飼育員が見付けに来る間、ヤマバクはベンチで待つことにしたが
昨日は遅くまで起きていた為に座ると眠気がやってくる。
さすがに今寝るわけにはいかないので、眠気を紛らわす為にヤマバクはオイナリサマに話し掛けた。
「オイナリサマ、“しゅごけもの”って何なんですか?
フレンズになってから結構経ちましたけど初めて聞きました」
「守護けものはこのジャパリパークを守護を担う特別なフレンズ達の総称です。
みんなが笑顔でいられるようにジャパリパークの平穏を守っています」
「守護けものって大変そうですね」
「ええ、ですがとてもやりがいがあるのですよ。
みんなの笑顔といなり寿司が私の元気の源です。
ジャパリパークの平穏を守り続けていれば、いつの日か“あの人”も……」
オイナリサマは微笑みながら語ってはいたが
あの人と口に出した時、その目には何処か寂しげな光を湛えていた。
「……わたしも守護けものって名乗ったらなれるんですかね?」
「自称したからと言ってなれるものではありませんよ。
文武両道、才色兼備でなければなりません。私のように」
「なるほど!つまり、変……面白いフレンズじゃなけれなダメなんですね!」
「今、変って言いましたよね?」
「イッテナイデス」
「……ま、まぁ良いでしょう」
偉大なる守護けものは変と言われたくらいで怒るほど器は小さくはないのだ。
程無くして辺りをキョロキョロしながらヤマバクを探してる飼育員が姿を現した。
「あ、しーくいんさん!こっちですよ!」
「見付けた!」
ヤマバクの姿を見付けてほっと胸を撫で下ろして飼育員はヤマバクの方へやってくる。
「もう、勝手にいなくなって迷子になっちゃダメじゃないですか」
会って早々にヤマバクにとんでもない事を言われて、飼育員の額に僅かに青筋が浮かび上がる。
「ボク、飼育員。あなた、フレンズ。
どういうことか分かるよね?」
「?」
「こっちが保護者で勝手に居なくなって迷子になったのはヤマバクの方ー!!
このー!!」
飼育員は溢れる怒りをヤマバクのもちもちほっぺにぶつける。
今度はもちもちではなく限りなく横方向にのびのびされている。
「むぃぃぃぃぃ!びゃ!!」
のびのびされたヤマバクのほっぺが飼育員の手から解放されて、反動でゴムのようにぱちんと元通りになった。
「フフフ……」
「あ」
ヤマバクと飼育員のやり取りを見てオイナリサマがクスクスと笑いだす。
その時になって初めて飼育員はヤマバクの隣にオイナリサマが居たことに気が付いて、
先程のヤマバクとのやり取りを思い出して耳を赤くする。
「では、待ち人も来たみたいなので私はこれで失礼しますね。
あなたはこの子の飼育員なのですから、目を離してはいけませんよ」
「はい」
「あ、そうです!オイナリサマもわたし達と一緒に廻りませんか?」
「私はやることがあるのでこれで失礼します。
ジャパリ科学館、楽しんでくださいね」
ヤマバクはオイナリサマも一緒に廻るように誘ってはみたが、
何やらオイナリサマは用事があるのかこの場から立ち去ってしまった。