレ
「・・・」
フェネック
「う~ん、もしかしてセーバルと似た感じの
『外見をコピーするタイプのセルリアン』なのかな~?」
アライさん
「つまりセジロスナギツネなのだ?」
フェネック
「いやぁ~、そういう『原作』に居そうなネーミングはやめた方が・・・
あ、もしかしたら ホッキョクウサギや ケープライオンが言ってた
[しろすぎるひと]かな~?」
それを聞いていたのからなのか、偶然なのか、
[しろすぎるひと]を取り巻く吹雪が激しさを増したかと思うと今度はカニクイアライグマ?の姿に変わった。
「ーさのるなくなもとこるれわ違間ばせ倒をんさイラア」
アライさん
「う~・・・」
ヨカレ「アライさんさえ倒せば間違われることもなくなるのさー」
アライさん
「読みにくいのは何とかならないのだ?」
フェネック
「作者もなんとか『原作』に寄せようと、鏡文字のコピーを試みてみたけど上手くいかなかったみたいでさ~
そこは大目に見てあげようよ~」
メタ発言も甚だしかった。
[しろすぎるひと]
「ーさのいなくたき聞てんな訳い言いし々白
ーさのるけ付ロシロシろそろそ」
お話が終わるのを待っていてくれた[しろすぎるひと]だったが、ついに襲い掛かってくる。
ヨカレ
「白々しい言い訳なんて聞きたくないのさー
そろそろシロシロ付けるのさー
・・・か。 白すぎでしょ」
アライグマ
「もう通訳なんてしてる場合じゃないのだ!
フェネックと一緒に先に行け、なのだ!」
[しろすぎるひと]の攻撃を体を張って食い止め マトモに食らいながらアライさんはそう言う。
フェネック
「うん、ここはおまかせしたよ~
さあ行こうか、ヨカレさ~ん」」
フェネックも当たり前のようにアライさんを置いて先に進もうとする。
ヨカレ
「ちょ、ちょっと大丈夫なの!?」
フラグをダブルで立てられるとさすがに心配になる。
フェネック
「ゲームでも後発で出てくる亜種は上位互換、つまり私たちより格上って決まってるもんだよ~
ましてやケープライオンでも手こずった敵ポジションのキャラだからね~
たぶん2人掛かりでも厳しいと思うよ~」
ヨカレ
「だったら僕も・・・」
この際メタ発言には目を瞑ってそう提案する。
フェネック
「ヨカレさんだって戦闘向きじゃないでしょ~
アライさんじゃないけど『このフェネックさんにおまかせ』なのさ~
マトモにやりあって勝てないならココ、を使わないとね~」
トントンと自らのこめかみを指差す。
そしてスタスタと温泉管理施設に向かって歩いて行く。
終始押され気味のアライさんに後ろ髪を引かれながら、僕はフェネックさんに付いて行くしかなかった。
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フェネック
「まず、そっちの放水バルブを締めてくれる~?
次に元栓を締めてっと…」
フェネックさんはメモ用紙とにらめっこしながらテキパキと指示し、自らも操作する。
アライさん
「行かせない…のだ」
アライさんはボロボロになりながらも[しろすぎるひと]をこちらに近付けないよう食い止めている。
ヨカレ
「フェネックさん、アライさんが・・・」
僕はフェネックさんを手伝いながらアライさんの様子が気が気でない。
フェネック
「分かってるよ~」
そうは言うが、奥まった場所に居るフェネックさんからはアライさんの様子は見えないはずだ。
フェネック
「あとはこの震動センサーをリセット・・・
もうちょっとだけ地震は収まっててよ~」
実はさっきからひっきりなしに微震は起こっている。
そんな中、共同作業をするうちにフェネックさんの『狙い』はなんとなく察したが、
それはいろんな意味で一か八かの方法だ。
「ヨカレさん、私が合図をしたらお願い」
フェネックさんは給水用の元栓を開きながら言う。
ヨカレ
「あ・・・!」
アライさんが雪に足を取られバランスを崩す。
ここぞと[しろすぎるひと]が飛び掛かるが、
アライさんは体勢を立て直すのではなくあえて転ぶことで攻撃を躱す。
ホッとしたが、見ているこっちはヒヤヒヤものだ。
フェネック
「アライさんなら大丈夫だから、ヨカレさんはこっちに集中しててくれる~?」
2人の間で具体的な作戦の打ち合わせは一切されてはいない。
なのに、まるでリアルタイムで見ているかのようなフェネックさんのセリフ。
一方のアライさんも攻撃をわざと受けたり、受け流したりしながら
徐々にお温の放水口付近に[しろすぎるひと]を誘導している。
以心伝心とはこの2人のためにある言葉なのかもしれない。
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アライさん
「ぐにゅにゅ~」
今、アライさんと[しろすぎるひと]は向かい合ってそれぞれの右手と左手を握り合っている。
いわゆるプロレスの力比べ(手四つ)で組み合っている状態だ。
当然のことながら[しろすぎるひと]の方が押している。
一方のアライさんはブリッジの態勢でこらえてはいるが、水路に後頭部が押し付けられそうだ。
見ているこっちにも力が入る。
その
「今だよ!」
フェネックさんからの合図が出されたのは。
なまじ状況を把握していた僕は一瞬、躊躇してしまった。
当然反応は遅れてしまう。
次の瞬間アライさんは足を滑らせ、2人のパワーバランスが崩れた。
[しろすぎるひと]が前方につんのめるような体勢になったところに、
アライさんが巴投げを打ったような形になり、背中から水路の中に投げ出される。
ヨカレ
「あ・・・!」
慌ててバルブを開いたものの時すでに遅く、
お湯が来る前に[しろすぎるひと]は体勢を立て直して水路を脱出。
「待つのだ!」
それを追い掛けるように水路に踏み込んだアライさんをお湯が直撃。
「のだーーー!?」
そのままアライさんは流されていってしまった。
ヨカレ
「アワワワ…」
フェネック
「またやってしまったね~ アライさ~ん
でも最低限の仕事は果たせたんじゃないかな~」
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警戒を解いたフェネックさんに促されて外に出る。
[しろすぎるひと]は憑き物が落ちたように崖っぷちで呆然と突っ立っている。
フェネック
「どうやら魔力(?)は使い果たしたようだね~」
確かに、先ほどまで纏っていた吹雪が消えている。
つまり最初から時間稼ぎをして消耗させるのが目的だったのか・・・
「お湯は当てられたらラッキーくらいの作戦だったんだけどね~
それで倒せる保証も無いしさ~
限界まで闘えて満足もしたんじゃないかな~」
そうフェネックさんは見立てていたが、
しろすぎるひと
「いなせ出が雪吹
・・・いなれ帰うも」 ブツブツ…
一方の[しろすぎるひと]は途方に暮れているように見える。
「大丈夫?」
そう声を掛けようと近付きかけた瞬間、
🌋
どーーん!
音のした方を振り返るとサンドスター山が噴火(?)していた。
火柱こそ上がっていないが、虹色に輝くオーラが立ちのぼり、
小石やそれより大きめの火山弾のようなものが勢いよくどこかへ飛んで行ったりしている。
そして、この雪山にはダイヤモンドダストのようなものがキラキラ降り注いでいる。
フェネック
「ありゃ~ またやり直しだね~」
フェネックさんにとっては噴火は珍しいものでもないらしく、
お湯が振動で止まってしまったのを見て、温泉管理施設に戻ろうとする。
僕も手伝った方がいいのだろうか?
噴火の被害が今後どうなるかも気になるし、なにより[しろすぎるひと]の様子が気になるんだけど・・・
しかし、ある光景が目の端に入って来て思考は中断された。
そして次の瞬間には体の方が先に動いていた。
「危ない!」
そう叫ぶより先に[しろすぎるひと]の体を突き飛ばす。
崖下で雪崩が起こっていた。
[しろすぎるひと]の立っていた場所に倒れ込んだ形になった僕は、崩れた足場もろとも滑落する。
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雪崩に巻き込まれながらも僕は、山頂の様子を窺う。(本当に見えていたのかどうかも疑わしいが)
[しろすぎるひと]はフェネックさんに羽交い絞めをされながら、
膝立ちでこっちを見ながら必死に手を伸ばそうとしている。
良かった・・・
無事を確認できた僕が意識を手放す寸前に見た光景は、
[しろすぎるひと]に虹色の火山灰が降り掛かり、
眩い光を放つ瞬間だった・・・
7話に続く
しろすぎるひとがフレンズ化するのだ・・・!
手に汗握るバトル!さすがのコチコチアライでも連れていかれるかと思いきや!
予想を覆す展開につづきが待ち遠しくなるのだ
>> 1122
もちろん、それだけで済むはずもなく・・・?
>> 1123
臨場感が伝わったようでなによりなのだ
そしてここから更にもうひと転がしするよ~