【けものフレンズ I2】 ーイエイヌ編ー
12、i+i話 ~帰るべき場所~
ともえ
「アルパカさんの紅茶も美味しかったね。
博士たち直伝ってだけでなくアレンジ加えてて・・・
ちょっとお腹が たぽたぽしてるけど」
アムトラ
「・・・」
ともえ
「大丈夫だよ。
ミライさんっていうフレンズ好きで有名なヒトにも、
キツネダシの温泉を飲み干したり、カバダシの水飲み場を飲み干したり
ジャガーダシの川の水を飲み干したっていう伝承があるそうだから」
アムトラ
(ばけものフレンズじゃないか…)
ともえ
「博士たちの挨拶も済ませたし~」
アムトラ
「・・・」
ともえ
「はじめまして! ヒトのフレンズともえでーす!」 (^o^)/
博士
「・・・」 💢
ともえ
「ほらアムトラちゃんも挨拶して?」
アムトラ
「・・・ ビースト… もといアムールトラのフレンズだ。
長いからアムトラでいい」
助手
「・・・」 💢
かばん
(自由なコだなぁ…)
ともえ
「かばんさん、ですね。 よろしくお願いしまーす!」
かばん
「う、うん。
そうだ、これから役に立つかもしれないから、ともえちゃんにもコレあげるね」
ともえ
「ありがとうございます。
あと、紅茶ごちそうさまでしたー!」
ともえ
「ーというわけで、ボスウォッチももらったし・・・」
ボス
「よろしくネ」
ともえ
「かばんさんって絶対いいヒトだよね」
アムトラ
「・・・ 私は苦手だ」
ともえ
「クスクス…
かばんさん、私とお話してる間も ずっとアムトラちゃんのしっぽを目で追ってたし、
その後も、博士たちが『そろそろ離してやりなさい』って言うまで、ずっと撫でまわしたりモフモフしてたもんね。
愛のなせる
アムトラ
(むしろヒトの
ともえ
「私はフレンズのフォルム(姿・形)のフェチなんだよね」
アムトラ
(聞いてもないのにカミングアウト!?)
ともえ
「絵を描くのが趣味だからさぁ・・・
フレンズを前後左右、上から下から観察し尽して・・・ じゅるり…
フィギュアとかでも どんなモノを履いてるか、もしかしたら履いてないかも? って気になるでしょ?
おっと、これ以上は けもシコ警察にマークされちゃうね。
あ、さては誘導尋問だな?」
アムトラ
(コイツが分からん、分かりたくもない)
ともえ
「うん、これは新メンバーが必要だね!」
アムトラ
「さっきから話に脈絡が無さすぎだろ! どうしてそうなる?」
ともえ
「あ、心配しないで。
メンバーを入れ替えようとか、目の前でイチャついて嫉妬させようなんて思ってないから」
アムトラ
「そんな心配はしていない」 💢
ともえ
「ほら、けもフレ(アニメ)の主人公って、もれなくネコ科フレンズをパートナーとして連れてるじゃない?
私としてはネコ科+イヌ科をパートナーにすることで差別化を図ろうかなぁって」
アムトラ
「そんなメタな理由!?」
ともえ
「あとは、私とアムトラちゃんとのコミュニケーションの潤滑剤として・・・」
アムトラ
(さすがに荷が重すぎるだろ…)
ともえ
「誰かいいコ、いないかなぁ? チラッ」
アムトラ
(イヌ科、か…)
ともえ
「その顔は心当たりがあるね!」
アムトラ
(表情は変わってなかったはずだが・・・)
ともえ
「こう見えて観察眼には自信があるんだ。
なにしろ絵を描くのが趣味だからさぁ・・・
フレンズを前g…
アムトラ
「もういい! 分かった。 案内するから・・・」
ともえ
「やったね!」 (・ωー)~☆
アムトラ
(自由すぎるだろ、コイツ…)
イエイヌ
「どうぞ、お湯に葉っぱを入れたものです」
サーバル
「わーい、紅茶だぁ!」
ぐびぐび…
カラカル
「あんた、ちょっとは遠慮しなさいよ」
キュルル一行は、イエイヌ宅にお邪魔していた。
サーバル
「・・・?」
カラカル
「どうしたのよ、変な顔が更に変よ?」
サーバル
「もう! またそんなこと言ってぇ!
なんか博士たちやアルパカ淹れたのに比べると、ちょっと…」
カラカル
「コク…
うん、まあ言われてみると変に苦いけどさ…」
キュルル
「・・・」
イエイヌ
「すいません。
実は、見よう見まねでやってただけなんで・・・」
サーバル
「博士たちとかアルパカに教えてもらったら?」
イエイヌ
「いえ、いいんです。
飲んでくれる人もいませんし・・・
ところでキュルルさんの おうちは見つかったんですか?」
キュルル
「・・・」
カラカル
「明るくて、優しくて、暖かな場所…
このジャパリパークが僕のおうちなんだぁ! ・・・だっけ?」
イエイヌ
「!」
キュルル
「///」
カラカル
「もしかして照れてんの?」
キュルル
「なんか今更 恥ずかしくなってきた…」
カラカル
「もっとみんなの役に立てる事を探したい!
もっと一緒に冒険したいんだー!」
キュルル
「やめてー!」
サーバル
「っていうことだからさ、イエイヌも一緒に行かない?」
イエイヌ
「!」
カラカル
「サーバルにしてはいいアイデアじゃない」
サーバル
「もう、またぁ! 素直に褒められないの?」
イエイヌ
「いえ、遠慮しておきます・・・」
サーバル
「え~!?
いろんなフレンズとお友だちになれるし、きっと たーのしーよ?」
カラカル
「ちょっと。
嫌がってるのを無理に連れ出したって楽しめないわよ」
キュルル
「そうだね。 僕たちじゃルフ〇先輩のようにはいかないよね…」
サーバル
「うーん、そんなもんかなぁ…」
カラカル
「じゃあ、そろそろ行きましょ?」
キュルル
「また来るよ」 ノシ
そう言うと一行は帰って行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イエイヌ
「ジャパリパークが僕の家…か。
ご主人様と同じことを言うヒトがいたなんて・・・」
イエイヌは金庫から1枚の絵を取り出す。
最近は、その頻度も上がってきている気がする。
そうしないと『ご主人様』の顔も、想い出も、時間と共にどんどん薄れていくようだったからだ。
この色褪せてきた絵のように・・・
園長
「イマドキくん、まだ残っていたんですか?」
イマドキ
「・・・」
園長
「完全退去の期日は明日ですよ?」
イマドキ
「・・・」
園長はチケットを2枚取り出す。
園長
「今夜、最後の貨物便、そして明日の飛行機が人員の最終便になります。
どちらかでパークを・・・」
イマドキ
「何でですか!?
どうして僕たちだけで逃げるんです? フレンズを見捨てて!」
園長
「それなら何度も説明したでしょう。
これはもう、決定事項です」
イエイヌ
「あの~」
イエイヌが入って来た。
イエイヌ
「大丈夫ですか? 隊長」
園長
「ああ、イエイヌさん。
用事があるのは僕です。
・・・ ちょっと場所を変えましょうか」
園長とイエイヌは、打ちひしがれている僕をおいて部屋を出た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕は、園長室から出てくるイエイヌを待ち伏せし、一緒にパークを出ようと提案した。
イエイヌは思いのほか、あっさりと了承した。
正直、拍子抜けだった。
イエイヌ
「つまりは、お別れってことですね」
イマドキ
「・・・」
イエイヌ
「退去命令が出たんでしょ?
だったら隊長は、おうちにおかえりになるんですよね」
隊長
「ジャパリパークは僕の家だよ!
今となっては・・・」
イエイヌ
「パークを第二の故郷みたいに思ってくれるのは嬉しいです。
でも、ご家族が待っているんでしょ?
本来 帰るべき場所があるなら、そこに帰るべきです」
隊長
「フレンズたちと・・・君と別れるのはイヤだ!
・・・ そうだ、一緒に行こう!」
イエイヌ
「聞き分けの無いこと言わないでくださいよ」
隊長
「君の聞き分けが良すぎるんだよ!」
イエイヌ
「イヌ科の動物には『上下関係』がありますから。
私が
隊長
「そんなマジレス要らないよ。
それとも僕のことなんて、何とも思ってないのか?
別れるのは寂しくないのか?」
イエイヌ
「寂しいに決まってるじゃないですか。
でも命令には従わなくては・・・」
~貨物船~
イエイヌを家に連れ帰ったら家族は驚くだろうな、とか
追っ手から身を隠しながらの逃避行・・・なんて駆け落ちみたいだな、とか。
そんな夢想は文字通り2行で終わる程度の夢物語でしかなかった。
警備隊長
「フレンズを連れての密航は違法行為だと知っているはずだが?」
船が出航して一安心・・・と思っていたら、
大捜索が始まり、あっさり見つかってしまった。
どうしてこんなに沢山の警備員が?
警備員
「隊長、船内をくまなく探しましたが、ビーストは居ません」
警備隊長「そうか、ごk…
トワ「ご苦労様です」
警備隊長
「!? どうしてここに?」
イマドキ
「園長!?」
トワ
「なかなか博士が口を割ってくれなくて・・・
あなた方には ご足労を掛けました。
パーク外に出ていないことさえ上に報告できれば、なんとか恰好は付きます」
警備隊長
「そんな報告はパークに居ても受けれるでしょう。
あと、これは当然の仕事をしたまでですから。 労いの言葉など必要ありません」
トワ
「あなたは最後まで仕事熱心ですねw
私は、彼がチケットを忘れたので渡しに来たんです」
そう言うと『フレンズさんと うきうきクルーズ♪ 遊覧チケット』をイマドキに手渡す。
警備隊長
「貨物船で!?
しかも、こんな状況下で!?」
警備隊長は訝しんでいる。
当然だろう。
園長の言い分は明らかに苦しい。
法を逸脱している、と言われても文句は言えない。
イマドキ
「一体どうして?」
チケットを受け取りながら僕も疑問を口にする。
トワ
「そりゃ、園長室の前で喋ってたら筒抜けですよ。
出るに出れなくて困りましたよw」
イマドキ
「あ~! 移動するの忘れてたぁ!」
イエイヌ
「叙述トリックぅですかねぇ…」
警備隊長
「そんな良いもんじゃない! どうせ、うっかり作者の書き損じでしょ?
あと、メタギャグを挟んでる場合ですか!」
トワは深々と頭を下げながら言った。
「すいません。
でも、こんな時だからこそ・・・
ここは2人の思い出作りに協力してやってくれませんか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
~船長室~
本来いるべき主の居ない、二人きりの船長室は居心地が悪かった。
どういうわけか、まるですべての責任が自分の肩に掛かっているかのような重圧を感じる。
園長は、僕たちをここに案内すると、
「どうするか決まったら指示を下さい」
とだけ言って出て行った。
イエイヌは期待を込めた目で僕の命令を待っている。
僕の考えは浅はかだった。
園長はそれをすべて見抜いた上で、リスクをしょって、僕たちのために ここまでしてくれた。
ロスタイムを工面してくれた園長には、ただただ感謝しかなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
現実は厳しい。
げんじつちほーに連れ帰ったとしても、ちっぽけな僕の力では、とても幸せにはしてやれないだろう。
博士たちも『合わないちほーでの暮らしは寿命を縮める』と言っていたじゃないか。
それなのにイエイヌと別れたくないというのは、僕個人のワガママでしかない。
ヒトのエゴで笑顔を曇らせるなど本末転倒だ。
ここにきて、やっと自分の想いに気付いた。
『イエイヌにはいつも笑顔でいて欲しい!』
それがすべてだ。
本音を言えば寂しいけど、そのためには隣にいるのが自分でなくてもいい…
代わりに誰かが守ってくれるなら・・・ 僕は遠くから祈ろう。
そう。
『帰るべき場所』があるなら、きっとそこに帰った方が良いのだ。 お互いに・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕は、そのまま貨物船で帰途に就くことにした。
園長には、避難用ゴムボートでイエイヌをパークへ送り届けてもらった。。
『
思っていたのとは かなり違う形とはいえ、ヒトが帰って来てくれたこと、
なぜかビースト(?)さんが一緒にいること、
そして何より・・・
ともえ
「だから明日、博士の所に習いに行こう!」
・・・長い間なかった出掛ける『予定』があるということ。
その晩、私は「ピクニック」の前の日のように興奮していて、なかなか寝付けませんでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ともえ
「はい、 ・・・で行きますんで」
どこからか声が聞こえます。
そう言えば、昨日から ともえさんたちが泊まっていたんでしたね。
イエイヌ
「おはようございます。 早いですね」
ともえ
「おはよう。 ・・・ちょっとね」
そう挨拶を交わしたものの、リビングには ともえさん一人しかいませんでした。
一体誰と話していたんでしょう?
ともえ
「お散歩にでも行こうか」
イエイヌ
#「え?」
思わずしっぽが疼きます。
でも・・・
イエイヌ
「アムトラさんが…」
まだ寝ているようですが,顔が見えないせいもあって、なかなか警戒心が解けません。
ともえ
「アムトラちゃん、朝はゼンゼヨワイーからねー
しばらくは寝かしておいてあげよう。
それよりあたしと散歩には行きたくない?」
またです。
ともえさんは なぜか私の意思を確認します。
命令するか、せめてリーダーシップを取ってくれた方がこちらとしても楽なのですが・・・
イエイヌ
「いえ、お願いします」
ともえ
「・・・
じゃあ行こう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お散歩に出てもギクシャクした空気は続きました。
ともえ
「あたし生まれたばかりでパークには詳しくないから、イエイヌちゃんの行きたいところでいいよ」
そう言って先を歩いてくれません。
仕方なく近くの広い空き地でフリスビーを投げてもらおうとしたのですが、
ともえ
「えいっ! あれ…?」
思うように飛びません。
ともえ
「ごめんね。 お絵描きだったら自信あるんだけどなぁ…」
ヒトは投擲能力に優れているのではなかったのでしょうか?
そういう疑問が浮かびましたが、得意なものはフレンズによっても違います。
照れ笑いを浮かべながらとはいえ、謝られると何も言えません。
その日は気まずい雰囲気のまま帰ることにしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おうちに帰るとアムトラさんはまだ寝ていました。
ともえさんは「ほらね」とばかりにウィンクしました。
ともえ
「よし! 朝ごはんを食べに行こう!」
イエイヌ
「え…?」
ジャパリまんを運びかけていた私は、衝撃の光景を目にします。
ともえ
「アムトラちゃん、起きて。
出掛けるよ?」
ともえさんはアムトラさんの体をゆっさゆっさと揺さぶっていました。
イエイヌ
「アワワワ…」
大型のネコ科(しかも元ビースト)の寝起きを邪魔するなんて命知らずな…
噛まれたりしたらどうするんでしょう?
アムトラ
「う…ん・・・ 何だ、朝っぱらから。
勝手に行けばいいだろ?」
どうやら目を覚ましてはいたものの、
起き上がらずにいたらしいアムトラさんは無下に断ります。
ともえ
「ダメだよ。
この企画にはアムトラちゃんが必要不可欠なんだから!」
片腕を掴み、無理にでも連れて行こうとします。
アムトラ
「あ~ 分かった。 分かったから引っ張るな!」
アムトラは根負けしたのか、面倒くさそうに起きてきました。
ともえ
「よーし! かばんさんの家に出発進行ジャパリパーク!」
・・・ ・・・ ・・・
OPが始まるでもなく、3人でポーズをキメるでもなく・・・
私は呆気に取られていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
博士
「かばんが『いつでも連絡してきてね』と言ったからといって、
朝も早くからボスウォッチを掛けてくるとは何事です。 まったく」
助手
「非常識にもほどがあるのです。 まったく」
かばん
「まあまあ。 一応アポを取ったんですからいいじゃないですか」
ああ。 朝のは そういうことだったんですね。
それにしても・・・
博士
「しかも紅茶の淹れ方を教えてやって欲しい、ですか?」
そっちは話を通していたわけじゃなかったんですね・・・
ともえ
「ホントは私がメインの予定だったんだんですけど、ちょっと事情が変わって・・・
なのでイエイヌちゃんだけですけど、お願いします」
助手
「こっちの事情はお構いなしですか・・・」
ともえ
「ーというわけなんだけどいいかな?
イヤなら断ってくれても・・・」
また・・・
ともえさんは私に尋ねます。
博士
「・・・ 許可を得る順番が間違ってませんか?」
でも、ともえさんが望むのなら・・・
イエイヌ
「お願いします。
私に紅茶の淹れ方を教えてください」
助手
「・・・ いいでしょう
ただしパークの掟は『ぎぶ&ていく』
対価としてジャパリまんを寄越すのです。
とりあえず2つもあれば・・・」
かばんさんは、さっきからアムトラさんの尻尾を眺めたり、モフモフしていました。
それでいて時折、野生開放しそうな目でこちらを見ています。
アムトラさんは迷惑そうに、されるがままになっていました。
イエイヌ
「あ・・・ 今、手持ちのモノは…
おうちに帰r…」
ともえ
「無一まんのあたしに対価を要求するんですか?」
ともえさんが、そう言って私のセリフを遮ります。
私は驚きました。
そこまで物怖じせず、長にズケズケものを言うフレンズなど聞いたことがなかったからです。
博士たちも一瞬、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていましたが、
博士
「・・・ 前払いが基本なのですが、確かにお前の言うことも一理ありますね」
助手
「・・・ 出世払いでいいでしょう。 ツケておいてやるのです」
話は付いたようですが、見ているこっちの方がヒヤヒヤします。
ともえ
「ありがとうございます。 じゃあイエイヌちゃん頑張ってね。
かばんさん、お願いします」
そう言うと、外に出て行きました。
かばんさんはアムトラさんのしっぽを名残惜しそうに見ながら、付いて行きました。
ようやく解放されたアムトラさんは体をほぐすように伸びをすると、
「寝直す」
と仏頂面で言い、そのまま床に寝そべろうとしましたが、
博士「そんなところで寝ないのです」
助手「部屋があるので、好きに使うのです」
そう言われて、奥に行きました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イエイヌ
「今までは、その辺で拾った色の似た枯れ草なんかを・・・」
博士
「それでは美味しくないはずなのです。
これからは、言えば分けてやるのです」
イエイヌ
「ありがとうございます!」
助手
「紅茶は発酵させたツバキ科の葉を使うのが基本なのです。
アルパカはハーブティーも手掛けているようですが・・・」
イエイヌ
「アルパカ…さん?」
博士
「我々の一番弟子なのです」
助手
「ジャパリカフェのマスターなのです」
イエイヌ
「ジャパリカフェ・・・」
博士
「こうざんに店を構えているので、興味があるなら行ってみるのです」
助手
「お客が増えると喜ぶのです」
おうちに帰ると、博士たちからもらった葉で早速#紅茶を淹れてみました。
ともえさんはニコニコしながら美味しいと言ってくれました。
アムトラさんは・・・相変わらず無表情でしたが、残さず飲んでくれました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
私は思い切って、お願いしてみることにしました。
イエイヌ
「あの・・・」
ともえ
「なに?」
イエイヌ
「ジャパリカフェ?…に行ってみたいのですが・・・」
ともえ
「その気になってくれたんだね。 嬉しい!
うん、うん。 どうぞいってらっしゃい」
イエイヌ
「え…?」
としょかんの時のように連れて行ってくれると思った私は、戸惑いました。
ともえ
「ん?」
・・・ そんな気はさらさら無いようです。
でも勝手に期待をしておいてそれを押し付けるのも、おこがましい気がしました。
イエイヌ
「いえ… 行ってきますね」
ともえ
「お留守番は任せて!」
私は初めての場所に一人で行く不安を抱えながら出掛けることになりました。
ともえ「はい、そうです。 はい・・・」
どこかにボスウォッチを掛けているのが聞こえていました。
きっと私なんかと出掛けるより大事な用事があるのでしょう・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
#アルパカ
「いやぁ 待ってたよぉ~」
イエイヌ
「え・・・?」
アルパカ
「今日はメイドカフェデーなのぉ~
でもトキちゃんもショウジョウちゃんも都合が付かないらしくてにぇ~
お手伝いしてくれるなんて助かるな~
はい、イエイヌちゃんの衣装はコレにぇ~」
店に入った途端、畳みかけるように喋り掛けられ、
沸き上がった疑問も差し挟む余地がありません。
あれよあれよとメイド服?…を #着付けられてしまいました。
アルパカ
「ふわぁ~ かわいいにぇ~ すんごい似合ってるゅぉ~」
イエイヌ
「///」
そうこう言っているうちに・・・
「こんにちはー」
「私いつものねー」
「あれ、今日はメイドデーだったんだ。 かわいい~」
「なになに? 新人ウェイトレスさん?」
開店と同時に次々フレンズが訪れ、あっという間に店はいっぱいになりました。
アルパカ
「はい、紅茶を1番テーブル」
「ハーブティーはテラスのお客様ね」
「3番テーブルのカップを下げてきてくれる?」
先ほどのゆったりした喋り方と、ほーげん?はどこへやら。
仕事モードのマスターは、てきぱきと指示を飛ばします。
私は慣れない作業に、終始てんてこ舞いでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アルパカ
「大変だったでしょ~ お疲れ様~」
閉店後、アルパカさんは そういって紅茶を淹れてくれました。
イエイヌ
「ふぁぁ~」
とても美味しくて、知らず知らず張り詰めていた力が、体じゅうから抜けました。
アルパカ
「疲れが取れるお茶だょ~
いやぁ~ おかげで助かったゅぉ~
後で、ともえちゃん?…にもお礼を言っとかないとにぇ~」
イエイヌ
「? どういうことですか?」
アルパカ
「ボスウォッチで『イエイヌちゃんが来るから紅茶をごちそうしてあげてね』
って連絡もらってにぇ~
今日は忙しいからって言ったんだけど、
『じゃあイエイヌちゃんが、いいって言ったら、お店体験をさせてあげて下さい』
って言ってくれてにぇ~
あら~? そう言えばお手伝いしてもらえるか聞いてなかったにぇ~
ごめんにぇ~」
イエイヌ
「いえ、大丈夫です。 楽しかったです」
ああ、そんな話を通してくれていたんですね。
相変わらず、私の了承は得ていませんが…
アルパカ
「それじゃあ良かったよぉ~
今度はお客さんとして来てくれると嬉しぃな~」
イエイヌ
「はい。 ぜひ!」
アルパカ
「あとコレ。
頑張ってくれたお礼にあげるゅぉ~」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おうちが近付くにつれ、なぜか緊張してきました。
今まではずっと独りで「待つ側」でしたし、
どこかに出掛けたとしても「誰もいない家」に帰るだけだったからです。
イエイヌ
「た… ただいま帰りました」
自分の家なのに、そ~っとドアを開け、恐る恐る声を掛けます。
ともえ
「おかえり~」
ゾクゾク…
なんでしょう? この感覚は…
いつも「言う側」だったので違和感があります・・・が、
ともえ
「ほら、アムトラちゃんも」
アムトラ
「・・・ おかえり…」
ゾクゾク…
くすぐったいような、むずがゆいような・・・
でも決してイヤ感じではありませんでした。
私はカフェに通うようになりました。
お客さんとして、そして忙しい時はウェイトレスもしました。
トキさんやショウジョウトキさんが居る時は、
厨房に入って紅茶の淹れ方を教わることもありました。
そして・・・
おうちに帰ると、ともえさんたちが「おかえり」を言ってくれました。
出迎えてくれる人がいる、というのがこんなに温かいとは思っていませんでした。
久しぶりに「あの日」の夢を見ました。
夕焼けの中で「お別れ」をしたあの日・・・
私は久しぶりに金庫を開けて「例の絵」を眺めていました。
ともえさんたちが来てからというもの、いろんなことがあって・・・
忘れていました。
指示を守ろうと。 ヒトが帰るのを待ち続けようと。
決めたはずだったのに。
それでも思い出は色褪せていってしまいます…
この絵のように・・・
私も、こうやって変わっていってしまうのでしょうか?
変わっていくということは・・・
https://www.youtube.com/watch?v=Om3MTou2kPg六兆
貨物船でパークを脱出しようとして、
夕焼けの中でお別れをした「あの日」の夢・・・
窓から見ると夕方、日は傾きかけていました。逢魔 が刻 」と言うんでしたか…
確か「
私は久しぶりに金庫を開けて「例の絵」を眺めました。
この絵を出すのを忘れてしまうほど、最近は いろんなことがありました。
絵は、更に色褪せたように見えました。
私も、こうやって変わっていってしまうのでしょうか?
変わっていくということは・・・
悪いことなのでしょうか?
何でもないって言ってるだろ!?
声が聞こえてきました。
アムトラさんのようです。
私は絵を金庫に仕舞うとリビングに向かいました。
フレンズになる前のオレの記憶は曖昧だ。
気が付いた時には檻の中だった。
何かを持つヒトの、オレを見る目はいつも暗く冷たかった。
痛みは、とうに麻痺している。
何かが体の底から こみ上げてきて意識は飛ぶ。
そんな毎日が ある日、唐突に終わりを告げる。
夕焼けの中、そのヒトは檻を壊し、鎖を切り『キミはもう自由だ』と言った。
逆光で顔も見えなかったソイツとはそれっきりだった。
その後の記憶も曖昧だ。
オレは感情の赴くまま暴れていた、らしい。
だが、フレンズが怯え・悲しみ・警戒に満ちた目でオレを見ていたのは覚えている。
だから正気に戻ったとしても、誰もオレを受け入れるはずなどないと思っていた。
そもそも自分がそれを許せなかった。
でもアイツに会って、変わった。
周りが見えるようになった。
自分が少し分かるようになった。
イエイヌの目からは警戒心が消えた。
博士たちは子供を見守るような目でオレを見ている。
かばんは愛おしい(でいいんだよな)目でオレを見る。
ともえは・・・
変な時間に目が覚めてしまった。逢魔 が刻 」と言うんだったか…
フラフラとリビングに入ると、窓から夕日が差し込もうとしていた。
確か「
そんなことを考えていると、逆光の人影に そう声を掛けられた。
アムトラ
「・・・
何でもない」
ともえ
「でも顔色が悪いよ?」
アムトラ
「何でもないって言ってるだろ!?」
コイツは、時折こんな風に心の距離を詰めてくる。
いつもは捕まえたいのか突き放したいのか迷っている内に離れていくのだが・・・
あんな夢を見たせいか反射的に拒絶してしまった・・・
気まずい雰囲気が漂う。
ともえ
「・・・
ああ~ なんか足が冷えるな~」
ーと思ったのはオレの方だけだったらしい。
ともえはオレの気も知らないで、床に正座すると、
太ももをポンポンと叩きながら唐突にそんなことを言い出した。
アムトラ
「そんなに寒いならイエイヌに毛布でも持ってきてもらえばいいだろ?」
そのまま突っぱねたままでも良かったのだが・・・
いつの間にかコイツのペースにハマってしまう。
ともえ
「それじゃあ温かくなるまで時間が掛かるじゃない。
人h… フレンズ肌が恋しいなぁ・・・ チラッ」
アムトラ
「・・・
なんで そんなにオレに構うんだ…」
ともえ
「あたしが『そのため』に生み出されたから・・・かな?」
? 何を言ってるんだろう、コイツは…
ともえ
「詳しいことは分からないけど、『何かに縛られてる』気がするんだよね。
それって本人はラクかもしれないけど、見ている側としては『なんとかしてあげたい』
って思っちゃうんだよね。
それってエゴでしかないし、そういうあたしも何かに縛られてるのかもしれないんだけど・・・」
どうしてコイツは・・・
私がリビングに入ると、ともえさんがアムトラさんに膝枕をしていました。
ともえ
「助けて…」
イエイヌ
「え…?」
ともえ
「足が痺れた・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ともえさんの体を引き抜き、代わりにクッションを差し込みました。
アムトラさんは相変わらず寝入っています。
ともえ
「寝かしといてあげよう」
足首を曲げたり伸ばしたりして痺れを取ると、
私の持ってきた毛布を掛けてあげながら、ともえさんは言いました。
何があったのか訊きたい気持ちもありましたが、なんだか訊きづらくて、
イエイヌ「そうだ、ちょっと見てもらいたいものが」
無理に空気を変えることにしました。
イエイヌ
「 #どうでしょう?
アルパカさんにもらったんですが…」
ともえ
「うひょ~ いいね、いいねぇ~!」
見るからに有頂天になった ともえさんは、どこからともなくスケブを取り出すと、前後左右はもちろん、
ミッションインポッシブルのように天井からぶら下がって(どうやって体を支えてるのでしょう?)までして、
私のメイド姿を描き始めました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イエイヌ
「あの・・・」
しばらく経って、
今は車の修理工のように床に仰向けに寝そべって描いている ともえさんに声を掛けました。
イエイヌ
「お願いがあるんですが・・・」
ともえ
「なになに?」
イエイヌ
「ともえさんのこと『ご主人様』って呼んでもいいですか?」
途端に空気が凍り付きました。
ともえさんはスケブを閉じると、私の広げた足の下から出てきました。
ともえ
「それってマジのやつだよね? 『ごっこ』じゃなく」
珍しく真顔で訊いてきました。
その真剣な様子に押され、声が小さくなってしまいます。
イエイヌ
「はい…」
短い間でしたが、一緒に暮らしてみて、
「このヒトの命令なら聞いていける」
そう思って提案してみたのですが・・・
ともえ
「・・・ それは勘弁して欲しいかな?
あたしはイエイヌちゃんと主従関係を結びたいわけじゃないんだよ」
イエイヌ
「・・・」 (´·ω·`)
ともえ
「あ… ごめんね」
そう言うと、いそいそと外へ出て行ってしまいました。
捨てられた犬のように突っ伏しているとアムトラさんが起きてきました。
アムトラ
「どうした」
イエイヌ
「ともえさんを怒らせてしまいました。
もう帰ってこないかもしれません。
ごめんなさい…」
アムトラ
「何があったか知らんが・・・
アイツなら戻ってくる」
私なんかより よほど信頼関係を築いている自信があるから言えるセリフ、でしょうか?
イエイヌ
「どうしてそんなことが言えるんですか?」
アムトラ
「スケブが置きっぱなしだからな」
イエイヌ
「あ・・・」
思った以上に冷静な状況判断によるものでした。
それに引き換え私は・・・
アムトラ
「それに、謝るなら相手が違う」
アムトラさんは、もし ともえさんと別れることになってもツラくないのでしょうか?
アムトラ
「アイツはお前も大事に思っている」
イエイヌ
「そう、でしょうか…?」
アムトラ
「そんなに言うなら連れてってやる。 アイツの所へ」
最初に ともえさんとお散歩に出掛けた場所でした。
ともえさんは、かばんさんとフリスビーの練習をしていました。
かばん
「ごめんね、遅くなっちゃって」
ともえ
「いえ、こちらこそ。
お忙しいのに付き合ってもらっちゃって」
2人はそんなことを言いながらフリスビーを投げ合っています。
ともえさんは見違えるほど上手くなっていました。
3人で としょかんに紅茶の淹れ方を習いに行った時、
庭でかばんさんに教わっているところを部屋から見たそうです。
私がカフェに遊びに行っている間も、ずっと練習を続けていたのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アムイヌ
「ともえさんとは どういう関係なんですか?」
練習の邪魔にならないよう、離れたところにアムトラさんと#2人で座りながら
ずっと気になっていたことを訊いてみました。
アムトラ
「分からん…」
イエイヌ
「今まで ずっと一緒だったんでしょ?」
アムトラ
「いや・・・ ついこの間、出会ったばかりだからな。
それもなりゆきで、だ」
イエイヌ
「じゃあ、どうして一緒にいるんですか?
どう思ってるんですか? ともえさんのことを…」
アムトラ
「オレだって、ぜんぜん分からん」
そもそもアイツは考えが自由過ぎて・・・
今でも何を考えてるのか…」
イエイヌ
「それは分かりますぅ」
アムトラ
「オレは あの時『終わってもいい』と思っていた。
でもアイツはそれを許さなかった。
だからと言って『そう簡単に変わっていいのか?』と思った」
そう。 私も・・・
アムトラ
「オレは楽になりたかっただけなのかもしれない。
だがらといって、逆に自由を与えられてもどうしていいいか分からない」
わたしも『自由にしていい』と言われて不安に思ったものです。
ともえ
「だから一緒にこれからを考えよう!」 \(^o^)/
イエイヌ
「ともえさん…」
アムトラ
「終わったのか?」
ともえ
「なんで驚かないの!?」 \( ゚Д゚) /
むしろ ともえさんの方が驚いています。
イエイヌ
「私は耳が良いので…」
アムトラ
「匂いで…」
ともえ
「2人は感覚が鋭いフレンズなんだね!」
ともえ
「あたしの前世は一部界隈で『忌み子』扱いされてた。
そこから生まれたあたしも所詮イレギュラーな存在・・・
このSSの『I』には『if』と『imigo』『irregular』っていう意味が込められてたんだよ」
突然、重くてメタな話が始まりました。
ともえ
「もう1つ。
このSSのメインタイトルだけど、普通は『けものフレンズ2 if』とかだよね。
なんで『2』の前に『I』を突っ込んだか分かる?」
イエイヌ
「それって重要なんですか?」
アムトラ
「どうでもいい…」
ともえ
「I+2=Rに見えるから、なんだよ」
イエイヌ
「つまり、この3人の配役は仕組まれたモノだったんですね」
アムトラ
「よく こんな話に付き合えるな…」
ともえ
「みんなを救済したいっていう気持ちは本当だよ。
それには『縛られているモノ』からの解放が必要だと考えた。
だからサブタイからも『べき』を外してもらったんだ」
イエイヌ
「メタ過ぎますぅ!」
アムトラ
「何者なんだ、お前は…」
ともえ
「あたしは最低限のルールやマナーを守った上での二次創作は、もっと『自由』でいいと思ってるだけだよ」
イエイヌ「・・・」
アムトラ「・・・」
ともえ
「さて。 これからどうしようか?
パークに帰る? それとも
おうちを探検する?」
アムトラ
「やれやれ…」
イエイヌ
「どっちも一緒じゃないですか」
ともえ
「あと・・・
なんだったらブロングホーンさんに裏から手を回して
ゴマちゃんを加入させることも検討中だから」
イエイヌ
「ホントにやりそうで怖いですぅ」
アムトラ
「自由すぎるだろ」
ともえ
「そりゃあ、けものフレンズRはリバティーの『R』でもあるからね」
アムトラ
「・・・
ん?」
イエイヌ
「あの・・・
自由を意味するLibertyの頭文字は『L』ですよ?」
ともえ
「・・・
ヒトのフレンズだって、みんながみんな叡智に溢れるってわけじゃないんだよー!」
ボスウォッチ
「その辺はボクがサポートするヨ」
イエイヌ
「ウワァァァ! ボスがシャベッタァァァァァ!」
ボスウオッチ
『アワワワ…」
アムトラ
「ホントに大丈夫なのか? このチーム…」
~おわり~