本文17
男は両手で銃を構え、その銃口をフェネックへと向けた。息が上がり、鼻から出血しているが銃を構える手に震えは無かった。
男「動くなよ...!ここで発砲すればどうなるか位わかる筈だ...!」
そう言って男は欠けた前歯を見せて投げやりに笑う。
カレント「・・・・・・・・」
カレントはじっと男を睨み付けたまま動かない。
そんなカレントを見て男は不快そうに眉を潜めた。
男はこの状況でカレントが焦りを見せない事にも動揺したが、何よりカレントの殺気が男を焦らせた。
男「おい女!いいか。ゆっくり手を上げろ...!」
フェネック「・・・・・」
正体がバレていない事に安堵しつつ、フェネックはゆっくりと手を上げた。
周囲の野次馬達はざわざわと動揺した様子で何か話したりスマートフォンで現場を撮影したりしている。
誰も通報しようとはせず、黙々と写真や動画を撮っている光景は現代社会ならではと言った所だろうか。
そんな野次馬達に苛立ったのか、男が空に向かって一発威嚇射撃をした。辺りから悲鳴が上がる。
男「だまれ!少しでも騒げば命はないと思え...!」
野次馬達は皆唾を飲み込んで押し黙った。そんな緊迫した状況の中、カレントは呆れたようにため息をついて腰のホルスターからSAAを抜いた。
野次馬達がまたもどよめく。
男「おい!なにしてる!?さっさと銃を捨て....」
男が叫び終わる前にカレントはSAAを持った腕を真っ直ぐ伸ばし、男に銃口を向けた。
男が唾を撒き散らしながら叫ぶ。
男「お、おい!ここにいるやつらがどうなってもいいのかッ!?」
カレントは銃を構えたまま肩をくすめた。
カレント「あいにく今日は休暇中でね。"善良な市民の皆様をお守りする義務"なんてものは持ち合わせていないのさ」
男「ぐ...」
丁度時を同じくしてカレントを追っていたサクヤ達が現場に到着した。野次馬を押し退けて前へ出る。
サクヤ「すいません!少し退けてください」
アド「すみません...」
やっとの思いで前へ出るとすぐ目の前に銃を構えたスーツ姿の男がいた。
男が構えた銃の先には例の彼と共に屋の上を走っていた女性がいる。
サクヤ(本物の銃!?このジャパリパークで...!?)
アードウルフが何かを指差して小声で言った。
アド「サクヤさん...!あれを...!」
サクヤ「ん....?あ、あの人は...!!」
アードウルフの視線の先にはスーツの男に銃を構えた例の彼がいた。
サクヤ(あの人も銃を!?一体どうなってるんだ!?)
サクヤは目の前で起きている事態が飲み込めなかった。こんな光景は午後にテレビでやっているドラマでしか見たことがない。
こうやって間近で目撃している今も現実感なんて物は無かった。きっと他の野次馬達もそうなのだろう。
事態は飲み込めなかったが、フードを被った女性が危険な状況だと言うことは理解できた。
アド「ど、どうすればいいんでしょうか...!?」
サクヤ「とりあえず、なんとか助けを呼ばないと....!」
周りの野次馬達は皆、釈然としない恐怖と混乱でただ突っ立っているだけだった。
スーツの男が叫んだ。
男「ふざけるのもいい加減にしろ...!その女を撃ち殺すぞ!」
カレント「・・・・・・・」
カレントは黙って男に銃を構えたまま、表情は変えずに頭をフル回転させる。
カレント(考えろ...!考えるんだ...!!この状況で怪我人を出さずに奴を拘束する方法を...!!)
男が癇癪を起こして発砲するのも時間の問題だった。
サクヤ(僕がなんとかするしかない...!)
サクヤは意を決したように目を閉じてゆっくり息を吐き出した。
サクヤ「アドちゃん。ここを抜け出して助けを呼んできて...!」
アド「サクヤさんは...!?」
サクヤ「僕はここに残るよ....!!」
アド「そんな...!危険です!一緒に...!」
不安そうなアードウルフにサクヤは優しく笑いかけた。
サクヤ「僕は大丈夫だから。さぁ...ここから早く逃げて...!」
アド「・・・・・・わかりました..!」
サクヤ「頼んだよ!」
サクヤは野次馬の間を縫って消えて行くアードウルフを呼び止めてこう言った。
サクヤ「助けをよんだら、君はこの町の展望台で待ってて。必ず行くから!」
アードウルフが頷いたのを確認してサクヤは満足そうに微笑んだ。
サクヤ(これでアドちゃんを危険な目にあわせずに済む...)
サクヤ「でも...どうやってこの状況を打破すれば...!?」
サクヤは再びカレント達の方を向いて、やり取りに耳をかたむける。
カレントは余裕の表情で男に語りかけていた。
カレント「まぁそうイライラするな。人間は苛立つと注意力散漫になるし、判断力も鈍る。」
男「いい加減黙らないと...!」
カレント「そのうち、誰かに隙を突かれちまうかも知れないぜ?」
そんな軽口を叩くカレントの視線が野次馬達を見ていることにサクヤは気付いた。
サクヤ(誰かに隙を...?・・・・ッ!!そうか!!)
一方野次馬達を見ていたカレントもサクヤのハッとした表情を見てニヤリと笑った。
男「おいッ!何がおかしい!」
カレント「いや。そろそろお前も年貢の納めどきだと思ってな」
カレントはサクヤにアイコンタクトを送った。サクヤもそれに応える。
男「なに..?」
カレントは銃を構えたまま空いた手で器用にタバコを一本取り出してzippoで火を点けた。
カレント「忠告しよう。お前が怒りに任せて発砲しようとしたその時、お前の敗北が決定する」
男「この状況で俺が負ける?ハッ!寝言は寝て言えよ」
カレント「そうだ"この状況だからこそ"お前は負けるんだ...!」
男がまた苛立ったのが分かった。サクヤはその時に備えて身構えた。
胸に手を当てて呼吸を整える。
サクヤ(大丈夫..覚悟は決めたんだ...!落ち着いていこう...)
呼吸を整え、サクヤは目を見開いた。
サクヤ「よし!やってやるッ!」
To Be Continued
BGM的に粋なイノシシが突っ込んできそう
サクヤ君のシーンでゼノブレBGMとは…!(感涙)
やはりサクヤ君にはゼノブレBGMが似合うと思いましてね
???「穏やかじゃないですね」
(このセリフしか知らない)会話中は待ってくれるセルリアンであってもヒトであっても
それがジャパリパーク
どんなに緊迫した状況でも会話中やいいシーンでは攻撃しないのはある種物語のテンプレですからね(苦笑)
(暴れん坊将軍で敵の兵が自分の順番まで構えたまま待っている等)
特にジャパリパークの敵達は空気を読んでくれるようです(笑)
緊張感ありますね!フェネックを無傷で救うことができるか!?
てか相方ピンチなのにアライさんなにやってんだそこに気付くとは....さすがですね葉月さん。
それは次回かその次位をお楽しみに~!!