本文6
カレント「よし...これで何とか走るだろう。」
バスのジョイントを客席部分と接続してカレントが額の汗を拭った。
カレント「おいおい、大丈夫か?」
そう言って苦笑するカレントの視線の先では、汗だくのトワが木陰にへたれこんでいた。
トワ「だ、大丈夫...です..」
カレント「ほれ、水だ。」
トワ「ありがとうございます...」
トワはカレントからペットボトルを受け取り、勢いよく飲み干した。
トワ「なさけないです...バスをここまで押してきただけなのに...」
カレント「まあ、その体格のわりには頑張ったんじゃないか?なかなかのガッツだ」
その言葉を聞き、トワは少し思い詰めた表情でうつ向いた。
トワ「・・・・カレントさん..やっぱり弱いですね...僕。」
カレント「....どうした?」
トワ「僕、今日初めてセルリアンと戦ったんです..」
カレント「・・・・・」
トワ「今まで、フレンズのみんなの方が強いから、自分なんかが戦っても...。そう思ってました...」
カレントは黙って聞いている。
トワ「彼女達も、嫌な顔ひとつせず、戦ってくれてました。だから...だから今日、自分が戦うまで気付けなかった...!」
顔を上げたトワは泣いていた。
トワ「セルリアンと戦う恐怖に気付いてあげられなかった!!」
カレント「・・・・・」
トワ「彼女達だって、旅の途中何度も危険な目にあっている...!きっと彼女達も同じように怖かったはずだ!」
カレントはじっとトワを見ていた。
トワ「でも...彼女達は..っ..危険な目にあっても、傷ついても、いつも戦ってくれていた...」
カレント「・・・・・」
トワ「自分はそんな事も知らずに...!」
くやし涙が頬をつたい、地面へ流れ落ちた。
カレント「トワ....」
トワ「カレントさん...僕、カレントさんのように、強くなりたいです...」
トワは突然、カレントに土下座した。
カレント「お、おい...!」
トワ「おねがいじまずッ!僕....いや、俺に稽古をつけてくだざいッ!彼女達が怖い思いをしなくてすむように!女達を守ってあげられるようにッ!!」
カレント「プッ!」
トワ「!?」
カレントは突然吹き出し、大笑いし始めた。
カレント「まったく、お前は不思議なヤツだよ。トワ。さっきセルリアンをやった時にはあんなに殺気立ってたくせに、終わってみれば"怖い"とは!」
トワ「さ、さっきは二人を助けるのに必死で、でも後で冷静になってみると...」
カレント「それだよ。」
カレントは吸っていたタバコでトワを指してニヤリと笑う。
トワ「え...?」
カレント「彼女達も、お前と同じ気持ちだった筈だ。誰しも大切な何かのためなら恐怖を忘れられる。」
トワ「・・・・・」
カレント「だが、今日お前が気付いた事にも意味があるし、彼女達を守ってやりたいと言うのもいい心がけだ。」
トワ「じゃあ...!」
カレント「覚悟は出来てるのか?俺の稽古は厳しいぞ...戦闘の基本をみっちり叩きこんでやる!」
トワ「はい!お願いします!」
トワの声が、森に響き渡った。
To be continued