本日は谷津干潟の日であります。
1993年のこの日に、千葉県習志野市にある谷津(やつ)干潟が、
水鳥などの保護を目的とした湿地に関する国際条約
「ラムサール条約」の登録地に認定された事に因んで、
谷津干潟のある千葉県習志野市によって1997年に制定されました。
・谷津干潟は千葉県習志野市の谷津および秋津にある干潟で、
国指定谷津鳥獣保護区、ラムサール条約登録地、
日本の重要湿地500指定地に含まれております。
東京湾岸の干潟は1960年代から1970年代にかけて、
沖合に及ぶ大規模な埋め立てが進められた事で海岸線から次々に消滅し、
千葉県習志野市でも干潟の殆どが埋立地として整備され、
工業地や住宅地として開発し都市化が進められていきましたが、
習志野市谷津地先の干潟は利根川放水路計画により
旧大蔵省の所有であったために埋め立てを免れ、
埋立地の中に2本の水路(高瀬川・谷津川)で海と繋がる
人工のラグーン(潟湖)の様に残されました。当時の千葉県や習志野市は
谷津干潟についても埋め立てを希望しておりましたが、
東京湾に飛来するシギ類/チドリ/カモ類といった
渡り鳥の希少な生息地となっている事が指摘され、
また、保護活動家による重要性の宣伝活動や清掃活動によって
その重要性が広く認知された事で、1977年には環境庁が
鳥獣保護区に指定して保全を図りたいとの考えを国会で示しました。
その後、1980年代前半になると千葉県と習志野市も谷津干潟の保護に転じて、
1988年に国指定谷津鳥獣保護区(集団渡来地)に指定され
(面積41ha、うち特別保護地区40ha)、更に1993年6月10日に「ラムサール条約」
(正式名「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」)に登録され、
1997年に習志野市によって毎年6月10日が「谷津干潟の日」と制定されました。
これらの歴史的経緯から、谷津干潟はほぼ長方形という独特な形状となっており、
更に干潟の四方は宅地化や都市化が進んでおり、帯状に埋め立てられた部分を
JR京葉線/東関東自動車道/国道357号が横切る形となっております。
北側には谷津バラ園(旧:谷津遊園バラ園)、南側には谷津干潟自然観察センター
(谷津干潟公園センターゾーン)が整備されております。
・谷津干潟や公園の身近な自然に親しみ、学ぶ事のできる施設として
谷津干潟自然観察センターが設けられており、習志野市の委託により
指定管理者「谷津干潟ワイズユース・パートナーズ」によって運営されております。
干潟の保全や渡来鳥類の観察や記録、来場者への案内(レンジャー)、
望遠鏡の貸出、保全活動に携わるボランティア等の活動拠点になっております。
周囲約3.5kmにわたって観察路が設けられている他、淡水池や谷津干潟公園も
併設されており、オナガなど陸上の野鳥が生活する場にもなっております。
谷津干潟公園は習志野緑地、秋津総合運動公園
(習志野市秋津サッカー場)と連続しております。
館内には観察スペース、図書・飲食・特別展示・レンジャー・キッズコーナー、
カフェ、売店などがあり、建物内に限り入場料が必要となっております。
・谷津干潟では年間約80~100種の鳥類が確認され、このうち水鳥が約70種、
シギ/チドリ類が40~50種であり、泥質干潟を好むシギ/チドリ類にとって、
砂泥質~泥質の谷津干潟が重要な採餌場になっていると考えられております。
しかし、1970年代に「空が隠れるほど飛んでいる」とも評された生息数は、
その後の時代には減少しており、環境省が2012年に纏めた保全事業計画書では、
シギ/チドリ類の確認個体数は1990年頃と2010年頃の間の比較で
4分の1程度に減少したとのデータが示されており、
環境変化との関係は不明でありますが干潟の環境が変わった事は明らかで、
シギ/チドリ類には望ましくない変化であると指摘されております。
魚類に関して、2017年から2018年にかけて行われた調査では、
12目21科28種の魚類が確認され、このうち谷津干潟でよく見られる種として
アカエイ/ボラ/スズキ/マハゼを挙げられております。
底生生物に関して、ラムサール条約登録時と比較して
ゴカイ類が減少傾向であるのに対し、ホソウミニナやホンビノスガイなどの
貝類が大幅に増加している事が確認されており、アオサの堆積や
腐敗による硫化物量増加や干潟の砂質化が指摘されております。
貝類はシギ/チドリ類の餌になりにくいため、シギ/チドリ類の
生息環境という観点では悪化になると考えられております。
藻類に関して、アオサ類によるグリーンタイドは1995年頃に確認され、
一時期は干潟の大部分が緑色に見えるほどでありました。
アオサの繁茂は渡り鳥の減少/底生生物の壊滅が指摘されている一方で、
様々な生物に新しい生息場や餌場を提供して生物多様性に貢献している、
昼間海水に溶存酸素を供給している、干潟に有機物を貯留する事で
流入河川の生態系機能を補償しているとも指摘されましたが、
腐敗したアオサから発生する臭気は近隣住宅地の生活環境の悪化を招き、
環境省関東地方環境事務所による保全事業でも重要課題となってきました。
しかし、2017年夏以降は一転してアオサが殆ど見られなくなっており、
その原因は判っていないとしながらも、2017年夏のアオサの一斉腐敗の際に
胞子が残らなかった可能性が指摘されております。
ジャパリパークは非常に広大な敷地を有しており、
各エリアごとに多種多様な自然環境が形成されております。
その中には干潟またはそれに相当する土地も存在すると考えられ、
環境保全のために様々な取り組みが行われているであろうと想像できます。
動物にとって暮らしやすい環境は様々あり、干潟もその一つであります。
その環境を守るためにも、日々の取り組みの積み重ねが重要となるのであります。
本日もお祈りいたします、みんみー。