『モルトラヴィス帝国 外務宰相閣下ではありませんか。お邪魔しております』
「ほぉ、侵略者にも覚えられていましたか。ここを襲撃する愚か者がいたなんて、想像もしませんでしたよ」
『私達はデータの収集に来ただけですので、そこを通していただけると大変助かるのですが…』
「侵略者に道を開けるほど馬鹿ではないのでね」
シナノは薄く微笑み、腰にかけてあった拳銃を構える。
『そうですか…、仕方ないですね』
ダンッ!…ダンッ!
先に火を噴いたのはシナノの拳銃ではなく、義体の方だった。引き金を引く前に戦闘用義体のガントレットから、セミオートで撃たれた銃弾はシナノの胸を目掛けてーー、
ーバチッ!
シナノを目前にして地面へと落下した。
彼女は驚きつつ、嬉しそうな声で呟いた。
『これは…、驚きました』
「異性体退治は私の仕事でね」
シナノの周りの灯りが点滅し始め、電撃が目に見える。
『……予定変更です』
随伴機、戦闘用義体達は何かを受信したようで、シナノの横を高速で突破しようとする。
「無視とは…、つれないnー」
突破を阻止しようと拳銃を向けるべく動いたシナノを戦闘用義体から伸びる帯状の何かが壁へと叩きつけた。ドゴッという重い音とともに、帯状の何かが引くとシナノが膝をついてよろめきつつ立ち上がる。
『少々想定外でしたが…、嬉しい誤算です』
「…こういうのは初めてだな……、肋が何本か折れた気がするよ」
『あまり傷をつけたくはないのですが…、良い機会です。ぜひともあなたの力を見せてください』
突如、拳銃を戦闘用義体に向けて投げつける。当然拳銃は帯状の何かに弾かれ地面に強く叩きつけられ、分解した。その間にシナノが手に取った剣のブレードは青白く、激しく閃光を放つ。それと同時に普通に見えていた左腕は皮膚が黒く、血管が通っていたと思われるところは青白く、人には見えないものが姿を表す。
『ほぅ…、』
「あまり帝国を舐めるものではない」
彼女を捕らえるべく、ヘビのごとく高速でうねりながら突き進んでくる帯状の何か目掛け、片手で剣を振り上げて往なし、刃を突き立てる。長く伸びたコートを引っ込め、接近戦をしかける義体へ勢いそのままに剣を振り下ろし、義体は再びコートを伸ばし防御姿勢をとる。通路の床が少し凹んだかと思えば、義体を中心にクモの巣状のヒビが入る。エーギル化特有の身体強化を載せた力任せの剣のブレードは帯状のコートの繊維を両断し、本体から切り離された帯は床へと落ちる。すかさずシナノが剣を義体に向けて薙ぎ払おうとすると、義体はガントレットの先端を向けてー、
ヴォン!
爆音とともにレーザー光がシナノ目掛けて一直線にー、咄嗟に部分的にバリアのように展開し辛うじて射線を反らすことはできたものの、完全とはいかず耳の一部を持っていかれる。
「…ってぇな…、なんでもありかよくそッ…」
一瞬の意識の揺らぎを見逃さず、戦闘用義体咄嗟の足蹴りがシナノの脇腹を直撃し、シナノは少し吹き飛ばされるように距離を取り衝撃をある程度受け流した。戦闘によって通路はボロボロに、誰かのかもわからない返り血であちらこちらが染まり異常な雰囲気を醸し出している。
「まったく…、随分と奇妙なやつらだ…、こんなに動いたのは久々だな」
耳元から青い血を流し、シナノはため息をつく。本体…、あの指揮機は観賞しているのか、シナノと戦闘用義体が戦闘しているのを眺めて何度か相槌を打ったり、考えたりする仕草を見せていた。
戦闘用義体は攻撃を受けてなお、立ち上がりシナノと対峙する。
戦闘用義体が飛びかかってくる前に、指揮機が沈黙を破った。
『お名前は確か…、シナノ…さんでしたか?』
「…よくご存知で」
『帝国の人外に関する情報はあまりありませんでしたが…、存在そのものを"隠匿"するのではなく敢えて公の場、政府の要職に出すことで人外としてのシナノさんを"隠匿"する…興味深い事例です』
「…君のような人種をどこかで見た気がするね。帝国では皇帝家の慣習でドイツ語は一応公用語だからあまり違和感なかったけれど。…まぁアルゴン政府の刺客とは考えたくないが…。どうでもいいか」
『欲しいのはデータだけの予定でしたが…』
「生憎ね、帝国は襲撃者にはいはいとデータを渡すような国でなくてね」
「…と、あまり時間をかけるのも良くないな」
床に落ちていたそれなりの破片を左手で拾い上げた時、左腕だったものは青白く、また発光が激しくなる。みるみるうちに形を変えて砲身を形成する。
指揮機は興味深そうにそれを観察し、義体は格闘戦に持ち込もうと高速で接近する。突き出された拳を寸前でかわし、砲身と化した左腕を脇腹に突き立てる。
パチッ
レールガンのごとく、破片を弾に、砲身の中で加速しゼロ距離から放たれ、義体のコートを貫通し脇腹を貫いた。
レールガンの直撃のみならず、高電圧で動きの鈍った戦闘用義体に対して、シナノはすかさず大剣を振り下ろしブレードが頭部を直撃する。2mある巨体は床へとなだれるように倒れ込んだ。墓標を建てるように、大剣を胸目掛けて突き刺した。胸から大剣を引き抜くと、火花と何かの液体が噴き出す。
「…eins」
動かなくなった戦闘用義体を見て、彼女は拍手した。
『やはり、ここのデータはぜひ欲しい』
ーーーーーー
『B3突破!Bブロックはもう保ちません!』
「データセンターと海洋プラントは絶対に死守しろ!」
「Ag-1991-2が対応中ですが…、」
部屋の壁いっぱいのディスプレイは、一夜の混乱を映し出している。報告の通信は鳴り止まず、どれも嬉々としてきけるものではなかった。
「軍到着まで約5分!」
「…くそ…、Cブロックの隔壁全閉鎖!ガスを散布しろ!多少時間が稼げればいい。帝国軍の到着次第反撃に転じる!」
『C1警備部tーッ ドゴッ…、ピーッ』
『繰り返しますー、研究所職員はただちに退避。警備隊は侵入者の排除を優先してくださいー、』
「長い一日になりそうだ…」
シナノと対異形系戦闘用の戦闘となります
シナノが人外なんていう情報はなかった(はず)なので、小話の後でセミオートで撃たれますが電磁バリアァ゙()で防ぎました。
あとはシナノが大剣(Ans-1733)を持ち出して切り合い殴り合い殺し合いです()
茶番協議スレ通り、4人が先に通過して3人がシナノの足止めを行ってます。
お疲れ様ですm(_ _)m
臨場感溢れていて良い感じですね👍
続きについては少々お待ちを...。
プライマル・アーマー(電力) かっちょいい…