~夜:おんせん~
(ヒグマ)
「あ゙~ 気持ちいい湯だぁ。
おい、お前たちも早く来いよ」
(キンシコウ)
「リカオンさん、ボスは置いてきたらどうです?」
(リカオン)
「いえ、片時も離れたくないんです。
ボスと一緒に温泉に・・・」
ハンターボス
「・・・」
キンシコウ
「壊れちゃっても知りませんよ?」
リカオン
「でもサーバルたちは凍ったボスを雑にお湯に漬けてたじゃないですか。
海に沈んだ時も大丈夫でしたし・・・」
ハンターボス
「ジャガジャガジャーン… ジャガジャガジャーン」
リカオン
「うわ…」
キンシコウ
「いつ聴いても不安な気分にさせる不協和音ですね。
字面だけ見るとアンガールズっぽいですが…」
リカオン
「ちょっと他の着信音に変えてみますか?」
ハンターボス
「♪~ 突然出てきてご、め~ん セルリアントレビアン」
リカオン
「どうですか?」
キンシコウ
「・・・」
ヒグマ
「バカやってないで何かあったんならすぐに報告しろよ、お前ら」
ハンターボス
「緊急通報だヨ。
セルリアン出現、場所はろっじ、宿泊客多数・・・」
ヒグマ
「! よし、セルリアンハンター出動だ!」 👉
リカオン
「すっぽんぽんでキメても決まらないですよ」
キンシコウ
「風邪を引いちゃいますから、先に体を拭いてください…」
~夜:ろっじ~
ドガーン! バガーン!
セルリアンの暴れ回る音がするが、レンガ造りの食糧庫には近付いてこない。
オオカミにとっての苦手地形なんだろうか?
コンコン…
とうとう見つかったか?と一瞬焦ったが、セルリアンがノックするはずもない。
アリツ
「どうぞ」
リカオン
「セルリアンハンター現着しました」
ヒグマ
「セルリアンの特徴は?」
キンシコウ
「けが人はいませんか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヒグマ
「うーん、どうにも情報が少なすぎるな。
これはぶつかってみないと分からないか・・・
しかし屋外と違っていつものような作戦は取れない。
攻撃担当は私、キンシコウはサポート、リカオンはフレンズたちの防御を担当しろ」
キンシコウ
「了解です」
リカオン
「オーダー、了解…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヒグマはドアに耳を当て、セルリアンの気配を探っている。
近付いてきたところで一気にドアを開け放つ・・・と同時にセルリアンが飛び込んでくる!
ヒグマ
「ふんっ!」
待ち構えていたヒグマが熊手をバットのように振り、真横に薙ぎ払う!
・・・がセルリアンは躱すことなく自身の左側から来た熊手の甲を左手で右に払う。
ヒグマ
「なに!?」
ヒグマは、つんのめるように態勢を崩す。
ヒグマ
「なんて強引なヤツ・・・
だが、急所は見つけたぞ」
さすがに無傷とはいかず、セルリアンの服の一部が破れ、腹部から「石」が覗いていた。
一気に間合いを詰めると熊手を右斜め上に振り上げる。
体をのけぞらせボディに隙を作るためだ。
しかしセルリアンは、それには構わず左足でヒグマの顔を目掛けローキックを放つ。
ヒグマ
「うわっ!」
ヒグマは咄嗟に右手で蹴りをガードする。
しかし片手になってしまったことでヒグマの攻撃は軌道が変わり、
セルリアンの顔面を掠めただけになってしまう。
「ふっ!」
それを見たキンシコウは予定を変更してヒグマの左側に回り込み、
如意棒で腹部の「石」めがけて刺突を繰り出す。
セルリアンは突き出された如意棒を左手一本で掴むとキンシコウの動きを制してしまう。
キンシコウ
「くっ!」
そのまま右足でミドルキックを放つ!
キンシコウは固定された如意棒を逆用して、それを支点に体を側転させると蹴りを躱した。
ヒグマ
「どういうことだ、防衛反応をまったく起こさないぞ!?」
キンシコウ
「普通なら考えられないことなんですが、厄介なのは確かですね」
その間もセルリアンの理性を感じさせない猛攻が続く。
リカオン
「まるでバーサーカーのような・・・
何者なんでしょう? あのセルリアンは」
ハンターボス
「分析にかけてみたけど、ビースト化したフレンズの戦い方に似てるネ。
外見だけはダイアウルフに擬態してるみたいだけド…」
タイリク
「狂戦士、ビースト、イヌ科に擬態・・・か」
リカオン
「何か気付いたことでも…?」
キンシコウ
「あぁっ!」
ズザーーーーーーーーー!
黒ズッキン
「わっ!」
セルリアンのパワープレイに押され、ノックバックしたキンシコウが黒ズッキンの目の前に倒れ込む。
そこに追い打ちを掛けようとしたセルリアン・・・
ーの様子がおかしい。
セルリアン
「グルル…」
黒ズッキン
「・・・?」
リカオン
「・・・もしかして怯えてるんですか?」
タイリク
「実はさっきもそうっだった」
リカオン
「彼女の何が・・・?」
タイリク
「うーむ、このろっじに集まってきたのはオオカミ連盟。
その中で彼女・・・だけがウォーターガールズ…?」
リカオン
「そうか! イエイヌさん、ソレを!」
イエイヌ
「は、はい。 どうぞ」
リカオンはイエイヌから借り受けたフリスビーを投げるとセルリアンの目の前を掠めて飛び・・・
ガシャーン!💥
セルリアンは反射的にフリスビーを目で追い、
やがて窓ガラスを割って飛んで行くフリスビーを追って外に飛び出した。
「アリツさんも済みません、後で必ず弁償します」
そう言うとリカオンもセルリアンの後を追って飛び出す。
キンシコウ
「リカオンさん!?」
ヒグマ
「おい、何を吹き込んだ!
アイツはあんな勝手なことをするヤツじゃなかったぞ!」
タイリク
「落ち着きたまえ。
『ビースト化の秘密』に、イヌ科フレンズだからこそ気付いたことがあるんだろう。
そしてハンターとして自分がやるべきことをやろうとしている」
キンシコウ
「それって何ですか?
同じハンターとして私たちにも教えてください」
ヒグマ
「・・・すまん、取り乱した。
アイツに何か考えがあるのも分かった。
ーで、その『ビーストの秘密』ってのは何だ?」
~夜:森~
リカオンは敵からの攻撃をかいくぐり、時に手出しをしてこちらに気を引きながら森の中を走っていた。
セルリアンを「とある場所」に誘導するためだ。
ボス
「北に700m行ったところに水場があるヨ」
リカオン
「それではダメです。
フレンズさんたちが飲みに来てるかもしれないし、
セルリアンも目にしてしまうと近付いてくれないでしょう。
再検索をお願いします」
「・・・(ケンサクチュウ)
そういうことなら、2時の方向1.6km先に吊り橋があるヨ」
リカオン
「それです!」
しかし自分1人でセルリアンに致命傷を与えられないことは分かっている。
常々思っていた。
自分にはヒグマさんのような判断力やパワーは無い。
自分にはキンシコウさんのような瞬発力やテクニックは無い。
その代わり自分には観察力とスタミナがある。
今はセルリアンと付かず離れずを繰り返しながら3人揃うまでの時間を稼ぐ。
それが自分に出来ることであり、やるべきこと!
リカオン
「これは・・・」
足元の幾つかの石が不自然なほどキレイに並べられているのに気付いた。
ボス
「リカオン」
ボスの言う方を見やると道端にある木立のうち、1本の幹が不自然に抉られている。
リカオン
「こっちだ! セルリアン!」
リカオンは加速した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
森を抜けると見晴らしのいい高台に出た。
リカオンはセルリアンに追い付かれるかどうかの距離とスピードを保ちつつ吊り橋に差し掛かる。
半分を過ぎた辺りでリカオンは床板を思い切り踏みしめるとジャンプ!した。
ふ…
同時に、リカオンを追って吊り橋を渡っていたセルリアンの足元の床板が消える・・・
橋のたもとに隠れていたキンシコウがロープをほどいたのだ。
リカオンは何とか向こう岸の崖に手を掛ける。
一方のセルリアンは真っ逆さまに谷を落ちる。
眼下には川が流れていた。
それに気付いたセルリアンがメチャクチャに暴れ出す。 水に怯えているのだ。
それを見たリカオンは意を決して高さ20mはあろうかという崖を飛び降りる。
キンシコウもそれに続く。
リカオンがセルリアンの両手、キンシコウが両足を掴むと、空中で仰向けになるように固定する。
「おらーーっ!」
崖の中腹でスタンバっていたヒグマが飛び出すと、熊手を振り下ろす。
キンシコウ
「伸びてください!」
セルリアンは背中から川に落ちると同時に腹の石を熊手でしたたかに殴りつけられる・・・
ぱっかーーーん!
~夜:小川~
ばっしゃーーん!
ヒグマ
「ぶはっ!」
リカオン
「大丈夫ですか!?」
ヒグマ
「洗濯物みたいに干されてるヤツには言われたくないな」
リカオンは崖と崖の間でつっかえ棒のように伸びている如意棒に服の両袖を貫かれてぶら下がっていた。
「まったく。 2人ともムチャするんですから・・・縮んでください」
キンシコウは平均台のように乗っていった如意棒から飛び降りる。
ヒグマは落ちてきたリカオンを受け止め・・・ずにそのまま川に落とす。
リカオン
「ぶはっ!
ヒドいですよ! 何するんですか!?」
ヒグマ
「私たちに相談もせず、勝手な行動を取った罰・・・
ーと言いたいところだが、残念ながら水も平気そうだし、噛まれた痕も無さそうだ」
キンシコウ
「まったく… 素直じゃないんですから。
心配だったんなら、そう言えばいいのに…」
ヒグマ
「な・・・!
そんなんじゃない!
むぅ… せっかく狂犬病ワクチンを受けることになってブルってるところを見れると思ったのに残念だよ」
リカオン
「ヤメてくださいよ。
その単語を聞くだけでも怖いんですから」 ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
ヒグマ
「ははw」
リカオン
「こ、これは川の水が冷たいから、ですからね!」
バシャバシャ!
ヒグマ
「冷たい! 何するんだ!」
リカオン
「ヒグマさんこそセルリアンに伝染されてないかと思って」
バシャバシャ!!
ヒグマ
「そんなヘマするか!」
キンシコウ
「海辺の恋人たちですか、風邪ひきますよ?」
ヒグマ
「そうだな、温泉に入り直すか。
あと、改めて・・・
よくやったな、リカオン。 お手柄だ」
そういうと乱暴に頭を撫でまわす。
リカオン
「いた、痛た…ヒグマさん、強すぎです」
キンシコウ
「そうですね。 ご褒美に何か欲しいモノとか、して欲しいことはありますか?」
リカオン
「でしたらボス! ボスと一緒に温泉に入りたいです!」
ヒグマ
「そんなんでいいのか?」
キンシコウ
「・・・一応ボスの意見も聞いてみないと…」
リカオン
「ボス! 一緒に温泉に入りましょう!」
ボス
「えぇ…」
勝ったな風呂入ってくる!
「お客様、男湯はあちらになりますが…💢」