本文3
しばしの沈黙のあと、カレントはタバコに火を付けた。
煙をゆっくりと吸い込み、吐き出す。
カレント「一つ、聞いていいか?」
ミライ「なんでしょう?」
カレント「何故この仕事をJPPにまわした?行方不明者や死人が出てる。これは立派な刑事事件だ。警察に任せるべきじゃ無いのか?」
カレントは射るような鋭い眼差しでミライを見つめた。
ミライ「それは...」
ミライは、言葉に詰まった。どう答えていいか迷っているようだ。
その様子を見てカレントはタバコの煙を吐き出し、眼力を弱めた。
カレント「ま、いいさ。何はともあれ、あんた達は俺を雇ったクライアント(依頼人)。下手な言及はしない。」
ミライ「ありがとうございます...」
ミライ表情が少し緩んだのが、カレントには分かった。
カレント「で、犯人についてどの程度分かってるんだ?」
ミライ「それが...まだほとんど情報が無くて...」
その言葉にカレントが頭を抱える。
カレント「調査からスタートか....」
ミライ「すみません...情報が入り次第、カレントさんにお伝えしますので...」
カレント「わかった。こっちもできる限りの事はしよう。」
ミライ「あの、それと...」
カレント「なんだ?」
ミライが申し訳無さそうに愛想笑いを浮かべた。
ミライ「パークのパトロールの方も平行してお願いしたいのですが....」
カレント「・・・・・・わかった。」
ミライ「ありがとうございます!では、これを」
先程までとうって変わって、満面の笑みを浮かべたミライがポケットから取り出したのは一枚のワッペンだった。
カレント「これは?」
ミライ「JPP隊員のあかし。JPP部隊章です。仕事の時は、これを付けて下さい。」
カレント「分かった。」
ミライ「あ!あとこれも。」
カレントに、一枚のカードが手渡された。
ミライ「カレントさんのIDカードです。このカードで、セキュリティレベル3までの施設、情報にアクセス出来ます。」
カレント「なるほど...」
ミライ「さてと、用件は以上です。お仕事は明日から始めて頂きますので、今日はゆっくり休んでください。」
カレントは苦笑し、答える。
カレント「そうするよ。昨日はバタバタしたからな。」
すると、突然ミライが何か思い付いたかのように声をあげた。
ミライ「あ!そうだ!トワさん。カレントさんに今日一日、パークを案内してあげてはどうでしょう?」
カレント「え...」
トワ「そうですね!仕事の時も、道が分からないと困るでしょうし、何よりせっかくジャパリパークに来ているんだから、観光しなきゃ損ですよね!」
当のカレントをよそに、ミライとトワは話を進めていく。
カレント「あ、いやー...べつに」
ミライ「カレントさん。私はこのあと仕事があるのでご一緒する事はできませんが、楽しんできてくださいね!」
トワ「さあ、行きましょうカレントさん!」
二人の勢いに気圧され、カレントは渋々承諾した。
カレント「わかった...」
カレントの頭に、大佐の言葉がこだまする。
ハワイに行けなかったのは残念だが、代わりにとっておきのバカンスを用意したぞ
カレントは軽くため息をつき、少し微笑んだ。
カレント「まぁ、たまには動物園観光も悪くないか」
To be continued