私は遭難しかけていた。
でも、こんなところで倒れている場合ではない。
キタキツネを救えるのは私だけなのだから・・・
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私はこの奇妙な現象について相談に乗ってもらおうと、オイナリサマのいらっしゃる神社へ向かうことにした。
その最短ルートとして「ゆきやま越え」を選んだのだが、こんな時に限って猛吹雪に遭い、前も見えない。
かばんたちは「かまくら」を作ってやり過ごしたようだが、今はそんな時間も惜しい。
とにかく前に進もうとするが、カイロを持ってくるのを忘れたせいで体が冷える一方だ。
意識も朦朧としてきた。
そう言えば、このループに入ってからというもの、ろくに食事も摂っていなかった。
だからと言って用意しておいた「お供え用の稲荷寿司」に手を付ける訳にもいかない。
サンドスターがもう…
ついに私は意識を失った・・・
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動物だった頃、毛色の違う私は、仲間内から のけものにされていた。
#うぃきぺでいあ先生によると、どうやら私はアカギツネの遺伝的多型(突然変異)というらしい。
そんな中、キタキツネ(アカギツネの亜種らしい)だけはエサを分け与えてくれたり、
#一緒に遊んだり してくれた。
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ある日のこと、サンドスター噴火が起こり、逃げ遅れた私だけがフレンズ化してしまった。
しばらく心配そうにそばについてくれていたキタキツネも、やがて森へと帰っていった。
私は、としょかんで「どうにかキタキツネもフレンズ化できないか」と訊いてみたが、
博士「賢い我々にも出来ないことはあるのです」
助手「そんな方法は聞いたことがないのです」と断られた。
その後、フレンズやセルリアンの研究をしているカコ博士にも同じことを頼んでみたが、
「自然の摂理に反する」と一蹴されてしまった。
・・・それでも私は諦めなかった…
気が付くと、そこはオイナリサマの神社だった。
???
「炎属性じゃからといって我に世話を焼かすな」
「あなたは・・・?」
この美しい深紅の羽と神聖さを感じさせるオーラ・・・
初めて見るフレンズだが、スザク様だろう。
確か、守護けもの:四神の一人だ。
「スザク様が助けてくれたんですね。 ありがとうございます」
オイナリサマ
「守護けものがフレンズを助けるのは習い性みたいなものですから気にすることはありませんよ」
オイナリサマは涼しい顔でそう言うと、お供え用の稲荷寿司を上機嫌でパクついている。
スザク
「助けたのは我なのに、なぜ何もしていないお前が食っておる?
ギャグもさらっと流しおって…」
オイナリサマ
「今回はシリアス系SSなので良き判断かと」
スザク
「・・・」
「すいません。
あなたまでいらっしゃるとは思っていなかったので手持ちが…」
スザク
「ああ、よいよい」 ノシ
手を振り、口ではそう言いながら、横目では虎視眈々と稲荷寿司を狙っている。
一方のオイナリサマも取られてなるものか、と警戒心を剥き出しにしつつ
「あなたはサンドスターを補給しておきなさい」
ーとジャパリまんの盛られた皿を差し出す。
神様同士がバチバチ火花を散らしている中、ジャパリまんに手を出すのは憚られる。
仕方がないので恐る恐る疑問を挟んでみた。
「と、ところでスザク様は何故ここに?」
スザク
「用があるのはお主の方じゃろう」
「!? では私がここに来た理由も?」
オイナリサマ
「私たち守護けものは、あなた方フレンズをいつも見守り、手助けるために存在するのですよ」
だったら話が早い。
「では、キタキツネを助けて下さい!」
スザクは片眉を上げる。
「我はお主のために来たのじゃが…?」
何だろう?
話が微妙に噛み合わない…
「私のことはどうなってもいいんです!
それよりキタキツネを…」
スザク
「アレはフレンズとは呼べんじゃろう」
フレンズ化した私は、オイナリサマのお手伝いをしながら薬の研究をし、時にフレンズの様々な病気を治したりした。
ガオガオ病のワクチンもその1つだ。
一方でフレンズやサンドスターの研究を独学で行い、
ついには「フレンズニナールKK」を創り出すことに成功した。
それに気付いたオイナリサマは、
「使うのはヤメておきなさい。 さもないと後悔することになりますよ」
ーと言ったが、
私は忠告を聞かず、キタキツネを探し出すと こっそり投与した。
フレンズ化は成功し、私たちはまた一緒に過ごせるようになった。
キタキツネ
「へ~ 雪って握ると固められるんだぁ…
#よっ んっ」
ギンギツネ
「あなたねぇ… 普通作るなら雪だるまとかウサギでしょ?」
キタキツネ
「いいの!
こっちがギンギツネで#もう1つがボク…」
そんなキタキツネを眺めながら私は、この上ないまんぞく…感を覚えていた。
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そんなある日、キタキツネがセルリアンに襲われた。
と言っても「蝶ネジタイプ」と呼ばれるザコに腕を噛まれただけだった。
なのにキズが治るまで とても時間が掛かった。
博士「フレンズとしてかなり不安定な存在で、サンドスターの消化吸収効率も悪い個体なのです」
助手「セルリアンに対する抵抗力も極端に低いのです。 本当にフレンズなのですか?」
そう言われて内心かなり焦ったが、
「セルリアンって、そもそも何なんですか?」
私は日頃から疑問に思っていたことを聞くことで誤魔化した。
博士「山火事のような災害に例える者もいますが・・・」
助手「我々フレンズを形作る命の源:サンドスターを食べて増える病原菌のようなもの、なのかもしれませんね」
その後、キタキツネに身体的な後遺症が残ったり、
セルリアンへの恐怖心(トラウマ)を抱いたりしなかったことに安心はしたが、
やたら諦めが早いのだけは困りものだった。
それからの私は、いつキタキツネのフレンズ化が ふと解けてしまわないか?
いつセルリアンに襲われ、原作に戻ってしまわないか?
そんな目に見えない不安からか、ついつい過保護になっていた・・・
スザク
「パークは原作・フレンズ・セルリアンの微妙なバランスの上に成り立っておる」
いけない。
つい、ぼーっと回想にふけってしまっていた。
スザク
「そんな中、お主は『出来ること』と『やっていいこと』の一線を越えるコトをしでかした。
今お主が置かれている状況は、その報いじゃ。
それを抜け出すには…」
「キタキツネを見捨てろと言うんですか?」
スザク
「そうじゃ。 アレは生まれるべきでなかった『
「あの子に罪は無い!」
スザク
「その罪を背負わせたのはお主じゃ!」
私は言葉を失った。
オイナリサマ
「・・・」
スザク
「しかしお前は十分に罰を受けた。
反省し、二度とこのようなことに手を染めない、と誓えば・・・」
「・・・」
スザク
「執着を捨てることじゃ。 そうすれば楽になれる」
オイナリサマ
「ギンギツネ、聞き分けなさい?」
「でも… でも!」
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スザク
「ふぅ…」
首を縦に振らない私にスザク様は心底呆れたように溜息を吐かれた。
スザク
「ここまで言って拒絶するというなら自業自得。
我は最低限の責は果たした。 あとは好きにするがよい・・・」
そう言うとスザクは去っていった。
オイナリサマもそれ以上 何も言わなかった。
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やっと分かった。
この状況を作り出したのは私だったのだ。
いつか「キタキツネを失う」という罰を受け入れなくてはいけない。
それでも少しでも長くあの子と共に過ごしたい。
この2つの相反する気持ちを「両立させるシチュエーション」として、私の歪んだ心が作り出してしまった世界。
それがこのループ・・・いやメビウス・スペース(捩じれた空間)だったのだ・・・
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仕組みは理解した。
しかも自分の作り出した世界だというなら変えることが・・・
いや、最悪でも壊すことは出来るはず。
神に背き、手を払い除けてしまった私にどれだけのことが出来るかは分からないけど…
「いいえ、#諦めるものですか!
たとえこの身がどうなろうと、キタキツネだけは…」
私は、昔使っていた研究室に籠り、これから必要になるだろうモノを作り始めるのだった・・・
ボクは我儘だ。
今まで、ことあるごとにギンギツネを困らせてきた。
今回のこともそうだ。
博士たちによると、
ボクの身体はサンドスターの衝突という偶然によって生まれたフレンズと出自が違い、
いつフレンズ化が解けてもおかしくないくらいゼンゼヨワイーらしい。
又、セルリアンへの耐性も低く「次、襲われたらひとたまりもないでしょう」と言われた。
そんな話をボクはスンナリと受け入れられた。
ボクは諦めが早い。
それでも長くギンギツネと共に過ごしたい。
この2つの相反する気持ちを「両立させるシチュエーション」として、ボクの歪んだ心が作り出してしまった世界。
それがこのループ・・・いやメビウス・スペース(捩じれた空間)だった…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
だけど、ここまでくるとボクだけの力で起きているとは思えない気がしていた。
メビウスの輪とは表が裏に裏が表に繋がっているからだ。
ギンギツネはいつものようにボクを起こした後、どこかへ出掛けて行った。
同じ朝を繰り返すたびに消耗している様子なのに、まだ何かを企んでいるらしい。
ボクのように諦めれば楽になれるのに…
とにかくこのままでは埒が明かない。
なんとかこの輪を断ち切らないと・・・
そんなことを考えていると、美しい深紅の羽に神聖なオーラをまとったフレンズが突如 現れた。
そのスザクと名乗ったフレンズは言った。
「我はフレンズを見守り、手助けするために存在する守護けもの。
ギンギツネは助けてやれるが、お主はそうではない。
それでもお主は願うのか」と。
改めてボクは「自分はどうなってもいいからギンギツネを助けて欲しい」と言った。
スザク
「お前たちの互いを想う絆は強すぎる。 だが、やるだけやってみよう」
スザク様は、そう言うと去っていったが正直 不安だった。
ギンギツネは頭が固い上に、なんでも独りで背負い込むところがある。
次で最後にしよう。
話せば分かってくれるだろう。
ボクが居なくなればギンギツネは解放されるのだから・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ギンギツネ、話を聞いt…」
ギンギツネ
「デカクナールDX!」
帰ってきたギンギツネに声を掛けようとした途端、
どこからともなく取り出したフラスコの中身をいきなりぶっかけられた。
「ペッ、ペッ! な、何…? これ」
「ボクのことは もういいんだ。 だから諦めて」
ーと訴えるつもりが、すっかり先手を打たれた格好だ。
口の中にも薬が入ってきて、少しだが飲んでしまった。
「うが…?
何かが喉を迫り上がってくる。
そして、あっという間に口の中を占拠し・・・
ゔぇっへ!」
思わず吐き出す。
丸い本体にたくさんのスパイク(トゲ)が生えたウニのような姿のセルリアンが姿を現した。
ギンギツネ
「やっと正体を見せたわね!」
続けてギンギツネは、もう1本フラスコを取り出すとグイっと飲み干す。
「ママニナールOπ!」
みるみるギンギツネの胸囲が2カップは膨らみ・・・
張りつめた服の頂点の色が変わったように見えた。 もしかして濡れている…?
そんな様子に気を取られていたボクは、うっかりウィルスリアンに飲み込まれてしまう。
「しまった!」
そこへギンギツネも飛び込んでくる。
ボクのために またギンギツネが危険にさらされてしまう。
そんな自分の無力さにほとほと呆れながら・・・
ボクたちは溶け合って1つになった…
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いや、その表現は正確ではない。
ボクはすぐにギンギツネだったモノに包まれ、ウィルスリアン溶液と隔てられた。
経験がないので分かるはずもないのだが、それはまるで「母親の胎内」にいるようだった。
温かい・・・
頬に何か、大きくて柔らかいものが押し付けられる。
ボクは本能のままに、知っていたかのように その先端を探し出すと口に含み、吸い出す。
薬のせいで苦かった口の中が、甘い何かで満たされる。
そんな幸せな気分に浸っていたのも束の間、気付いたらウィルスリアンの外に産み落とされていた。
!?
慌てて向き直る。
そこにはウィルスリアンの羊水中で漂う虹色の球。
「ギンギツネぇ!?」
そう呼びかけるとフレンズの形になり、語りかけてきた。
#ギンギツネ「今までごめんなさい。そしてありがとう…」
「そんな・・・」
突き飛ばされた・・・気がしたが、腰が抜けただけかもしれない。
さっきまで見ていたギンギツネの姿は幻影だったのだろうか?
虹色の球が漂っているだけだ。
ーと、突然ウィルスリアンのトゲが尻もちをついたボク目掛けて触手のように伸びてくる。
死にたくない! ボクは咄嗟に手を顔の前にかざす。
カピバラ
「危ないよよよ…」
カピバラが飛び込んでくると背中の桶を取り、盾のように構え触手の攻撃を防ぐと、
すぐさま頭のタオルを鞭のように操り・・・
ぱっかーーん!
『へし』に一撃を食らわせるとウィルスリアンはキューブ状に飛び散った。
キタキツネ
「ありがとう、助けてくれて…」
カピバラ
「でもギンギツネさんが・・・」
虹色の球が転がる。
やがてサンドスターが抜けていき・・・
原作の姿に戻る。
キツネは名残惜しそうにしばらく部屋をうろついていたが、やがて森に帰って行った。
カピバラ
「追い掛けなくていいのかななな…?」
キタキツネ
「いいんだ。 いいんだよ、これで…」
こんな形になるとは思ってもみなかったけど…
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博士
「そんな極小のセルリアンが存在するとは・・・
タイリクオオカミのホラーネタが増えますね」
助手
「恐らくお前が大あくびをした時にギンギツネから
真実を聞いても、そのことでギンギツネを責める気にはなれなかった。
たまたまセルリアンに抵抗力のないボクだからこそ こんな事態に陥ったのだろうから。
博士
「なんでもヒトは#初乳を与えることで母から子に免疫や殺菌力を授けるそうです」
助手
「ところで、その薬は本当に残ってないのですね? 隠すとためになりませんよ?」
どうやら博士たちは『ないすばでぇ』になり損ねたことを根に持っているらしい。
もしレシピが見つかったとしても黙って処分しておいた方がいいだろう。
でないと、喉から手が出るほど欲しがるフレンズの間で争いが起こりかねない・・・
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それからというもの、オイナリサマがボクを心配してたびたび様子を見にくるようになった。
あまりにも しょっちゅう来るので気を使わせるくらいなら、と思って
「オイナリサマのところでお世話になろうかな?」
と切り出してところ、とても喜んでくれた。
どうやら寂しかったのはオイナリサマの方だったようだ。
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「ここが…」
ある日、ギンギツネが研究に使っていたという部屋に入ってみた。
棚には怪しげな薬がたくさん並べてあった。
そのうちの1つに目が留まる。
『フレンズニナールKK+』
「これって…」
名前から察するに原作を人工的にフレンズ化する薬だろう。
ふと、ある誘惑に駆られる。
これを使えば・・・
逆にこれを使わなければサンドスターの気まぐれ… 偶然に頼ることになる。
何年、何十年・・・いや何世代経たないと、
いや、一生出逢えないかもしれない・・・
薬を手に取ってみる。 じっと見つめる・・・
ボクは。
ボクなら・・・
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ガシャーン!
オイナリサマ
「なんですか? 今の音は」
キタキツネ
「ごめんなさい。
部屋の掃除をしようと思って…
棚の整理をしてたら落としちゃった」
オイナリサマ
「・・・
そうですか。 それがあなたの決めた道ですか…」
キタキツネ
「・・・」
オイナリサマ
「さあ、片付けましょう。
そこに雑巾とホウキがあるでしょう。
ガラスで手を切らないよう気を付けるのですよ?」
キタキツネ
「はーい」
~〇年後~
パークにサンドスターが降り注いだ次の日、ボクはゆきやまにいた。
「#よっ んっ」
???
「普通作るなら雪だるまとかウサギでしょ?」
キタキツネ
「いいの!
こっちが …で#もう1つがボク…」
ギンギツネ
#まったく、あなたって子は…
キタキツネ
「#おかえりなさい!」
~おわり~