本文5
頭部を失ったセルリアンがのたうち回り、地響きと共に木々が倒れる。体格に似合わない強烈なパワーだ。
勝利を確信していたカレントだったが、セルリアンの暴れようにひきつった笑みを浮かべる。
カレント「おいおい、これはまだまだ元気そうじゃないの..?」
トワ「マズイですね...どうします?」
トワが銃を構え、カレントがホルスターから銃を引き抜いたその一瞬の出来事だった。
風を切るような音と共にセルリアンの体が切り刻まれ、消滅したのだ。
カレント「おわっと!」
トワ「これは...!」
トワにはすぐにわかった。こんな芸当をやってのけるのは彼女達しかいない。
???「ヒトだけでセルリアンをここまで追い詰めるとは、なかなかやるのです。」
???「すばしっこくて攻撃する隙がなかったので、助かったですよ。」
二つの人影は、ゆっくりとカレント達の元へ降りてきた。
カレント「今のは、君たちがやったのか...!?」
???「若干一名知った顔もいますが、一応自己紹介をしておくのです。」
空から舞い降りてきた少女は淡々とそう言った。
???「どうも、アフリカオオコノハズクのコノハちゃん博士です。賢者とも呼ばれています。天才です」
???「私はワシミミズクのミミちゃん助手です。天才博士の天才助手をやっています」
空を飛んでいた時点で分かってはいたが、二人はやはり”アニマルガール”だった。
身長は180cmのカレントの半分もないかもしれない。
おなじフクロウだからなのか、二人は色違いの同じ服を着ている。
カレント「ハハ...俺はジャック・カレント。ただの雇われパトロール隊員だ。よろしく」
カレントは強烈な二人の自己紹介に苦笑いしつつも二人に手を差し出したが、全くの無反応だ。それどころか少し後退りされた。
カレント(コイツら...!なんて失礼なヤツらだ...!!)
カレントは手を引っ込めた。顔に笑みは浮かべているものの、その額にはクッキリと青筋が浮かび上がっていた。
トワ「と、ところで二人は何でセルリアンに襲われていたの?」
場の空気を感じ取ったのか、トワが話題をかえる。
博士「山岳地帯の調査をしていた所、アイツが襲いかかってきたのです。」
カレント「調査?なんの?」
助手「アライグマの奴が、海から鳥のフレンズの姿をしたセルリアンが飛んできて、山岳地帯に飛び去ったと騒いでいたのです」
トワ「アライさんが?フレンズの姿をしたセルリアン...」
博士「それで、おもしろ...ゲフン!ゲフン!...念のため調査をしていたのです。」
トワ「・・・・・・・」
カレント「アライさん...どこかで....」
カレントは思い出した。管理センターで職員と揉めていたあの少女だ。
カレント「ああ、あの子か..」
トワ「ご存じなんですか?」
カレント「ん、まあな。それより、フレンズの姿をしたセルリアンなんてものが存在するのか?」
トワ「はい。ネコ科に1人だけ。もっとも、彼女はとても友好的で、今もフレンズのみんなと仲良く暮らしていますが...」
カレント「なるほど..アニマルガール型セルリアンが誕生する可能性はゼロではないと言うわけか」
トワ「そうですね...」
カレント「ん?まてよ...お嬢ちゃん、そのセルリアンが飛んできた海ってのは何処のことだ?」
博士「変な呼び方はやめるのです。....アライグマの話では、ここから最寄りの港とのことなのです。」
カレント「最寄りの港....事件現場とかなり近いな...」
トワ「どうしました?」
カレント「トワ、どうやらそのセルリアンについて、俺たちも調べてみた方が良さそうだ。」
トワ「たしかに...パークの治安維持を行うJPPとして、調べてみる必要がありそうですね...」
トワにはカレントの真意は伝わらなかった様だが、トワも調査には乗り気だ。
カレント「というわけで、俺たちもそのセルリアンについて調査を始めるが、お嬢ちゃん達も同行するかい?」
博士「その必要は無いのです。」
助手「我々は我々のやり方で独自に調査を進めるのです。」
カレント「...そうか。まぁセルリアンに気を付けてくれ。」
博士「そっちこそ。お前はどうやらセルリアンに襲われやすい体質の様なのです。」
カレント「? それはどういう..」
トワ「そうと決まればカレントさん。バスを起こしましょう!」
カレント「あ、あぁ...そうだな...」
カレントは博士に発言の意味を聞こうとしたが、トワの声に遮られてしまった。
トワ「じゃあ博士達、気を付けて。何か分かったら報告するよ。」
博士「こっちも何か分かったら報告してやってもいいのです。」
助手「ぐっとらっくなのです。」
そう言って博士達は再び空へ飛びさっていった。
カレント「さてと.....コイツを何とか走れる状態にしないとな...エンジンがイカれてなきゃいいが...」
泥だらけで横倒しになったバスを見て、カレントは面倒くさそうに呟いた。
ー上空ー
助手「博士、カレントとか言うあの男なのですが...」
博士「やはり気になりましたか。助手。」
助手「あの男、自分では自覚は無いようですが、サンドスター濃度が異常に高いのです。」
博士「そんじゃそこらのアニマルガールを軽く凌駕する程の高さなのです。さすがの博士もちょっとビビったですよ。」
助手「使い方さえ分かれば、アニマルガール達と同様に、サンドスターの力を使うことも出来るかもしれないのです。」
博士「面白くなってきたですね。助手。」
助手「そうですね。博士」
To be continued