本文8
聞き慣れない部署に、フィリッポは首を傾げる。
フィリッポ「JPP?」
カレント「あぁ、新しくできた部署で、なんでもたった二人でこのパーク中をパトロールするらしい。」
フィリッポ「それは...ずいぶんと非現実的な部署ですネ...」
カレント「危険な仕事だからな。人が集まらなかったそうだ。」
マスター「......お待たせしました。」
マスターが無愛想に料理を出してくれた。
カレント「お!キタキタ!」
カレントは出された料理に勢いよくがっつく。
フィリッポ「....バーでそんなにガツガツ食べる人は初めてみまシタ」
そう言ってフィリッポは苦笑する。
カレント「ひょうふぁひふからふぁにもふってなかったんふぁ(今日は昼から何も食って無かったんだ)」
口の中の料理を全て飲み込み、カレントはフィリッポに問いかけた。
カレント「ところで、あんたさっき研究員と言ったな。イタリア人が日本で一体何を研究してるんだ。」
フィリッポ「私は、このパークで”けものプラズム”の研究をしています。」
けものプラズム。その単語でカレントの食事をしていた手が止まる。
カレント「けものプラズムの?あんたが?」
カレントの反応にフィリッポが少し驚いた。
フィリッポ「けものプラズムを知っているのですか?」
カレント「あぁ、知り合いの職員から聞いた。」
フィリッポ「それなら話が早い。私わ"けものプラズム"の医療利用の研究しています。」
カレント「医療利用?」
フィリッポ「
カレント「そんな事が可能なのか?」
するとフィリッポは口惜しそうにぼやく。
フィリッポ「理論上わ可能デス。しかし、けものプラズムを変化させる事が出来ない。」
カレント「どう言うことだ?」
フィリッポ「けものプラズムを外部からの干渉で変化させる方法が見つかっていないのデス。」
カレント「聞いた話では、”意思の力”で変えられると聞いたが?」
フィリッポ「...それわアニマルガールの話デス。けものプラズムを使うには、サンドスターが必要デス。しかし、ヒトは個人差はありますが、体内にほとんどサンドスターを蓄積しておくことが出来まセン。」
カレント「だったらアニマルガールに頼めばいい。」
フィリッポ「残念ながら誰かに頼まれたから。程度の動機でわ”けものプラズム”を行使することはできまセン。」
カレント「八方塞がりじゃあないか...」
フィリッポ「だからこそ外部からの干渉で変化させる方法を探しているのです。」
カレント「なるほど...」
話もすみ、食事を終えたカレントが立ち上がる。
カレント「それじゃあ、俺は行くよ。これからも頑張ってくれ。」
フィリッポ「グラッツェ、Sig.カレント。」
カレント「それと..」
フィリッポ「?」
カレント「今度会ったら俺が奢ろう。”トロイの木馬”」
その言葉に、フィリッポは表情一つ変えずにカレントに問いかけた。
フィリッポ「....何故分かったんデス?」
カレント「目だ。」
フィリッポ「?」
カレント「あんたの目は”研究者としての目”ともう一つ、”死線を潜り抜けてきた男の目”をしていた。」
それを聞いたフィリッポは満足気に微笑む。
フィリッポ「敵わないデスネ...今日は私が食事代を奢りましょう。」
カレント「悪いな。会えて良かったよ。.....また逢おう。」
フィリッポに手を振り、カレントが店を後しようとした時だった。
フィリッポ「また会いましょう。アメリカーノ!」
そう、後ろから声を掛けられる。カレントはため息を吐き出し、ニヤリと笑った。
カレント「......やれやれ、敵わんな...」