「なぁ、平和だな」
イラク南部の村で、北米陸軍の分隊が治安維持活動を行っていた。彼らは元々財団部隊に所属しファルージャ攻略を行っていた兵士だが、現在は平和維持のために活動している。分隊員が村の真ん中にある井戸端で、椅子に座り村人に挨拶を交わしながら話していた。空は青く、太陽がギラついている。
「あの時さ、俺子供撃っちまったんだよ」
サングラスをかけた男が、急に数ヶ月前の話を切り出す。
「スカーフを巻いた男がいてな、そいつがRPG持っててたんだ。道路挟んで向かい側の味方に向けてたから、俺が撃ったんだよ。頭に当たって崩れ落ちた」
変わらず空は青く、村人が笑いながら話し、行き交っている。サングラスの向こうの目は、見えなかった。
「そしたら、路地からガキが出てきてな、アラビア語でなんか言いながら俺が撃った男に縋ってたんだ。ありゃ多分、『父ちゃん』つってたんだろうな。なんかすぐにわかった」
サングラスの男は、ヘルメットを外して頭をグシグシと掻く。横を向き、上を見て、下を見る。砂にはブーツの足跡がついている。
「どうしようか考えてたら、ガキがRPGを持ち上げやがった。やめろ、放り出せ、逃げろ。俺は何回もぶつぶつ言ってた。叫ばなかったのは、俺の命恋しさ何だろうさ。腰抜けだな」
男は下を向いたまま口を開く。独り言を呟くように、
「天秤にかけた。仲間たちの命と、子供一人の命。比べちまったんだよ。俺は。それで撃った。子供の体は軽いんだろうな、少し後ろに跳ねてた」
「基地に戻って死のうとした俺を、お前は止めてたな。何も聞かずに。あのお陰で今はまともに考えられる」
外したヘルメットを懐かしむように撫で、サングラスも外し、独りごちる。
「お前は死んじまったけどよ、お前のメットとサングラスは使わせてもらってるぜ。持続可能な装備ってな」
乾いた笑いを吐き捨て、立ち上がる。いつの間にか数人の村人が、涙を浮かべながら立ち尽くし、全員が目の前の、『男が座っていなかった方の椅子』を見つめる。
「お前のおかげで、守れたものがある。だけどよ、やっぱ俺にサングラスは似合わないよ」
男は、歩いて墓標を去った。
2024年3月、イラク南部の村で治安維持を行っていた財団部隊がIRFに襲撃された。1個分隊であった彼らに対し、IRF側は1個小隊規模で攻撃を行った。財団部隊は村人を避難させ、守りながら戦い、結果としてIRF側が撤退することで戦闘は終了した。IRF側の被害が40人程度(推測)だったのに対し、財団部隊は死者1人、重軽傷者7人と言う結果となった。
また、財団部隊はこの時村人と良好な関係を築いており、数人の村人は財団側に立ち戦闘に参加した。
RPGのくだり、なんかアメリカン・スナイパーっぽいですね。
まあ今回は撃ってるが…
流石はまだ考えない人様、よくご存知ですね。ただあの状況だったら普通撃つよなと思ったので殺しました()
読んだ瞬間「アメリカン・スナイパー」のワードが出てきた(あのシーンは動画で見たことある)