本文10
???「そんな奴は知らない...」
一言、そう答えた。その声はカレントの予想通り女性だった。
カレント「そうか...」
カレントは向かいの席に座り彼女のコップに水を注ぐ。コップの底に残っていた氷が踊り、カラカラと音を立てた。
カレント「なにか頼むか?俺の奢りだ。」
そう言って微笑み、カレントはメニューを手渡した。
???「何を...?」
彼女はメニューを受け取ってすぐに挟まれたメモに気付いた。驚いて前を見るとカレントはいなくなっていた。
やり取りの一部始終をホットサンドをつまみつつ見ていたトワは戻ってきたカレントに問いかけた。
トワ「何を話してたんですか?」
カレント「いや、ちょとな...お前なんでもう食ってるんだ!?」
トワ「仕方ないでしょう!先に出てきたんだから.....で、何を話してたんです?」
するとカレントはお冷を一気に飲み干し、
カレント「賭けだ。」
トワ「賭け?」
カレント「あぁ、俺の予想が正しければ彼女は確実にこのカウンターに来るぜ。」
トワ「?」
カレントの言っている意味が分からずにトワは眉をひそめる。そんなトワの様子を見てカレントは面白そうに微笑した。
カレント「そのうちわかるさ。」
店員「お待たせしました。サンドウィッチです。」
カレント「お、どーも。」
出されたサンドウィッチはレタス、ハム、チーズといった至ってシンプルな物だったが、空腹のカレントの食欲をそそるには十分だった。サンドウィッチを一つ口に放り込んだ。野菜の歯応えが良い。新鮮な野菜を使っているのだろう。パンに塗られたからしの加減も絶妙だ。
カレント「結構イケるな...」
トワ「一口!?」
???「サンドウィッチひとつお願いします....」
そう店員に注文しながら彼女はカレントのとなりに座った。
トワ「え...?」
カレント「言っただろ?」
カレントは困惑するトワに不敵に笑いかける。
???「これはどういうこと...?」
彼女は前を向いたまま周囲に気付かれないよう自然にカレントの前にメモをスライドさせた。
トワは横から首をのばしてメモの内容を確認する。
トワ「これは...?」
そのメモには"昨日の午後10時。管理センター。この意味が分かったらカウンターに来い"と、そう書かれていた。
To be continued