貨物船でパークを脱出しようとして、
夕焼けの中でお別れをした「あの日」の夢・・・
窓から見ると夕方、日は傾きかけていました。
確か「
私は久しぶりに金庫を開けて「例の絵」を眺めました。
この絵を出すのを忘れてしまうほど、最近は いろんなことがありました。
絵は、更に色褪せたように見えました。
私も、こうやって変わっていってしまうのでしょうか?
変わっていくということは・・・
悪いことなのでしょうか?
何でもないって言ってるだろ!?
声が聞こえてきました。
アムトラさんのようです。
私は絵を金庫に仕舞うとリビングに向かいました。
フレンズになる前のオレの記憶は曖昧だ。
気が付いた時には檻の中だった。
何かを持つヒトの、オレを見る目はいつも暗く冷たかった。
痛みは、とうに麻痺している。
何かが体の底から こみ上げてきて意識は飛ぶ。
そんな毎日が ある日、唐突に終わりを告げる。
夕焼けの中、そのヒトは檻を壊し、鎖を切り『キミはもう自由だ』と言った。
逆光で顔も見えなかったソイツとはそれっきりだった。
その後の記憶も曖昧だ。
オレは感情の赴くまま暴れていた、らしい。
だが、フレンズが怯え・悲しみ・警戒に満ちた目でオレを見ていたのは覚えている。
だから正気に戻ったとしても、誰もオレを受け入れるはずなどないと思っていた。
そもそも自分がそれを許せなかった。
でもアイツに会って、変わった。
周りが見えるようになった。
自分が少し分かるようになった。
イエイヌの目からは警戒心が消えた。
博士たちは子供を見守るような目でオレを見ている。
かばんは愛おしい(でいいんだよな)目でオレを見る。
ともえは・・・
変な時間に目が覚めてしまった。
フラフラとリビングに入ると、窓から夕日が差し込もうとしていた。
確か「
そんなことを考えていると、逆光の人影に そう声を掛けられた。
アムトラ
「・・・
何でもない」
ともえ
「でも顔色が悪いよ?」
アムトラ
「何でもないって言ってるだろ!?」
コイツは、時折こんな風に心の距離を詰めてくる。
いつもは捕まえたいのか突き放したいのか迷っている内に離れていくのだが・・・
あんな夢を見たせいか反射的に拒絶してしまった・・・
気まずい雰囲気が漂う。
ともえ
「・・・
ああ~ なんか足が冷えるな~」
ーと思ったのはオレの方だけだったらしい。
ともえはオレの気も知らないで、床に正座すると、
太ももをポンポンと叩きながら唐突にそんなことを言い出した。
アムトラ
「そんなに寒いならイエイヌに毛布でも持ってきてもらえばいいだろ?」
そのまま突っぱねたままでも良かったのだが・・・
いつの間にかコイツのペースにハマってしまう。
ともえ
「それじゃあ温かくなるまで時間が掛かるじゃない。
人h… フレンズ肌が恋しいなぁ・・・ チラッ」
アムトラ
「・・・
なんで そんなにオレに構うんだ…」
ともえ
「あたしが『そのため』に生み出されたから・・・かな?」
? 何を言ってるんだろう、コイツは…
ともえ
「詳しいことは分からないけど、『何かに縛られてる』気がするんだよね。
それって本人はラクかもしれないけど、見ている側としては『なんとかしてあげたい』
って思っちゃうんだよね。
それってエゴでしかないし、そういうあたしも何かに縛られてるのかもしれないんだけど・・・」
どうしてコイツは・・・
私がリビングに入ると、ともえさんがアムトラさんに膝枕をしていました。
ともえ
「助けて…」
イエイヌ
「え…?」
ともえ
「足が痺れた・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ともえさんの体を引き抜き、代わりにクッションを差し込みました。
アムトラさんは相変わらず寝入っています。
ともえ
「寝かしといてあげよう」
足首を曲げたり伸ばしたりして痺れを取ると、
私の持ってきた毛布を掛けてあげながら、ともえさんは言いました。
何があったのか訊きたい気持ちもありましたが、なんだか訊きづらくて、
イエイヌ「そうだ、ちょっと見てもらいたいものが」
無理に空気を変えることにしました。
イエイヌ
「 #どうでしょう?
アルパカさんにもらったんですが…」
ともえ
「うひょ~ いいね、いいねぇ~!」
見るからに有頂天になった ともえさんは、どこからともなくスケブを取り出すと、前後左右はもちろん、
ミッションインポッシブルのように天井からぶら下がって(どうやって体を支えてるのでしょう?)までして、
私のメイド姿を描き始めました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イエイヌ
「あの・・・」
しばらく経って、
今は車の修理工のように床に仰向けに寝そべって描いている ともえさんに声を掛けました。
イエイヌ
「お願いがあるんですが・・・」
ともえ
「なになに?」
イエイヌ
「ともえさんのこと『ご主人様』って呼んでもいいですか?」
途端に空気が凍り付きました。
ともえさんはスケブを閉じると、私の広げた足の下から出てきました。
ともえ
「それってマジのやつだよね? 『ごっこ』じゃなく」
珍しく真顔で訊いてきました。
その真剣な様子に押され、声が小さくなってしまいます。
イエイヌ
「はい…」
短い間でしたが、一緒に暮らしてみて、
「このヒトの命令なら聞いていける」
そう思って提案してみたのですが・・・
ともえ
「・・・ それは勘弁して欲しいかな?
あたしはイエイヌちゃんと主従関係を結びたいわけじゃないんだよ」
イエイヌ
「・・・」 (´·ω·`)
ともえ
「あ… ごめんね」
そう言うと、いそいそと外へ出て行ってしまいました。
捨てられた犬のように突っ伏しているとアムトラさんが起きてきました。
アムトラ
「どうした」
イエイヌ
「ともえさんを怒らせてしまいました。
もう帰ってこないかもしれません。
ごめんなさい…」
アムトラ
「何があったか知らんが・・・
アイツなら戻ってくる」
私なんかより よほど信頼関係を築いている自信があるから言えるセリフ、でしょうか?
イエイヌ
「どうしてそんなことが言えるんですか?」
アムトラ
「スケブが置きっぱなしだからな」
イエイヌ
「あ・・・」
思った以上に冷静な状況判断によるものでした。
それに引き換え私は・・・
アムトラ
「それに、謝るなら相手が違う」
アムトラさんは、もし ともえさんと別れることになってもツラくないのでしょうか?
アムトラ
「アイツはお前も大事に思っている」
イエイヌ
「そう、でしょうか…?」
アムトラ
「そんなに言うなら連れてってやる。 アイツの所へ」
最初に ともえさんとお散歩に出掛けた場所でした。
ともえさんは、かばんさんとフリスビーの練習をしていました。
かばん
「ごめんね、遅くなっちゃって」
ともえ
「いえ、こちらこそ。
お忙しいのに付き合ってもらっちゃって」
2人はそんなことを言いながらフリスビーを投げ合っています。
ともえさんは見違えるほど上手くなっていました。
3人で としょかんに紅茶の淹れ方を習いに行った時、
庭でかばんさんに教わっているところを部屋から見たそうです。
私がカフェに遊びに行っている間も、ずっと練習を続けていたのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アムイヌ
「ともえさんとは どういう関係なんですか?」
練習の邪魔にならないよう、離れたところにアムトラさんと#2人で座りながら
ずっと気になっていたことを訊いてみました。
アムトラ
「分からん…」
イエイヌ
「今まで ずっと一緒だったんでしょ?」
アムトラ
「いや・・・ ついこの間、出会ったばかりだからな。
それもなりゆきで、だ」
イエイヌ
「じゃあ、どうして一緒にいるんですか?
どう思ってるんですか? ともえさんのことを…」
アムトラ
「オレだって、ぜんぜん分からん」
そもそもアイツは考えが自由過ぎて・・・
今でも何を考えてるのか…」
イエイヌ
「それは分かりますぅ」
アムトラ
「オレは あの時『終わってもいい』と思っていた。
でもアイツはそれを許さなかった。
だからと言って『そう簡単に変わっていいのか?』と思った」
そう。 私も・・・
アムトラ
「オレは楽になりたかっただけなのかもしれない。
だがらといって、逆に自由を与えられてもどうしていいいか分からない」
わたしも『自由にしていい』と言われて不安に思ったものです。
ともえ
「だから一緒にこれからを考えよう!」 \(^o^)/
イエイヌ
「ともえさん…」
アムトラ
「終わったのか?」
ともえ
「なんで驚かないの!?」 \( ゚Д゚) /
むしろ ともえさんの方が驚いています。
イエイヌ
「私は耳が良いので…」
アムトラ
「匂いで…」
ともえ
「2人は感覚が鋭いフレンズなんだね!」
ともえ
「あたしの前世は一部界隈で『忌み子』扱いされてた。
そこから生まれたあたしも所詮イレギュラーな存在・・・
このSSの『I』には『if』と『imigo』『irregular』っていう意味が込められてたんだよ」
突然、重くてメタな話が始まりました。
ともえ
「もう1つ。
このSSのメインタイトルだけど、普通は『けものフレンズ2 if』とかだよね。
なんで『2』の前に『I』を突っ込んだか分かる?」
イエイヌ
「それって重要なんですか?」
アムトラ
「どうでもいい…」
ともえ
「I+2=Rに見えるから、なんだよ」
イエイヌ
「つまり、この3人の配役は仕組まれたモノだったんですね」
アムトラ
「よく こんな話に付き合えるな…」
ともえ
「みんなを救済したいっていう気持ちは本当だよ。
それには『縛られているモノ』からの解放が必要だと考えた。
だからサブタイからも『べき』を外してもらったんだ」
イエイヌ
「メタ過ぎますぅ!」
アムトラ
「何者なんだ、お前は…」
ともえ
「あたしは最低限のルールやマナーを守った上での二次創作は、もっと『自由』でいいと思ってるだけだよ」
イエイヌ「・・・」
アムトラ「・・・」
ともえ
「さて。 これからどうしようか?
パークに帰る? それとも
おうちを探検する?」
アムトラ
「やれやれ…」
イエイヌ
「どっちも一緒じゃないですか」
ともえ
「あと・・・
なんだったらブロングホーンさんに裏から手を回して
ゴマちゃんを加入させることも検討中だから」
イエイヌ
「ホントにやりそうで怖いですぅ」
アムトラ
「自由すぎるだろ」
ともえ
「そりゃあ、けものフレンズRはリバティーの『R』でもあるからね」
アムトラ
「・・・
ん?」
イエイヌ
「あの・・・
自由を意味するLibertyの頭文字は『L』ですよ?」
ともえ
「・・・
ヒトのフレンズだって、みんながみんな叡智に溢れるってわけじゃないんだよー!」
ボスウォッチ
「その辺はボクがサポートするヨ」
イエイヌ
「ウワァァァ! ボスがシャベッタァァァァァ!」
ボスウオッチ
『アワワワ…」
アムトラ
「ホントに大丈夫なのか? このチーム…」
~おわり~