【よかれはひとのためあらず】
4話
気が付くと、吹き飛ばされた先は一面の銀世界だった。
幸いなことに雪はやんでいるし、風もほとんど無い。
ただ右も左も分からない場所なので、とりあえず進んでみることにした。
・・・が、しばらくして失敗に気付く。
明らかに「登って」いるのだ。
しかも『山の天気は変わりやすい』とはよく言ったもので
さっきまでとは打って変わって風も雪も強くなってきている。
さらには最近起こったと思われる雪崩の形跡さえ見られる。
わずかな希望は天気が崩れる前に見えた、山頂の方で立ち上っていた煙(蒸気?)だ。
行けば誰かが居るかもしれないし、道中で山小屋などが見つかるかもしれない。
無事にそこまで辿り着ければ、だが・・・
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しばらく進むと洞穴が見つかった。
いや、よく見ると雪だけで出来たドーム状の・・・かまくらだ。
山小屋ほどしっかりした作りとは言えないかもしれないが 差し当たって吹雪を凌ぐには十分だ。
恐る恐るかまくらの中を覗き込んでみる。
先客、それこそクマなどが居たらいつでも逃げれる態勢で。
果たして・・・?
居た!
しかし幸いなことに奥まった場所でこちらに背を向け横になっている。
タヌキやムジナのたぐいだろうか。
「お邪魔しますよ」
どうやら危険は無さそうだと判断し、
害意が無いアピールのための挨拶を恐らく聞こえていないであろうタヌキ(?)にしながら忍び込み、
やっと一息ついた。
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冷たい風が時折流れ込んでくる。
僕は少し寒いのを我慢しながら入り口付近に陣取り、
できれば先客が目覚めないうちに吹雪がやんでくれないものかと、やきもきしながら待った。
「くしゅん」
僕は一瞬身構え、声の主の様子と外の吹雪とを交互に窺う。
場合によっては飛び出さなければならないが、吹雪は先ほどと変わらずやむ気配がない。
一方の先客も起きる気配はなく、その代わり冬場のトイレの後のようにブルルっと体を震わせた。
僕は先ほどまでの警戒心もどこへやら、一計を案じた。
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ぺた ぺたぺた… ぎゅ、ぎゅ…
「これでよし、と」
入り口を完全に雪で塞ぐと満足げに独りごちた。
冷たい風は完全にシャットアウト出来たので、そのうち室温も上がってくるだろう。 ただ・・・
「外の様子が分からないな。 さすがにやりすぎたか?」
その不安はすぐに違う形となって的中した。
「う… なんだか息苦しい気がする… せめて空気穴を残しとくんだったか。
それに、もし襲われたら逃げ場もないし・・・」
「う~ん… う~~ん」
唸り声につられ、奥に目を向けると・・・
?????
「!? いつの間にか入り口が塞がってしまってるのだ?」
ついに目を覚ましてしまった先客は思いもよらぬ行動に出る。
「誰かー! 助けてー! なのだ」
叫び出したのだ。
?????
「う・・・ ゴホッゴホッ!」
当然かまくら内の空気は大量かつ急激に消費されることになる。
当の本人も息苦しくなったのか
「だ、誰かー! たす・・・のだ、フェ…」 ドンドン…
それでも諦めずに声を振り絞り、出なくなったらなったで今度は壁を叩いて救助を求める。
マズい。
止めたいのはやまやまだが、こちらもほぼ酸欠状態だ。
意識も薄れてきてブラックアウト寸前だった。
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フェネック
「う~ん、アライさんのことだから、この辺りで行き倒れてると思ったんだけどな~」
物騒な発言が気になるが、いつものように先走ってやらかしたアライさんのフォローをしているようだ。
・・・てー! なのd・・・
フェネック
「! アライさんの声キャッチ~」
居場所を特定しようと大きな耳に全神経を集中するフェネック。
・・・フェ」 ・・・ンドン…
フェネック
「!」
声や音・・・
というよりむしろアライさんの微弱な生体磁気をキャッチしたらしいガチックは北東方向にジャ…ンプ!
雪の壁にしか見えない場所に頭から突っ込んだ。
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ヨカレ
「た、食べないでくださーい!?」
突然、かまくらの壁を突き破って現れたキツネ(?)の生首にパニクるヨカレ。
フェネック
「アライさ~ん、アライさんは~・・・?」
その悲鳴…どころか存在すら認識していないかのような態度で
生首と視線を上下左右にせわしなく移動させるフェネック。
ヨカレ
「コワイコワイコワイ…!」
フェネック
「も~、そんなところにいたんだね~
・・・と体が抜けないね~」
アライさんは酸欠で失神して突っ伏しているのだが、
フェネックはマイペースなまま、身動き取れなくなってしまった体をもどかしげに揺する。
そして、その状況に堪え切れなくなったのか、
「灼熱砂漠のオアシス~」
倒れていたアライさんの隣にそっと添い寝した。
ヨカレ
「キマシタワーヽ(*´∇`)ノ
・・・とか言うとる場合か!」 ((ꐦ ゚Д゚ノ)ノ💥
主人公を差し置いての茶番劇に、ついにキレちらかすヨカレなのであった。
5話 ~出会い2~に続く
意外すぎる展開なのだ!
ストーリーの「転」に当たる部分なので思い切りました
ここから更に転がします
まさかのあらふぇね参戦!
けもフレ(本家時空)からの友情出演です
ヨカレくんのアドバイザー役としてオファーしたはずなんですが
なぜかお笑い要員に・・・w