「頭目の敵討ち…、ではなさそうだがおまえら何だ?」
頭目の真似事をしだした"一つ目"は軽く一礼をして、
『これは…、私としたことが、申し遅れました。ミーナ・フェア・リュクト。ただの研究者です』
「…じゃあこの足元のやつは?」
『それも私です』
「面白くない冗談だな、ッ」
冗談半ば、足に力を込めミーナを名乗る一つ目に一気に接近する。一つ目は定型的な格闘でこれに応じ、シナノの殴りも軽くいなされ拮抗してしまう。
死角をついて、自在に伸び縮みするコートの刺突がシナノの脇腹をかすめ、バランスを崩した隙にブレードが腕を斬りつけた。傷口からは青い血が吹き出し地面や天井を染めた。即座に体制を立て直し空かさず反撃とばかりに破片を拾い上げ一つ目に向けて射出するが、コートによって弾かれる。
(流石に同レベルのやつ連戦はキツイな…)
いくら半エーギルとはいえ、持続的な能力の使用は体力的にも、生命的にもよろしくない。体力消耗で負傷も増える一方だが、相手は残機ありで復活してきたやつ。手の内をある程度明かした結果、相手も機械のごとく素早く学習し対応してくる。積極的に攻撃してくる様子はなく、こちらの動きを伺っている節がある。
一息つく暇もなく一つ目のブレードの追撃が迫るが、辛うじて剣を交差させ刃と刃同士で火柱を散らす。…斬りつけられた腕が痺れるように、徐々に感覚を奪われていく。剣を持つ右手が痙攣を始め、カタカタと音を立てる。一つ目との力が拮抗しているのか、腕がおかしくなり始めたのか、…
今できる力尽くで剣を薙ぎ払い、一つ目を突き飛ばす。
『全身動かなくなると思いましたが…、』
「毒、仕込んでやがるな?」
『ご明察ですね、エーギルとやらには毒に対する耐性も持っているのでしょうか?』
「さあね、…」
酷く損傷した八つ目の亡骸を思いっきりけり上げ、一つ目に目掛けて投げつける。
亡骸の質量弾に、一つ目はするりと回避し亡骸は奥の壁に打ち付けられて、液体や様々な破片と共に弾け飛んだ。
『面白い攻撃ですn』
瞬間、一つ目の視界の端を剣の刃がかすめ、咄嗟に防御しようと出した片腕をシールドごとそのまま切断された。バランスを崩したか、少しよろめいて倒れそうになったが片腕を軸に、回し蹴りでシナノの足元をすくった。
「…ッ、くそ」
『”私”を囮に、”私”を斬る。面白い戦術です。実に楽しい。もっと見せてください』
ーーー、
通路の壁に背を向けて俯き、電気をほとばしらせていた黒い左腕は煙をいくつか立ち昇らせていた。目の前にはやや損傷しつつも変わらぬ表情で見下ろす一つ目の姿。
至る所から青い血を垂らし、吐き吸う息も小さい。ただ、黄色い目だけは薄暗い通路の中で光り、それは鋭い眼差しをしていた。
『…』
『…えぇ、わかりました。情報はバラバラに…』
【ーッ、】
今まで沈黙を保っていた館内放送にノイズが混じり、ノイズは徐々に大きくなった。
『...おや、混線でしょうか』
「...」
【ーッ、侵入者に告ぐ、我々はモルトラヴィス帝国軍である。直ちに武装解除し我が方へ降伏せよ!繰り返すーッ、】
窓から外を見ると、ヘリが研究所の空を覆い、戦車や装甲車が研究所の敷地内へと次々と突入していた。それと同時に今までまばらだった銃撃音や爆破音も盛んになり始める。
『流石に正規軍相手は分が悪い…、既に目標も達成しましたし、ここは撤退いたしましょう』
一つ目は、ただ名残惜しそうに
『シナノ外務宰相。貴重な時間をありがとうございました。いずれまた機会があればお会いしましょう』
「なに…ッ…、する気だ…」
『では、』
そう言葉を残すと、急に全身から発火し膝から崩れ落ちるように倒れた。通路のスプリンクラーが作動し辺りに雨のように水がまかれたが、一つ目の体は黒く焦げて判別のつかないものになっていた。
「…、」
おまたせしました()
迫真ミーナさん亡骸質量弾
ミーナさんの指揮機(八つ目)を利用したエーギルのパゥワーによる質量弾です()
戦況
3回戦目はきついでしょうね()
能力をばんばか使ったでしょうしシナノの侵蝕はさぞ進んだことでしょう()3戦目は、一般機のミーナさんの腕を切り落としたり善戦しましたが体力切れや毒、連戦による疲弊で敗北…みたいな感じです
青い血
シナノの血は青色です
その後
あとは後日談なりなんなりと()
執筆、お疲れ様です。
話の運びが綺麗にまとまっていますねスンバラシイ流石のシナノさんでも連戦は厳しかったようで...
ひとまずシナミー編は今回のところ一区切りといたしましょう。
後日談については少々お待ちを...。